栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2016年 1-3月 4-6月 7-9月  10-12月

12月



Dendrobium sp Cool typeの開花

 1昨年マレーシアラン園の慶弔用胡蝶蘭栽培温室に瀕死の状態で置かれていた2mmに満たない細い茎の小さなデンドロビウムらしき株が4-5株あり、このままでは枯れるので良かったら持って行ってくれないかと言われ入手した株が今月開花しました。1年間は生死の間をさまよっているかのような状態でしたが、クール空間を今年設け夏でも25℃を越えない場所に置いたところ新芽が現れるようになりました。現在は昼間20℃、夜間13℃程です。1か月程前に緑色の蕾を確認してから開花までは1か月を経ての開花です。夜間温度が15℃を下回ったころから花芽が出たように思います。いかにもクールタイプデンドロビウムの形状で、細い茎や小さな葉に比べて2.5㎝の不釣り合いな大きな花で驚きました。下写真左がその花で、中央は開花株、また右は別株の全体形状です。これらの葉の付いた茎(疑似バルブ)はすべて2年の間に浜松で新しく発生したものです。現在該当種があるか調べているところです。

Den. sp 

フィリピン訪問

 28日の20時にフィリピン訪問から戻りました。26日朝成田から出発の予定でしたが同日は12月末としては稀な大型台風がLuzon島南部を襲い、成田からの出発が7時間近く遅れ、到着時刻は同日の夜10時過ぎとなりました。マニラ空港は到着の遅延予定時刻もまだ強風圏内で、この影響で大東島を通過した頃からフィリピンの上空までの2 - 3時間、これまでに経験がないほど機体は縦横と揺れが続き、コーヒーはカップから飛び出して受け皿がコーヒーで一杯になるやら、ジュース用コップなどは抑えていなければ飛んでいく程の揺れです。感心したのはそれでもアテンダントの人は落着いたもので、わずかな揺れの収まりの間をぬって、代わりを持ってきましょうか?と3回もコーヒーを容器ごと交換してくれました。飲み物がこんな具合ですから機内食はいかに早く胃の中に収めるか必死です。シェフの作った料理の味見どころではありません。こんな状況なら夕食など出さなければ良いのにと思うのですが、そうすればその分を後で払い戻せと言う人がいるかも知れずそうもいかないのでしょう。

 こうした状況のため26日のラン園訪問は夜遅い到着でできなくなり、27日はいつもより早朝にホテルを出てラン園に向かい急いで株の選別を行いました。前ページで取り上げましたがフィリピンでは輸出検疫プロセスが今年から厳しくなり、午後3時までには全ての持ち帰りランを梱包し検疫所に持ち運び書類と段ポール箱にサインをもらうことになります。このためランの選別も余裕はありません。そして次の28日は帰国日です。早朝6時にホテルを出てマニラ国際空港に向いました。これまで10年間の海外訪問で、今回は最短の滞在です。検疫手順が変わったことで検疫所が休みを挟む週末や週末明けには持ち帰りができず休日を利用しての訪問は難しくなり、今回のフィリピン行は月曜から水曜日です。この原因となった絶滅危惧動物の密輸入者には甚だしい迷惑を被っています。

 実はこの密輸入には続きがあって、ヘビと亀と前回記載しましたが、ヘビとメガネザルの間違いでした。さらに問題なのはこの密輸入を行ったのは何と日本人だそうです。しかも過去7回も同じように絶滅危惧種CITES AppendixIの動物の密輸入を繰り返していたと言うのです。この話題がフィリピンラン園で出るたびに肩身の狭い思いを強いられます。ちなみに荷物の中身の書類上の名前はアクアプラントだったそうで、団ポール箱をテープでしっかり密閉したせいか、可哀相にメガネザルは死んでいたそうです。

 今回のマレーシア訪問では長い葉をもつPhal. schilleriana野生株、香りをもつPhal. equestris Surigao(スリガオ島)、Phal. equestris Mindanaoなどを入手しました。これまで無臭とされるPhal. equestrisでも100輪以上纏まって花が咲いたときは若草のような匂いがすることは経験で分かっていましたが、1株にこれほど明確な匂いがあることは知りませんでした。園主が甘い香りがすると言うので半信半疑で嗅いてみたところ同じ種である中で匂いの有るものと無いものがあり、5株ほど匂いのある株を選びました。この株はSurigao島生息種です。他の地域からのPhal. equestrisも園内に多数あり同じように匂いの有無を確かめましたが全てが無臭でした。

 Mindanao生息のPhal. equestrisは、9年間入荷を希望しやっと手に入りました。なぜMindanaoにこだわるのかと言えば、花茎が黒褐色で常に2-3輪を花茎の先頭に開花しながら1m以上に伸長する他地域とは異なる性格があるからです。

 デンドロビウムはMindanao島からの名称不明種を2種得ました。果たして新種か既知種の変種かは今のところ分かりません。一方、今年の東京ドームラン展に出品した同じ場所、同じサプライヤーからのDen. papilioを30株ほど、またVandaはすでに入手難となったV. merrilliiの野生栽培の大株を7株ほど持ち帰りました。フィリピンラン園Purificacion OrchidではこれまでV. merrilliiとその変種であるrotoriiについては販売価格を同額にしていたそうですが、現在は標準フォームであるV. merrilliiの価格は入手の目途が立たないことから未定に変更したとのことです。これからの市場に出回る本種はV. sanderiana同様に実生になるであろうとの話でした。Vandaの実生は8割程がハイブリッドであるのが実体であり、特にV. sanderianaは現在、純正株を求めることは極めて難しく野生株からの株分けか、Mindanaoの1農園の出何処以外は信用できません。

 今回の訪問で、もっとも面白そうな種はVanda mariae spと名が付けられたソリッドレッドのVandaの新種です。これほどの派手なランが発見されなかったことは不思議で、果たしてハイブリッドではないかと疑っていますが、原種として登録されたようでサンシャインラン展にPurificacion Orchid(本サイトのVRTと共同ブース)に持って来るように要請しました。かなりインパクトのある花色で、果たしていくらで日本のラン展で販売するか興味があります。

 画像やその他の株については植え付けと同時に、逐次本ページにて報告します。

Den. crumenatum sp ?

 マレーシアにて50cmを超える大きな株があり、1輪咲き始めの花がついていたので撮影(下段右)しました。下段左はこの花と似たDen, crumenatumと比較するため手前に根がむき出しのフィリピンからのDen. crumenatumを置き、後ろの大株が本種となります。葉形状はDen, crumenatumはやや披針形(下段中央右)ですが、本種(下段中央左)は長楕円形でBulb. medusaeのような 厚みがあります。本種のバルブの基部は直径2.5㎝のかなり太い印象です。

 花形状はDen. crumenatumそのものであるかのようですが他の形状はかなり異なっており、果たして何ものか調べる必要があります。今回は3株持ち帰りました。一株の大きさが上段左写真のように大型バスケットが小さく見える程の大株で、間もなく咲くであろう花芽も右写真のようにかなりの密度でついています。Den. crumenatumはかなり強い匂いがしますが本種もあと数週間で確認できると思います。大株が2株、中サイズが1株の内、1株は本サイトの栽培調査用に、2株は販売用に予定しています。



Dendrobium derryi

 本種はボルネオ島、スマトラ島、マレーシア半島に生息する中温タイプのデンドロビウムです。今回のマレーシア訪問で趣味家の方から興味があればとのことで、”なんだかよく分からないものは後で後悔するより買ってしまうこと”を過去の経験からポリシーとしているので10株を入手しました。1株に花が付いていたので撮影したのが左写真です。右はその株で、デンドロビウムですがバルボフィラムのように、こうした木材に僅かなミズゴケで活着させ栽培させています。これで肥料を与えることなく育つのですから羨ましい限りですが、人間としては住みたくない高湿環境です。花はDen, corallorhizonDen. cinereumとよく似ています。それらよりはやや高温が良いようで栽培しやすいと思われます。ネットで本名と価格で1件ヒットし4,000円でしたが他には見当たりません。国内流通はほとんど無いようです。2,500円で販売予定です。

Den. derryi

Jewel orchid

 こちらも出品用Jewel Orchidです。下段右は今回のマレーシアで入手したもので、葉上の縦筋一本はあるようでなかなか見つかりません。これら価格は未定ですが例え珍種であってもJewel Orchidに5,000円以上の価格を付けることはありません。


ラン展出品用Bulbophyllum2点:Bulb. virescense Highland typeとBulb. beccarii

 今年7月の歳月記にBulb. virescense Cameron Highlandを初めて掲載し、その後10月にも5株入手できたためバスケット植え付けで販売したのですが、それぞれがあっという間に売り切れてしまいました。今回も下写真に示すHighlandタイプBulb. virescenseを新たに得ました。高温でも育ちますがやや低温では緑味のある発色となります。4株しかないので果たして日曜日までは残っていないと思いますがサンシャインラン展に出品します。一方、今年の東京ドームラン展で2,000円/葉としたBulb. beccariiも初日で売り切れとなりましたが、この価格は従来の市場の1/3程度だったようです。こちらも4株用意しました。今回も大きな葉は同額に、小型の成長中の葉は1,500円/葉を予定しています。


Phalaenopsis parishii albaPhalaenopsis appendiculata wild

 下写真は右の根が出ている株がPhal. parishii f. albaで、左のミズゴケの新しい株がPhal. appendiculata wildです。サンシャインラン展出品のため入手しました。 国内市場をネットで見てみると、Phal. paraishii semi-albaが5,000円程のようです。下写真はsemi-albaではなくalbaフォームで半額の2,500円で販売予定です。ちなみに写真で上のトレーの株は黄色のセパル・ペタルとなるPhal. deliciosa subsp. hookerianaで、こちらもラン展に持参します。


Dendrobium nabawanenseフォーム違いあるいは変種?

