栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2016年 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月

6月

斑入りDendrobium spectabile

 Cameron Highlandの帰り道、立ち寄ったクアラルンプール近郊のラン園でDen. spectabileを10株ほど入手しました。これは予めセレンバンラン園に注文していたもので、このラン園で在庫しているとのことでの購入です。ところがその中にハッキリと斑の入ったDen. spectabileが1株あり、これは別株扱いで高くなるであろうと、特にこのラン園の園主の一人はかなりのやり手で、2年ほど前に本ページで取り上げたPhal. bellinaでの価格交渉をした相手のため、とんでもない価格に違いないと構えていたところ、なんと一般種と同じ価格で難なく入手できました。これが下写真の株です。あまりの呆気なさにDen. spectabileの斑入りはどこにでもあるのかと帰国後にサイト検索したところ見つかりません。しばしばフィリピンではflavaやcoeruleaフォームが数百ある株の中に混じって咲いていても、園主は全く興味が無いようで、関心があるのはalbaのみであるように、ここマレーシアでは斑入りは商品価値の対象にはならない?のかと。支払が済んでから、日本では斑入りのDen. spectabileであれば数万円するのではと言いたくなりましたが黙っていました。ちなみに、日本国内でのDen. spectabileの一般種の価格は5,000円から1万円程するようですが、このラン園の筆者への販売価格は1,000円もしませんでした。斑入り株もです。
 

Den. spectabile Variegated form

Cleisosentron gokusingii? abasii ?あるいは第4の青いCleisocentron?

 今回のマレーシア訪問でCleisocentron abasiiが入荷するとの情報が1か月ほど前に入り、2年越しの要求がやっと叶ったと出かけました。しかし入荷していた現地での株には開花した後の花茎が枯れて残っており、その長さが1-2㎝程であるのを見て、花茎が5㎝から15㎝とされるClctn. abasiiとは異なることから、別種であることが分かりました。この不明種の画像を下写真に示します。下の左写真は、左から順に今回入手の株、中央の背の低い株がClctn. gokusingii、右がClctn. merrillianumとなります。葉幅が左から右に向かって小さくなっていることが分かります。中央の、Clctn,gokusingiiの高さが18㎝、右のClctn. merrillianumが36㎝です。

 また中央写真にはClctn. gokusingiiと入荷株との葉幅の違いをほぼ同じ背丈の株で比較したもので、重なり合っている上側がClctn. gokusingii、下側が入荷株となり、左画像と合わせ、株形状がそれぞれ明らかに異なります。葉幅は入荷株が15-20mmで、Clctn. gokusingiiが5-8mmで3倍入荷株が幅広です。ちなみにClctn. merrillianumの葉幅は3mm程です。現地サプライヤーによればボルネオ島Sabah産で花はClctn. gokusingiiのような青色とのことで現地取扱い名はClctn. abasiiでした。葉が他の2種に比べて、平坦で薄く幅広であることからそのように判断したものと考えられます。

 右写真は入荷株の内、最も大きな株で凡そ1m長あります。もし入荷株がClctn. gokusingiiであれば、これまでの栽培経験からCleisocentronの中温から低温での1年での成長は3㎝程であり、30年以上経った換算となります。一方入荷した株は平均長が40㎝の大きさで1m長も数株含まれます。


 下写真は入荷した植え付け前の40株の一部で、右側後方に見える素焼き鉢に植え付けられた株がClctn. gokusingiiです。この写真からも明らかなように株形状が大きく異なり、Clctn. gokusingiiと同一種とは考えられません。では入荷株は何かとの問題が生じます。Cleisocentronは6種が記録されていますが、ボルネオ島生息種としてはClctn. kinabaluenseを含め4種です。Clctn. kinabaluenseは2012年登録の新種ですが花画像しか無く、色は白に近く異なります。ネット上の画像検索からは入荷株に相当する株形状のCleisocentronが見つかりません。さらに調査中です。


 それではClctn. abasiiClctn. gokusingiiClctn. merrillianumいずれでもない第4の青いCleisocentronかとも考えられますが今のところ不明です。こうした理解不能な種が得られるのは現地訪問ならではのことと思います。

マレーシア訪問

 24日から昨日28日まで、会員の方2名と共に、Cameron Highlandに2泊ほか機内1泊を含む4泊のマレーシア訪問となりました。これで今年に入りマレーシアは3回目となります。入手した株はバルボフィラム25種、デンドロビウム15種、胡蝶蘭5種、その他6属です。バルボフィラムの内、バプアニューギニア8種が不明種で他は1-2株と少数ですが、そのほとんどが変種となっています。一方、胡蝶蘭は全てが実生では得られない大きさの野生栽培株です。今回持ち帰った株総数は520株となり、これから1週間は植え込み作業に追われます。本ページで入手株を順次紹介する予定です。 

Dendrobium sp (Sumatra)の植え替え

 4月から6月は植え替えの適期です。一方、7月から9月は気温が高く植え替えは基本的に行いません。一昨年入荷した下写真左のピンクの花が咲くSumatara島からのDen. spは昨年の東京ドームラン展からこれまでに相当数を販売しました。この種はほとんどが葉を落とした後に花をつけます。そのため開花後は株全体として2-3枚の葉を残すのみで、このまま枯れるのではないかと心配する程のわびしい姿になります。これはFormosaeやDolichocentrum節等にしばしば見られる様態です。

 こうした節の多くの種は通常、葉のほとんどない疑似バルブのみの状態から再び新芽を出して新しく成長し始めるのですが、往々にして新芽が現れることなく、そのまま枯れてしまうことがあります。入手してから1年間ほどの栽培環境、すなわち温度、湿度、植え込み材、鉢、かん水頻度などが適さなかったことが原因と思われます。このsp種について本サイトでは、最近ではほとんど行っていない素焼き鉢にミズゴケ100%の組み合わせで栽培し、2年が経過したため、今月植え替えを行いました。鉢から出し大部分のミズゴケを除いた状態が写真中央で、葉や多数の根の付いたそれぞれの株は全て新しく生まれ変わった疑似バルブです。2年で株全体が新しいバルブに入れ替わった訳です。

 新たに植え替えにあたって、最近は温室内が込み入って鉢を置くスペースに余裕がないこともあり、今回は木製バスケットにミズゴケでの寄せ植えです。22㎝角の大型のバスケットに、株サイズにも寄りますが、5株から8株程を植え込みます。デンドロビウムのこうしたバスケットへの寄せ植えは意外と成長が良く、これまで全く失敗が無いため、スペースの節約と相まって一石二鳥で、昨年頃から好んで行っています。大きなバスケットでの寄せ植えは株単体の鉢植えと異なり、多量のミズゴケをそれぞれの株が共有するため乾湿の変化が緩やかになり、また6面が外気に直接接するバスケットであることから、かん水でぐしょ濡れ状態は短時間で、適度に湿った状態が長く続くことによるランにとっては好ましい状態であることが成長の良い原因と思われます。Den. igneo-niveum, topporinum, lambii, piranhaなどはバスケット寄せ植えに変えてから新芽が良く発生し、順調な成長が見られます。

 一方、Formosae節は1年程は状態が良いものの2年目の冬を越した頃になると根がほとんど無くなり、その年の夏ごろには枯れ始めるか成長が止まり、栽培が難しいとの話をよく聞きます。例えばDen. tobaenseはそうした典型的な種です。Den. tobaenseについての主な原因は栽培温度(低-中温が必要)と冬季の過剰かん水と過剰乾燥に依るものと考えます。Den. cruentumがヘゴ板取り付けで旺盛な根張りと成長をしていることから、Den. tobaenseDen ayubiiを始め、Den. miyazakiなどについては、ミズゴケクリプトモス混合と素焼き鉢栽培だけでなく、中温環境でそれぞれ10株程をヘゴ板につけた栽培法で現在観察を続け、難しいと言われる種についてはより良い栽培法を探し出すべく色々と試しています。

 右写真は写真中央のDen. spを2つのバスケットに寄せ植えした写真です。本種は晩春と秋に花を付ける性格で、秋には数株で開花があることを期待しています。

Den. sp (Sumatra)

 ちなみに、こうした落葉するデンドロビウムを購入するには一つの課題があります。はたして落葉中の株を買うべきか買わざるべきかです。買っても良い条件は一つしかありません。落葉は株全体で見れば成長サイクルの一つの状態であって病気ではないものの、健全であれば必ずと言ってよいほど、そうした状態にあって小さな新芽が現れている筈です。もし葉がほとんどなく新芽も見られない場合は入手は避けるべきです。こうした場合、決定的な視覚的判断としては根を見ることです。生きた白く、また根冠が半透明の薄緑あるいは橙色をした根がほとんどなく、茶色くなった根が多いか、あるいは白いスポンジ質の皮層がスカスカで固くなく、筋のような中心柱が目立つ根であれば十中八九、再生に失敗します。それは成長サイクルの一つの状態にあるのではなく、不適切な栽培結果の落葉です。決して買ってはいけません。よって落葉が目立つ株を買うと決めたら新芽の有無を確認し、新芽があればそのままの購入で良いのですが、無ければポットから取り出してもらい根を確認することです。また重要なことは新芽はバルブ途中からの高芽ではなく根元からの新芽が絶対条件です。基本的に胡蝶蘭に見られるような高芽は増殖過程の健全な様態ですが、デンドロビウムの殆どの種では根が何らかのダメージ状態にあるか、根元が枯れ始める前兆です。この高芽を取って栽培することも一つの方法ですが、幼苗を入手したとの覚悟が必要です。

 根を見せることが出来ない販売者からは買わないことです。ネット購入の場合は根の写真を送ってもらうことが必要です。こうすれば順化に失敗することはほとんどなくなります。本サイトでは宅配便で発送する際、ヘゴ板や杉皮板に取り付けられた株を除き、ほとんどの株はミズゴケで根を巻いて半透明プラスチックポットに収めて発送します。これは根を確認してから出荷するためです。よって出荷での植え付けは仮植えであり、受け取られた後は栽培者の環境に合わせ、1か月以内を目途に素焼き鉢、プラスチックポットあるいはヘゴ板などに植え替えて頂くことになります。

Phalaenopsis speciosaの花色

 Phal. speciosaは白をベースに大きな赤い斑点が入るフォームから全体が朱色にもなる美しい胡蝶蘭原種です。問題はこの白と赤の割合が開花毎に不定で環境の何がその変化に影響を与えているのかは不明です。さらに赤の色合いも、鮮やかな赤から稀に紫色、さらには青味の強い赤色までのフォームがあり、こちらも開花毎に変化が見られます。

 上記の性格から、販売する上では最も厄介な種であり、購入希望者が本種の色やパターン等の特定のフォームを希望されても再現する保証が出来ません。ソリッドレッドフォーム(写真右)は前回、本ページで取り上げましたが、どうやら固定出来たようです。やがて紫色や青いPhal. speciosaも出現するかもしれません。下画像は現在(6月20日)開花中の3点のフォームの写真です。久々に青味の入った(写真中央)花が咲きました。やはりこの色合いは良く目立ちます。こうしたフォームの入手は浜松温室に来て頂く以外、入手はできません。固定しないフォームの違いにはマークを付けないのがポリシーであり、花が終わるとどの株がどの色であったかは分かりません。このため、上記リンク先の画像に見られる本種のそれぞれのフォームは、すでに一般種として1,500円で出荷されています。入手された方の株がどのような花フォームになるかはサプライズです。価格表にあるそれぞれの価格はフォームが固定されたものの価格であって、固定された保証がない限り、色違いがあっても本サイトでは一般種扱いです。

Phal. speciosa

Bulbophyllum kubahenseの花の香り

 Bulb. kubahenseの記事は多いのですが、花の香りについて取り上げたことはこれまで無かったように思います。すっかり記載を忘れていました。orchidspecies.comでは無臭となっていますが、10㎝程離れた位置からはハッキリとした、最も香るときは30㎝からも匂いが分かります。例えて言えば、料理のダシに使う鰹節の匂いです。英語ではdried bonito flakesとなります。と言っても、かつお節を知らない外国の人には実感がないかも知れません。
 バルボフィラムの花の匂いを語るとき、いつもドブ川の匂いとかトイレの匂いとかに例えられます。何も好き好んでそんな匂いを身に着けた訳でなく、ポリネーター(花粉を運んでくれる昆虫)を集めるために止む無くそうなったのだ、カトレアの匂いを好む南米の上品なポリネーターと違って、アジアのポリネーターはワイルドなのだと、バルボフィラムに替わって代弁したくなるほど、散々な言われようですが、その中でも本種は例外的に良い香りがします。はたして、かつお節に集まるポリネーターとは?

