栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

   2019年 1月  2月 3月 

3月

Dendrobium rindjanienseの花色

 インドネシアLombok島標高1900m - 2,000mの限られた地域に生息する中温タイプのデンドロビウムです。疑似バルブの節間が球体状であることから数珠のようなバルブ形状が特徴です。標高からは低温タイプと思われますが、夜間が15℃ - 18℃に設定できれば昼間は30℃近くであっても問題はなく、むしろ中温環境の方が開花や成長は良いようです。下写真はそれぞれの花色の違いを撮影したものです。

Den. rindjaniense

マーケットではあまり見られない現在開花中の6種

 現在浜松温室ではPhal. amabilisPhal. schilleriana、またDen. anosmum superbum等が花盛りですが、マーケットではあまり見ることのない種も多数開花しています。その中から6種撮影してみました。上段左のDen. treubiiはマラカス諸島生息種で扁平な疑似バルブの先端近くに5㎝程の花を5-6輪つけます。中央のDen. maraiparenseはボルネオ島キナバル山周辺1,200 m - 2,300mの低温から中温タイプで、本サイトでは低温室にての栽培です。開花は夏とされているようですが本サイトでは通年で開花し季節感はありません。右はBulb. incisilabrumで、スラウェシ島900m - 1,200mのコケ林生息の中温タイプです。

 下段左は先月、50株程が纏まって入荷したが何株必要かとサプライヤーに問われ、これまで入手が極めて困難であったため全て持ち帰ったフィリピン標高800m生息のAerides leeanaです。Spurが下方に向いているのが特徴です。本種についてorchidspecies.comでは高輝度マーク(Bright light or Full light)とされていますが、J. cootes氏の著書ではAeridesの中では例外的に低輝度(quite shaded situations)であると説明されており、栽培者の立場からはどちらが正しいのかはっきりしてもらいたいところですが実栽培を通して自分で見つけ出すより致し方ありません。今回入手の株は高温タイプです。中央は昨年12月の本ページで取り上げたPhal. hieroglyphica flavaです。さく果の採り撒きの時期となりました。右は先月紹介したDen. spです。高温環境で次々と花を付けています。

Den. treubii Den. maraiparense Bulb. incisilabrum
Aerides leeana Phal. hieroglyphica flava Dendrobium sp (endertii-like)

現在開花中のParaphalaenopsis3種

 現在浜松温室にて、Paraphal. denevei、Parapahl. labukensis、Parapahl. serpentilinguaの3種が同時に開花しています。Paraphalaenopsisは4種類が知られており全種がボルネオ島の固有種で標高1,000m以下の高温タイプのため栽培は容易です。問題は下垂する細長い筒状の葉の長さで、Paraphal. labukensisは2m程の長さに伸長するため、それなりの栽培空間が必要になることです。一時期、本種は成長が遅く数㎝伸長するのに数年を要すると言われましたが、本サイトにてそれは誤りであることを栽培実績を基に指摘したことがあります。

 下写真左がParaphal. denevei、中央がParaphal. labukensis、右がParaphal. serpentilingueです。これらの中で希少性の高い種はParaphal. deneveiでシンガポールAsiaticgreenの価格表では350USDとなっており、39,000円相当と高価です。これに対し、Paraphal. labukensisは60㎝の本種としてはSサイズで30USD、Paraphal. serpentilingueは45USDです。当サイトではParaphal. deneveiの下写真のBS株で12,000円です。Paraphal. deneveiはBS株でも葉長は40㎝止まりで、同属の中ではもっとも小型です。現在10株ほど在庫があり、5月までにさらに10株を追加する予定です。

Paraphal. denevei Paraphal. labukensis Paraphal. serpentilingue

現在開花中の3点

 現在浜松温室にて開花中の原種3点です。下写真左はPhal. mariaeで淡い黄緑色をベースに太い濃赤色の斑点があり別種のようなフォームです。中央は日没直前の頃に撮影したとりわけ赤色が一際濃いDen. aurantiflammeumです。右は一つの花茎当たりの同時輪花数の多いDen. hymenophyllum greenです。それぞれにいずれもこれまでの一般株には見られないフォーム、花色あるいは輪花数に特徴があります。左のPhal. mariaeは実生を得るまでの種親とする予定ですが、他の2種は販売品です。