 Den. nabawanenseはボルネオ島固有種でカリマンタンの低地に生息しています。昨年入手した株の花写真は先月の開花種ページに掲載しました。本種は開花に季節感が無く通年で開花しています。今回マレーシアにて本種に似たDen. spがあるとのことで園主の携帯画像をみたところ微妙に、すでに所有の株の花フォームとは異なることから20株程を入手しました。帰国後orchidspecies.com等を含め調べていたところ、今回入手株がむしろ本来のDen. nabawanenseの特徴をもっており、これまで所有していた株が別種のように思えてきました。同じボルネオ島に生息する似た種にDen. hoseiがありますが、リップ側弁形状が異なります。

 下写真が新入荷株とこれまでの株とを比較したもので左が花、右はその株をそれぞれ示しています。上段が今回の入手株、下段がこれまでのものです。新入荷株は単に花形状だけでなく、疑似バルブ全体が立ち性で上段右写真のように短く、これでBS株とのことです。これまでの株は1.5mにもなり(下段右写真)下垂します。このため新入荷株は栽培には都合の良い大きさです。ではこれまでの種は何かとなりますが別種、亜種あるいは変種か、今のところ不明です。新入荷株とこれまでの株はそれぞれ4-5本サンシャインラン展にもっていく予定です。


Dendrobium sp

 下写真は今回のマレーシア訪問で入手したデンドロビウムです。スマトラ島とされていますが詳細は不明です。


生息地におけるDendrobium papilio

 Den. papilioの生息地における貴重な生態写真がフィリピンの知人から送られてきましたので掲載します。Den. papilioの栽培は難しいと言われます。この写真が栽培のための一つのヒントになるように思います。この場所は標高1500mから2,000m級の雲霧林で、夕刻からの翌朝までは高湿度となるそうです。環境温度はフィリピンNueva Viscaya州のバギオ市の昼間と夜の年間気温をそれぞれ2℃低くした程度と考えられます。

Den. papilio

Vanda tricolor Bruno

 Vanda tricolorは白地のセパルペタルに入るドットあるいは棒状の斑点がつくり出すフォームの多様性から幾つかの付帯名があります。Brunoが何を意味するのか分かりませんが、一般のV. tricolorは白地に赤褐色の斑点がセパル・ペタルにまだらに入っている一方、Brunoは下写真が示すように赤味がほとんどを占めるようです。こちらもラン展での試し売り用です。

Vanda tricolor

Dendrobium dianae

 本種はボルネオ島カリマンタンに生息し、2010年に記載の新種です。中温から高温で標高は900m以下とされます。これまであまり聞かない種名のためサンプルとして3株程を入手しました。それが下写真の花で本サイトで撮りました。ラテラルセパルは赤と黄色の2色です。国内マーケットを検索していたところ、このツートーンカラーの種が販売されており、価格は16,000円ほどだそうです。そこで本サイトでは1/5の3,000円で販売することにしました。サンシャインラン展に2株出品します。おそらく初日に売り切れると思いますが人気があるようでしたら次回訪問で仕入れます。

Den. dianae

デンドロビウム

 デンドロビウムは15種をマレーシアから持ち帰り、そのほとんどは新種、名称不明あるいは国内市場での流通がほとんど見られないものです。下写真の2点は上段がニューギニアから、下段はスマトラ島で、これまでのsumatra spと同節と思われますが紫の斑点がそれぞれのセパル・ペタルおよびリップ先端部にあることが異なります。花写真はいずれも園主の携帯画像からです。(後記:会員から上段はDendrobium peculiareとの指摘を頂きました。Den. peculiareはマレー半島とスマトラ島生息種とされますが、Irian Jayaとしたサプライヤーに確認中です)


Bulbophyllum fraudulentum

 パプアニューギニアからの鳥のくちばしに似た本種クラスター株を入手しました。このバルボフィラムは1996年登録の比較的新しい種で、同じパプアニユーギニアのBulb. arfakianumと似ており混同されることもあるようですがドーサルおよびラテラルセパル先端が重なり合っていること、またリップ側弁の形状が異なるそうです。国内市場情報は見当たりません。下写真左は木材に活着した150葉程のクラスター株です。そのままマレーシアから持ち帰ることは植物検疫上難しいため取外すこととしました。その際、その後の栽培での作落ちを避けるため鋏を使わず極力根を切らないように剥がしました。写真中央は50株程を2組み、右は4-8株を10組に株分けしての植付けです。低温から高温まで栽培環境は広範囲が可能で、本株は高温下で栽培されていたそうです。

Bulb. fraudulentum

Bulbophyllum cuspidipetalum

 本種はボルネオ島生息のバルボフィラムで記録は1908年と古いのですが、最近ではBulbphyllum of Borneo 2015年書に掲載されているそうです。下写真左は園主の携帯からの花画像で右は浜松での撮影です。多輪花性でバルブやリゾームからBulb. uniflorumと同じBecariana節であることが分かりますが、余り情報がなくネットからは国内市場での実績が見当たりません。サンシャインラン展にもっていきますが株数が少ないため初日で売り切れるかもしれません

Bulb. cuspidipetalum

現在植付け中のBulbophyllum

 マレーシアから持ち帰ったBulbophyllumの一部を掲載します。左は花、右はその株となります。花画像は園主の携帯からのものでボケたものがありますが、名称不明種あるいは新種らしき種を取り上げて見ました。これらは池袋サンシャインラン展に出品します。


マレーシア訪問

 先週末から本日(19日)までマレーシアを訪問していました。来月1月5日から始まる池袋でのサンシャインラン展への出品株の仕入れと、これまでの在庫品充填のためです。今回の訪問でバルボフィラムで約15種、デンドロビウムでは5種ほどの新種、変種あるいは国内取引が見られない野生原種を入手しました。その他、胡蝶蘭、バンダ等も希少株を幾つか得ました。種別ではバルボフィラムが28種、デンドロビウムが14種、胡蝶蘭6種、その他で、総株数650株を持ち帰りました。

 間もなくフィリピン訪問も控えており多忙ですが、植え付けに合わせて、逐次本ページで入手株を紹介する予定です。

Coelogyneの変種それとも新種??

 手のカラー色がなければモノクロで撮影したようなセロジネ。ドーサルセパルが薄緑あるいは黄緑であればCoel. celebensisの一つのフォームかとも思いますが、純白はネットでは見当たりません。AJOSサンシャインラン展に出品し販売します。


Ceologyne

12月中旬にて開花中のMonkey Orchids

 現在市場で入手可能なほとんどのドラキュラ属を浜松温室にて在庫しており63種類、株数で150株程となります。コールドから高温タイプ様々ですが、夜間平均温度を15℃とすることでこれらを栽培しています。下写真は現在開花中のドラキュラ4点です。モンキーオーキッドと言いますが猿顔そっくりな種は1割程で、9割はそうと言われればそうかなと言ったところです。


Dracula gorgona

Dracula spectrum

Dracula soennemakii

Dracula marsupialis

ミニサイズ・クールタイプBulbophyllum2種

 10月のマレーシア訪問にて入手したクールタイプのバルボフィラムの内、2種が開花しました。下写真それぞれ左は花を、右は株を示しています。上段はボルネオ島Sabah州のBulb. ovalifoliumと思われるもの、下段はパプアニューギニアからのsp(種名不明)です。後者は花のサイズが横幅2.5mm程で、世界最小とされるエクアドルのランとほぼ同じです。マクロレンズでなければ撮影は困難です。いずれもクール温室での栽培です。


Dendrobium sp Sumatra

 名称不明のSumatra島生息のデンドロビウムをDen. sp Pink Sumatraとして2014年6月、本サイトに開花写真(下写真上段)を掲載しました。その後、2015年12月にはサプライヤーから送られたセパルペタルが青い同じくスマトラ島生息のspを入手したことを紹介しました。ところが今年2月になりこれが開花した結果、青ではなく赤紫のセパルペタルであることが分かり(下写真下段)、これら2点を比較したところ花形状や色が若干異なるもののどことなく似ており、青色は画像を色補正した疑いが強く、またsp(名称不明)種が続けて発見されるのも怪しげで、これらは個体差の範囲内ではないかと特に区別することなく同様にDen. sp Pink Sumatraとして販売していました。

 先月中旬に後者を購入された方が温室に来られた際、このような花が咲いたと携帯写真を見せて頂いたのですがかなり紫色の濃い色で、この株のバルブ(疑似バルブ)は中ほどが太った形状との説明を受けました。今月に入り写真下段の花が浜松温室で咲いたことから何か決定的な違いはないかと改めてバルブを含め調べたところ、それぞれの右写真から分かるように上段はバルブの太さが均一で、一方下段は若いバルブは細いものの成長するに従ってバルブの中央部が太くなっていることが分かり、同じ温室内の栽培環境でこのような形状の違いが同一種で生じることは考えにくく別種であることが分かりました。

 前者が2014年、後者が2015年末にマレーシアへの初入荷なので、分類研究者がすでに名前を付け登録しているかも知れませんが、不明の状態では販売する上で厄介で、前者をDen. sp Pink Sumatra、後者をDen. sp Purple Sumatraと取り敢えず呼ぶことにしました。しかし今月再度マレーシアに行くのですがラン園主からのメールによると3種類ほど名称不明の新しいデンドロビウムが入荷するとのことです。そろそろバルボフィラムを含め、spについてはシステマティックな仮名称を考えないといけなくなってきました。


シュークリームの匂いのするCoel. lentiginosa

 10月のマレーシアにて入手したCoel. lentiginosaが開花しました。ミャンマーからの入荷とのことです。本サイトでは初めての栽培種で、驚いたのはかなり強い花の匂いです。まるでシュークリームのようでケーキ屋さんの店に漂う、あの甘い匂いです。中温タイプですが本サイトでは中温用スペースが狭くなってきたためクール温室に置いています。タイおよびベトナムにも生息し、これら地域の株もすべて同じ匂いなのか興味があります。本種は一般種と思われ市場価格はNBSで2,000円程のようです。本サイトではバルブ数によりBSサイズで1,500 - 2,000円を予定しています。

 花が似ているベトナムからのCoel. eberhardtiiも同時に入手しました。Coel. eberhardtiiは国内市場情報が見当たりません。マレーシアラン園には3株のみ入荷されていました。


Coel. lentiginosa

Bulbophyllum makoyanumのサイズ

 Bulb. makoyanum はマレー半島、ボルネオ島、フィリピンに生息するCirrhopetalum節です。2年程前にフィリピンからまとめて400株ほどのCirrhopetalumを仕入れたとき、そのなかの3種がミスラベルで本種となり60株近くとなってしまいました。秋にはこれらの多くが開花し、その放射線状に開いた花のスパン(左右の花の先端間距離)が13㎝程の大きさで可なり迫力がありました。その後マレーシアからも10株程地域的特徴を期待して本種を入手したところマレー半島やボルネオ島生息種は8㎝ほどであることが分かり、本種の花サイズについては歳月記ARCHIVE12月に記載したことがあります。

