Phalenopsis schilleriana

1.生息分布

フィリピン(Luzon, Bicol,Biliran島)

2.生息環境

  海抜0-500m、温度18-32C。湿度80-90%

3.形状

3-1 花


1. 花被片
 花径は5 ‐ 9cm。大株では弓状の複数の花茎に50輪を超える花をつける。下写真のように花被片は淡桃色から淡青紫色など多様なカラーバリエーションがある。胡蝶蘭原種のなかでは最も華麗で人気のある種の一つである。ラテラルセパルおよびリップの基部に紫赤色の斑点が入る。花名はドイツ栽培者C.Schillerから。開花は2‐3月。開化期のバラツキはほとんどなく1 - 1.5か月の期間に一斉に咲く。多くは無臭であるが、一部に微香がありユリの香りに似る。アメリカでは本種の開花期に合わせたオーキッドショーがあるほど、本種の大株の多輪花は上写真の様に見ごたえがある。

Flowers

2. リップおよびカルス
 リップ側弁の中央から基部にかけての白地や黄斑上に、また中央弁の淡い桃紫地色の基部にそれぞれ赤色斑点が入る。中央弁の先端は錨状に二つの突起(髭)がある。カルスは1組でV字型。黄色に赤褐色の斑点をもち、左右に1つの突起がある。右写真は左がPhal. stuartiana右がPhal. schillerianaである。

Lip and Callus

3-2 さく果

 下画像左は交配後約1か月後のさく果。花被片は交配後やがて枯れ縮む。さく果は緑茶褐色で6筋の浅い窪みが縦に入る。3 - 4か月で採り撒きができるが、自家交配ではシイナ(無胚)が多い印象を受ける。右写真はフラスコ苗。

Seed Capsule
Fask Seedling

3-3 変種および地域変異

1. Phalaenopsis schilleriana f. purpurea
 ピンク色が全体に濃いもの。花サイズが大きい一方で、分枝も少なく輪花数も一般のタイプよりは少ない。本種は大輪でダークピンクのタイプをメリクロンして得たものとE.A.Christensonは著書で述べている。当サイトは本種の自家交配を数回試みたが、全てシイナ(胚の無いタネ)であった。

Phal. schilleriana f. purpurea

3-3 葉

 葉は暗緑色地に灰緑色斑が横縞状に入る。裏面は暗紫色。長さ30 - 35㎝、幅10 - 12cm。若い株は茎が垂直に伸び葉は左右に展開するためポット植えでも良く育つが、成長すると古い葉はやがて下垂するためポット植えには適さずコルク、バスケットあるいはヘゴ板がよい。大株となった本種は葉自体にも鑑賞価値がある。
下写真上段は左および中央が野生株、右は実生株で、実生株はしばしば横縞状の模様の規則性が失われ暗緑色と銀緑色がランダムに混じるものが多い。現在フィリピンからの入荷株(野生種)は、ほとんどが横縞だが、台湾からの入荷株は曖昧なものが多い。 上段写真中央の野生株の若葉には葉元側に赤味がでている。これもPhal. schillerianaでは一般的な特性である。この赤味は葉の成長とともに薄れ緑色となる。下段左および中央は葉表面、右は裏面を示す。

Leaves

 下写真左および中央はクラスター株で、右は45㎝の葉長をもつルソン島中東部からの入荷植え付け直後の野生栽培株である。現地先住民の間では、このロングタイプは薬草として利用されているとの説明があった。

Cluster & Long leaves

3-4 花茎

 花茎は赤軸で1m以上にもなると言われる。温室では70-90cm長。本種を含むPhalaenopsis節の花茎は屈光性をもち、明るい方向に延びる。

Inflorescences

3-5 根

 根は皺のある灰銀色。活着するとリボン状に扁平する。旺盛に伸びコルク着けでは50cm以上となる。


4.育成

  1. コンポスト

    コンポスト 適応性 管理難度 備考(注意事項)
    コルク、ヘゴ、バスケット      
    ミズゴケ 素焼き    

  2. 栽培難易度
    容易

  3. 温度照明
    照明は中程度

  4. 開花
     夜間18 - 20Cで昼間の温度が25C前後が1か月以上続くと花茎が発生する。夜間20C以上の高温条件では花茎は発生しない。室内あるいは温室での栽培で、この条件が得られるのは晩秋か早春となる。よって開花は一般に冬あるいは遅い株で5-6月となる。花茎の発生から2 - 3ヶ月程で開花に至る。全体が開花するのは初花から1ヶ月程。

  5. 施肥
    特記すべき事項はない。

  6. 病害虫
    病害虫には強い種である。
 

5.特記事項

 台湾やUSAなどの改良種では葉写真の上段右に見られるのように、野生種と比べて葉の筋模様が曖昧となっている印象を受ける。これは本種だけでなく、同様のパターンをもつPhal. philippinensisも改良種には同じ傾向が見られる。