Phal. mariae Den. aurantiflammeum Den. hymenophyllum green

Bulbophyllum (Epicranthes) sp II

 ミンダナオ島からEpicranthes (= Bulbophyllum) jimcootesiiとspの2種を2月に入手したことを前項で取り上げました。ところがこのsp株を植付ける前過程で葉裏に花が開花していることに気付かず 強いシャワーにて株の汚れを洗浄してしまったたためドーサルセパルとペタルが水圧で吹き飛び、ラテラルセパルだけが残っていることに気が付きました。下写真右がそのラテラルセパルの画像です。そこでこのセパルに似たEpicranthesがあるか調べたのですがネット画像からは該当する種が見当たりません。前項の記載ではcharishampeliaeあるいはaquinoiのいずれかとの現地サプライヤーの情報を紹介しましたが、それらのいずれともフォームが異なるようです。orchidspecies.comにはEpicranthesすなわちBulbophyllum属Epicranthes節にはフィリピン生息情報が無く、一方J. Cootes氏のPhilippine Native Orchid Speciesには1品種のみの記載で、本種がミンダナオ島生息種であることは間違いないものの該当する情報が少なく現在のところは種名不詳です。種名は次の開花待ちとなりそうです。


Dendrobium (Euphlebium) sp

 2017年11月の本サイトにて掲載したフィリピンから入荷したDendrobium (Euphlebium) balzerianumの中から、その種とは異なるフォームの花が開花しました。株(葉およびバルブ)の形態はEuphlebium balzerianumと変わりません。下写真で上段左が今回開花のspで、右がこれまでDendrobium spurinumあるいはEuphlebium decoratum-likeとしていた種、中段左はEuphlebium balzerianum、右がEuphlebium bicolenseです。下段左は今回開花したspの花画像、右はリップ中央弁を比較したもので左がsp、右がEuphlebium balzerianumです。

(後記:本種について情報を頂き、種名がDendorobium (Euphlebium) elineaeであることが分かりました。2009年に発見され2017年のorchideenJouanalで掲載されました。生息地はルソン島北西部Ilocos Norteの標高500m前後とのことです。なぜ本種がレイテ島生息のEuphlebium balzerianumに混在していたかは不明です。)

Euphlebium sp Euphlebium spurinum
Euphlebium balzerianum Euphlebium bicolense
Euphlebium spの花正面画像 Euphlebium sp (left) Euphlebium balzerianum (right)

Cleisocentronの種別について

 ボルネオ島生息のCleisocenronは5種が知られていますが、青色の花を付ける種は以下の4種となります。
  1. Clctn. abasii (葉幅:10-15mm、標高:1,200 - 1,500m)
  2. Clctn. gokusingii (葉幅:5-8mm、標高:1,800m)
  3. Clctn. merrillianum (葉幅:3mm、1,100m 以上)
  4. Clctn. sp wide-leaf (葉幅:15-20mm、標高:gokusingiiと同じ?) 
 これらはいずれも高地コケ林の生息種であり、中温から低温(夜間平均温度15℃以下)での栽培が必要となり、低地生息種の胡蝶蘭やデンドロビウムと同じ環境での栽培は困難で、国内の夏季を乗り越えるには冷房あるいは山上げが必要になります。栽培における成長はClctn merrillianumが早く、より低温環境での生息種であるClctn. gokusingiiは年間伸長3㎝程が観測されています。上記の1-3種は何れも葉形状で種を同定できますが、1と4は視覚的には困難で、唯一の方法は花茎の長さとなります。下写真はそれぞれの花茎を比較した画像です。上段はそれぞれ葉形状を、下段は花茎の開花跡を示したものです。Clctn, abasiiは10-20㎝程の花茎に対し、他種はいずれも1.5㎝程の短い花茎となります。

Clctn. abasii Clctn. gokusingii Clctn. merrillianum Clctn. sp wide-leaf

Dendrobium serratilabium

  本種はフィリピン固有種でルソン、レイテ、ミンダナオ島の標高500mから1,200mに生息するCalcarifera節のデンドロビウムです。入手は容易で希少種ではありませんが在庫が無いことに気付き、6年ぶりに昨年12月に10株ほど入荷しました。しかし半数以上がDen. victoriae-reginaeのミスラベルでした。どうやら高地(コケ林)ではそれぞれが生息域を共有しているようで疑似バルブ形状からは区別は困難です。下垂タイプで自然界ではかなり低輝度な場所に生息するとのことです。そうしたことから今年2月のフィリピン訪問では本種であることを確認しての持ち帰りとなりました。本種名のserrateはノコギリ状を意味しリップ中央弁の縁形状が由来となります。茎3本株で2,500円からを予定しています。