小さな不明種

 2ヶ月おきに海外に出かけランを入手し栽培していると、あれ!と思う花が咲くことがしばしばです。最近ではこうした株がかなり増え、同じロットの株とは識別できるようにマーキングはしているのですが、種名が分からないためラベルを付け販売する訳にも行かず置かれたままとなっています。本ページで前回はBulbophyllm spを取り上げましたが今回はデンドロビウムで、下がその写真です。左が花、右がその株となります。

 昨年10月にマレーシアでBulb. spとして入手したロットです。花は横幅で1㎝弱で、株も小さなランです。葉を見るとバルボフィラムではなくデンドロビウムのようですが、花のリップ形状を見るとバルボフィラムのようにも見えます。バルブは葉が肉厚でDen. lichenastrumに似ているものの花は明らかに異なります。Den. lichenastrumにはシノニムとしてBulb. lichenastrumがあるのでバルボフィラム属のspとされたのかも知れません。

 趣味家にとってはこうした何が現れるか分からないような不明種こそ、むしろ面白いのではと思いますが、spであってもどれとも似つかぬ株は販売する側からは困った問題です。国内で流通が少ないことがイコール希少種とは考えていない本サイトでは、1-2株だけ現れた不明種が自然界における生息数として希少なのかどうかが分かず、こうした株には価格がつけられません。希少種と分かれば実生化を計るのですが。最近はバルボフィラムに不明種が最も多く、次いでデンドロビウムとなっています。


6月開花予定のBulbophyllum kubahense

 Bulb. kubahenseの最も花芽発生の多い時期は6月のように思います。下写真は5株に発生したそれぞれの蕾を6月14日に同時撮影した写真です。すべて杉皮板取り付け株です。高温多湿が本種に適した栽培環境で、特に根は常に湿った状態が好ましい印象です。輝度はかなり低くても成長や花芽発生には影響がないようです。しかし新芽が良く現れ成長はしているのだが、なかなか花芽の発生がないという方は、若干輝度や、吊るしている場所を変えて刺激を与えるのも良いかも知れません。本サイトから入手された方は、半年ほどで杉皮板に巻き付けたアルミ線が切れ始めます。根が活着しておらず、ミズゴケが浮くようでしたらアルミ線、銅線あるいは黒糸などで縛り直す必要があります。


Phalaenopsis speciosa solid red

 4月マレーシアにて入手したPhal. speiciosa full colorが今月に入り4株程開花しました。全てfull colorすなわちsolid redタイプで、どうやら珍しく園主の言葉通りの株のようです。赤味に微かに黄味が混じっているような色合いですが、株が落ち着けば無くなると思われます。これで全ての株がSolid redの可能性が高く、Phal. speciosa f. imperatrixからの実生あるいはメリクロンか、ラインブリーディングによる改良か、いずれにしても固定したSolid redが入手できることは、これを作出したブリーダーの快挙と言えます。一方、Solid redは一株は持っていたいものの、美しさの点では赤と白のバイカラータイプがそのパターンによっては勝るように筆者は思いますがどうでしょう。下に今回のSolid redを示します。


Phalaenopsis gigantea f. alba

 Phal. gigantea f. albaを先月15日にフラスコから出してから凡そ1か月が経ちました。細菌やカビに被病する最も可能性の高い危険な時期が終わり、これからは如何に早く成長させるかが課題となります。下写真はフラスコ苗で、上段左は植え付け直後5月15日、右は6月12日の撮影です。左右同じ苗を撮影しました。現在の歩留まりは100%です。今回のPhal. giganteaの植え付けは110株となりました。下段は6月12日時点での画像で、左がPhal. lueddemanniana dark red、右がPhal. gigantea f. albaです。上段画像で右の画像は左の画像に比べて、中央横一列の苗で新芽が伸びていることが分かります。ポットサイズは直径7.5㎝で、葉が1㎝程伸長した株も見られます。今年の年末には左右の葉の端間は15㎝ほどになると思います。販売は20㎝-25㎝から始めますので来年の夏から秋を予定しています。Phal. lueddemannianaPhal. giganteaよりは成長が早いため、出荷も若干早くなると思います。


 Phal. giganteaPhal lueddemannianaそれぞれの親株の写真を下に示します。Phal. lueddemannianaの株は4年ほど前自家交配しそのSeedling株の開花を確認しており、親と同等かそれ以上のソリッドタイプであったため再度自家交配したものです。

Phal. gigantea f. alba

Phal. lueddemanniana solid red type 

Dendrobium calophyllum

 昨年6月、マレーシアのラン園にてマラッカ諸島から初めて入荷したとのDendrobium spatulata節spが6株あるということで、これをすべて入手し、その株については昨年の歳月記6月に紹介しました。紹介のなかで、その後の調べからこのspがDendrobium calophyllumであることが分かり、市場価格を調べるため、海外を含めfor Sale, priceあるいは価格等のキーワードでネット検索するも取引情報に関するサイトが全く見つからず、ほとんど取引のない種であることも分かりました。花が小さいとか、地味で特徴が無いのであればそれもあり得ることですが、本種が記載されたのは1870年、日本で言えば明治2年、鳥羽伏見の戦いの2年後であり、廃藩置県の1年前の、かなり昔から記録されており、また俗名Beautiful Leafed Dendrobium、美しい葉(緑色)のような花が咲くデンドロビウムと呼ばれ、spatulata節の中でも、株の背丈は1m以内で扱いやすい一方で、花サイズは大きく(6-7㎝スパン)、緑色のセパルペタルは際立っています。Spatulata節では1-2を競う目立った存在であるにも拘らず、なぜ市場に出回っていないのかが不思議です。

 一つ考えられるのはネット上での花の画像を見ると、その多くが(orchidspecies.comをはじめ)黄味のつよい黄緑色でやや色あせたような株が多く、本種が持つ本来の緑色を示す画像が余り見られないことと、セパルペタルがDen. capraのような短形状の画像が多いからではないかと考えます。インドネシアJavaからマラッカ諸島が分布域とのことで花の色や形状に地域差があるのかも知れません。現在浜松の温室で開花している画像を下に掲載しました。これはマラッカ諸島生息種です。花の寿命は1か月半、写真は全開して1週間後の開花状態です。入手から1年が経ちますが、その後マレーシアラン園で見かけることがないため、マラッカ諸島産は希少種で入手難であるからかも知れません。ネットでの画像と比較すると特に本サイトが所有する株は緑色が強い印象を受けます。すでに3株程を販売し残りが少ないことから、しばらく本種の販売をペンディングし、希少性の有無を調査することにしました。ちなみにネットから分かることはすでに本サイトから購入された方を除き国内ではつくば植物園にあるそうです。この植物園の花画像を見る限りセパルペタルが下写真と比べ短く、色も黄色っぽく感じます。生息地が異なる株なのかも知れません。


Den. calophyllum Section Spatulata

Phalaenopsis parishii

 これまでの本種の1株の輪花数としては最も多い20輪が同時開花しましたので写真を掲載します。葉は大きな葉が1枚のみですので一般的な株サイズの指標からは大株とは言えません。しかし長い根が多数15x7㎝のヘゴ板に活着したり、ぶら下っています。Parishianae、ApphyllaeおよびProboscidioides(Phal. lowii)節それぞれの半落葉種の株の大きさは、葉数ではなく根の数と長さで量るべきです。昼間25℃、夜間16℃の中温環境に他に3株置いています。これほど多輪花ではありませんが、10輪程の花を咲かせており、本種はこの環境が良いようです。同じ場所にPhal. lindeniiも栽培し、こちらの輝度はPhal. parishiiの明るさよりも若干低くしており、Phal. lindeniiにはこの方が良いようで大きな株(葉)になっています。Phal. lindeniiは花茎が出始めた状態で今月末から開花が始まると思います。いずれもこうした吊り下げタイプ種は根を乾燥させることは通年避けており、常に湿った状態を保持させています。


Phal. parishii

Bulbophyllum ankylochele

 4月にキャメロンハイランドにて入手したニューギニア標高1,700-2,300mに生息する本種が開花中です。ColdからCool系の高地種であり、平均最高温度が20℃を超える環境では栽培が困難となります。この平均最高温度とは、数時間であれば25℃程度でも問題はないが終日平均は20℃以下でなければならない、と言う意味です。一方、標高2,500m級のcold系では平均最高温度は15℃となり、一般のエアコンの冷房設定可能範囲の16℃を下回ることになりエアコン制御の限界を超えクーラーが必要となります。

 クーラーを使用していない本サイトでは晩春から秋の4-5か月間は15℃以下の環境を保つことは無理なので、16℃に設定しヘゴ板や杉皮板の吊り下げタイプを除き、鉢植えは素焼き鉢にミズゴケや山野草鉢にクリプトモスで植え付け通風を良くして夕方にかん水を行い、気化熱を利用して夜間は2-3度(山野草鉢は4-5℃)根周辺の温度を下げています。これで昼間は20℃、夜間の気温は16℃近くになります。鉢の中はその2-3度下と言ったところです。こうした手法であれば家庭用エアコンでも、サニーコートで周辺を囲めば4-6畳くらいの広さまでならば、4段ラック3個で500株程のクール系栽培環境を得ることが出来ます。しかし外からクーラーやワーディアンケースを眺めている内は普通の趣味家ですが、4畳もの謂わばクーラー室を造り、その中に身を入れて花を見ようとする段階ともなれば、周りから、いよいよ気が変になってきたと思われる覚悟が必要かも知れません。下写真は浜松温室にて開花を始めたBulb. ankylocheleで、写真左は12本の花茎があり、6月/1日撮影(左)と6日(右)です。

Bulb. ankylochele

 本種の販売は8月頃から始めますが、盛夏では直接温室にての引き取りが必要になるかも知れません。よって購入は晩秋からが良いと思われます。本種の過去の国内価格を調べると驚くほど高価で30,000円から格安と謳った12,000円がありました。国内の市場価格は現地価格の10-20倍と言ったところでしょうか。その日本市場を意識してのNT Orchidの今年の東京ドームラン展のプレオーダー価格は6,000円でした。

 本サイトではそうした市場には同調しておらず、東京ドームでは多くの若い趣味家がCool系に興味があるように見受けられたので、6バルブ程のBS株で3,500円としました。今年秋からは本格的にパプアニューギニアCool系を扱いますが、価格は本種と似たり寄ったりで2,500-3,500円を中心に予定しています。Cool系趣味家はご期待ください。

Bulbophyllum sp ?

 マレーシアにてNativeの方の庭の物干し竿にぶら下がっていたバルボフィラムらしき株を見つけ、これは何かと伺ったところ分からないとのことで、spとして入手しましたが、その株が開花しました。今のところ画像検索では似た種(Bulb. cornutum)はあるものの似て非なる状況です。

Bulb. sp Malaysia

Bulbophyllum sp (white) Sabah

 昨年12月と今年4月に入手したボルネオ島からのBulb. sp whiteが開花しました。下写真がそれらです。12月の歳月記ではBeccariana節やLeopardinae節にはネット画像では今のところ類似する花形状は見当たらないと記載しました。葉やリゾームからもLeopardinae節に属すると思われます。花サイズは中段右に示すように4㎝で、花茎には1-2個の蕾を付けた別株(写真下段)があり、一つの花茎に複数開花する可能性があります。リップ中央弁(上段写真の紫色の斑点のある舌のような部位)はBulb. lobbiiのように花を傾けると前後にシーソーのように動き、写真上段は上方から、中段は下方から撮影したものです。現在複数の株で花茎が同時発生していますが、栽培は2つの環境、中温と高温に置いており、この温度差では花茎発生に大きく影響しない様態が見られます。サプライヤーも園主も昨年12月の入荷では初めて扱う種と言っていました。新種とすると、花サイズが4㎝とそれなりの大きさで、リップに特徴があって比較的目立つ本種が今まで発見されていないのが不思議です。

Bulb. sp from Sabah

  現在は3,500円(3葉)とし、3葉以上は1葉当たり1000円をプラスで販売しています。

5月



Dendrobium cruentum

 本種はミャンマー、ベトナム、タイ標高1,000m以下に生息する高温系のデンドロビウムです。人気が高くその理由は花も美しいのですが、主にその希少性にあると思われます。デンドロビウムはCITESのAppendix IIが大半ですが、本種は生息国での絶滅の危険性が高く、例外的にAppendixIに属しています。よって現在は販売目的の野生株の輸出入は禁止されており、人工的に培養された株のみAppendexII相当として輸出国のCITES認可で輸入が可能です。

 本サイトでは3年間本種の自家交配を続けてきたものの、受粉はされるようで子房が膨らみ、さく果が形成されるのですが1か月ほどで黄変しこれまでタネを得ることが出来ませんでした。自家交配に対する不合和性があるのかと、植物ホルモン剤の使用も考えていたところです。しかし今回4月に自家交配し、およそ2ヶ月を経過しましたが下写真右に示すように順調にさく果が膨らんでおり、果たして胚のあるタネが採れるかどうかの段階にきました。交配から5ヶ月ほどで採り撒きとなります。