 最近までフィリピン生息種は13㎝が普通と思っていましたが、JGPでフィリピンラン園の売れ残った本種10株ほどを引き取りそれらの開花を見て小さいことに気が付きJ. Cootes氏の著書を調べ初めてフィリピンにおいても一般的には8㎝程であることが分かりました。そうすると一体、たまたまミスラベルで入手した、このロットの株は新しい変異体なのか、Den. papilioのようにサイズの違いは地域差であるのかと言った疑問がでてきました。下写真は現在開花中の一般サイズ(右)とミスラベルで入手した株(左)の比較です。おそらくフィリピンサプライヤーはこの地域のこのバルブ形状は、こちらが入手希望したバルボフィラムに違いないと思い、その名前を付けて出荷したものの本種であったと考えることもできます。こうなるといわゆる瓢箪から駒かも知れません。それまで本種は1,500円としていましたが、一般種はそれで良いとして、このミスラベル品を幾らにするか検討中です。いずれにしてもサンシャインラン展には出品予定です。


Phalaenopsis speciosaのさく果

 本種はセパルペタルが全てソリッドレッド、濃赤色あるいは葡萄(エビ)色をもつフォームが希少とされます。しかしどのような色合いであれ、その色が毎年の開花で固定して再現できることと、濃く鮮やかであることが条件で、このような特性をもった株はなかなか見つかりません。何百とポット植えされたラン園で、そうしたフォームを時折見かけますが、一過性のものであったり、交配用として非販売品扱いであったりするのが通常です。こうした株を得るにはフラスコで購入しその中からそうした色合いの株を見つけ出すこと以外、現状では難しいと思います。

 本サイトでは6月の本ページで取り上げた葡萄色のPhal. speciosaを自家交配し、現在6か月が経ちます。交配後4か月で採り撒きができますが、さく果が割けてタネが落ちなければ8ヶ月ほど待ってからの採り撒きが発芽率を高めます。下写真左は今回自家交配した親株で、右は同じ株の6月に交配したさく果と共に交配から3度目になる開花中の花です。この株は初花から5年以上、色合いが変わることのない同じフォームであり、実生への遺伝的継承ができるのではと期待しています。先の長い話になりますが2年後には出荷が出来るようになると思います。

Phal. speciosa

Jewel Orchids

 本サイト7月にJewel Orchidを2点取り上げましたが、その後も黒褐色をした株が10月の訪問時にマレーシアラン園にあり、"希少種であれば買っても良いと言ったあなたのために確保してある"と言われてしまい止む無く持ち帰りました。確かにネットでこの属の画像を検索する限り、似て非なる画像はあるものの下写真の黒に近い暗緑色フォームと同じ種は見当たりません。葉は写真では分かりにくいのですが鋸波の縁取りと、ビロードのような質感があります。しかし本属に興味のない人にとっては葉を見ても黒いだけで何が良いのか分からないと思います。が、聞くところによると本属の趣味家にとってはJewelとされながらも美しい葉模様に必ずしも価値がある訳ではなく、人の持っていないフォームを探し出し、それを仲間同士で話題にできるものほど価値(高額でも入手)が高い、言い換えれば珍しがり屋の好むランであることのようです。いずれにせよこの属については門外漢のため価格の付けようがなく、これはマレーシアラン園主も、葉を見ながらこれを何千円も出して買う人がいるのかと首を傾げている本サイトに対して価格が付けにくい様子で、まずはサンシャインラン展に出品し様子をみながら値段を決める予定です。栽培を通して分かったことは7月の緑色の1点を含め、本種は中温からクールタイプのようで高山系のJewel orchidの印象を受けます。まさに気化熱で根の温度を下げる山野草鉢が合いそうなランです。


 ちなみに、今年の東京ドームで下記の3点を試しに販売しました。葉模様からすれば左が最も高価な感じがするのですが、聞くところによるとこちらは最も安いそうです。そこで左を1,500円、中央を2,500円、右はマレーシア園主によると珍種とのことでしたので3,500円程にしたかと思います。これらの生息地は明記しませんでしたが全てボルネオ島です。そうしたところ中央と右はあっという間に売り切れてしまいました。その後ネットで調べてみたところ画像下の名前ではないかと分かり、これらの価格を調べたところAnoectochilus3,500円、Goodyera reticulataは一般種は緑地に白い葉紋ですが下写真の暗緑色に赤い紋は何と15,000円、sp種は見つからず価格は不明でした。おそらくspは2-3万円でも買われる人がいたかもしれません。価格設定を間違ったと思いましたが後の祭りです。マーケットサイズは分りませんが改めてこうした世界もあるのだと理解しました。という訳で、それでは下写真右のsp種よりも希少とマレーシア園主が言うところの上写真のsp種は幾らにするかです。


Anoectochilus albolineatus

Goodyera reticulata

sp

Dendrobium oreodoxa

 標高2,000mのニューギニア生息種Den. oreodoxaを6月のマレーシア訪問で入手し、浜松では素焼き鉢にミズゴケでの栽培を始めました。クールタイプのため昼間25℃以下、夜間18℃以下の環境に置いています。順化が終了し10月頃から新しい葉や根元からの新芽が出始め、今月初の開花が見られました。細い茎の割には3㎝程の良く目立つ大きな赤い花をつけました。一般的には花サイズは2.5㎝とされますが、今回は株が順化直後の安定していない状態で1輪のみの開花であったため若干サイズが大きくなったのでは思います。

Den. oreodoxa

Phalaenopsis gigantea f. alba

 本サイトでは一昨年自家(同一株)交配したPhalaenopsis gigantea f. albaの実生を栽培しています。フラスコにて1年近く育て今年5月にフラスコから取り出してポット植えをしていましたが、1枚の葉長が8㎝程になり、これ以上の成長には病気のリスクを避けるため垂直板への取り付けが必要でヘゴ板に移植しました。下写真は左が交配親株で、右がヘゴ板取り付け直後の写真です。

 アルバ種は希少で、純度の高い自家交配BS実生を市場で得ることは困難です。本サイトでは写真のサイズで20,000円ですが、来月からは月毎に2,500円づつ増額となります。よって来年末の葉長が20㎝スパン(左右の葉間距離)を超えるサイズでは2,500x12=30,000の加算で販売価格は5万円、再来年からはさらに倍額の月当たり5,000円の増額となり、1葉長30㎝近くのBS株になる年末には1株12万円に変わります。それでも現在Phal. gigantea f. albaのBSを12万円で入手することは出来ないと思います。およそその倍は覚悟しなくてはなりません。まさにラン1株にそれ程の大金を払うのは実生化を試みる趣味家は別として、狂気の世界に映りますがそれほど高価な胡蝶蘭もあるということでしょうか。

Phal. gigantea f. alba

サンシャインシティ世界のらん展2017(第56回全日本蘭協会洋らん展)

 来年1月5日(木)から9日(月・祝日)まで池袋サンシャイン文化会館2階で開かれるラン展に出店することになりました。フィリピンPurificacion Orchidsと共同での参加です。Purificacion Orchidsとの隣り合わせの出店はこれで3回目となります。開催時間は10:00-18:00(最終日は15:00)で入場は無料となります。

 一方、これまで2年間東京ドームラン展JGPに出店してきましたが、来年2月のJGPには参加しないことになりました。今年から最終となる土日が無くなり、このため当サイトが対象とする原種愛好家の来店は内覧会、初日(土)と日曜の実質3日間となり、開催期間全体を通しての原種を専門とする販売には効率の悪い長丁場であること、さらに乾燥の激しいドーム環境であることから設置準備期間を含め9日間に及ぶ展示会の終了後に持ち帰って植えつけ栽培した株の内、大株であればあるほど作落ちがこれまで見られ、こうした状況からPurificacion Orchidsと伴に来年の出店は見送ることにしました。

 東京ドームラン展への本サイトの出店を期待されていた趣味家の方々には申し訳ありませんが、代わって来年早々の池袋サンシャインシティのラン展には、新種や国内初登場と思われるデンドロビウム、バルボフィラムを始め、本ページにて紹介した入手難の原種を多数、廉価に出品する予定です。

11月



12月入荷予定のBulbophyllum3点

 12月は来年早々の販売準備のため入荷ラッシュとなる月です。今年もフィリピンとマレーシアに出かけますが、昨年のフィリピンには12月も暮に出かけたため、海外出稼ぎの帰省ラッシュに巻き込まれてしまいました。アキノ国際空港やマニラ市内の想像を超える混雑には閉口しましたので今年は中旬前の予定です。

 今月の中ほどから入荷品のやり取りをメールで現地ラン園と始めており、下写真はマレーシアから入荷予定のバルボフィラムの一部です。左はBulb. polystictum albaで初めての登場と思います。Sumatra島からです。中央はBulb. membranifoliumと思われますが、セパルの赤色が強く鮮やかでボルネオ島Sarawak生息とのことです。また右は一見、Bulb. maculosumのようですが、手の大きさと比較すると縦スパン10㎝ほどの異常な大きさで別種とも思えます。こちらもSumatra島です。こうしたこれまでネット上でもなかなか見つからない種がデンドロビウムやセロジネを含めて次々と集まるようで来年早々は面白くなりそうです。一方、キャメロンハイランドからは地元および栽培中のパプアニューギニア種を多品種まとめて出荷可能か打診をする予定です。


Bulb. polystictum alba

Bulb. membranifolium? red form

Bulb. maculosum-like sp

Bulbophyllum scaphioglossum 

 2014年登録の新種Bulb. scaphioglossumが浜松温室にて開花しました。今月の初旬に本ページで取り上げましたが、10月マレーシア訪問での持ち帰り株です。ネット上で本種の節名が見当たらないのですが、おそらく花および開花様態からSection Codonosiphonと思われます。Irian Jaya生息でセパル・ペタルに対して異様に大きな茶色のリップに中央弁を2分する黄色のラインが入るのが特徴です。同じニューギニア(パプアニューギニア)生息種Bulb. nitidumに似てセパルが後ろに反っています。新しい種であるためか情報がほとんどありません。キャメロンハイランドの蘭園でも栽培を見かけたことを考えると中温が適しているように思われます。2年ほど前に国内で販売されたことがあるようですが、現在は国内外ともに市場価格が不明です。バルブ数に依り2,500円から3500円を予定しています。ちなみにBulb. nitidumはorchidspecies.comの情報では生息域が標高1,200m近辺とされながらも気温マークはhotとなっており、標高1,200mでhot環境(夜間平均温度24℃ -29℃) は正しいのかと?浜松では本種およびBulb. nitidum共にクールから中温環境とし杉皮板取り付けで栽培してます。

Bulb. scaphioglossum

Coelogyne fuscescens 

 ラオスからの本種と思われるセロジネが開花しました。中温からクールタイプとされますが、本サイトではクール室でスリット入りプラスチック深鉢にクリプトモスの植え付けで栽培をしています。基本的にセロジネは全てこのタイプの鉢と植込み材の組み合わせで、鉢のスリット穴から根が這い出すほど根張りは良いようです。開花前の蕾は薄緑色で開花したリップは淡いブラウン模様のためCoel. fuscescens var. brunneaかも知れません。バルブはくねって太く凹凸があり、これはCoel. fuscescensの特徴のようです。

Coel. fuscescens var. brunnea ?