Dendrobium serratilabium

Arachnis breviscapa

  3年ほど前にボルネオ島Sabah生息のArachnis brevicapaを入手しました。その時点で株は茎から切断され根の無い40㎝程の株で果たして再生可能か疑問を持ちつつもバルボフィラムを栽培している温室の片隅の薄暗い場所に、プラスチック深鉢にクリプトモス入れ、ここに茎を差し込んで放置していました。葉が落ちることもなくしばらく現状維持が続き、凡そ1年後から徐々に伸び始め3年近く経過した段階で1mを超える株になりました。今回改めて植え直し本来必要とされる輝度の高い場所での栽培を始めることとしました。

 本種はボルネオ島、スラウェシ島、フィリピンに生息し、古くから知られた種で極めて多数の名前(シノニム)を持ち、Arachnis celebica, Arachnis longicaulis、Arachnis lyonii、 Dimorphorchis breviscapa、Stauropsis breviscapa、Vandopsis celebicaなどと呼ばれています。高温タイプで高輝度を好む種で、その点では3年間薄暗い場所で、病気や虫食いもなく良く成長したものだと思います。下写真は60㎝ x 9cmの炭化コルクに薄くミズゴケを敷き、過かん水を避けるため、その上に新たに発生した根と茎の下部を置き盆栽用アルミ線で留めたものです。長い間ベンチの片隅に転がっていたため伸長方向がまちまちですが強靭な立ち性のため支持棒は不要です。本種の花画像は写真下の名前をクリックすると見られます。

Arachnis brevicapa

Epicranthes sp

  Mindanao島Bukidnon生息のEpicranthesについて先月の歳月記に2種類入荷したことを取り上げました。一つはEpicranthes jimcootesiiと他はEpicranthes spでEpicranthes charishampeliaeあるいはaquinoiのいずれかとの現地情報で、こちらは開花まで種名不詳となります。Epicranthes jimcootesiicharishampeliaeは昨年、Epicranthes aquioは2016年のorchideenJournalにそれぞれ発表された、いずれも標高1,300m近傍のコケ林に生息する中温タイプで直近の新種となります。今回取り付けがほぼ完了したため再度画像を掲載しました。それぞれの花画像は写真下の種名をクリックすると見られます。

Epicranthes jimcootesii Epicranthes charishampeliaeあるいはaquinoi

Phalaenopsis bastianii

  Phal. bastianiiが纏まって入荷したのは5年ぶりです。セパル・ペタルは黄白色をベースに濃赤色の太い棒状斑点がやや同心円状に並び、ステンドグラスのような半透明感と艶をもつのが特徴です。特に大株では花茎当たり5-6輪が同時開花し良く目立ち、胡蝶蘭原種の中では最も美しい種の一つです。しばしばネットではPhal. mariaeとして本種の画像が間違えて紹介されることがあります。本種を含めこうした原種の大株は入手難ではあるものの、大株になると原種ならではの存在感を一層発揮します。写真右は今回35㎝ x 10cmの炭化コルクに植え付けした20株程のPhal. bastianiiの一部です。

Phal. bastianii

Dendrobium setigerum

  フィリピンルソン島やミンドロ島などに生息するDen. macrophyllumに酷似したデンドロビウムで2000年登録の新種です。ドーサルおよびラテラルセパルの背面にある細毛が特徴です。Den. macrophyllumはJavaからソロモン諸島まで生息域が広く、標高も海抜0mから1,700mに及び、また香りがあるのに対し本種はフィリピン固有種で海抜500m以下とされ香りは無いとされます。下写真右は今回植え付けの株です。

Den. setigerum

Dendrobium batakense

  本種はシノニム(同種名)としてDen. metriumDen. socialeとも呼ばれ標高1,100m - 1,400mの中温からクールタイプのデンドロビウムです。入手した株はスマトラ島の生息で左写真に示すように白色の1.5㎝程の花を1-3輪同時開花し、リップに赤い網目模様が入るのが特徴です。下写真右は植付けが終わったばかりの20株ほどの株で、高温下におけるマレーシアでの保管を心配したのですが入荷した全ての株は非常に良い状態でした。スリット入り深鉢にミズゴケクリプトモスミックスの植え付けで中温栽培です。左画像は2年ほど前に別株で浜松にて撮影した花です。

 国内マーケット情報を検索すると流通は余りなく、希少種か否かは不明ですが1件で4,000円が見られ、またeBayでは長短それぞれ1本、合わせて僅か2本の茎で3,500円と高額です。本サイトでは下写真右の5-6本の長茎が植え付けられた1ポットを3,000円の予定です。

Den. batakense Sumatra

 

前月へ