 本種は海外で実生化が進められており、こうした株が国内でも入手できますが、胡蝶蘭に見られるように海外生産品種は果たして純正種なのかどうか保証の限りではありません。とくに本種は異種間交配が盛んでマレーシアのPutrajaya花祭などでは、Den. cruentumとFormosae系他種とのハイブリッドや、Den. suzukiらしき形態を残す園芸品種が相当数出回っています。これらはほとんどがタイからの輸入だそうです。日本国内の一部のラン園でもDen. cruentumsuzukiの区別をしないままDen. cruentumとして販売しているようです。花サイズが大きくリップ中央弁の朱色が中央弁の多くを占める株はまず疑ったほうが良いとマレーシアラン園主のアドバイスです(Dendrobium cruentumsuzukiのそれぞれの画像比較はorchidspecies.comにて検索可能)。今回の自家交配による実生化が成功すれば、絶滅から救える可能性もあることを良しとするところです。

Den. cruentum

 ちなみに、Den. cruentumに対しサイズが大きくリップの赤味の多いDen. suzukiはベトナム固有種とされています。しかしorchidspecies.comの本名ページには”This orchid is most likely a hybrid as it has never been found in the wild, it was written up in a nursery”と記載されており訳すと、”この種は、これまで野生として(自然界において)発見されておらず、十中八九ハイブリッドと考えられ、一ラン園にて記載されたもの”、とあります。すなわちDen. suzukiは人工的に作り出された園芸品種で野生として実在しないと言っているのです。Den. suzuki名は世界的に著名な植物系統分類学者T. Yukawa博士によって2002年に記載されたもので、一体これはどういう意味なのかこの文章に驚いてしまいます。フィールド研究(生息地での野生株の採取)による分類結果であれば上記のorchidspecies.comの記載は誤りとなります。

 そこでベトナム在住の本サイトの会員に伺ったところ、会員の知る限り、Den. suzukiのベトナム生息株の流通はベトナム国内には無く、すなわちベトナムでの生息域は不明で、タイのラン園から入手できるとのこと。それではベトナム固有種をベトナムのサプライヤーはタイのラン園から購入していることになり、さらに、では本種はベトナムの固有種ではなく、タイにも生息しているのかと伺ったところ、タイに野生種として生息しているかどうかは分からない、とのことでした。こうなると原種としてのDen. suzukiの存在が怪しげです。しかしDen. suzukiは独自の形態を持って実在している以上、架空のランではありません。一つの推測としては、Den. cruentumがベトナムからタイに入り、そのなかに変種あるいは新種としての今日のDen. suzukiが偶然にも含まれており(その後ベトナムでは絶滅)、タイのラン園がこれを新種ではないかと分類(同定)を委託したなどが考えられます。ラン園が自ら作出したハイブリッドであれば詐称になってしまいます。ハイブリッドであるかどうかは自家交配をし、さて何が現れるかを調べるのも良いかも知れません。もし交配でタネが得られればですが。もし得られなければ異種間交配のF1の可能性が出てきます。美しい花であることから、すでに調査が行われ、どこかに詳細情報があるかも知れません。こうした一つの原種Den. cruentumから始まるミステリアスなストーリーも何処に真実があるのか原種マニアにとっては面白い話題かも知れません。

ランの名称 変種:var、品種(フォーム):f、園芸品種:セミコロンについて

 ランの名称は属名と(小)種名で表記されます。さらに同一種であって形態的に異なる種については変種、品種、園芸品種などで区別します。ここでは分類学者E.A. Chistenson氏の胡蝶蘭原種に見られる分類名称を参考に解説します。
  1. 変種:var
    その種に関し標準種とは形態的な違いがあり、固有の地域に分布する自然生息の個体群。すなわち人工的交配によって作り出された種ではなく自然に生息する中で地域差としての形態的な相違がある種にvarを用います。その形態は遺伝学的に実生に継承されるもの。
    例: Phalaenopsis equestris var. rosea (フィリピン北部ilocos地域に分布)
  2. 品種(フォーム):f
    自然生息種で標準種とは形態(主に花のフォーム)が区別できるもの。特定の地域に個体群として生息しているのではなく、標準種と同じ地域にも生息しているが固有の例えば色やパターンをもつ種。alba, flava, coeruleaなど。その形態は遺伝学的に実生に継承されるもの。
    例: Phalaenopsis violacea f. alba
    よってPhalaenopsis violacea var. albaは誤りとなります。
  3. 園芸品種:’’
    改良品種間や地域差種間の人工交配により作出した種。またその種のメリクロン。その形態が固定して実生に継承される保証がないもの。固有名は任意の名称が可能でセミコロンを付けます。異種間交配種ではそれぞれの元親の名称とその間にxをつけて表記します。園芸品種は学術的分類には含まれません。
    例: Phalaenopsis schilleriana fuji
  4. 亜種:subsp
    地域的に分布が異なる自然生息の個体群であって、標準種を決定(同定)づける主な部位となるリップ、カルスあるいはカラム形態に相違があるが、別種とするほどの差異はないものにsubspを付けます。
    例: Phalaenopsis amabilis subsp. moluccana (Sulawesi, Mokucca地域に分布。リップ中央弁形状に特徴)
  上記の説明で、変種varと品種fは、今日のDNA分析が主流になる前は、現在であれば品種となるalbaやaureaにも変種varが使用されており,一部が現在でも残っています。それが発見された時点では特定の地域であったためです。

 なぜ本ページでこのような解説を取り上げたかは、実生や園芸品種生産元での故意の詐称は論外ですが、その新しい園芸品種の作出元では、名称の規約を順守し交配種を変種varとしていないにもかかわらず、流通の販売過程で誰かが作為的にその形態が自然界において出現した新種のように見せかけるためvarを付け、一方、販売する側はこうした名称の意味や意義を理解することなく、作出系統を確認しないままvarを付けた種名で販売するケースが見受けられるためです。この結果としてその品種がvarとされていても、カタログ記載通りの形態が得られないことや、栽培者が自家交配して実生を得てもその形態が継承されないことが起こります。ではどれほどの園芸品種に現在varが付けられているかはネットサーフィンをし、ネット上のカタログを見れば十分に分かります。名称にvarが付いていたら、その名称は正しいのかを購入元に確認することです。例えば、現在の分類学上では、胡蝶蘭原種でvarが付く種は、標準種、変種、フォームを含めた200種程の内で10種程しかありません。しかしマーケットでは属名をPhalaenopsisとする種に、その数倍のvarが誤って付けられています。

 こうした現状を考えれば、趣味家が花の咲いていないvar品種を、高額で買う場合は、もし記載通りのフォームの花が咲かない株であることや、実生化を試みて自家交配したものの、元親とは異なるフォームが出現したと分かった時は、返金あるいは交換を行うよう販売店に確約させることが必要です。販売店もそれが自然界での変異種ではないと感じた特にタイや台湾からの入荷品の場合は、種名にvarが付いていても、そのままの名前では販売しないことです。varを外して何も付けないか、園芸品種として種名にセミコロンをつけた方が賢明です。

ニューギニアや南米高地のランの色について

 パフアニューギニアや南米高地のクール系デンドロビウムなどを見ていると低地生息のランに比べて花色がひときわ鮮やかです。同じ赤、青、黄あるいは橙色など、言葉で説明するのは難しいのですが、どのような成分がこのような色合いを造りだしているのか不思議です。高地系ランの趣味家の方からは、近年人工的に実生化した株の花色は野生株の持つ鮮明さを失ないつつあるそうです。

 温室で改めて気が付いたのですが、10m以上離れた位置から野生のDen. vexillariusをみると、その橙色が周りの環境の中で際立っており、試しに赤と青のPhal. violaceaや低地生息の開花中のデンドロビウムなど並べて置いたのですが、離れれば離れる程、高地系の花色がひときわ目立ちます。人目につくように進化したはずはないので、花粉媒介のポリネーター(昆虫など)にとっては人間が感じる以上に花色は鮮明に映っているのでしょう。特に高地低温環境では昆虫類も少ない中で、ポリネーターを呼び寄せるためには、進化の中で、現在あるそうした特性を持つものだけが生き残れたのだと思います。

 こうした観点から、例えばPhal. cornu-cerviの赤褐色花chattaladaeと呼ばれる改良品種はそれまでのPhal. cornu-cerviグループとはかなり異なる色であり、また多くが無臭とされるPhal. cornu-cerviに、ポリネーターだけにしか分からない匂いがあれば良いのでしょうが、ポリネーターが花形状と色を目印に飛来すると考えると、果たしてchattaladaeを自然界に放した場合、ごひいきとなるポリネーターに運良く出会えるのかと思ってしまいます。人の作った品種が自然界で生きられるかどうか、その株自身は生きながらえる生命力はあるにしても、子孫代々継承する力があるかどうかは専属あるいはごひいきポリネーターの有無が問われることになります。すなわち、人の手を借りなければ子孫を増やすことのできない種と、自然界の生物多様性の中で何千、何万年も生き抜いてきた種との違いを考えながら低温系ランの花を見ていると、一段と花色が美しく感じられます。なぜこの花はこの形と色でなければならなかったのかと。

 下写真は南米ベネズエラ、コロンビア、エクアドル生息のOrnithidium ruberrimum (Synonyms: Maxllaria ruberrima、MundifloraではOrnithidium aureum var. ruberrimumのラベル)で、coldから中温タイプとされます。この花も写真に見られるように葉の緑と花の橙色とのコントラストは際立っています。

Ornithidium ruberrimum

続き: Phalaenopsis violacea Indigo色について

 Indigoとは藍(色)と言う英語です。よってIndigo blueとは青空のような明るい青色ではなく、日本の藍染のような濃い青色を意味するものでPhal. violacea Indigo blueはセパル・ペタルがこの藍染の色合いとなります。一方、青色タイプにcoeruleaも用いられますが、こちらは青系と言う広い意味です。

 ネットでPhalaenopsis violacea Indigo blueを検索していたところ国内の販売サイトでPhal. violacea Indigo redとされる画像があり、若干色褪せてはいるものの、どう見てもこれはIndigo blueの印象ではと思いつつ、さらに品種の説明を読むと、”花全体が赤ピンクになるタイプ”となっており驚きました。と言うのも、胡蝶蘭で花が開花から枯れるまでの間に、藍色から赤ピンクへと2色の変化を見せる華麗な種があることはこれまで聞いたことがなく、さらにこの株がvar. Indigo redだそうで、種名に変種varを付けていることは人工改良種ではなく、その形態変異を持つ種は自然の中で地理的に分布が異なる個体群となります。であれば、どこかの国あるいは場所に自然生息しているか、していたもので、そうならば超希少種に違いなく、その価格10,000円という高額も当然と思いました。

 ちなみに、なぜIndigo red、直訳すると藍赤色が赤ピンクなのか、Indigo redとは本来どんな色なのかとネット検索したところ帽子やジーンズの商品にこのIndigo redとの名称が使用されており、それらは紺と赤のツートーンカラーでした。 すなわち藍赤色なる一つの色がある訳ではなく2色がそれぞれ組み合わされた商品でした。藍赤色なる色は無いのでしょうか。すると、上記のネットカタログでIndigo blueの花画像が表示されているものの、赤ピンクになると言うのであれば、この花は藍赤色でもツートンカラーでもなく、開花時点ではIndigo blueタイプであるが時間の経過とともに赤ピンクに変化するPhal. violaceaに違いないとの結論に至りました。ネットカタログで売り切れとなっていますので、購入された方はぜひネットにその世界初となるであろうの色変化の画像を公開して頂きたく思います。

 Phal. violaceaは他家交配や異種間交配が進み、推定不可能なほど多品種が市場に溢れています。海外ネットではIndigo redとされる画像がPenang Rubyのような画像であったり、Indigo blueとSumatra redとの交配株らしき、すなわちその実生はどのような色になるかは保証されないのではと考えられるものもあります。こうした改良や新品種は園芸産業や文化の習わしであるものの、品種名は、愛称であればアポストロフィ’ ’を付けてもらいたいところです。まして公的記載のない種にvarと付け販売すればそれは詐称ともなりかねません。本サイトでは12種類の野生変種あるいは野生に近い改良種をPhal. violaceaで公開しています。皮肉なことに浜松温室にて最近、実生株でPhal. violacea dark redから青味を含んだ濃赤色の花が咲き(下写真右)ました。このロットは今年の東京ドームラン展でIndigo blueと共に2,500円で販売したPhal. violacea redです。見れば見る程、これこそIndigo redに相応しいのではないかと。無論、時間の経過とともに藍色からこのような色に変化したのではなく、残念ながら開花当初と変わりません。またたとえそのような特性であっても改良種にvarを含む名前を付けることはしませんが。


Phal. violacea indigo blue

Phal. violacea wild

Phal. violacea dark red

 これは推測ですが、もしIndigo redが時間と共に色変わりしないのであれば、おそらくタイあたりで作られたIndigo blueとsumatra red系との交配実生に違いないと思います。この両株の名をとってIndigoとredを組み合わせたのだと。さらにどこかのサプライヤーあるいはディーラーが、それがあたかも自然界で発生した種に思わせて高額にするためvarを付けたのではないかと。そうでないことを望みはしますが。

