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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2021年度

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12月

Paphiopedilum rothschildianumの植替え

 NS(自然体での左右ペタル先端間の幅)が30㎝前後となる株を含む80株程のPaph. rothchildianumの植替えが始まりました。Paph. gigantifolium15株と、Paph. sanderianum56株の内の45株の植替えはすでに終了しています。これら全ての元株は2004年からの3年間に入手したもので、この20年近い間の数回の株分けを経て、現在は入手時の3倍となる150株程になっています。多花性パフィオはPaph. stonei AM/AOSの”Golden boy”の分け株(Division)やPaph. lowii fm. albaなども栽培しています。下写真は上段がNS30㎝のPaph. rothchildianumを含む21㎝x25㎝ポットへの植替え後の画像です。5年以上施肥をしておらず葉幅がやや細身ですが1葉が50㎝を超える葉長株も多く、順化後からは固形肥料を定期的に与える予定です。後方の多数の株は植替え待ちのPaph. rothchildianumです。下段はこれまでに植替えが終了したPaph. sanderianumの一部とPaph. gigantifoliumです。

Paph. rothchildianum NS30cm Paph. rothchildianum 葉長50m超えを含む16株
56株あるPaph. sanderianum植替え後の45株 Paph. gigantifolium 15株

Paphiopedilum gigantifoliumの植替え

 スラウエシ島標高700-1,000mの渓谷に生息のPaph. gigantifoliumは発見が近年で1997年に命名されました。当サイトでは現在本種を8株栽培しており、種名の通り株は大きく1枚の葉の長さは50㎝を超え、1本の花茎に6輪の同時開化が数株に見られます。現在、前回の植替えから8年も経っており、冬期は植替え適期ではないものの、植替えと株分けを行いました。植込みは温室内で行いますが、ポットから取り出しての根や葉の洗浄などは、本種のような大株となると1株当たり30分以上を要する室外作業となるため、気温10℃以下の寒さに耐えながらの植替えとなりました。

 当サイトでの本種の花数は8株の内、これまで6輪花が3株あり他は5輪となっています。ネット画像からは6輪花は稀で、7輪の花画像も1点ありましたが掲載者のコメントからはハイブリッドと思われます。長期間施肥をしたことが無かったため今年7月からグリーンキング固形肥料を与えていました。今回の新たな植込み材はPaph. sanderianumと同じバーク、十和田軽石、ヘゴチップ、焼赤玉土、麦飯石のミックスで、これまでの植込み材と異なるのは、Ph調整済み木炭に代わってヘゴチップと麦飯石を取り入れたことです。下写真はこれまで歳月記に掲載した6輪咲きの本種で花茎は1mを超えます。

Paphiopedilum gigantifolium

 下写真左は上写真右の株をポットから取り出した画像です。多数の根がプラスチックポット内面に沿って円筒状に絡み合い、ポット中心部は朽ち果てた古い根と、崩れて土化したバーク、唯一形を留めていたのは軽石となっていました。株分けはこの密着した根をそれぞれ1本ずつほぐしてから行います。右写真が株分けした2株です。本種の根は硬く折れやすいため、ほぐす際に2-3割は千切れてしまいます。

ポットから取り出した前記右の株 左の株の根をほぐし、2つに株分け

 下写真左は21㎝(径)x 25㎝(高さ)ポットに植付けした上記の2株です。根の損傷を伴う植替えでは、植込み前の病害防除処理は必須で、規定希釈のストロピー・ドライフロアブルとアグリマイシンの混合液を根を中心に散布しました。21㎝径の大きな鉢が似合う程、株の大きさが分かります。右は左の2株を含む、株分け・植替え後の6輪花の6株です。