Coelogyne usitana

 7月の本ページに花茎を一輪毎にジグザグ状に次々と伸ばし開花を続けるフィリピン生息種Coel usitanaを取り上げました。あれから4ヶ月経ち今だに花を咲き続けています。すでに花数は17個目に入り、最多連続開花数20を間もなく越えそうです。この株の花のリップ側弁は焦げ茶と言うよりほぼ黒に近く、これまで本種を50株程栽培してきた中でも最も黒い色(下写真右)をしており、セパル・パタルの白色とのコントラストが際立っています。この発色性から自家交配の実生化を試みたいのですが、花数の最多記録も更新したく花茎が伸び続ける限り交配は延期です。

 一つの花茎上で繰り返される開花はいずれ終了しますが開花始めと同様に終焉のキッカケは何かが問題です。考えられるのは1年周期毎の環境の変化によるものです。本種の生息地であるフィリピンMindanao島Bukidnonは、北部と南部地域によって2つの気候に分かれ全体として雨が多く高湿度で、北部では11月から若干の乾期が数か月続くようです。こうした中で乾期や低温化が花茎発生や終焉のトリガーになるのではと思います。日本国内では春から開花を続けてきたことを考えると月当りの開花数から逆算し、開花始めが初春3月頃となり、遡れば1-2月が終焉時期に当たります。文献では開花数が最多で20回とされるのは、期間に換算するといみじくも10ヶ月間となります。果たしてこうした推論が妥当か否か、もしその通りとなれば生息地での乾期や低温期にあたる12月から2月までの3ヶ月間程を高温高湿度にすれば株は騙されて花を咲き続けるのか、試してみるのも栽培の面白さかも知れません。

Coel. usitana

1.5倍サイズのBulbophyllum nasseri

  J. Cootes氏のPhilippine Native Orchid Speciesによると本種の最初の記載(1999年)にはボルネオ島が生息地とされているものの、その生息場所の詳細は不明と書かれています。比較的新しく発見された種で、これまでにボルネオ島からの本種の情報は得ておらずフィリピン固有種ではないかと考えています。フィリピンではミンダナオ及びレイテ島が生息地として知られています。11月末から2月頃までが国内での開花期で高温タイプであり、高輝度は好まないようです。

 現在浜松の温室にて30株程を杉皮板で栽培しており、一般種と比較して1.5倍サイズの下写真左の花が今月4週目に入り開花しました。3年間の栽培で初めて見る大きさです。ラテラルセパルの長さだけで一般サイズの全長8.5㎝に対して8㎝もあり、ドーサルセパル先端からラテラルセパル先端までの全長は14㎝です。つまり一般サイズの全長が今回の開花株ではラテラルセパルの長さとなっています。右写真は標準サイズ(左)との比較です。右写真は蛍光灯照明下での夜間撮影のため色が異なるように見えますが左と同じ株です。

Bulb. nasseri

ニューギニア生息Bulbophyllum antenniferum

  Bulb. antenniferumはタイからマレーシア、ボルネオ島、フィリピンに至る広範囲に生息しており、大きな鳥の嘴のような形をした花が特徴です。この花の色は緑かかった薄茶で、この緑と茶色との割合が株によって若干異なります。10月のマレーシア訪問でニューギニアからの本種を入手しました。orchidspecies.comを見るとニューギニアも生息地として記載されていますが(most likely)となっており、日本語に訳せば(十中八九)生息しているとなっています。おそらくニューギニア生息株はあまり国際市場に出ていないのではないかと思われます。

 今回入手した本種はサプライヤーによれば緑色の割合が多いらしくgreen formとされ、バルボフィラムとしては比較的高額でした。下写真左は浜松での入荷時のままの状態の株で右がサプライヤーからの写真です。すでに浜松に持ち帰って1か月近く経ちますが、他の株の植え付けが忙しく、未だ植え付けに至っていません。白い発泡スチロールに僅かなミズゴケで取り付けられており、湿度の低い場所でこの状態ではやがて枯れてしまいます。12月に入ってから杉皮板の取り付けとなります。それまでは夜間湿度90%以上となる温室での保存です。このため今のところ株は元気です。

Bulb. antenniferum New Guinea

Dendrobium hamiferumの温度環境

 本種はニューギニア生息種で、下写真に示すように黄緑色のセパルペタルと青紫のリップからなる花を20輪程、同時開花させるspatulata節のデンドロビウムです。現在浜松温室で開花中です。orchidspecies.comの情報によると本種は標高1,100m - 1,800mに生息し、クールタイプとされています。こうした情報を基に3年ほど前に入手した当初は低-中温室に置いていたのですが成長が悪く、1昨年から栽培温度18℃ - 34℃の高温室に移動したところ年に2-3回開花するようになりました。

 クールタイプのデンドロビウムが高温環境でなぜ成長が良く開花回数も多いのかと、orchidspecies.comの情報に疑問が生じてきました。そこで文献を調べていたところ、論文(Dendrobium hamiferum P.J.Cribb, Orchadian 6 (1981) 274.)に関連した記事があり、本種の生息地はニューギニアに広く点在し、東部となるパプアニューギニア(Mt. HagenやPorgera)では標高が高く、西部のIrian Jaya(KumurkekやPulau島)では低地とされ、これら地域全体を総括して0m - 1,800mと記載しています。また低地生息種は高湿度(熱帯雨林)下の生息環境であることも指摘されています。

 すなわち、入手した本種はおそらくIrian Jayaインドネシア領からの入荷株と考えられます。もしこれをDen. cuthbertsoniiDen. vexillariusと同じクール環境で栽培を続けていればやがては痩せ衰え、枯れたのではないかと思います。ダメ元で移動してみるかと試みたことが吉と出た訳です。生育が今一つと感じたときは生息地情報を調べ、栽培環境を変えてみることも時として必要な1例です。

Den. hamiferum

Dendrobium ayubii

 本種は1999年の登録の比較的新しく発見されたスマトラ島生息のデンドロビウムです。花形状は同じスマトラ島生息種のDen. tobaenseに、リップの形状と色が異なる点を除いてよく似ており同じFormosae節に分類されています。比較的入手難の品種であり、10月のマレーシア訪問時に珍しく入荷していたため40株程を入手しました。

 本種が新しい種であることから栽培に関する情報はほとんど無く、海外ネットでも栽培についての質問が見られます。本種はDen. tobaenseよりも標高が高い生息域とされ、これまでの経験から5℃ほどDen. tobaenseよりも低温環境での栽培が好ましいようです。もっともDen. tobaense自体が栽培が難しい種とされています。その原因の多くは栽培温度と、花後(主に冬季)の栽培方法によるもので、根のほとんどが冬を越したころには黒くなり、春になっても根や新芽が現れないというものです。Den. ayubiiも似た傾向があります。

 これは栽培温度が高すぎる(Den. ayubii:低温、Den. tobaense:中温)ことと、冬季におけるかん水頻度が原因と考えられます。本サイトではそれまで、同居する他のランと同じ頻度及び量のかん水であったため冬季に過水状態であったことが分かり、植え込み材をミズゴケ100%からクリプトモスとの50%混合とすることによって気相を増やし、根や芽を出すことができるようになりました。それではかん水頻度を、例えば2日に1回であったものを冬季には1週間に1回とすればよいのかと言えば、それほど簡単なものでもありません。これでは最も避けなければならない根が乾燥してしまう逆効果となるためです。すなわち根の周りが常に湿っている(しっとり感がある)か、あるいは根が乾燥気味であるのであれば、特に夜間における環境湿度を90%以上(自然界の生息域は雲霧林)とすることができるかどうか、こうした条件が必要となります。この栽培条件は本種だけでなく多くのFormosae節に共通したポイントとなります。

 現在本種はDen. tobaenseと同様に、素焼き鉢にミズゴケとクリプトモスミックス、バスケット、自然界では幹木に活着していることからヘゴ板、またプラスチック鉢にバークミックス(ネオソフロン中サイズ60%、十和田軽石大サイズ30%、ゼオライトやPH調整炭少々)でそれぞれ生育状態を調べており、今回はバークミックスでの植え付けとなっています。重要なことは栽培者の取りうる環境の中で根を取り巻く状態を特に冬季(落葉後)に、ぐしょぬれ状態にしない一方で乾燥させず、常にしっとり感を如何にして保つかが課題であり、鉢と植え込み材はその状態を得るための手段に過ぎません。

 下写真左は現在開花中のDen. ayubii、右は40株の本種で、スリット入りプラスチック鉢にバークミックスでの植え付けです。本サイトでの本種の価格は、現在の国内外マーケットが5,000円-12,000円の範囲とされているようなので3,500円を予定します。

