Phal. speciosa

1.生息分布

インド(Andaman, Nicobar島)
タイ西部


2.生息環境

 温度25-33C。湿度80%以上(Nicobar島)。マングローブ地帯。

3.形状

3-1 花

 インド洋Andaman, Nicobar島に生息し、白色をベースに大きな赤い斑点の鮮やかなコントラストを持つタイプと、全体が赤紫のソリッドタイプなど多様なパターンがある。花名は派手に目立つという意味。10年ほど前までは野生種の入手も稀に可能であったが現在2014年)のマーケットでの売買はほぼ全てが実生株である。本種の白と赤紫のカラーパターンは開花毎に変化し、一過性であり、セパル・ペタルが白色をベースに赤褐色の棒状斑点をもつPhal. tetraspisと同じ特性である。Phal. tetraspisPhal. speciosaの生息域と共に、Sumatra島に生息しており、古い分類ではPhal. speciosa v. tetraspisとも呼ばれていたが今日ではこの2種はDNA分析で別種とされる。Phal. tetraspisの主な生息地であるsumatra島には、赤紫色の円形あるいは弁全体が赤色となるタイプは存在しないとされている。


(1)花被片

 花被片の直径は5 - 6cm。中サイズの株では花茎当たり4 ‐ 5輪開花する。花茎は2 - 3本となる。Phal. speciosaの変種にv. christianav. imperatrixの2タイプがあり前者は白色のペタルに、セパルと蕊(ズイ)柱が赤紫とされ、一方後者はセパル・ペタル共に全体が紫色とされている。前者はPhal. tetraspisとの交配種の可能性をE.A.Christensonは指摘している。現実の問題としてマーケットにおいては幾代にわたる実生間の交配によって、この分類は意味がなくなっておりフォームは大きく下記の3種類に分かれる。
  1. 白色ベースに赤紫の斑点。パターンは一過性で白と赤との割合や斑点の位置は各年の開花ごとに変化する。
  2. セパル・ペタル全体が赤あるいは赤紫。縦筋の濃淡からダーク色まで多様。濃淡度はほぼ保持される。
  3. セパル・ペタルが青紫。縦筋の濃淡からダーク色まで多様。濃淡度はほぼ保持される。
 下写真に多様な本種の花被片を示す。最上段は2003年から2005年に入手したPhal. speciosaで、右の株は唯一野生種として入手したもの。赤色がこれまでの入手株の中で最も鮮明で、この色は毎年再現されたが白と赤のパターンはしばしば変化した。左はPhal. tetraspisとの交配の可能性が高く、セパルの先端が黄緑色を呈するのはPhal. tetraspisも同様である。2段目の3株は現在のマーケットでしばしば見られるパターンであり、全体としてはセパル・ペタルで白色と赤紫の混合パターンが一般的である。3段目左は赤濃色、中央は青紫色タイプ。4段目の左と中央は青色が強く出たもので、中央は青紫の濃色タイプである。一方縦長の右写真の株は過去3年間、全輪ソリッドレッドを再現しており、ソリッドが一過性のものか否かはさらに観察が必要と思われる。これまでの本サイトの栽培では、赤と白の配色だけでなく、環境に応じて赤色の淡い色から濃色までの変化が見られる。


(2)リップおよびカルス

 中央弁は紫色で、先端部には密集した白色の繊毛がある。カルスは2組タイプでposteriorカルス、anteriorカルスともに先端は2分岐している。リップおよびカルス形状に関しては赤紫色のリップ中央弁の色を除けば、Phal. tetraspisとの形状の違いを見つけるのは困難である。花粉魂は他の種の多くがオレンジ色であるのに対してクリーム色で白色に近い。

Lip and Callus

(3)さく果

 写真の子房は長さ10 - 12cmで胡蝶蘭の子房としては長い方。

Seed Capsule

3-2 変種および地域変異

 下記の2変種が挙げられているが、実態の写真がない点で存在が不明である。またPhal. speciosaの中にも花被弁に占める赤色と白色の配色割合は、個体差あるいは年度毎に大きく変化し、ダークソリッド色も時折出現する。Phal. tetraspisにも赤色斑点が含まれるが、Phal. tetraspisでは斑点が線状であるのに対して、本種に線状斑点はなく、円形である点は異なっている。
  1. Phal. speciosa f. christiana
    Columnも紫色であることが特徴とされる。
  2. Phal. speciosa f. imperatrix
    花被片全てが赤紫色であることが特徴とされる。下写真は赤色が濃い全面赤紫色のPhal. speciosaである。自家交配し苗も全輪ソリッドレッドであれば変種imperatrixであろう。

    Phal. speciosa f. imperatrix ?

3-3 葉

 葉は長楕円形で、長さ25 - 35cm、幅7 - 8cm。葉の厚みは胡蝶蘭のなかでは中厚からやや薄い。写真はPhal. speciosa f. christianaとして入荷したものである。葉は下垂する。ミズゴケやミックスコンポスト栽培での経験を持つが、根の伸長が良くないため1年ですべてコルクとヘゴ板に移植した。コルクあるいはヘゴ板が成長は緩やかであるが順調に育つ。
 写真左端が山採り、中央および右端が実生である。野生種として入荷した株の葉は30cm(左写真の古葉)を越えるが、温室で成長した葉の長さは20 - 25cm程度で、幅は1cm程狭い。本種はPhal. tetraspisと比較されるが、葉形状で見ると本種の葉はPhal. tetraspisと比べて幅が細く、先端がV字に尖っている。
 

Leaves

3-4 花茎

 花茎は20 - 30cmで、写真は4本の花茎を出しているが1年に2本程度を新しく発生する。自然界では花茎は1mを越えるものがあるという説があるが、これはPhal. pulchraの見誤りであろう。野生種と言われる株でも30cmを越える花茎は見られない。花茎のえき芽には2次花茎あるいは幼苗のような2 - 3mmの芽を出す傾向があるが、そのままで休眠状態が続く。これがどのような条件で休眠から覚めるのか、またその後に花茎あるいは高芽となるのか、調査中である。葉は下垂することからポット植え(ミズゴケと素焼き鉢など)は適さない。

Inflorescences

3-5 根

 根はPhal. amabilis、Phal. gigantea、Phal. cornu-cerviなどと比較して1/2程度細い。根張りは旺盛で多分岐してヘゴ板にはよく活着する。コルクは比較的大きなサイズが好ましい。

4.育成

  1. コンポスト
    花茎が葉下に伸びる性質からポット植えは適さない。

    コンポスト 適応性 管理難度 備考(注意事項)
    コルク、ヘゴ、バスケット
    ミズゴケ 素焼き

  2. 栽培難易度
    普通


  3. 温度照明
    中から低輝度。


  4. 開花
    温室での開花は春および秋。


  5. 施肥
    肥料を好む。ヘゴ、コルク上部にTea-Packに入れた置肥を周年下げている。


  6. 病害虫
    病害虫には強い種である。
 

5.特記事項

 Phal. tetraspisとの比較をPhal. tetraspisのページに記載。