上段右画像の株の植付け(ポットサイズ:21㎝径x25㎝高) 多花性(6輪)Paph. gigantifolium6株

 写真右のポット上面にはミズゴケが見られますが、このミズゴケは植込み材の表面に薄く敷いたものです。冬の温室内は閉めきっているものの暖房器が長時間稼働すると室内の湿度が下がります。一方で大きなポットサイズでは一定の気相率を得る目的で植込み材は主に大粒サイズを使用するため水分の蒸散が早く、ミズゴケは根の乾燥を避けるためです。前項のPaph. sanderianumも撮影後には同じ処理をしています。今回の植替えでPaph. gigantifoliumは15株となったこともあり、順化栽培後には6輪花株を含め一部の販売を予定しています。

Bulbophyllum kubahense順化栽培のその後

 60葉からなるBulb. kubahenseが支持材をはみ出す大きさとなり、10月30日にこの大株を5つに株分けしたことを同月の歳月記にて報告しました。それから45日が経過し順化栽培も終了しました。1m長のヘゴ板からの植替えであったため7割近くの根が切断され、順化期間内に2-3割の落葉も止む無しと覚悟していましたが60葉の内、古い葉が3枚落ちただけで済みました。根の損傷から考えると極めて少なく、古い支持材から切り離した直後の病害防除処理と、順化期間中の夜間最低温度を18℃、昼間25-27℃の環境が大きく影響したと思われます。下写真上段左が植替え直後、右が現在の様子です。5グループ全てに新芽や新芽の伸長が見られます。順化が終了したことから小さな肥料ケースを付けました。70㎝ヘゴ板5枚の株の葉数は現在、左から15、13、14、9及び6枚となります。いずれも葉サイズが大きな株で、下段写真に新芽や葉サイズを示しました。年明けにはこちらも一部を販売する予定です。

10月30日撮影 12月6日撮影
 
上段右写真の左から2つ目の株の拡大画像と葉サイズ(長さ:21㎝ x 幅:10㎝)12月12日撮影

Paphiopedilum sanderianumの植替え

 昨日(10日)、ペタル長1.1m及び97㎝となるそれぞれ2株のPaph. sanderianumを、株分けを兼ねて植替えを行いました。パフィオペディラムの植替えは当初、今年春の予定でしたが今月になってしまいました。本種は現在41株栽培しており、その殆どをこれから2週間かけて植替えします。それらの中で3割程が株分け対象となるため、終了後には50株以上になると思います。一般的に本種のスパイラル状のペタルの長さは60㎝までとされています。一方、これまでの栽培経験からはペタル長60㎝を超える株は、1枚の葉長(下葉)が全て40㎝を超えています。見方を換えれば、Paph. sanderianumで60㎝を超えるペタルを得るには長い葉長をもつ株であることが確かで、葉長は未開花BS株入手時の見極めの目安になります。今回は2株の元株から株分けで7株となりましたが、当サイトではそれ以外に葉長40㎝を越える株が現在8株あり、その半数は2株以上の株分けとなるため植替え後には20株ほどとなります。

 下写真は左が1.1m長のペタルをもつ本種です。上段中央はこの株の分け株で植替え待ちの状態、右はこれらをバーク、十和田軽石、ヘゴチップ、焼赤玉土および麦飯石をそれぞれミックスしたコンポストで植付けています。下段写真は前記した1.1mと97㎝の2株から株分けにより合わせて7株となったそれぞれの株で、5株を21㎝、2株を18㎝径のスリット入りロングタイプ・ポットに、株サイズに対しては可なり余裕のある植付けとなっています。これまでのコンポストでは、バークは2 - 3年で崩れ始め、気相率が下がるためペーハー調整済み木炭を2割ほど混合していましたが、現在入手難のため代替え材として当サイトの在庫品の中から植物系のコンポストで経年変化のないヘゴチップとしました。酸化防止用にゼオライトもごく僅かですが使用します。