Den. ayubii

Dendrobium viridiflorum

 パプアニューギニアからIrian Jayaまでニューギニア海岸のマングローブ林に生息するデンドロビウムが開花しました。本種の入荷は今年の6月で、入荷時には水分不足からか全ての株のバルブが扁平で皺があり別種ではないかとも思いましたが、半年近くの温室の栽培で本来の形状に戻った株が幾つか現れました。1㎝程のセパルペタルが緑色でリップが純白の小型の花をバルブの節ごとに一輪づつつけるそうです。低地生息種であることからデンドロビウムのスパチュラータ節と同じ場所において高温栽培としています。中央は入荷時と同じ皺のあるバルブで、右は皺がなくなった株の一つです。 本種の国内市場に関する情報は見当たりません。

Den. viridiflorum

海外からの持ち帰りランの植え込み

 マレーシアやフィリピンからの持ち帰るランは株数で毎回500株を越えます。これらを素焼き鉢にミズゴケ、バスケット、プラスチックポットにヘゴチップ、クリプトモスあるいはミックスコンポストさらに杉皮板等に品種の様態に応じてそれぞれを選択し植え付けています。先月末のようにマレーシアとフィリピンのランが続けて入荷する場合は、合わせて1,000株相当となり、凡そ3㎏ミズゴケ3A クラスが3個、ネオソフロン18L中サイズが2袋、杉皮板(60㎝x30㎝)30枚、クリプトモスMサイズ100L1袋、ヘゴチップ8㎏1袋、それに炭、軽石、ゼオライトなど膨大な植え込み材を消費します。

 この中で最も植え込みに時間がかかるのが杉皮板への主にバルボフィラムの取り付けで、杉板60㎝x30㎝を16枚ほどに裁断し、それぞれに株をミズゴケで押さえて取り付けます。平均して1株当たり15分ほどを要します。今回のようにバルボフィラムだけで300株となると単純計算で75時間となり、1日8時間植え付け作業をしたとして10日間です。根の整理、カビおよび細菌性の病気防除のための薬品散布およびコンポストの準備(例えばバークやヘゴチップは活性剤を含む水にしばらく浸けた後に使用など)を含めると、バルボフィラム以外のランについても500株程あれば植え込み作業は10日程を要し合わせて20日となります。これら以外に取り付け材を吊るす金具や資材の取り付け、また植え付け後の株の置き場所の整理も必要となります。

 一方、日本に持ち帰った株を一旦トレーに並べ、根の部分を簡易的にミズゴケで覆い、温室内で植え付け待ちとした場合、品種にもよりますが1週間が入荷時の品質を維持するための限度で、これを超えると株が徐々に弱まり、歩留まりが1日当たり数%の割合で低下していきます。2週間を過ぎると歩留まりは7割程に低下します。このため胡蝶蘭、デンドロビウム、バルボフィラム、Vanda等に優先順位をつけて植え込みを行います。通常では胡蝶蘭から次に高価な株、最後にバルボフィラムとしています。胡蝶蘭は葉が互いに重なり合う状態のままで植え込みが遅れると、落葉や軟腐病の発生の危険性が高まります。これまでこうした遅れからバルボフィラムでは一部が歩留まり率50%となったり、順化期間が半年以上かかる状況もありました。

 このように持ち帰りから15日-20日間程は作業時間と歩留まりとの戦いが続き、一時の余裕すらなく顧客への注文品の発送や温室への来客を受けつけることが出来ません。こうした作業期間内に来客の対応をしていると益々植え込みが遅れて株へのダメージが増すためです。1.5ヶ月毎にマレーシアやフィリピンに出かけていると、1年の1/3が植え付け、さらに植え替え作業が1/3占め、結果として営業時間も1/3程となります。解決策は植え込みや植え替えのための人を増やし一気に作業することですが人件費が価格に跳ね返ってしまいます。また各品種のコンポストに応じた植え付け方法にもそれなりのノウハウが必要で、未経験者には容易ではありません。そうした中で植え付けの時間的制約を軽減する他の方法は、人件費の低い現地で予め仮植えを行って持ち帰ることです。幸い日本の税関では土はダメですがミズゴケやヘゴ板等の取り付け材であれば入管できます。2-3ヶ月間程は品質が維持できる仮植えが現地でできれば、国内持ち込み後に余裕をもって植え付けが出来ます。さてそれではどのような仮植え方法があるかが現在の課題です。

Phalaenopsis lindeniiPhalaenopsis mariae

 Phal. lindenii のalbaフォームとPhal. mariaeの黄色ベースの花が開花しています。上段左はフィリピンで入手した野生のalbaフォーム株を4年前に自家交配で得た実生株の一つです。今年は本格的にこの親株よりalbaフォームの実生を作りたいと考えています。右写真はリップの色が比較的濃い一般株です。

 一方下段左は1昨年フィリピンラン園で100株以上あるPhal. mariaeの中から1株見つけたもので、Phal. mariaeのベースが黄色のフォームです。右は一般フォームを示します。こちらは今年8月実生化を行い現在フラスコ内で発芽3ヶ月目を迎えています。数百ある苗から150株程の実生を選択生産する予定です。

Phal. lindenii
Phal. mariae

Bulbophyllum odoratum

 Den. odoratumを検索していたところ、こちらは余り情報が無い一方でBulb. odoratumがよくヒットしました。9月のフィリピン訪問で20株を入手していたため、興味があり関連サイトを見ていたところ、格安と謳った価格で5,000円程、8,000円 - 12,000円程のかなり高価な販売価格であることが分かりました。下写真に示すように葉はかなり大きく、本種は白や薄黄色の穂のような花をつけます。低地から標高2,400mの、高温からクールどころかコールド(夜間平均最高温度10℃)環境にも生息しているそうです。

 こうした種について、低地あるいは高地生息株をその逆に低温あるいは高温で栽培した場合、比較的耐高温/寒性があるものの、それまでの生息温度を無視した栽培が上手くいくとは限りません。例えばパフアニューギニアのクールからコールドタイプのDen. vexillariuscuthbertsoniiの中には比較的高温に耐え得る株があると言った話をよく聞きます。これはその株がたまたま低地生息域であったか、低地生息域株を親株とした実生であることで、これまでの夏をなんとか乗り越えられたに過ぎず、例年よりも暑いと言われるような猛暑が来ると昇天してしまいます。

 Bulb. odoratumのような、植物としては例外的なほどの広範囲な標高差を生息域とする種であっても、産地や標高が分かれば、それまでに育った近い温度での栽培が好ましいことは変わりません。フィリピンでの本種はLuzon, Mindoro, Leyte, Mindanaoのほぼ全土に生息しており、生息域は1,000m以下とされ、中温からやや高温で栽培はし易い株と言えます。往々にして書籍情報に書かれた生息温度範囲内なのに枯れてしまった、あるいは株は難なく育っているのに花が咲かない場合は、その株の生息地と環境温度を調べて見ることが必要かもしれません。 価格ですが本サイトでは2,500円を予定しています。

Bulb. odoratum (Flower: Purificacion Orchids)

Bulbophyllum sp

 マレーシアにて下写真のCirrhopetalumタイプのBulb. spを入手しました。花は園主より、株は浜松での植え込み後の画像です。特徴はセパルの色が緑色であることと、Bulb. kubahense Sarawakに見られるような葉表が濃緑色で葉裏が緑色や赤褐色であることです。ネットで検索をしているのですが、この2つの特徴を満たす種が今のところ見当たりません。入荷していた全株を持ち帰りました。3バルブ程の単位で植え付けたところ100株以上になりました。

 市場実績が余り無い株、またspや新種を入手する場合、例えばフィリピンのDen. papilioなどは200株単位、Bulb. woelfiaeは100株、Sumatra島のDen. ayubiitoppiorumは50株が最小単位で、これ以下の注文ではまず1次サプライヤーは動いてくれません。一方で最少数の保証がされれば、その対価として取引価格は市場の1/5とか1/10になります。この注文量のリスクと価格のベネフィットを2次サプライヤーと、例えば本サイトがどのようにシェアーし合い、相互にHappy-Happyの関係とするかの駆け引きが文化の異なる国どうしでのビジネスの苦労でもあり面白さです。延いてはどれだけ市場価格を押さえることが出来るかに関わります。


Dendrobium odoratum

 本種はスラウェシ島北部標高 800m以下に生息する高温タイプのデンドロビウムです。入手した株は1m以上の15本程の疑似バルブからなる大株で、根が固く絡まっていたため株分けして根をほぐし、バスケットに植え付けしました。通年で開花し匂いがあるそうです。登録が古く低地生息種で花も3-4㎝の大きさがあり、まずまずの見栄えであるにも拘らず、なぜか国内マーケットの情報が見当たりません。


Den. odoratum

Dendrobium parnatanum

 本種はニューギニアIrian Jayaからのユニークな形状の花をつける、2002年登録の比較的新しいデンドロビウムで、高温タイプです。入手した株は小型でネットで見るインドネシア・ラン園の販売サイトにある本種の株サイズも皆同じような大きさであるため、果たしてこれでBSサイズなのかどうかが分かりません。国内市場での情報は見当たりません。

Den. parnatanum

Bulbophyllum sp (perryi ?)

  ニューギニアからの入荷とされるBulb. spを入手しました。ネットで調べていくとBulbophyllum perryi J.J.verm & Kindler 2015があり、葉およびバルブ形状と合わせて、この種の可能性がかなり高いと思われます。Macrocaulia節に分類されています。であれば該当するシノニムもないことから2015年の新種となります。Bulb. perryi名でorchidspecies.comで検索できますが情報は僅かです。クールから中温タイプとされており、浜松ではクール環境に置いています。下写真左は園主から、右は植え付け前の本種です。こちらは40株程ラン園に入荷が見られ、次の入荷があるかどうかが不明であったため全てを持ち帰りました。インドネシアからの第2便で到着したばかりで株の状態は写真が示すように良好です。

Bulb. perryi ?