(後記) タイにIndigo redの交配親が記載されたサイトがありました。それによると、"joy" x "crystella HCC/AOS x Navy Blue AM/AOS"とされています。"joy"が台湾、他はUSAでの交配種と思われ、Indigo redは系統的に7-8種の人工交雑種です。種名Indigo redを変種varだとすると自然生息域で発生した変種となり、何種類の交配種がある筈がなく、ましてvarは人工的に作られた種に付帯することはできません。なぜこの園芸品種に誰も疑問を呈することなく日本でvarを付けて販売されているのか理解できません。もし販売する側がvarの意味を理解しており、また交配種と分かって販売しているのだとすれば、それは原種趣味家に対しての詐称行為です。

Phalaenopsis violacea Indigo blueの青色濃度について

 Phal. violacea の改良種であるブルータイプは11年ほど前に、現在のIndigo blueを生み出したアメリカ南カルフォルニア ラン園OchidViewのKatherine Nortonさんから直接、EMSにて入手したのが最初です。当時の名称はGulfstream blueでした。Indigo blueはOOI LENG SUNのMichael Ooi氏からの株を元親に創りだされたようです。メールでKatherineさんが、世界の各国から注文が来るのだが、ロシア人のメールの英文はひどくて読むのが大変だが、あなたのは分かりやすいと褒められたことを覚えています。筆者の名前をネット検索したようで、私はコンピュータのことは全く分からないがと、ラン園を始める前にはボートなどスポーツ用品販売をご夫婦でされており、現在は引退したなどの話しをして頂き、なかなか気さくな方でした。また国外の遠方に胡蝶蘭を送る場合は、株を水に浸し根に水を十分含ませた後、葉や根表面の水分を自然乾燥させてから梱包するので元気な状態を保つことが出来るとも話されていました。確かに、多くの海外ラン園からEMS搬送等でランを入手していますが、Orchidviewを超える品質の株はこれまでありません。入手株から実生を得て、7年間ほど、この方への敬意を込めてNorton Blueとして”胡蝶蘭の原種”サイトの会員限定の分譲を行っていました。

 本サイトでは純正原種を主に扱っており、改良種はPhal. violaceaPhal. bellinaなどごく僅かです。ここ2年程、Phal. violacea Indigo blueはマレーシアから入手しています。本種にはある特徴が見受けられます。マレーシア園主の話では、30℃を超えるような高温下に置くと青の発色が良くないそうで、ローカルマーケット用の胡蝶蘭改良種栽培温室(25℃)に入れて栽培すると発色が良いと言うのです。確かに現地で温室の内と外の開花を見ると温室内の花の多くがより濃色であることに気付きます。こうした傾向は濃赤色のPhal. violaceaにも見られます。また株の状態によっても発色が変化し、現地での出荷処理を経て国内への持ち込みと植え付けを行い、1か月程の順化期間中での開花では色あせた青色が多く、1-2ヶ月経過し状態が良くなると本来の濃色となるようです。下写真左は4月初旬に入荷した月の開花で、右は1.5か月後の開花です。写真の株はそれぞれ違いますが同一ロット株です。こうした濃度の変化が一般的に観察されます。


植え付け間もない開花

植え付け1.5ヶ月後の開花

 国内市場では本種は5,000-10、000円程で販売されているようです。本サイトのIndigo blueは2,500円です。マレーシアでは1,000円程で入手できます。マレーシアでは野生栽培株の価格は種によって様々で、1,000円前後で入手できるものはありませんが、胡蝶蘭の改良種や実生(人工的に増殖した種)のBtoB卸値はBSであってもほとんどが1,000円程で、例外はPhal. micholitziiなどごく一部の種だけです。

20日現在、浜松温室で開花中の特徴のある花

 

Bulb. lobbii
7㎝長のDorsal sepalが直立。大型lobbii

Den. amboinenense
1日のみの花寿命。蕾も花の内なら5日程

Bulb. kubahense
24輪のSarawak産。輪花数は葉サイズに比例

Paph. supardii
入手して5年目の初開花

Den. aurantiflammeum
5月は本種の最花期?

Phal. parishii
1株に20輪程が開花(蕾を含む)


2つのSemi-albaフラスコ出し

 今月はPhal. giganteaに次いで、Phal. venosaPhal. javanicaのSemi-albaのフラスコ苗出しを行い、半透明プラスチックポットにへゴチップで植え付けを行いました。下写真の上段がPhal. venosaPhal. amboinensisの可能性もあり)、下段がPhal. javanicaのsemi-albaで、それぞれ左が親株、右はそのフラスコ出し植え付け直後の自家交配株です。これら実生の開花は2年後と思います。Phal. venosa semi-albaは2013年の入手で、野生株であったため9,000マレーシアリンギッド、凡そ27万円でした。このような高額であっても購入するのは実生化を目的とするためです。野生株からの実生化はほぼ100%成功します。しかし実生苗を得る方が早いか、親株がそれまでに枯れてしまう方が早いか、希少種や高額株は常にこうしたリスクとの戦いです。実生化に成功すれば親株の1/50 - 1/100の価格で販売ができることになります。

Phal. venosa semi-alba
Phal. javanica semi-alba

フラスコ培養

 フラスコ培養を始めて、かれこれ10年が経ちました。浜松に移動してからも僅かながら希少種の実生化を進めていましたが、希少株や変種株も多くなり、今年からは本格的にこれら株の実生化を、ビジネスの視点で始めて見ようと考えています。自分で交配し培養する訳ですから、ビジネス視点と言ってもそこは自分の思いがあり、交雑種ではなく原種としての純正を保つため野生栽培株の自家交配あるいはその同一ロット内での交配を基本に進める計画です。

 下写真は最近のフラスコ(実際の容器はカルチャーボトルですが以下フラスコと呼びます)苗で播種から4か月を経過した苗に1回目の移植をしたもので、今年末には2回目の移植を予定しています。左はDen. williamsianumで6フラスコ、右がPhal. violacea mentawai blueで4フラスコを育成中です。フラスコ苗は通常、最初に数千が発芽し、これをある段階で下写真のように1回目の移植を行います。この段階でフラスコ当たり500-1,000苗となります。次に2回目の移植では5mm程になった苗をフラスコ当たり25-40ほどに選別します。これまで趣味の範囲ではこの2回目で殆どを廃棄し、1フラスコ程度にしていましたが、今後は10-20フラスコとする予定です。それでも発芽からは僅か1%程度の苗を残すのみとなります。自然界では数万のタネから1-2株が次の世代を引き継ぐとされていますので0.01%以下の生存率になります。

 下写真でも、それぞれひとつのフラスコに1,000と500苗程であり、これらのほとんどをフラスコ出しまで育成し、販売株とすれば膨大な数ですが、それは非現実的でそれほどの設備や労働力がありません。今月はPhal. mariae f. flavaPha. equestris tri-colorなどの播種を行いました。


Den. williamsianum

Phal. volacea mentawai blue

フィリピンからのVanda helvola

 2年前、フィリピンにてVanda furvaVanda scandensを求めました。その折にVanda helvolaも打診した結果、おそらく本種であろうと次の訪問時に10株ほどが入手できました。それから2年経ち今月に入りやっと浜松温室にて花をつけました。本種はマレーシア、スマトラ、ボルネオ島、パプアニューギニアなどに広く分布しているとのことですが、フィリピンでは最近の発見で、フィリピン生息種であるとする情報はJ.Cootes氏のPhillipine Native Orchid Speciesの著書くらいです。また広い分布域とされながらも市場での流通情報が見当たらず、ネット画像検索でも本種と思われる画像は数点しかありません。orchidspecies.comの本種ページ内にあるAnother Flower ColorですらVanda merrilliiの画像となっています。

 リップ形状が特徴で今月浜松温室で開花している花形状はCootes氏著書にある画像と同じです。ネット上の画像と本種との花形状を比較するとフィリピン生息種は幾分異なるようで、これは地域差と思います。フィリピンではミンダナオ島Cotabatoに生息しています。入手した時、ラン園では初めての取扱いとのことで、その後の2年間は現地で見ていません。フィリピン生息株は国内で初めての入荷かも知れません。


Vanda helvola

Phalaenopsis gigantea v. albaのフラスコ出し

 自家交配、フラスコへの播種さらに2回の植え替えを経て今月、70株程のPhal. gigantea v. alba苗のフラスコ出しを行いました。フラスコと言っても三角フラスコではなく、ポリカーボネイト製のカルチャーボトルを使用した無菌培養です。まず全体培養数の1/3程の取り出しです。下写真左は取り出し後に殺菌をし、半透明プラスチックポットにヘゴチップで植え付けたものでポット径は7.5㎝です。右はこれら苗の親株です。

 これから2年ほどかけて左右の葉の端から端までのサイズが20㎝になるまで栽培し、そのサイズになってからの販売となります。開花までには4年が必要です。交配からフラスコ出しまで2年近く経っているため、交配から開花まで合わせて6年です。気の長い話ですが果たして歩留まり率がどの程度になるか、目標は70%です。


再びCoelogyne xyrekes

 春はCoel. xyrekesの開花期のようです。今回も前回より一回り大きな花が咲きました。 この株はマレーシア半島産です。問題はこれまでに知る、どのセロジネの花よりも大きいため、本種の一般サイズを知りたくネット検索しているのですが、どれもこれも花サイズ7.5㎝としか書かれていないことです。この7.5㎝とはどの部分を指しているのかが分かりません。通常、文献などではセパル、ペタルまたリップなどそれぞれの長さと幅が書かれているのですが、あるネットの中では花サイズ幅7.5㎝高さ5㎝と記載された表現しかなく、よく分かりません。このサイズは真正面から投影した画像を4角枠で囲み、その左右上下の幅、すなわち左右にほぼ水平に伸びたペタルのそれぞれの端間の距離と、ドーサルセパルのトップからラテラルセパルのボトムまでの距離を指しているのか、もしそうであればドーサルおよびラテラルセパルの開き具合で同じ花でも変化し寸法は曖昧です(注:本項末尾)。

 下写真の下段は前回同様にCoel. usitanaを右横に並べて撮影したものです。写真ではレンズで遠近の違いが大きさなサイズの違いとなりますので、敢えてCeol. xyrekesのペタルを見て頂くと分かるように、数ミリCoel. usitanaよりも後ろに並べています。手前にあって大きく映っているように見えますがそうではありません。実測では左右に伸びた細長いペタルの端間の距離は12.5㎝で、ドーサルセパルは6.5㎝の長さです。開花前のそれぞれの蕾を見ても、Coel. usitanaとの大きさの違いが分かります。


Coel. xyrekes
Coel. xyrekes(左) Coel. usitana(右)

 もしこのCoel. xyrekesのサイズが通常サイズよりもかなり大きいのであれば一つ疑問が湧いてきます。なぜこれまで数回の訪問で仕入れた20株ほどの本種の花はいつも特大なのかということです。仕入れ先は同じセレンバン郊外に先祖代々住んでいるという現地人(Nativeと呼ばれています)からです。この人は自宅から40分ほど山に入って取ってくるそうです。しかし、一般サイズであれば兎も角、その山には非常に大きなCoel. xyrekesばかりが自然に生息しているとは考えにくく、一方、自宅からわずか40分程行った所で集めてくるというのは、深いジャングルの中に踏み込んで高い木の上の本種を探し出し、さらにその木に登って採取してくるためには片道40分としても余りに短かすぎます。確かに午前中に要求すると午後にはラン園まで持って来るところを見ると、想像するに、山の一角に栽培している秘密の場所(盗難防止のため)があり、日ごろ集めたランをこの場所で栽培しているのではないかと思えてきました。栽培と言っても、同じマレーシアのKama Orchidのように自宅の裏山の木のあちこちに活着させて、あとは自然任せですが。この現地人は季節に応じて山で採れたドリアンなどの果実や花などを路肩で販売をしているそうです。そこで、40分で行けるのであれば、次回訪問する場合は、聞くところによるとこの現地の人たちは無類の酒好きだそうなので、成田でスコッチウイスキーでも買って持っていき、少し酔った頃を見計らって、日本からの訪問者であれば盗難の心配はないのでと、その場所に案内してもらうのも良いかと目論んでいるところです。

(注):会員の方から本種関連文献を知らせて頂きました。"Revision of Coelogyne Section Speciosae" B. Gravendeel, etal., BLUMEA44(1994) pp253-320。これによるとCeol. xyrekesのドーサルセパル4.3-5.5㎝、ラテラルセパル4.1-5.9㎝、ペタルは4.2-5.5㎝とされています。この最大数値よりも上写真は5mm-1㎝程大きいことになります。他に3株程5月現在開花していますが、いずれも文献の最大値当たりです。

Bulbophyllum claptonense f. flava

 ボルネオ島北東部の標高1,000m近くに生息するBulb. claptonenseは、Bulb. lobbiiと外見は変わらないほど似ています。しかしリップのカルス形状が異なることから別種とされています。今年の東京ドームラン展でNT Orchidはプレオーダー価格を4,000円としていました。世界のマーケットではバルブ数に依り3,000 - 4,000円の範囲のようです。一方近年、本種のflavaフォームが発見されました。かなりの希少種らしくこちらはNT Orchidでは2バルブで50,000円でした。バルボフィラムとしては最も高額な種の一つです。