Paph. sanderianum Petal: 1.1m long Paph. sanderianum Repotting

  株分けしない株の植替えは通常、鉢増しと云った方法で、枯れた根を取り除き、植込み材の交換と伸びしろ分を考慮したポットサイズの変更のみとなります。一方、株分けでは根の切断を伴うため、植付け後1か月間は新芽の伸長などの様態を観察する順化栽培となります。順化後には一部の株を販売する予定です。しかし1m長ペタルをもつPaph. sanderianumはマーケットにはほとんど見られません。また当サイトの株は1m長ペタルを親株とする実生ではなく、ペタル長を確認した株の分け株であり、数年前のOrchidInnの価格が超高価であったことから価格設定には困っています。さらに間もなく植替えとなる6輪花のPaph. gigantifoliumや、ペタルスパン30cm超えのrothschildianum、さらに本種だけでなく他属種においても、特別な変種の価格設定は共通課題であり、現時点では会員制サイトの準備を進めていることもあって、こうした特殊株は分譲株として会員限定の販売を考えています。

現在(9日)開花中のBulbophyllum nymphopolitanum 類似種3種

 フィリピン生息のBulb. nymphopolitanum Complex(類似種)が開化しています。前項のBulb. dolichoblepharonにも記載しましたが、このグループは同定が曖昧で纏まりがありません。orchidspecies.comではBulb. nymphopolitanumで検索すると、Bulb. levanaeらしき花が表示され、この画像に影響されたと思われる他の多くのサイトにも同様な画像が見られます。またそのページの中で、”本種、Bulb. trigonosepalumまたlevanaeが同じ種であれば、それらの内、最も早期に命名されたlevanaeとなる”と記載されています。これらはしばしば当サイトで取り上げているように花形状が全く異なり、まず全てが同じという仮定が成り立ちません。また同じページのReferencesの中にPhilippine Native Orchid Speces, 2011がリストアップされており、参照している筈ですが花画像が異なるにも拘らず、その考察は見られません。なお当サイトの種分けはJ. Cootes著Philippine Native Orchid Speces, 2011の花画像に準拠するものです。詳細画像は青色種名のクリックで見られます。

Bulbophyllum nymphopolitanum Mindoro Bulbophyllum mearnsii Mindanao Bulb. sp aff. trigonosepalum Mindanao

現在開花中のデンドロビウム15種

 この時期の当サイトの高温種向け温室は晴れた日の昼間で25℃前後、夜間は16-18℃、また昼夜を問わず湿度は80%前後となっており、八割以上の属種で活発な新根や新芽の動きが見られます。Den. macrophyllumは25株程を栽培しており下画像は種名Den. setigerumとしてフィリピンから入荷した株て、当サイトでは両者はシノニムの関係としDen. macrophyllumに統合しています。

Dendrobium treubii Moluccas Dendrobium trichostomum New Guinea Dendrobium dearei Borneo
Dendrobium macrophyllum Luzon Dendrobium sanguinolentum Borneo (Sabah)  Dendrobium sanguinolentum Borneo
Dendrobium peculiare Sumatra Dendrobium sp aff. jyrdii Malaysia Dendrobium ovipostoriferum Borneo
Dendrobium dianae bicolor Borneo Dendrobium dianae bicolor Borneo Dendrobium fairchildiae Luzon
Dendrobium lambii Borneo Sabah Dendrobium modestum Luzon Dendrobium sylvanum PNG

この1週間の開花バルボフィラム15種

 バルボフィラムの中で最大の花サイズで知られるBulb. echinolabiumが、昨年2月に取り上げた株とは別株に開花しました。ドーサルセパルからラテラルセパルまでの長さは41㎝で、前回とほぼ同じでした。不思議なことに今回開化した花は匂いが弱く、鼻を近づけないと分かりません。果たして株の個体差か環境なのか、1輪づつ続けて3回ほど開化するので確認する予定です。Bulb. weberiはフィリンピン固有種で、これまで当サイトのサムネールリストに含まれておらず、今回追加しました。またフィリピンPalawan生息のBulb. makoyanumの画像も未公開であったためBulb. makoyanumページ内に加えました。