Bulbophyllum scaphioglossum

 この聞きなれないバルボフィラムは2014年登録の新種で、本種名でネット検索すると花の映像が数点得られます。orchidspecies.comには現在未記載です。情報がほとんどなく本種がニューギニア生息種であること以外分かりません。国内マーケット情報も見当たりません。Bulb. spとして板付けで15株程(マレーシアラン園に入荷していた全株数)を入手し、またおそらく同じラン園からの入手と思われますが、キャメロンハイランドの蘭園にも3株栽培されておりこちらもすべて買い占めました。杉皮板に植え付け、クールから中温環境に置いています。

Bulb. scaphioglossum

ニューギニアからのDendrobium lancifoliumDendrobium insigne

 10月のマレーシア訪問にて入手したニューギニアからのデンドロビウム2点を取り上げます。下写真の左はDen. lancifoliumで、現地では1.5mの程の高さを含む4-50本の疑似バルブから成る大株でした。根が幾重にも回り込んで固まっており、浜松に持ち帰ってこれを5株程に株分けして根を整理した後、バスケットに植え付けました。本種はニューギニアの低地から標高2,000mの高地にまで広く分布し、生息温度範囲が広い種です。高輝度を好むとされています。写真下が浜松にて撮影した花ですが、薄いピンクから赤紫まで色のバリエーションがあるようです。フィリピン生息種のDen. fairchildiaeに似たバルブと花形態です。

 一方、右はオーストラリアクイーンズランドからニューギニアの低地に生息する高温タイプのDen. insigneです。こちらは50㎝ - 1m程のバルブを上下左右、方向性が無い様態で、これまで木に活着させていたのかコブシほどの大きさの根塊から多数の根が1m程の長さで垂れ下がっておりポット植えには適さず、バスケットの底板の一部を外し根を通して植え付け、吊り下げています。


Den. lancifolium

Den. insigne


10月



Coel. rochusseniCoel. dayanaの開花

 昨年本サイトで購入された会員の方からセロジネCoel. rochusseinidayanaの開花写真を送って頂きました。浜松ではこれらセロジネの開花は冬から初春がですが、長野ではこの時期なのでしょうか、大型バスケットに植え付けたクラスター株で見事な開花風景のため画像を紹介します。Coel. rochusseiniは花茎25本、Coel. dayanaは9本とのことです。


Coel. rochusseini

Coel. dayana

フィリピンEMS顛末記

 9月にフィリピンを訪問し、ハンドキャリーで持ち帰ることが出来なかった大型のVandaを中心とした株をEMSで送ってもらうことにしました。現地を今月11日に発送との連絡を受けた際、フィリピンではEMSに使用可能な荷の最大サイズが従来の半分となる60㎝角になったそうです。この結果、曲げることのできない60㎝以上のランはEMSで送ることが出来なくなりました。発送直前にこの新規定を聞いたため、予定していた1mを超えるVanda merrillii搬送が出来ないことが分かり止む無く12月の再訪問で持ち帰ることになりました。

 その後、EMS荷の追跡番号が知らされモニターしていたのですが15から18日になっても’受取人問い合わせ中’との状態で成田税関で停まったままです。20日からはマレーシアに出かけるため、このままでは荷物が届いても帰国後の24日以降でなければ植え付けができないのかと諦めました。そうしたところ、すでにマレーシアに立った21日に税関から浜松に連絡が入り、停まっている理由が知らされました。EMS段ボール箱は5個あり、その一つにAerides odorata 'Calayan'のクラスター1株と、Vanda ustiiが梱包されており、何とCITESではVanda ustiiが10株と申請されているところ、段ボール箱には20株入っているというのです。とんでもない単純ミスをラン園はしてしまったわけです。通常であればこうしたCITESと実態が不一致の荷は、フィリピンの送り主に全箱が返送となるのですが、マレーシアでは前記したように、それなりに多忙な中、何か解決策はないかと、考えざるを得なくなりました。

 1案はVanda ustiiの20株の内、10株を税関で廃棄してもらうこと、その廃棄する10株の選択は当方がマレーシアにいる以上できないので、税関担当者に任せることとし、もし後々問題になる恐れがあるのであれば、マレーシアからの帰国後、選別結果については、当方が責任を負うことを一筆こちらで書いて送る旨を伝えました。担当官からは、受け取り本人が税関に来て10株分を廃棄をする以外、そうした処理は受け入れられないとの回答です。それでは第2案として、Vanda ustii全てを廃棄してもらいたいと伝え、また問題のない4箱はこのままでは枯れる恐れがあるので浜松に直ちに送ってもらえないかと伝えました。翌日になり担当官からはVanda ustiiが入っている箱のみで良いのでフィリピンに返送してはどうかとの提案ありました。当方としてはそれでは、すでに箱詰めから2週間が経過しており、さらに1週間をかけフィリピンに戻し、再びこれを日本に再送していたのては、絶滅が心配される非常に貴重なAerides odorata 'Calayan'クラスターが枯れる恐れがあり何とか避けたいと伝えました。そうしたところ、さらに翌日、税関で検討されたのだと思いますが、それでは税関の方から書式を送るのでその書式で10株、担当官の判断で廃棄する承諾書を書いてもらいたいとの事となりました。その承諾書は受取本人の自筆サインが必要とのことで24日の帰国後に送ることになり、一方問題のない他の4箱は直ちに浜松に送って頂きました。すなわちこちら側の第一案の要望を無理して受け入れてもらったことになります。

 こうして通常であれば1週間でフィリピンから日本に届く荷が2週間を要し、下葉の一部が落ちた株があったことと、Aerides odorata 'Calayan'の10茎の内、2茎の頂芽がダメージを受けていたことを除けば、全体としてはまずまずの状態で、2週間ぶりのかん水と夜間湿度90%の温室で、現在元気を取り戻しています。マレーシアといい、フィリピンからのEMSといい、今回は受難続きでしたが、何とか乗り越えられました。

Coelogyne sp

 銅赤色をした小型の花をつけるセロジネを今回のマレーシア訪問で持ち帰りました。種名は不明です。下がその画像で、花は園主から株は浜松温室にて撮影(30日)したものです。スマトラ島とされており高地生息種と思われます。似たセロジネにフィリピンミンダナオ島標高1,300mに生息するCoel. longirachisが知られていますがラテラルセパルおよびリップ先端形状が異なります。近縁種には違いないと考えられます。20株入荷しており、写真を予めセロジネコレクターの方に送り確認をして頂いたところ始めて見る種であるとのことで希少種と思われたため、全株を入手しました。


マレーシア滞在記II

 マレーシアラン園では6月の訪問でニューギニアに出かける計画がありました。この場合いつもの4日間ほどの日程にさらに5日間を見込む必要があり、行き当たりばったりでは成果が乏しいリスクも考えられるとのことで、ラン園の2代目がまず現地視察をしてからとなりました。
 一方、キャメロンハイランドの’私の趣味’との多発言ラン園内にはパプアニューギニアからの、主にバルボフィラムが多数吊り下げられた薄暗い一角があり、2-300株程のバルボフィラム、種数にして50種程と思われる株が栽培されています。本ページに書きましたように、これらのランにはラベルが無く、花が咲いていない株は全く種名が分かりません。花が咲いていてもspだらけでわからないかも知れません。そこで今回の訪問で、毎回時間の余裕のない中で、園主に質問しながらの選別は困難なので、次回の訪問で、ここにある全ての株を一括して購入したい旨を伝えたところ、それでもよいとなりました。これで面倒な手間がなくなりスッキリします。そこでキャメロンハイランドからセレンバンのラン園に、次回訪問直前に一旦これらを発送してもらい、予めCITES申請を行い、これらを全て持ち帰ることにしました。価格交渉は直接キャメロンハイランドの園主と当方が行い、セレンバンではドキュメント、洗浄、梱包など出荷処理のための一定額の手数料を支払うことで合意したところです。

マレーシア滞在記I

 今年4回目のマレーシア行となりました。当初の計画では9月末でしたが、インドネシアからの第2便の入荷が遅れ今月15日に入荷するとのことで、それでは15日から4日間の日程でと打診したのですが、マレーシア現地園主から余裕を見て18日から4日間にしてもらいたいとの要望があり、それではと、さらに余裕を見て20日から4日間としました。さてクアラルンプールに着いて当然ながら最初の質問は第2便はいつ着いたかです。すると明日だとのこと。これだけ余裕をもって日程を組んだのにまだ到着していない、いつもの怪しげな雰囲気となりました。翌日、到着予定日となりホテルまで迎えに来た園主に、今日着くのは確かかと尋ねると、当のインドネシアのブローカーと携帯で確認の話をし始めました。何やらテンションの低い話しぶりです。話しが終わり、どうかと聞くと、こちらがマレーシアを去る翌日の24日に着くとのこと。その理由はCITES書類に不備があったと言うのです。前々回はインドネシアでは長期間雨が降らずランの状態が悪く出荷が遅れている、前回は市内でテロがあり税関での荷物検査に数日を要している、そして今回はドキュメントです。

 余りのいい加減さに腹を立て、海外から高いコストをかけマレーシアまで来ている客に対して、あれほど入荷日については念を押しているのに、同じことをなぜ毎回繰り返すのかとクレームをつけたところ、しばらくして再びブローカーと話をし始め、なにやら納得したりしなかったりの雰囲気の中でやり取りが終わりました。その結果、明日着くというのです。今の今24日と言い、今度は明日(22日)と言う。まったく呆れます。この明日とはキャメロンハイランドに向かう日で、帰国前日です。どうしてCITES書類の不備が1日で修正できるのか、それならば当初から24日ではなく、明日に発送ができると言えばよいではないか。それよりも一体CITESをいつ税関に出したのかおかしいではないかと言ったところ、やっと園主は真実を語りました。このインドネシアのブローカーは相手のタイムリミットが分かると敢えてその日まで出荷を引き伸ばし、タイムリミット日の夜か翌日に発送になると言うのです。つまり相手の弱みにつけ込んでギリギリまで発送を控え、予定通りに入荷したいのであれば、追加金を支払えば特別に便宜を図ってもよいとの意図らしいのです。園主はインドネシア人は自分のことしか考えないと吐き捨てます。

 ビジネスをするインドネシアブローカーが、こうした倫理感のない人ばかりではないと思いますが、約束した日取りを守らず相手の弱みに付け込む余りに露骨な金銭の要求には呆れます。植物の代金、搬送費はすでに全額支払っているにも拘らずです。さらにその追加金の入金を確認するまで動かない周到さで、さっそく園主の奥さんが銀行に出かけ振り込みを行うことになります。振り込みが昼頃となるため、その日は振り込みの確認を相手が行うのでしょう発送は翌日となります。CITESを修正し認可を受け、インドネシアからクアラルンプール到着まで1日以内での発送がどうしてできるのか聞いたところ、もともとCITESに問題があるとするのは作り話であり、午前10時にインドネシアを発送すれば2時間ほどでクアラルンプール空港に届き、午後の3時には税関で荷を受け取り夕方5時ごろには農園まで持ち帰れるとのこと。

