Phalaenopsis maculata

1.生息分布

マレーシヤ(Pahang)、
ボルネオ島(Sabah, Sarawak)
ボルネオ島(Kalimantan Timur)

2.生息環境

 海抜200‐1,000m、温度18‐30C、湿度80-88%。石灰岩にコケと共に日陰に生息。


3.形状

3-1 花



1. 花被片
  2cmほどの小さな花である。抱え咲きのため、より小さく見える。一般種の花被片は上段写真に見られるように薄黄白色(クリーミーホワイト)で赤褐色の棒状の模様が同心円状に入る。下段中央および右はペース色がレモンイエローである。開花期は夏。香りは無い。花名は「斑点のある」という意味。

Flowers

2. リップおよびカルス
 リップ中央弁は写真のように丸みのある柿色。表面は皺状の凹凸があるが先端に繊毛はない。カルスは2組で、anteriorおよびposteriorカルスともに先端2分岐の歯状突起をもつ。

Lip and Callus

3-2 さく果

 さく果は艶のない緑色で、ソフトな質感をもつ。6本の縦筋が先端まで走る。花被片は交配後やがて枯れ縮む。 右写真は撒種から1年半後のフラスコ苗である。他種と比較すると成長が遅いが、難発芽性は見られない。この成長の遅さが、栽培が難しいとの印象を与えているのかも知れない。

Seed Capsule
Flask Seedling

3-3 変種および地域変異

1. Phalaenopsis maculata f. flava

Phal. maculata f. flava

3-4 葉

 葉は鮮緑色で、葉長18‐20cm、幅8.0。やや蝋質で中厚。写真はコルク付けで7枚の葉をつける。ているが、主茎は垂直に伸び葉は左右に展開して7‐8枚付ける。葉は立ち性である。

Leaves

3-5 花茎

 花茎は15cm程で、3‐4本に分岐し、それぞれの花茎に4-5個の花を同時に着ける。花茎をそのままにすれば、翌年僅かに伸長して先端に花芽をつける。花  茎あたりの輪花数を増やすには花が終了したら花茎はカットした方がよいが、花茎数と輪花数との積算であるため、毎年1-2本新たに出る花茎を増やしてゆく方法もある。

Inflorescence

3-5 根

 根張りは緩やかで、他のPolychilos亜属種と比較してそれほど活発ではない。



4.育成

  1. コンポスト

    コンポスト 適応性 管理難度 備考(注意事項)
    コルク、ヘゴ   ×    
    ミズゴケ 素焼き    
    バーク・軽石 プラスチック    
    ヘゴチップ プラスチック   NBS時の使用

  2. 栽培難易度
    胡蝶蘭では珍しい岩性ランであり、コルクやヘゴ板での栽培は不可。プラスチック鉢にバークあるいはヘゴチップと軽石ミックス(当サイトでは麦飯石も加える)で良い成長が見られる。栽培が難しいとされる原因は子苗からNBSまでの成長がかなり遅いためと、根張りも緩やかであることが一因かも知れない。またミズゴケと素焼き鉢も余り適していないのは、岩性ラン由来によるものではないかと思われる。

  3. 温度照明
    胡蝶蘭のなかでは低輝度栽培が適す。

  4. 開花
    NBSサイズが環境に順化し、花を着けるまでには2-3年を要するが、一度花を着ければ毎年開花し花数も増してゆく。

  5. 施肥
    特記すべき事項はない

  6. 病害虫
    湿度が高く通風が悪いと、葉に水侵状の淡褐色斑点を発生しやすい。細菌性病害であるためストレプトマイシン系の散布が必要。葉の周辺が褐色になる炭そ病も、しばしば見られる。これはカビ系薬剤で対応する。通常、4月から10月の間は月1回程度の細菌性およびカビ系の薬剤を混合した殺菌散布が好ましい。規定希釈の園芸用薬剤散布で薬害が出た経験(銅殺菌剤は未確認)はない。
 

5.特記事項

 交配による作落ちが生じやすいため、交配を行う場合は大株になってからが良い。