Bulbophyllum echinolabium Borneo Bulbophyllum irianae New Guinea Bulbophyllum quadricaudatum New Guinea
Bulbophyllum uniflorum Sumatra Bulbophyllum orientale Thailand Bulbophyllum orthoglossum Mindanao
Bulbophyllum fritillariflorum PNG Bulbophyllum fraudulentum PNG Bulbophyllum antenniferum New Guinea
Bulbophyllum gracillimum New Guinea Bulb. gracillimum_semialba New Guinea Bulbophyllum obovatifolium New Guinea
Bulbophyllum weberi Mindanao Bulbophyllum makoyanum Palawan Bulbophyllum nitidum PNG

Bulbophyllum sulawesii semi-albaBulbophyllum dolichoblepharonの植替え

  Bulb. sulawesii semi-albaは今年4月の当歳月記に初花として取り上げました。そこで今回どの様な経路で本種を入手したのか調べたところ、2015年5月の歳月記にBulb. sulawesii albescenseとして2014年10月、インドネシアからマレーシアラン園経由で10株程を花写真を見ての購入との記載がありました。しかし、Bulb. sulawesiiのアルバフォームとなれば可なりの希少種の筈で、これまでの8年間、それを意識すること無く栽培してきたのは何故かと云えば、入手後2-3年で多数の開花が見られたものの、全てBulb. novaciaeのミスラベルと分かり、その後、1株のみ開化したBulb. sulawesiiも一般フォームであったため、インドネシア・サプライヤーにまたしても、と諦め、特別扱いすることなく温室の片隅に吊り下げたままにしていたことが分かりました。どうもサプライヤーはセミアルバフォームを1株見つけて写真に収め、ロット内の全てをアルバフォームにした様です。1株だけでも本物であったことを良しとしなければ某国との取引は困難であることを再認識しました。1昨日(2日)は、このセミアルバ株を炭化コルクからブロックバークに植え替えました。下写真右が植え替え後の画像です。本種のアルバフォームはグーグル画像検索をしてもSwiss Orchid Foundationに淡い黄緑色の花画像が1枚あるのみでマーケットには見当たりません。もし当時、タイや台湾等へも輸出されていれば、8年も経つことから実生が出回っている筈ですが、それが見られないことは現在、可なり希少性が高い種と思われます。青色の種名のクリックで詳細情報にリンクします。

Bulbophyllum sulawesii semi-alba

 下画像はフィリピン生息のBulb. dolichoblepharonで2016年頃に現地にて入手しました。多数の花が風に揺れる様子は優雅です。しかし当サイトで公開している花画像は、ネット検索で見られる多くの同名の花とは異なります。Bulb. dolichoblepharonでグーグル検索すると当サイトがトップページに表示されますが、orchidspecies.com(IOSPE)では、そのシノニム(異名同種)とされるBulb. brevibrachiatumが表示されます。当サイトではBulb. dolichoblepharonBulb. brevibrachiatumとは花形状が異なり、Jim. Cootes著, Philippine Native Orchid Species, 2011でも両種はそれぞれ別種とされ、花形状も全く異なります。当サイトの種名と種分けは現地フィリピン・サプライヤーに準拠するものです。他のサイト、例えばORCHIDS ORGでのBulb. dolichoblepharonは、Bulb. zamboangenseあるいはacuminatumのような花形状が表示される一方、Orchid Rootsに至っては、IOSPE同様にBulb. brevibrachiatum名で表示され、多数の花画像は支離滅裂です。こうした同定問題は特にバルボフィラムに多く、Bulb. trigonosepalum類似種にも見られます。Bulb. dolichoblepharonのどの花画像が正しいか否かはさらなる調査を待つとして、注目すべき点は、当サイトの示す花画像と一致する画像がネット上に見つからないことです。言い換えれば生息地フィリピンの1ラン園(サプライヤー)と当サイトのみが所有するバルボフィラムとなります。さらに見方を変えればこの種が該当種である無しに拘わらず、それ故に希少性が極めて高い種ではと思い、植替えをしました。

Bulbophyllum dolichoblepharon

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