 本サイトではこの新フォームを、1昨年のマレーシアPutrajaya花祭で、出店していた別ラン園から入手していました。今月に入りこの株が温室で開花しました。下写真がそれでリップが白と全体が黄色であるため、Bulb. dearei以上に黄色が艶やかで強い印象を受けます。購入した株は6バルブで、これらには病痕も全くない大きな葉が付いています。上記プレオーダー価格で換算すれば15万円となってしまいます。その1/10ほどもしない価格で入手したのですが、マーケットでこれほど高価であるのであればさらに2-3株買っておけば良かったと。さっそく購入した値段で販売可能な株がまだあるかどうか打診しました。また下写真の花で自家交配をさっそく行いました。

Bulb. claptonense f. flava

フラスコ出し

 トップページメニューの「順化とフラスコ苗の植え付け」のページにフラスコ苗の植え付けについての説明を、編集途中ですが、加えました。

Dendrobium Spatulata節最花期

 5月はデンドロビウムSpatulata節の最花期となります。下写真は5月8日現在、浜松温室にて開花中のSpatulataです。全てほぼ同時刻(9:30-10:00)の撮影です。Den. williamsianumは周年開花していますが、今週は蕾株しか見当たりませんでした。これらSpatulataは現在、すべてプラスチックスリット深鉢に100%クリプトモス植えです。


Den. busuangense (Philippines)

Den. sylvanum (Papua New Guinea)

Den. calophyllum (Maluku諸島)

Den. mussauense (New Guinea)

Den. taurinum (Philippines)

Den. cochliodes green (Papua New Guinea)

Den. lineale blue (New Guinea)

Den. lineale dark blue (New Guinea)

Den. strepsiceros alba form(New Guinea)

Den. tangerinum (New Guinea)

Den. racieanum (New Guinea)

Den. leporinum (Moluccas)

Den. wulaiense (New Guinea)

Den. archipelagense (Bismark Archipelago)

Den. hamiferum (New Guinea)

Den. williamsianum (New Guinea)

Den. lasianthera (New Guinea)

Den. laxiflorum (Moluccas)

Den. sylanum flaver (Papua New Guinea)

Phalaenopsis lowiiの新芽

 本種をはじめPhal. parishii、Phal. lobbii、Phal. gibbossa、Phal. minusなどインド北部からタイ、ミャンマー、ベトナムなどの亜熱帯季節林に生息する種は冬季15℃以下になると落葉する種です。しかし温室栽培で他の高温系ランと共に栽培している場合は、冬季であってもこのような温度設定ができないため高温状態のままになります。そうすると殆どの株は落葉しないで葉を残します。こうした種を半落葉種と呼んでいます。落葉しないで葉を残したまま年を超えた場合、その年は花を咲かしてくれるのかどうかですが、Phal. lowiiやparishianae節の上記のそれぞれは落葉の有無に関わらず花を咲かせます。

 一方、同じ落葉種であるaphyllae節のPhal. wilsonii、braceana、honghnensisなどは落葉したかしないかで開花は、これまでの10年以上の栽培経験からは、前記種とは異なるようで、落葉しないで年を越した場合の花茎の発生は弱く、多くが開花しないままです。といっても株が枯れることはありませんが。こうした性格からaphyllae節のそれぞれの株は夜間10℃ほどの気温に2-3ヶ月程置き落葉させないと、次の年に多くの花を咲かすことは難しくなります。

 下写真はPhal. lowiiで12月から4月初旬まで葉を落としていましたが、左2株が新しい芽を出し始めたところです。右は落葉中ですが根元に小さな新芽が覗き始めました。葉が全くない状態で、白い根だけであっても根が固く、水を撒くと緑色になる限り根は死んではいませんので、全て落葉した株を見て枯れてしまったと勘違いしないように。

 販売する立場からは、落葉を始める11月から4月頃までは葉数が1 - 2枚あるいは全く無い状態の株が多いため印象が悪く、一方、買う側としては弱って落葉しているのか、性質で落葉しているのかの見極めが難しいようで、この時期は非常に売りにくい種です。実際は落葉中の株がもっとも根の状態もよく観察でき、買うにはベストタイミングです。特にaphyllae節は、葉が多くてもそれらの葉がその年に一旦落葉した後でなければ花を見ることはできません。葉は開花が終わってから本格的に発生します。つまり2枚以上の葉の付いた株を買われる殆どの方は、花の終わった株を買っている訳です。むしろ葉の無い株の方が開花が早く見られることになります。不安であれば根に霧を吹いてもらい、平たく幅広で緑色の根が多い丈夫な株を選ぶことが、落葉(冬)期のこの属のプロフェッショナルな買い方です。

 下写真は木片に取り付けられたPhal. lowiiで、入荷時はミズゴケは全くなく根が木片に縛られただけの状態でした。国内持ち込み後に根の半分をミズゴケで覆ったものです。根の全てを覆うことは葉の無い期間の光合成ができなくなり好ましくないとされます。かと言ってミズゴケ無しで木片に根全体を置いただけでは水分不足となり、この2つの問題に対処したものです。


Phal. lowiiの初葉

Dendrobium sp

 フィリピンより1昨年入荷した30株ほどのDen. valmayoraeの中から1株、名前不詳の花が咲きました。この株は疑似バルブ(茎)からFormosae節であることが分かり、何となく花の大きさがほぼ同じで全体として、リップの黄色が薄いDen. hallieriのようですがリップ形状が異なり、一方、Den. singkawangenseともspur形状が異なり、該当する種が今のところ見つかりません。Den. valmayoraeはフィリピンミンダナオ島北部の固有種であることから、ボルネオ島の前記それぞれの種が混じるとは考えにくく、では何か調べているところです。


Phalaenopsis maculata f. flava

 1昨年、Sulawesi島でPhal. maculata f. flavaのコロニーが見つかり、その株が入荷したとのことで10株ほどマレーシアで購入しました。しかし咲いて見ればほとんどの株(よっておそらく全て)が白あるいはクリーム色のセパル・ペタルに赤い斑点のある一般フォームでした。一般フォームであっても現在Phal. maculataの野生株は希少種であることもあり、園主は嘘をついたつもりはないと思われたため、いつものことで報告だけは出しておきました。それから1年経った昨年、またPhal. maculata f. flavaが、今度こそ本物を入手したのでどうかと聞かれ、前回のことがあるので興味が無いと伝えました。そうすると、園主はもし一般フォームであったなら全額返済すると言い、実際ラン園の作業者が花を見ているとのことでした。間違っていたら補償すると本人が公言するのは極めて珍しいことから、それではと5株持ち帰りました。

 Phal. maculataのflavaフォームは現在、実生がヨーロッパ市場に出ているそうで、それでも日本円で5,000円以上となっているようです。入手した株は根や葉の様態から判断すると野生株で、数千あるいは数万株の中に1つ出現するかどうかの変種が同時に10-20株得られる筈がないとの思いが先行し、また一般種であろうと思いつつ栽培をしていました。先月末になり蕾が大きくなり透けた色を見て、はてと思っていましたが、今月に入り開花しました。今度は間違いなくflavaタイプでした。この花が下写真の右となります。Phal. maculataPhal. lueddemannianaのように高芽が出やすく、Clusterをつくる性質があるため、今回の株が果たしてコロニーで複数個見つかった株なのか、親株を3-4年栽培しての増殖株なのかは分かりません。


Phal. maculata 一般フォーム

Phal. maculata f. flava

 これまでラン園主がspとか変種であるとする株あるいはフォームがその通りである確率は50%もありません。言い換えれば園主は、大半は花を実際見ないで仕入れており、サプライヤーの言葉を疑心暗鬼ながらもそのままこちら側に伝えているに過ぎません。そう考えると何もかも分かっている筈のサプライヤーが最も腹黒いと言わざるを得ません。特に、たまたま発見した一つだけの変わったフォームを写真に撮り、すべて他の株も同じフォームであるかのような写真付きspあるいは新フォームとする売り込みは手に負えません。1度あることは2度あるとのことで、1度詐欺まがいの誤りがあれば、そのサプライヤーからの仕入れを全て止めるのは簡単ですが、それでは3に1つの本物は逃すことになります。ここが難問で、その本物の1つのために2つは騙されても致し方ないと覚悟するかどうかが此の手の取引の課題です。しかし以前述べたパフアニューギニア・ランのインドネシアCan-Canブローカーには堪忍袋の緒が切れ、現在は絶交中です。

杉皮板

 本サイトではヘゴ板の代用品として天然杉皮板を下垂タイプのほとんどのランの取り付け支持材として利用しています。最近は杉皮板の入手先や特徴等について質問をよく受けるため参考にと解説致します。ランの取り付け材としての必要条件は以下となります。
  1. 保水性
  2. 耐用年数と取り付け材としての強度
  3. pH(中性から弱酸性)
  4. 過度なタンニン等の抽出物がないこと
  5. コスト
  6. 植え替えが簡単なこと
  7. 重量
 現在本サイトで使用している杉皮板は下記のWebサイトで購入しています。
 http://www.garden-assist.com/takegaki1/1403501.html
 上記サイトのカタログには幅は30㎝と一定で、長さが60㎝、90㎝および1.8mの商品があり、通常は60㎝を利用しています。リゾームの長い品種(Bulb. kubahensebinnendijkiiなど)には90㎝を、またClusterタイプの大株には1.8mサイズを任意の長さに切断して利用することがあります。

コスト:
 コストは20㎝x30㎝角のヘゴ板の単価が1,700円である一方、杉皮板は前記60㎝x30㎝サイズ18枚入りが4,500円です。よって杉皮板は1枚当たり250円となります。さらにヘゴ板の20㎝x30㎝同一サイズで換算比較すると、杉皮板60㎝x30㎝1枚から3枚取れますから約84円となります。すなわちヘゴ板1,700円が杉皮板では84円となります。この杉皮板の低コストは数百株を栽培する場合最も決定的な条件となります。一方、問題点は販売単位が18枚のため20㎝x30㎝サイズ相当で54枚となり、それほど栽培株が無い場合は過剰な枚数となります。実際バルボフィラムなどでは取り付け材として多くはこの半分のサイズで良いため、100枚以上あっても困ることになります。分割売りは聞いたことがなく、 同じ趣味家同志で分けるほかありません。

耐用年数/保水力:
 もともと杉皮板は、和風の垣根や庭門に使用するもので耐用年数は4-5年あります。このためランの植え替えサイクルを3年程と考えれば十分と言えます。一方、保水力は杉皮板の断面を見ると分かりますが繊維状の層になっていることと、カンナのかかった滑らかな板と異なり、表皮は薄皮が重り合って、この隙間に浸み込んだ水が保水力として働きます。しかしヘゴファイバーが絡んだ1㎝程の厚みのあるヘゴ板に比べると保水力は圧倒的にヘゴ板が優れています。一方、1年ほど前に、高品質とのことで、やや高価な国産の杉皮板をネットで注文したことがあります。日本の技術が進んでいるのか、上記サイトの中国産に比べて、杉皮が薄く、板状と言うよりは厚紙状で、取り付け材として国産品は利用できませんでした。品質としての表皮の色合いや粗さは同じ天然材である限りランの支持材としての効果の違いはありません。

抽出物の影響:
 杉には樹木抽出成分として樹脂や害虫忌避成分があるとされます。これら成分がどのようにランに作用するかは分かりませんが、ラン栽培では植え込み材として広くクリプトモスが利用されており、本サイトの10年程の栽培経験からもクリプトモスがバフィオペディラム、胡蝶蘭、デンドロビウム、バルボフィラム、Vanda等のランの生育を阻害した症状は観察されておらず、こうした杉固有の抽出成分が株の成長に何らかの悪影響を与え問題となった経験はありません。

取り付け方法:
  通常、株を板状支持材に取り付ける際、板に根を直接接触させて置き、その上をミズゴケで覆ってビニタイ等で固定します。根を支持材に早く活着させるためです。ヘゴ板程の保水性が得られない欠点を、ある程度補う方法として、本サイトではまず板にミズゴケを敷き、その上に根を乗せてからやや厚くミズゴケで覆って固定します。株を固定するにはビニタイ等でぐるぐる巻きにするのですが、ビニタイとミズゴケは色が馴染まず美観を損なうため、本サイトではこげ茶のアルミ線をホームセンターで買っています。海外の趣味家が木片に株を取り付ける場合、よく黒糸が使われています。アルミ線は1mmあるいは1.5mm径を使用します。このサイズであればミズゴケの中に埋もれる部分が多くなり線は目立たなくなります。1mm径の場合、半年から1年で曲がった部分が錆びて切れ始めます。果たして根の活着が早いか、錆びてワイヤーが切れるのが早いかですが、活着が遅れ、株がミズゴケごと落ちそうになれば、新しいアルミ線で縛り直します。1.5mm径であれば3-4年は持ちます。銅線ならば1mmでも長く持つのではないかと思います。

