1.生息分布
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2.生息環境 温度22C-30C、標高450m以下、年間雨量3,000mm - 3,800mm | ||
3.形状 3-1 花 ![]() (1)花被片 花被片は淡い紫色で、やや赤味あるいは青味のものがある。本種はPhal. violaceaと同種とされているが、花被片は写真のように全体が細長く先端がシャープな形状をもつ。また本種はPhal. violaceaと比較して、特に花茎や葉の形状が大きく異なっており、他の別種とされながらも類似する種をもつPhal. cornu-cervi系や Phal. fuscata系などと比べるとその固有の様態は明確であり、Mentawai島とその周辺 がスマトラ島内陸および東側と分離されることによってスマトラ島内を中心とするPhal. violaceaとは交わることなく進化したものと思われる。開花期は特になく季節の変わり目で開花する傾向があり、夏から秋にかけてやや多い。香りはやや弱いがPhal. violaceaと同じ。同時に開花する輪花数はPhal. violaceaに比べて1 - 2輪と少ないが、Phal. violacea開花時期以外にも不定期に咲く。
(2)リップおよびカルス Phal. violaceaと比較して、中央弁の竜骨突起はやや高く、中央弁先端部はビロードのような質感がある。カルスは2組とされるが、anteriorカルスは先端2分岐の歯状突起(写真左の白色のひげ状のもの)。このanteriorカルスの基部に重なった状態で先端2分岐の短い歯状突起があり、この構造はPhal. violaceaには見られずPhal. bellinaに似る。posteriorの基部側には複数の腺状突起(右写真の黄色部)がある。この部分の形状はPhal. violaceaおよびPhal. bellinaとほとんど変わらない。
(3)さく果 さく果はPhal. violaceaと同じ様態で、違いを見出すことはできない。3-2 変種および地域変異
3-3 葉 Phal. violacea mentawaiの葉はPhal. violaceaやPhal. bellinaに比べて薄く全体に細長い。やや薄い緑色。葉長25cm、幅7cm。この葉形状の特徴でもPhal. violaceaとは区別できる。殆どの株で葉は写真のようにアンジュレーション(波打つ)をもち下垂する。このためポット植えには若苗を除いて適さない。比較的明るい湿潤な川辺や沼周辺に生息しているものと思われる。
3-4 花茎 写真下は左からPhal. violacea、Phal. mentawaiおよびPhal. bellinaそれぞれの花茎を示したもの。Phal. violacea mentawaiの花茎は円筒形で50cm以上となり、筆者温室では3年間カットしないもので70cmとなっている。Phal. violaceaの花茎は写真に見られるようにPhal. bellinaと同様に扁平でジグザグの花茎に花芽を付けるが、本種は節間が長く円筒形でジグザクとはならず、むしろPhal. pulchraの花茎形状に類似する。これらが葉形状と並んで最もPhal. violaceaやPhal. bellinaとは異なる特徴である。茎は一過性ではなく、翌年花茎の先から再び花茎を伸長させる。同時に多くの花は付けず花茎当たり1-2輪を次々を咲き続ける。
3-5 根 根張りは旺盛でコルク、バスケットなど1年ではみ出してしまう。Phal. cornu-cervi系の株は大株になればクリプトモス・プラスチック鉢に植え換えるが、本種は葉が下垂することと、花茎が長く伸長するため適さない。この意味でミズゴケ素焼き鉢も同様である。根が空中に飛び出ても問題はない。筆者はPhal. violacea系(Phal. mentawai, Phal. bellina)はバスケット、ヘゴあるいはコルク付けとしている。 |
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4.育成
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5.特記事項 花茎が本種のように長い一方、花被片がPhal. bellinaのような幅広で丸みがあるものが本種名でネット上で見られたが、これはPhal. violacea mentawaiやPhal. bellinaとの交雑種と思われる。原種専門業者以外からの純正のMentawai種の入手は困難であろう。本サイトでは本種をPhal. violaceaと学術的には同種とされるが別種として取り上げた。Phal. violaceaとは花被片、花茎、葉形状共に大きく異なっており、写真ではカルス形状もanteriorカルスの基部にかかるもう一つの歯状突起の形状がPhal. violaceaと異なる。これはMentawai種固有のものか、さらに多くのサンプルでの検証が必要である。 | ||