 要は、過去1年程の間、訪問する度に帰国直前か、帰国後に到着していたインドネシアからの荷物は、予定日までに送れないあれこれの事情が実際あった訳ではなく、至急便としたいのでその手数料はと言ったオファーが受け取り側からなければ、ブローカーが嫌がらせで遅らせているだけだったようです。発送準備が出来たことを確認し、直ちに追加金の振り込みを行っていれば翌日には届いていたのです。おそらく1万円程と思われるこの振り込みが無ければ植物がダメになる直前まで適当な理由をつけて引き延ばしても追加金を得る算段なのです。つまりこれまで海外から来た客をそっちのけで、ブローカーと園主とが意地の張合いをしていたことになります。ならばこれまで哀れにも死に体で到着していた植物は一体どうしてくれるのかと言いたくもなります。相手の作意が分かれば、1万円程で、数百株の状態の良い株が得られる方法が分かっただけでも良しとしようと、胃が痛くなりそうな気分です。ランに関していえば”インドネシア時間”は同国のインフラの問題ではなく、ブローカーの心のインフラが出来上がっていないのが原因でした。

 到着の翌日2日目は、こうして何とか最重要な問題に目途が付き、セレンバンのラン園で、1か月ほど前に届いた1便での株の選別を行いました。案の定、2割程のクール系ランの多くは1ヶ月間高温環境に置かれて瀕死の状態で、再生可能な株を選別しました。3日目は日帰りでセレンバンとキャメロンハイランドを往復するタフなドライブです。キャメロンハイランドまでは渋滞が無ければAH2ハイウエイを120㎞でドライブし続けてキャメロンハイランドの入口まで3時間で着きますが、そこから山道に入り曲がりくねった道を登り、実質一部に渋滞もあって、片道5時間をかけてキャメロンハイランドのラン園までかかります。高速道路での往復10時間程をドライバー一人では危険なため、園主と園主の奥さんが交代での運転です。これまでの訪問で’私の趣味’発言の多いラン園では、今年3度目の訪問で常連になったせいか、めっきり趣味発言は減りました。無事買い物を終えてホテルに戻ったのは夜11過ぎです。一方、ラン園の2代目は午後クアラルンプール空港税関までインドネシアからの荷の受け取りです。

 キャメロンハイランド道路わきの多くの露店はこの時期果物が取れるため、その販売が主でランを扱っている店は余りありませんでした。1件だけ立ち寄りました。ランが露店に並ぶのは果物が収穫できなくなる農閑期だそうです。

 4日目は朝8時から選別とラベリング、洗浄、梱包が続き、夜7時頃まで、いつものようにラン園スタッフと一緒になって立ち作業で、その後、ランの入った大きな段ボール箱を持ってクアラルンプール国際空港に向かいます。夜行便のJALで翌日(24日)の早朝、成田に帰国となります。今年に入り4回目のマレーシア行ですが、毎回似たり寄ったりの休む時間のない日程です。インドネシアからの第2便もお金の力で3日目の夕方に届き、今回はspや新種がかなり多くそれなりの収穫であったと思います。体は疲労困憊ですが、それ以上に未知のランに出会えることの方が毎回の楽しみです。

Bulb. virescens Cameron Highlandタイプ

 今回のマレーシア訪問で入手したBulb. virescensです。下写真に見られるように状態は極めて良いので今回は1ヶ月程の順化栽培後の販売を予定しています。


Cameron HighlandのBulbophyllum

 6月にCameron Highlandで入手したバルボフィラムが1㎝程の小さな花をつけました。Codonosiphon 節と思われますが、はたして地元生息種なのか、ニューギニアなのかは不明です。中温栽培です。


Aerides inflexa Cluster

 本種はボルネオ島、スラウェシ島およびフィリピンに生息し、フィリピンからの今回のEMSで送られました。Aerides inflexaは花模様がAerides quinquevulneraと類似しており、一見同種と感じますが、spurの形状とその先端が前方に向かっている点に特徴がありその違いを判断します。下写真が今回入手のクラスター株で12茎から成ります。Mindoro島生息株とのことです。POS(Philippine Orchid Society)の理事の紹介で、会員の方から入手しました。入賞株のようで’wildroot princess'というラベルが付いていました。野生のプリンセスとでも表現したいのでしょうか。こちらも開花を見たいものです。


Aerides inflexa Cluster

Aerides odorata calayan

 Aerides odorataは中国、ネパール、ヒマラヤ、タイ、ミャンマー、ベトナム、マレーシア、フィリピン、ニューギニアと東南アジアの広範囲に渡って生息し、近縁種としてAerides lawreciaeおよびAerides quinquevulneraが知られています。フィリピンではミンドロ島とPalawanに生息します。一方、Aerides odorataには一般種とは異なり花全体がピンク色をしたAerides odorata 'Calayan'と呼ばれるフォームがあり、こちらはCalayan諸島にのみ生息しています。下写真は左が一般種、右がCalayanaフォームです。花色は別種と思われるほどの違いがあります。


Aerides odorata

Aerides odorata 'Calayan' (Image:Purificacion Orchids)

 同じようにAerides quinquevulneraにもCalayan諸島には変種 var. calayanensisがあり、バステルピンクのフォームをもちます。Aerides odorata 'Calayan'と同種の可能性があります。これらCalayan諸島のAerides odorataは現在、本来の生息域ではまず見ることができないようで、すでに絶滅したのではないかと言われています。今回、このAerides odorata 'Calayan'の7茎から成るクラスター野生栽培株をフィリピンからEMSで入手しました。それが下写真です。10年以上栽培された趣味家からの入荷と思われます。10本程の開花後の花茎が残っていましたが上写真右の花が200輪程開花すれば、相当の見ごたえがありそうです。


Aerides odorata 'Calayan' Cluster

Phalaenopsis sumatrana mentawai

 こちらも胡蝶蘭原種栽培を始めて初めて入手するmentawai諸島からのPhal. sumatranaです。実際の花をマレーシアラン園で見ましたが、白色をベースに鮮赤色の棒状斑点がまだらに入るPhal. zebrinaのようなフォームでした。園主はPhal. zebrinaと言うのですが、Phal. zebrinaはボルネオ島Sabah州とフィリピン領Palawanに生息し、mentawai島には生息が学術的に確認されてはいません。Phal. violacea同様に本土スマトラ島とは異なるフォームが出現すると面白いのですが、果たして持ち帰った株でどのような花が咲くのかカルス形状を見たいものです。本株もmentawai島からの野生株であり、こちらも前記同様に葉長は一般種と比べて長く30㎝ほどです。


Phal. sumatrana mentawai

Vanda merrillii var. rotorii クラスター株

 フィリピン固有種のVanda merrilliiは黄色をベースに赤褐色の一般種と、全体が黄土色のvar. immaculataおよび全体が赤褐色のvar. rotoriiが生息します。情報によると近年では本種の生息地のプランテーションのため一般種が絶滅状態にあるとのことで入手難になっているようです。今回EMSにて一般種を10株程を入手しました。一方、下写真の2株はvar. rotoriiのクラスター株です。かなり込み入っており何本あるか写真では分かりませんがそれぞれ12茎から成ります。

Vanda merrillii var. rotorii

Phalaenopsis appendiculata野生株

 現在一般市場で入手できるPhal. appendiculataは実生ですが、12年ぶりにマレーシアで野生株を得ることが出来ました。まず驚くことはその大きさです。左が今回入手したボルネオ島野生株で、右下が通常市場で販売されているBS株です。その違いに圧倒されます。左の株の葉長は9㎝です。


Phal. appendiculata wild

Mentawai島胡蝶蘭原種

 胡蝶蘭原種の栽培と収集を始めて15年間程になりますが、今回のマレーシア訪問で初めて野生のPhal. violacea mentawaiを得ることが出来ました。インドネシア領Mentawai諸島は、地殻変動によってスマトラ島本土から分離して誕生した島々です。Mentawai海峡を挟みスマトラ本島と隔離されることにより、Mentawai諸島に残ったPhal. violaceaは独自の進化を遂げることとなり、これが今日Mentawai諸島に生息するPhal. violacea mentawaiと考えられています。Phal. violaceaPhal. violacea mentawaiとの違いは本サイトの「原種胡蝶蘭の類似種とグループ」に記載しています。

 これまでMentawai島から直接本種を得ることはほぼ不可能でしたが、今回、Mentawai諸島より、Phal. violacea mentawaiと共にPhal. sumatrana mentawaiがマレーシアに入荷しました。胡蝶蘭の実生株と野生株の大きさの違いは入手毎に本ページに掲載していますが、野生株の常として本種も実生とはサイズの全く異なるものでした。下写真は左が実生BS株、右が10年近く実生を栽培した本サイトでの株、中央が今回入手したMentawai島からの入荷株で葉長35㎝です。


Phal. violacea mentawai

Bulbophyllum

 下写真は今回のマレーシア訪問にて入手したバルボフィラムの一部です。写真は園主からのコピーです。下段右はBulb. puhudiiです。


マレーシア訪問I

 20日から24日までマレーシアを訪問しました。今回はバルボフィラムおよびデンドロビウムの新種、あるいはこれまで世界市場でほとんど見られない品種が多く集まったとのことで、今年に入りマレーシアは4回目の訪問となります。以下は今回入手した品種となります。
  1. Bulbophyllum (総数29種。内半数がパプアニューギニア生息種)
    新種あるいはSP: 12種
    入手難種: 6種 (geniculiferum, mastersianmum yellow, virescens highland, cornu-ovis, sulawesii-red 等)
  2. Dendrobium (総数16種)
    新種あるいはSP: 3種(parnatanum 等)
    入手難種: 5種 (odoratum, ayubii, anosmum NG 等)
  3. Phalaenopsis (総数12種)
    入手難種: 3種(violacea mentawai wild, sumatrana mentawai wild 等)
  4. Coelogyne (総数4種) 
    新種あるいはSP: 4種
  その他Jewel Orchidの2新種があります。これらは今後本ページにて植え付けと並行して逐次紹介する予定です。