植え替え:
 杉皮板利用のコスト以外の大きな利点は植え替えが容易であることです。ヘゴ板に付けた株の植え替えでは、かなり多くのヘゴファイバーに潜り込んだ根を切らなくては剥がれません。これはコルクも同様です。このため根は大きく傷つき、植え替え年はしばしば作落ちが生じます。一方、杉皮板は、まず株の真下にドライバー等を入れ真上に浮かすように持ち上げながら引き剥がします。そうとすると根は表皮の間に潜り込んでいるだけのため、ほとんど切れることなく、根と共に杉表皮が薄く剥がれ、長い根であっても捲れるようにして驚くほど容易に支持木から株を離すことが出来ます。他の利点はヘゴ板に比べて軽いことです。栽培者にとっては株の付いたヘゴ板の重みを問題にすることは無いと思いますが、梱包し出荷する側からは積み重ねての梱包に制約がでます。新芽や花付の株が多く含まれる場合この重さは危険で、密度の高い梱包は非常に難しくなります。

支持材と保水力強化:
 杉皮板の他の問題は乾湿で板が反ることです。これを少なくするのは裏面を重ね合わせたた2枚重ねとすることです。互いに反る方向が逆であれば相反して反りが少なくなります。2枚重ねであってもコストはヘゴ板の1/10程度です。また注意しなければならないことは、乾燥気味な温室での杉皮板の利用は一層乾燥が進むため適しません。夜間湿度が十分とれる温室に適した素材となります。このため本サイトから杉皮板で株を購入された方の環境が乾燥気味である場合は、適当な時期を見計らって、より保水力のあるヘゴ板等に植え替えることを勧めます。敢えて杉皮板を使用する場合はミズゴケを足して厚みを増し、アルミ線、銅線あるいは糸等でぐるぐる巻きにしたた取り付けが有効です。

 まもなく30㎝葉長クラスのPhal. giganteaの植え替えが本サイトでは始まりますが、新しい植え替えは全て20㎝x60㎝サイズの杉皮板に代え、ミズゴケで板全体を覆う方法を予定しています。


パプアニューギニア高地タイプの栽培

 先月初旬、マレーシアにてパプアニューギニア高地生息種、Den. vexillarius v. albivirideなどのデンドロビウムやバルボフィラムBulb. dischorenseを入手しました。これらは現地にて昼夜25℃一定の温室で3ヶ月近く置かれていたこともあり、デンドロビウムはせいぜい一葉と落葉したバルブが3-4本、またバルボフィラムは1葉もないバルブのみの株が殆どでした。一方、キャメロンハイランドでは高地種に適した環境であることから1年以上の現地栽培で葉もしっかり付いた株を少数多品種であるものの入手ができました。持ち帰ったこれら株は、木片やヘゴ板などの支持木で縦長に成長しポット植が出来ない形状の株を除いて、いずれも昨年8月の入荷株と同様にミズゴケと素焼き鉢の植え付けとしました。

 こうしたクールからコールドタイプの高地生息種は、浜松では15m x 5.5mの温室の内部を一部(5m x 5.5m相当)サニーコートで間仕切り、この空間に20畳対応の2台のエアコンを設けて栽培をしています。昼間は20℃、夜は16℃以下となっています。このためこの部屋で作業していると夕方には16℃前後となり油断すると風邪をひいてしまいます。しかし7月に向かって、外気温の上昇と太陽光が強くなれば、70%寒冷紗下であってもエアコンの能力からは昼間の最高温度が25℃を超える可能性があります。このため温室屋根外側半分をさらに50%寒冷紗で覆う工事を5月中に行う予定です。輝度の低下分はLEDライトで補てんすることになります。

 これまでの観察で、高地生息のバルボフィラムやデンドロビウムは大半が小型株であり、これらは植え付け後まもなくして葉がポロポロと落葉する傾向が見られます。出荷のために、それまでの支持木あるいは植え込み材からの取り外しによって根が傷ついたり、一時的であれ搬送や栽培環境が変わったためと考えられます。低地高温系の大型のバルボフィラムでも同じように根の状態によっては移植後に殆どの葉が落葉することがありますが、バルブから新たな新芽が現れるのは多くは1か月以上経過してからです。一方、PNG高山系は、これまでの経験からは、落葉と新芽の発生はほぼ同時あるいは、落葉しバルブだけとなれば1週間もしないうちに新芽が現れてきます。全てが落葉しても1-2週間で新芽が現れなければ、やがてその株の多くは再生困難です。下写真は今回入荷した幾つかの株の新芽を5月2日に撮影したものです。入荷植え付けから3週間経過したところです。移植後から最初に発生するこれら新芽を如何に枯れさせないようにするかで、高山種栽培の成否が決まります。6 - 7月には再びマレーシアを訪問し、数百株の高地系ランを入手し、こうした環境で引き続き栽培する予定です。


Den. violaceum

Den. vexillarius v. albiviride

Bulb. sp

Bulb. dischorense #1

Bulb. dischorense #2

Bulb. dischorense #3

4月



Phalaenopsis celebensis野生株

 2年前の入荷株がほぼ完売状態になり、昨年から求めていたスラエシ島生息の本種がようやく25株ほど入荷しました。本種の野生栽培株の入手はPhal. cochlearisほどではないものの極めて困難です。こちらもPhal. violaceaPhal. fuscataなどと同じように実生と比較すると野生株は数倍の花数を付けます。一度これらの開花を目にすると実生がこじんまりと見えてしまいます。今回の株は前記したPhal. violaceaと同じく、これまでに見たことがないほど葉が大きく、長い株で38㎝程あります。実生では得られない大きさです。

 しかし支持木からの取り外し、搬送、マレーシアラン園に入荷するまでの2週間程のベアールート状態、さらにラン園ではミズゴケを軽く巻いて吊り下げた程度で、健全な根はほとんどありません。葉はクルクルと巻くことが出来るほど張りがありません。もちろん健全な葉にそのようなことをすればぺキぺキと折れてしまいます。いつものように、順化栽培が必須の種の一つです。下写真はこれらPhal. celebensisでこれから2ヶ月間程の順化栽培が始まった状態です。こうした順化処理をしてでも野生栽培株を入手したい理由の一つは、花付の多さが圧倒的であること、他はほとんど実生を生産しているタイや台湾産は交雑種の可能性が高く、これらの国からの胡蝶蘭原種実生株は原種としての信用が良かれ悪しかれできない状態にあるためです。

Phal. celebensis

 下写真は2年前に会員から送って頂いた野生栽培株の開花写真です。左がPhal. violacea wild sumatraで右がPhal. fuscata wildです。このPhal. fuscataは2014年3月のアーカイブで紹介したラン園の、猿も飛び交うジャングルのような庭の木についていた株を剥がしたものです。いずれもかなり大きなサイズです。自然界ではこのような多輪花で開花していると思います。


Bulbophyllum lemniscatoides

 現在開花中の変わった形状のバルボフィラムです。本種はボルネオ島、Java、スマトラ島、ミャンマー、ラオスと広域に生息しています。下写真はフィリピンネグロス島産です。昨年のJGP2015で販売したシナモンの匂いのするBulb. spを昨年8月にBulb. tripudians名で入荷した中に1株のみ混じっていました。バルブの形状が似ているため間違ったと思われますが、Bulb. spはバルブが5-6角形にやや角ばっているのに対して本種は丸いことが特徴です。他は冬季になると全ての葉が落葉する点では同じです。1890年に記録された古い種ですが、フィリピンに本種の生息が記録されたのは最近で2011年だそうです。


4月のBulbophyllum kubahense

 Bulb. kubahenseは新芽は次々と出て元気なのだが、なかなか花をつけてくれないという声を聴きます。これから初夏に向かって開花期です。花茎は多くがトップから2番目のバルブに発生します。現在浜松の温室では開花中と花芽伸長中の3株が見られます。下3枚の写真はいずれも4月24日の撮影です。これで開花は3月に1株、4月で2株、5月は2株以上となりそうです。本種は人気が高く、購入者がコンスタントにいるため、今回のマレーシア訪問で、葉の大きな株を選びSarawak産を20株(1株3葉換算)ほど持ち帰りました。現地では本種の価格は相変わらず葉当たりで、若干安くなりつつあるもののバルボフィラムとしては未だ高価です。


New GuineaからのDen. vexillarius-likeな種

 今回マレーシアでNew Guineaからのデンドロとしてピンクと白色のDen. vexillariusと園主が言う下写真の2種を得ました。New GuineaのDen. vexillarius野生栽培株であれば個数を問わないので入荷するようにと依頼していたもののうちです。ピンク(左写真)を20株、白(右写真)を50株、さらに搬送で混ぜ合わさってしまい、これらのいずれかが分からなくなってしまった株を25株程入手しました。この花のセパル・ペタルの先端が細く伸びた形状からは、左右はいずれもDen. violaceumのようです。しかしDen. violaceumに右のDen. vexillarius v. albivirideのような薄い緑色がかかった白いセパル・ペタルの変種がネット情報からは見当たりません。であればこれは新種のDen. violaceum v. albivirdeかとなるものの、それほど簡単に新種が存在する筈もなく、左はDen. violaceum、右はDen. vexillarius v. albivirideと取り敢えずタグをつける予定です。葉形状でも種の同定に有効なのですが、今回の株は暑いマレーシアの温室(昼夜25℃一定)に2ヶ月間置かれたせいで、ほとんどの葉が落ち、細く長い新芽しか残っておらず、現状では葉からは判断できません。新しい葉が生え、それなりの株になるには、昨年8月のNew Guineaからのラン栽培実績から4-5か月はかかると思われます。株のサイズによって現行の赤いDen. vexillariusは野生栽培株であっても2,500円からですが、v. albivirideは500円アップと言ったところを予定しています。クールタイプの栽培は若い趣味家が多いようで何としても高額になるのは抑えたいところです。


Den. violaceum

Den. vexillarius v. albiviride ?

Leptotes sp ?

 昨年のJGP2015で南米アルゼンチンから引き取ったLeptotes unicolorbicolorが現在浜松の温室にて開花しています。このランは亜熱帯雨林帯気候に生息している高温タイプで葉が10 - 15㎝程の細長い棒状であることが特徴です。今回Leptotes bicolorのラベルの中からunicolorともbicolorとも異なるフォームの花が咲いたので紹介します。下写真は左がLeptotes unicolor、中央がbicolorで、右がそのいずれでもないspです。南米のランについては勉強中で、この種の名前が今のところ分かりません。野生種は時として変わったフォームが出現するのが楽しみです。


Leptotes unicolor

Leptotes bicolor
Leptotes sp

sp名の問題点

 海外からのランの購入ではDendrobium spとかBulbophyllum spなど属によっては種名が不明の株が多くあります。CITESや植物検疫でもsp名を受け入れるようで、ただし同一属の中でsp1、sp2と複数はできず書類上では、属当たり1つのみとなります。それならば葉や茎の異なる株であっても属が同じならば全部spとして一纏めで持ち帰っていいのかとなりますが、それは持ち帰る人の考え次第です。spとはspeciesの略で、種(原種)を意味します。よってDen. spとはデンドロビウム属の種ということになり、単にデンドロビウムの原種であるとのことで、何か特別な意味がある訳ではありません。筆者などはspといった表現を最初見たとき、珍しい不明種を指してspecialの略と思っていました。sspもありますがこちらはsubspecies、亜種と言う意味でspecial speciesではありませんので、これは超希少種に違いないと間違って買わないように。

 市場性の少ない珍しいものを得ようとすればするほど、現地ではspとする言葉が頻繁に出てきます。spはサプライヤーがまだ花を見たことがない、あるいは花は見ているのだが種名が分からない場合となります。こうした株を入手する際、産地は分かるのですが生息域の標高までの情報がほとんどありません。そのため国内に持ち帰り、植え付けを行い順化作業に入るのですが、果たしてsp株の栽培適温が、低温、中温、高温のどれかが分かりません。これが問題で、標高の高い生息種を高温に置くと、やがて葉は黄変して、1か月もすると落葉するものが現れたり、細菌性病気で見られる水浸状の、あるいは斑点病のような症状がしばしば現れます。一方、高温系のランを低温に置いた場合、前記したような症状が現れることは無いのですが、新芽や新根がなかなか現れません。たまたま標高が凡そ分かっていても標高が無条件に低、中、高温に分れるかと言えばそれも様々です。つまり熱帯雨林や亜熱帯などそれぞれの国や地域の気候によって標高にも温度差があるためです。

 こうした背景から経験により、株それぞれの葉、茎さらに根の全体形状を見ながら、低温から高温までの適応温度を推測して、温室のそれぞれの場所に配置するのですが、毎回の入荷で1-2種に誤りが生じます。こうした場合、毎日観察し、元気がないと感じたならば直ちに場所を変えます。最も多いのが低・中温系の種を高温に置くことです。これは温室の大半が高温タイプに適した作りであり、スペースが何倍も低温エリアよりもあるから不明な場合は高温室に置いてしまうからです。最近では南米のランを相当数、東京ドームラン展で入手したのですが、業者の発行する価格リストやorchidspecies.comに書かれた栽培適応温度に則って配置しても、しばしばその情報に誤りが見られ、ここ2ヶ月の間にあちこちに移動しました。名前が分かっていてもです。

 趣味家がspを入手する場合は、以上のような実状から、順化前の株は買わないことです。とは言っても買わなければ、それでも良いと言う趣味家に先を越され売れてしまうという心配があるのも実状です。こうしたことから本サイトでは、特にspについては温室を訪問し購入を希望する方には順化完了前には持ち帰らないこと、その代わり取り置き予約でラベルを入れてもらい順化完了後に持ち帰って頂くか、発送する方法を続けています。こうした状況で観察していると、ラベルを付けた2割程度の株は順化中に葉が数枚落ち、ラベルを別の株に入れ替えざるを得ないことが起こっています。

 sp種には以上のような問題があり、趣味家がspを購入する場合は、必ず順化前か後かを確認することが必要で、これを怠れば購入した半分は失う覚悟が必要です。

マレーシア滞在記その2

 昨年12月マレーシアで購入した一部のバルボフィラムが1か月を経過した頃から葉が擦れたような様態で黄変し始め、落葉する現象がでました。その症状が現れたグループをよく調べたところ、いずれも野生栽培株で特に葉が汚れていた株であることが分かりました。毎回現地での梱包作業には必ず立ち合い、フィリピンでもマレーシアでもラン園の作業員と一緒に作業し、それぞれの株の品名と個数をチェックしています。これは成田税関での立ち合いで、すべてのランについて説明ができ、また問題がないようにするためです。振り返ってこれら症状がでた株は、葉を洗浄してから梱包するのですが、その洗浄に作業員たちは濡れた布を用い、同じバケツの水で洗ってはよごれを擦り取っていました。この作業が目に見えない傷を葉に付け、病気を感染させた可能性が高いと判断しました。

 7-8年前、会津の温室で葉についた緑色のコケを取るため、台所のスポンジを使用し、それらの株の葉のほとんどをダメにした経験があり、これも葉に無数の傷が付き、その傷からカビや細菌が感染したようです。その後こうした洗浄には気を遣うようになりました。現在は洗浄にはメラミンフォームスポンジで汚れを取り除いています。メラミンフォームでは分かりにくいですが、ホームセンターで販売している、水だけで汚れが落ちる「激落ちくん」です。軽く拭くだけでよく、3年間程使用して問題が出たことはこれまでありません。当初はそれでも心配で、スポンジを細かく切りバケツにバリダシンを入れ、これを株毎に交換しながら洗浄していましたが、その必要はなく、今ではスポンジについた汚れはシャワーで流す程度です。

 こうした理由から、今回の訪問では日本から「激落ちくん」をもっていき、汚れ落としにはこれを使用する様に、またスポンジの洗浄はバケツではなくシャワーを使うようにも指示しました。このスポンジはかさばるので大変であるもののこれからは毎回、激落ちくんを紙袋に入れてマレーシア行きです。

マレーシア滞在記

 今回のマレーシア訪問ではマレー半島北部のラン園に出かける予定でしたが、諸所の事情から標高1,500mのキャメロンハイランドのラン園を回ることになりました。この地には主に3つのラン園があり、今回はその内の2つを訪問しました。セレンバンのホテルからは車で片道4時間を要すため朝8時半に出発して、ホテルに戻ったのは夜11時過ぎでした。マレーシアで最も知られた避暑地であるためか、土曜日と重なって交通渋滞がひどく、3つ目のラン園を回る時間が無くなりました。カーブの多いキャメロンハイランドの山間部の車道脇には日本の縁日などで見かけるような、雨を凌ぐ程度の露天商が数多くあり、3-4の店がこの地で採取したランを吊るして販売している光景がみられました。これらに立ち寄ってみたかったのですが今回は時間が無く通過です。こうした店には現地の面白そうなランがありそうで、一つひとつ覗いてみるためにはキャメロンハイランドに1泊が必要かも知れません。

 クアラルンプール周辺の4月の気温は昼間34℃、夜間25℃であるのに対して、キャメロンハイランドでは4月の平均最高気温が23℃、最低気温が15℃と、まるで別世界でマレーシアの最も暑い時期が3月から6月であることを考えると、4月は高温期にも拘らず、この気温です。他の月は最高最低共に1℃ほど低いのみとのことです。しかし訪問した日は30℃を越えて暑く、現地園主にこれではクアラルンプールと変わらないと言ったところ、今年は例年よりも気温が高いとのことでした。夕方になると急に寒くなりました。こうした日本で言えば春と秋のような環境であるため高地生息種の栽培には最適で、訪問した1ラン園では南米のランが多数開花しており、マレーシア以外の国からのランが多く見られました。このラン園はご夫婦で運営をされているようで、お二人とも感じの良い人でした。

 初めて訪問するラン園はいつもセレンバンのラン園主と共に出かけます。今回訪れたラン園も他のラン園と同様に膨大な数のランに名札は一切ありません。筆者がキャメロンハイランドの訪問先の園主に種名を聞きながらランを選んでいたところ、同行のセレンバンの園主から価格を確認した方が良いとのアドバイスで、適当な数になったところで、価格を聞くことにしました。このラン園の価格決定は、しばしばマレーシアで見られるようにオーナーの旦那さんよりも奥さんの方が実権をもっており、奥さんとの交渉となります。筆者が日本人と分かると高額になることは分っているので、通常は同伴のセレンバンの園主に価格を聞いてもらうのですが、ここではどうも違うようです。そこで予め選択した種を買うか買わないかは価格が納得できてからであることと、CITES等のドキュメントの関係で同伴する園主を通して買うかたちになるとの前置きをしての交渉です。言い換えれば、直接の価格交渉相手は筆者であるが、伝票(Invoice)は同伴する園主名となるとの意味です。よって伝票上での価格は同伴園主の目もあります。このラン園の園主はランを始める前はキノコ栽培で生計を立てていたようで、その後ラン販売に転じた際、同伴園主がかなり手助けしたようです。このこともあり親しい間柄のようです。

 一方、このラン園は日本の某ラン園と長く付き合いがあるようで、この某ラン園は日本の一部のラン園へマレーシアやインドネシアからのランを卸しているそうです。またこのラン園の園主は今年の東京ドームラン展に見学に来たそうで、こうした背景から日本での価格をよく知っている筈で、日本人向けで高くしてくるのではと警戒しました。言うまでもなくこのような価格交渉では、最初の1株目の価格が重要で、これをどのように判断するかでそれ以降の全ての株に対する売り手の価格ポリシーが決まります。最初の1株が想定以上に安ければ何の問題もないのですが、通常は高いものです。この1株目の価格交渉はまさに戦いです。ところがこの園主の奥さんは、価格交渉に入る前に園内を旦那とセレンバン園主と共に4人で歩きながらランの栽培など、蚊の大群に襲われながら話している間に何かを感じたのか、セレンバンやインドネシアスラバヤのラン園が付けている業者向け価格とほぼ変わらない価格をつけてきました。少なくとも筆者を趣味家としてではなく、また特に日本人であるからどうこうではなく海外からの同業者と見たのでしょう。あるいは全てが英語での会話なのでブローカーと思われたかも知れません。売買が終了したとき、どう、うちは安いでしょうと奥さんに一言、言われてしまいました。ということはやはり一般訪問者よりはかなり安くしたようです。

 一方、これは想像の範囲ですが、売り手にとって絶対高く売れそうだと思っているランは卸値では売りたくない筈です。こうした場合の買い手への常套手段は、これは自分の趣味用のランだから売りものではない、となります。今回そうした株が3種程ありました。やはりそう来たかと。それでは株分けして売ってもらえないかと打診しました。1株は上手くいきましたが、2株はダメでした。そこで同伴園主に帰りの車の中で、自分の趣味で売れないものをラン園の入り口にこれ見よがしに置くのは買い手に失礼である。高く売りたいのであれば遠慮なくその価格を言えばよいし、本当にどうしても売りたくないのであれば、見えないところに隠すようにと、筆者が言っていたと奥さんに伝えるようにと頼みました。さて2か月後の再訪問ではどうなっているのか、楽しみです。

 こうした価格で入手できるとなると、日本の某ラン園から仕入れている国内のいくつかのラン園の価格の高さは一体どうしたものか、この某ラン園は途方もないマージンをつけて卸しているのか、それとも卸値はそこそこで各ラン園が好きなように価格を決めているのか、はてと考えてしまいました。 3倍とか4倍とかならば兎も角、現地価格の10倍とかそれ以上の国内価格の流通の仕組みは一体どうなっているのであろうかと。別の見方をすれば、それぞれのラン園が直接海外に出かけ現地で購入すれば、往復5万円程の航空運賃で行ける現在、国内の価格はもっと安くなるのではと。高くしなければ採算が取れない、高くすれば若い趣味家が増えない、趣味家人口が少なければ高くしなければならない、このジレンマが見え隠れするように感じました。しかしいずれにせよ価格はそれでも買う趣味家がいるから決まるものです。

 今後は毎回、これらラン園を訪問する予定でこの気候であれば入荷を確認してから2-3週間後でも受け取りができることからパプアニューギニアの高地系ランはこちらのラン園を通して入手しようと考えています。クアラルンプールやセレンバン周辺のラン園では温室での空調で昼間25℃程度に下げることはできても、夜間を25℃以下にはできず高地種、特にコールドタイプ種の栽培は無論、保管も2週間以上は無理なためです。

Bulbophyllum anceps

 昨年入手したあまり聞きなれないバルボフィラムですが、今月になり複数株で開花が始まりました。バルボフィラムとしてはかなり美形ではないかと思います。本種はボルネオ島の低地生息種です。高温系で15℃ - 35℃の広範囲で栽培が可能です。特徴はバルブが扁平でほぼ真っ直ぐ成長していくためポット植えは適さず、ヘゴ板等の垂直板への取り付けとなります。本サイトでは2,500円(3bulb)を予定しています。バルブ数が4バルブ以上では500円/bulbプラスとなります。

Bulbophyllum anceps

Phalaenopsis speciosa full solid red

 Phal. speciosaはセパル・ペタルが白をベースに赤い大きな斑点が混じる人気の高い胡蝶蘭原種ですが、本種の難点はこのフォームが開花毎に白と赤の割合、配色、色質が変わり、時として赤色が無いフォームから全体がソリッドレッドまで、また赤色も濃色からダークピンクや青味の強い紫色まで様々で、これほど1種でフォームの変化が多い種は他に見られません。一つの原因としては本種はインド洋Andamanの生息種で野生栽培株の入手が困難であり、市場におけるほぼ全てがSeedling株となっており、様々なフォームやPhal. tetraspisなど近縁種との交配による結果と考えられます。

 今回のマレーシア訪問でソリッドレッドの発色の多いロットをプレオーダーしていたところ、30株ほど入荷しており、そのなかで開花中の7-8株がすべてソリッドレッドでした。確認したところ、これらは全てソリッドレッドであり、ソリッドレッドが固定した種の入荷は初めてであるとのことでした。これまでの経験から、それは単にソリッドの発生頻度が高い程度であって開花毎に多少の白色が混ることは避けられない筈と疑問を呈したところ、そうはならないとの返答です。その根拠を聞いたところソリッドレッドの続く株(v. imperatrix ?)からのティッシュカルチャーであるとのことです。つまりメリクロンであるとの説明です。それで全て入手することにしました。下写真がそれらBS株です。

 Phal. speciosaは前記の色濃度の変化があり、また一般的傾向として低温栽培(最適栽培温度よりも5℃ほど下げる)で発色が良くなるようです。このような色と栽培温度との関係は特に青成分でよく見られますが、Phal. speciosaの赤色もそうした傾向があるようです。マレーシアラン園で、ローカルマーケット向け胡蝶蘭栽培温室(外気温から10℃程低温)においてPhal. violaceaのblue Iindigoとレッドタイプの開花を見ているとその違いがよく分かります。さて、それではこのソリッドレッドPhal. speciosaは日本に於いてどれほどの発色となるのかが楽しみです。


Full Solid Red Phal. speciosa

Phalaenopsis violacea Sumatra wild

 胡蝶蘭原種の栽培を始めて15年以上になりますが、今回入手した葉長30㎝の巨大なPhal. violacea野生株は初めてです。下にその写真を示します。左は一般的なBSサイズのPhal. bellina ponkanであり、右がPhal. violacea Sumatra wildで葉長30㎝となります。こうして比較してみるとその大きさがよく分かります。当初プレオーダーしていたPhal. violaceia野生株が見当たらず、園内をどれかと探していたのですが、葉形状およびサイズから判断してPhal. bellina wildらしきものがあり、これはと聞いたところ、これが注文のSumatra島産のPhal. violaceaとのことで驚きました。

 現在、市場でPhal. violaceaの野生株を見かけることは極めて稀で、Blue Indigo、レッドタイプを始めとする改良種が市場を占めています。多くはPhal. bellinaとの交配種と思われる雑種です。この結果、本来こうした改良種に比べて安価な筈のPhal. violaceaが極めて入手難であるというよりも、まず入手が出来ない状態がここ3-4年つづいていました。そうした余り見かけない本種の雑じりのない野生栽培株を改めて見ると、実生種とは全く異なる迫力に圧倒されます。さてどのような花が咲くのか楽しみです。

Coelogyne 2点

 現在下記のセロジネを順化中です。
  1. Coel. buennemeyeri
    マレーシアの園主が2ヶ月程前に20株ほど本種をインドネシアから入手したそうです。スマトラ産とのことでした。しかしこの2ヶ月の間に次々とバルブが黄変し落ちていったそうです。その中で残った5株を得ました。下写真左手前の小さな葉が本種です。プレオーダーしていた訳ではないのですが、このままでは全滅なのでタダであげると言われました。日本に持ち帰って販売する以上はそうもいかず、園主が予定していた価格で引き取りました。ネットで本種を調べたところほとんど情報が無く真偽のほどは分かりませんが、クールどころかコールド環境と記載されており、その通りであれば、園主はそれを知ってか知らずか、確かに昼間34℃、夜間25℃のクアラルンプール周辺の気温下で生きられる訳はないかと。日本には初入荷ではないかと会員の方からのメールを頂きました。猛暑を生き残った5株は浜松のクール温室エリアに置かれ何とか助かりそうです。
  2. Coel. aff. longifolia
    こちらはCoelogyne spとしてインドネシアサプライヤーから下写真右の花画像が送られてきたそうです。写真左の中央の葉の長い株が本種です。右の花写真からはCoel. aff. longifoliaではないかと思われます。マレーシアラン園にて開花を見ましたが、間もなく浜松温室でも開花すると思います。ちなみに本種の名前にあるaffとはaffinityの略語で種名の前についた場合、その種名(longifolia)に似ており近縁種と思われるが未同定で、新種の可能性があると言う意味です。


  3. Coel. buennenmeyeri (下)とCoel. aff. longiflolia (上)

    Coel. aff. longiflolia ?

Vanda florescensis

 この新しい種名は”Flores"島生息種のVandaです。Flores島からの赤味の強いVandaはこれまでVanda limbata Flores type、Vanda sp FloresあるいはVanda florecensis typeなどがあり、種名と実物との対応が今一つの状態でした。そうした中、今回のマレーシア訪問でやっとVanda florecensisとの明確な種名のVandaを入手しました。野生栽培株の多くは茎が曲がっており、植え込みにいつも苦労するのですが、ほぼ真っ直ぐ伸びた茎の株だけを選択して持ち帰りました。特に今回はその中で6茎からなるクラスター大株を入手することが出来ました。マーケット情報を見ますと、Vanda floresensisは15,000円-20,000円ほどとなっていますが本サイトでは8,000円で販売を予定しています。下写真が取り付け前のそれらで、右の背の高い株が6株構成のクラスターです。クラスターの価格は未定です


Vanda floresensis

Dendrobium tobaense

 下記写真は現在栽培中のDen. tobaenseです。トバ湖周辺生息種ですが現地ではすでに生息していないのではとの話でした。おそらく今後はかなり入手は困難で、高価になるのではと思います。今年の現地の仕入れ価格は凡そ倍になってしまいました。幸いにして現在実生化が進められており、写真は野生株ですが、実生も現在、 100株ほど浜松温室にて栽培しています。下写真のロット株ではDen. aybiiが混在しており、写真中央右上の花はDen. ayubiiで、右端上はDen. tobaenseです。花の無い状態での株の識別は困難です。

Den. tobaense

Bulbophyllum ankylochele

 Bulb. ankyocheleはニューギニア標高2,000m前後に生息するクールタイプのバルボフィラムです。5年程前に国内では2万円以上で販売されていたようですが、今年の東京ドームラン展のNT Orchidのプレオーダー価格は6,000円でした。そこで本サイトでは3,500円を予定していります。画像は浜松温室にて杉皮板に取り付け後の撮影。


Bulb. ankylochele

Dendrobium masarangense

 ニューギニアからソロモン諸島に生息する種で、中温から高温タイプです。国内では過って8,000円程で販売されていた情報があります。本サイトでは3,500円を予定しています。画像は浜松温室にて撮影。


Den. masarangense

Bulbophyllum 3点

 Bulbophyllum3点を紹介します。Bulb. spは園主から送られた画像です。当初名前がycsとなっており、どこを探してもそのような文字に関連するバルボフィラムにはなく、再度問い合わせをしたところYellow Candy Stripe模様の花フォームなので便宜上そう呼んだとのこと、勝手に名前を付けてもらっても困ることろです。一方、Bulb. monosepalumはマレーシアの高温環境に2ヶ月間おかれ瀕死の状態で、順化に数か月は必要と思います。画像は浜松温室にて撮影。これら2点はニューギニア生息種です。一方、3点目のBulb. incisilabrumは2003年登録の新しい種で、ほとんどが20-30バルブ数からなるクラスター株となっており30株程が植え付け前の状態です。こちらはスラエシ島です。花は分っておりspではないのですが、1と3項のいずれも市場情報は無く価格は今のところ未定です。
  1. Bulb. sp


  2. Bulb. monosepalum (Bulbophyllum dischorense

  3. Bulb. incisilabrum

Dendrobium limpidum

 2003年登録のパプアニューギニア産デンドロビウムです。PNGデンドロとしては最も高額で、似た葉形状のDen. dichaeoidesと共に入手しました。ただいずれも1株しかありませんでした。画像は本サイトが撮影。


Dendrobium limpidum

Bulbophyllum sp

 今回のマレーシア訪問で、Bulb. lobbiiのような花形状でありながら、花色が紫褐色のBulb.spを入手しました。Borneo産とのことです。写真は園主の携帯写真からで背景の葉の色から見て写真通りの色合いの可能性が高く、それを期待したいところです。


Bulb. sp

Bulbophyllum graveolens

 バルブや花が大型のニューギニアの低地に生息する本種は下写真左に示すように、セパルの花色のフォームは無地ですが、稀に右写真に示すようなセパルの内側に赤い斑点をもつ変種があり、キャメロンハイランドのラン園でこれを入手しました。2株あり全て希望したのですが余程希少種のようで1株しか売りたくないとのことで1株のみの入手となりました。右写真は開花直後の画像で本サイトの現地での撮影です。本種も数日後には左写真のようにセパルは黄色く変化し、赤い斑点が目立つようになるそうです。

Bulb. graveolens

Vanda denisoniana

 本種は中国、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナムの標高450-1,200mに生息し、今回入手した種はミャンマーとのことでした。よって野生栽培株と思われます。特徴は2点あり、開花時と数日経過後の花の色が変化することと、かなり離れた場所でも分る石鹸(ネットではバニラの香りと記載)のような強い良い香りがすることです。丁度開花時はVanda deareiに似ており、下に本サイトが撮影した写真を示します。左が開花時で、数日後に右の色になります。ネット情報は殆どありませんが、1件が国内では6,000円で販売されているようですので、本サイトでは4,000円の販売を予定します。

Vanda denisoniana

今年2回目のマレーシア訪問

 先週半ばから11日までマレーシアを訪問していました。クアラルンプール周辺の気温は昼間34℃近くで、夜間で25℃程の日本から見れば盛夏です。今回の入荷は凡そ750株となり、キャメロンハイランドにも出かけました。

 胡蝶蘭原種では、フルソリッドレッドのPhal. speciosaを30株程、Phal. celebensis wildやPhal. violacea sumatra wildなど8種。デンドロビウムでは多数のDen. tobaenseを、Den. fimbrilabiumDen. metachilum albaDen. pandaneti、また数種のspなど。バルボフィラムでは黄色花のBulb. mastersianum(seedling)、mastersianum形状で2倍の花サイズのSabah産sp、多数のBulb. incisilabrumのクラスター、lobbii形状で黒褐色のsp、Bulb. kubahenseBulb. claptonense クラスターなど10種ほど、VandaではVanda florecensisVanda denisonia、その他Sabah産Arachinis breviscapacryptostylis arachnitesなど。CoelogyneではCoel. buennemeyeriや新種らしき種です。Papua New Guinea産高地種はDen. violaceum, Den, limpidum, Den. dichaeoides, Bulb. monosepalum、Bulb. nitidumを含む16種ほどです。

 今回は一部の種を除いて、PNG産デンドロやバルボフィラムは成田から直接ハンドキャリーで持ち帰りました。これからこれら700株を超える植え付けが始まります。本日からの1週間は足の踏み場もないという状態となります。画像等は逐次本サイトに掲載していきます。

Dendrobium sutiknoi

 インドネシアIrian Jaya (ニューギニア)生息のDen. sutiknoiが浜松温室にて開花しました。本サイトでは3,500円で販売の本種が、昨年あるサイトでは6万円程で販売されていたことを取り上げ、その後、マレーシアにて趣味家やクアラルンプール近郊のラン園から合わせて12株ほど入手しました。今年の東京ドームでのNT Orchidは6,000円で販売、スパチュラータ節としては最も安価な種の一つです。ある国内ラン園では倍の12,000円程でした。マレーシア国内では2 - 3,000円と言ったところです。会津では知人がミズゴケと素焼き鉢で栽培していましたがよく成長していました。浜松でこれら12株を同じ植え込み方法、またバスケット、クリプトモス+スリット入りプラスチック鉢のそれぞれで栽培し、何が適しているかを調べているのですが、いずれの植え込み材でも順化にかなりの時間が掛かっています。この順化とは新根や新芽が出るまでの栽培を言いますが、新芽が出ても褐斑性細菌病と思われる病気に掛かりやすく、新芽が落ちてしまうことが頻繁です。やがて入荷してから半年になりますが何とか落ち着いてきた状況になってきました。

 植え替えを嫌うスパチュラータ節のデンドロビウムは、先に取り上げたDen. taurinum、Den. wulaienseが経験的に分かっていますが、これに輪をかけたように本種は気難しい印象です。スパチュラータとしては花フォームは地味な方で下写真が現在開花中の本種です。マレーシアでは栽培者が少ないように思います。


Den. sutiknoi

Pleurothallis cardiostola

 写真の南米生息のプレウロサリスの花を見ていると「流氷の天使」とか「氷の妖精」と言われるクリオネに何となく似ており、この天使がまるでそのために、こしらえたかのようなハート型の葉の上に載っている姿は面白い風景です。クリオネとはギリシャ神話の文芸の女神クレイオーに由来するそうです。しかし見なければよかったのですが、テレビである時、この「妖精」が、6本の触手を伸ばしプランクトンを食べている映像を見て、とても天使とは思えない獰猛な肉食生物であることを知りました。こちらのPleurothallis cardiostolaは無論そのような悪魔に変わることは無く、本種こそ、そのハート型をした舞台を含め、クリオネと呼ばれるに値する花ではないかと。アルバフォームが現れることを期待したいところです。


Pleurothallis cardiostola

Dendrobium Spatulata節 Den. wulaiense

 本種はパプアニューギニアに近いWulai島に生息する高温タイプのスパチュラータ節デンドロビウムです。白色あるいは薄い黄緑色のセパル・ペタルと青いストライプの入るリップをもちます。


  1昨年12月に初入荷した株は細菌性の病気で順化に失敗して全てを失い、この経験から昨年4月に再度入荷しました。この際、それまでの根の環境を極力変えないようにと植え込み材(木炭)を付けて持ち帰り、浜松ではこれにクリプトモスを加えて順化を乗り越えました。さらに今年1月の入荷株は木炭を僅かに残し7割以上をクリプトモスで植付、順化中です。現在、その株の複数で開花中です。本種はDen. taurinumと同じように植え替えを嫌う種のようで、植え替え時期と植え込み材に注意する必要があります。これまでに分かったことは、植え替えは春先と秋で、気相が大きくなる植え込み材と鉢の組み合わせで、良くかん水をすることです。これはほとんどのスパチュラータ節に共通です。当温室では原因は不明ですが、バークミックス(バーク、pH調整炭、軽石)ではスパチュラータ節の全ての株で成長が優れません。

 現在本種を30株程を栽培していますが、1mを超える株は無く、50㎝ - 70cmでこれ以上は大きくならないようです。一方、花茎は60㎝程となり 開花した花はスパチュラータ節の中では最も多輪花の一つで、1花茎に25輪以上、状態が良いと下写真のように2茎同時の開花となり50輪を越えます。ちなみにスパチュラータ節で最も背の高くなる品種は、当温室ではDen. mussauense(上記地図で上部の小さな島に生息)で普通サイズで1.5m。花茎を加えないで現在2.3mが最大です。


「今月の開花種」ページの再開

 昨年11月から多忙のため休止していた今月の開花種を3月分を含めて再開しました。 たまたま1日は雨天で寒く、株分けや洗浄は一部温室外での作業のため、植え替えとか出荷準備が出来ず、1日中PCに向かうことが出来たためです。今月中には昨年来新しく加わった品種をカタログに追加することと、また近々マレーシアに出かけるための準備で追われます。会員ページもそろそろ立ち上げねばと思っています。