今月の開花種ページ再開

 各月での浜松温室にて開花した花を掲載するページをしばらく休んでいましたが更新しました。多品種栽培のため掲載の開花種は開花中の種の6割ほどです。特に南米生息種はカトレア類を除いても480種あり、すべてを掲載するには余りに種類が多く目についたものだけを掲載しています。

Bulbophyllum sp. aff. fenixii

 この聞きなれない名前のバルボフィラムが開花しました。1㎝程の小さな花です。 Bulb. fenixiiはフィリピン生息の小型種でセパル・ペタルは黄色から薄オレンジ色をしていますが、本種は下写真が示すように全く異なるフォームです。一方、下写真に似たバルボフィラムにBulb. leptocaulon名の種があるものの、形態学的にはBulb. fenixiiに近く、現状においては本種名とするのが正しいとの説があります。いずれもBulb. aestivale、Bulb. catenulatum、Bulb. pardalotumなどと同じLeptopus節です。

 Bulb. sp. aff. fenixii名での市場情報は見当たらず、国内入荷がこれまであったのかどうかはネット上の検索では分かりません。フィリピン固有種でルソン島Nueva Vizcaya州の標高1,200mの生息のため、標高800mの黄色の花の咲く高温タイプのBulb. fenixiiよりは中温が好ましいと思います。9月のフィリピン訪問で初めての入荷種で20株程を順化中です。

Bulbophyllum sp. aff. fenixii

Bulbophyllum annandalei キャメロンハイランド入手株

 Bulb. annandaleiはタイおよびマレー半島の標高1,000m程に生息するバルボフィラムです。6月末のキャメロンハイランド訪問で入手した本種が開花しました。それまで本種は数多く所有しているのですが、さらに入手したキッカケは、下写真左に見られるように一般形状のセパルペタルが長く伸びたフォームに対してキャメロンハイランドで入手した株写真右は短くやや太くなっている形状の違いからです。この形状の違いが地域によるものかどうかは現在未確認です。何となく丸くまとまっており優しい感じがします。キャメロンハイランドタイプは人気があり、前回数株持ち帰りましたが全て販売済みとなり、今月の再訪問で幾らかを仕入れてくる予定です。


Bulb. annandalei 一般フォーム

Bulb. annandalei キャメロンハイランドフォーム

Coelogyne tomentosa?

 今年1月にマレーシアの趣味家宅を訪れた際、何か変わったセロジネを持っていないかどうかを伺ったところ、マレー半島のGenting Highlandで入手した種名は分らないが黄色の花の咲くセロジネを持っているのだが、クアラルンプールでは気温が高すぎて開花しないので、興味があれば譲ると言われ手に入れたセロジネが開花しました。これが下写真です。マレーシアの趣味家の大半はデンドロビウムやVandaなどが興味の対象で、セロジネはほとんど関心がない、それほど身近な植物のようです。Genting Highlandは標高1,700mのマレーシア国内ではCameron Highlandと並んで有名な高原リゾート地です。生息域と花形状を検索比較して、Coel. tomentosaではないかと思われます。であればマレー半島以外にスマトラ島、ボルネオ島の標高1,000mから2,000mに生息するクールから中温系のセロジネとなり、気温34℃、1年を通して日本の熱帯夜が続く場所では、確かに花は咲かないのも理解できます。シノニム(別名)にCoelogyne dayana var. massangeanaとかColelogyne cymbidioidesがあるそうですが、そう言われれば、写真の花は花柄が長い点で異なりますが、Coel dayanaのセパル・ペタルを黄色くしたよう色や、シンビジュウムにも似たような花があるようにも感じます。中温環境で木製バスケットでの栽培です。

Coelogyne tomentosa ?

マレーシア訪問予定

 9月初週のフィリピン訪問で1,000株程を持ち帰り、残りはEMSでの発送を依頼していたのですが、予定よりも3週間遅れでドキュメント類の準備が整い、来週始めには発送ができるようになったそうです。フィリピンからのEMSは凡そ5日間を要するため来週末に浜松到着の予定です。一方、マレーシアですが、こちらは60種を超える原種を集めるように依頼していました。最近はボルネオ島生息種よりも、ニューギニアIrian Jayaを含めインドネシア生息種が多くを占めるようになっています。しかしインドネシアもボルネオ島生息種いずれもマレーシアクアラルンプールを通して日本に輸入しています。インドネシアに直接出かける方法もあるのですが、生息国毎に出かけていては毎月海外旅行となってしまうためそれは体力的に無理があり、東南アジア種はマレーシアとフィリピンに一旦集めてから日本に入れている訳です。これが問題でインドネシアにはインドネシア時間というビジネスの視点からは理解困難な時間感覚があり、まるで異次元の時空文化としか言いようがありません。

 さらにマレーシア農園では、国内外を問わずランが届くとそれらをほぼベアールートのままミズゴケの上に重ねて置き根の周りをミズゴケで覆うか、ビニールポットにミズゴケで仮植えし、34℃の気温下で保存します。このため高山系のランは1週間が限度で、これを超えると一気に歩留まりが悪くなり、日本に持ち帰っての順化手当も水の泡に帰すことがしばしばです。このため今後はインドネシア便が到着したらすぐさまラン園の2代目に成田まで持ってきてもらうことになっていました。今回のメールによると今月15日頃にインドネシアからラン便が届き、今月末に成田にもって行くとの知らせです。それでは凡そ2週間、上記のような環境でランを保管することになり、品質維持ができません。20℃近い異なる環境で生きてきた植物を扱うことに、フットワークの悪いインドネシア時間とマレーシア時間が合わさっては、自分がランになったような気分になり忍耐も限度で、再来週には急遽マレーシアに出かけることにしました。

 高地系ラン、言い換えればコールドからクールタイプのランを取り扱うには、夜間15℃以下に制御可能な温室が必須で、キャメロンハイランドのような高地であれば兎も角、低地ではこうした設備が農園になければなりません。しかし熱帯地域にクール温室を用意するにはそれなりの建築と維持コストがかかる反面、この暑い国でクール系ランをコレクションしている自国マレーシアの趣味家は少なく、マーケットサイズを考えるととても決断ができず、では海外市場ではどうかと言えば、それまでの実績がないことから、”鶏が先か卵が先か”の問題となり、やはり決断には至りません。

 それではいっそのことと考え、本サイトがマレーシアのラン園敷地の中に本サイト所有の温室を建て、ラン園の作業員に兼業維持してもらい、備品や消耗品類は現地調達で、作業手当と温室維持費は当方で負担する方法を提案しているところです。本サイト専用ともなれば10m x 6m程のハウス1棟で十分で、多段ベンチ構造とすれば5,000株以上は保管できます。ハウスは天井を含め密閉断熱型で照明はLEDを用い、温度は15-25℃が制御できること。こうしたストックルーム(温室)があれば何よりもマレーシアを訪問する回数を年3回ほどに減らすことができ、この経費削減とランの品質向上による歩留まり率(高山系は現在50%以下)が飛躍的に上がることの方が低コストになるという目論見です。これまでの市場に余り見られないような珍しい種を求めれば求める程、それまで人目につきにくかった、より標高の高い生息種が多くなります。今回の訪問ではこのような温室の見積りを算定してもらうことも目的の一つです。しかしこうした緊急訪問は今回限りにしてもらいたいものです。フィリピンからのEMSのランの植え付け1週間もしない内にマレーシアでは体力も限界です。こうなれば訪問ついでにキャメロンハイランドでの栽培種は日本で人気が高いので、こちらも再訪問してきます。

Dendrobium tobaense

 本種はデンドロビウムの中で比較的栽培が難しいとされています。原因の一つは中温タイプであるため、昼間の最高平均温度は30℃以下、夜間平均最高温度は20℃以下が好ましいこと、また冬季にはやや植え込み材を乾燥気味にする必要があることが栽培を難しくしていると思われます。春に株を入手し無事に夏の暑さを乗り越え、秋に開花を得た後、やがて落葉が始まり、初めての冬を経て翌年の春を迎えたものの、何となく株に元気がなく新芽も現れず、2度目の夏を迎える頃には生気が消え、鉢から取り出して見ると根はほとんど黒ずんでいて生きた根が無いと言った状態を多くの栽培者は一度は経験しているのではないかと思います。

 本サイトでは多品種を同じ場所で栽培している都合上、それぞれの種に対応したかん水量を加減することは困難で、すべて同一量の散水を行っています。このため冬季の過かん水を避けるために素焼き鉢にミズゴケとクリプトモスを等分に混ぜた植え込み材にして気相を大きくとり、濡れ過ぎを避けることにしました。これで枯れることはなくなり新芽が20株程の殆どの鉢で現れるようになりました。冬季は植え込み材を乾燥気味にすれば良いのかと言えば、完全な乾燥は逆効果で、常に湿った状態が好ましいことは他の種と同様です。この湿った加減が難しいことになります。よく栽培について書かれたサイトで、冬季は水を控えて乾燥気味にと言った表現がFormosae節のデンドロビウムには使用されています。生息地での乾期には雨が余り降らず、これに倣って冬季はほとんどかん水をしないで乾かした方がよい、例えば1週間に一度程度のかん水で良いと思い込んでいる人も多いと思います。もしかん水を控え、鉢の中を一時的であれ完全に乾燥させるのであれば、一方で生息地では雨の少ない時期であっても夜は常に霧が発生して夜間の湿度は極めて高いことから、これも再現しなければならず夜の湿度を90%程にする必要があります。こうした環境設定が難しいのであれば、鉢の中は常にほどほどの湿り具合が必要となる訳です。生息地の環境情報は重要ですが、これを完全にシュミレーション栽培することはほとんど不可能です。

 本サイトでは素焼き鉢と2種類混合の植え込み材にすることで、春から夏にかけて新芽が現れるようになり、秋ごろには10㎝程の疑似バルブと複数の葉が得られるようになりました。また本サイトではミズゴケで根を抑えたヘゴ板付けも10株程で検証しています。ヘゴ板への取り付け方法が好ましいかどうかはまだ1年間の観察が必要です。下写真は今月3日に開花した直後のDen. tobaenseです。左右のペタル間スパンは10㎝強で2-3日後には若干広がると思われます。今年4月入荷の株で低-中温環境でヘゴ板付けの栽培です。

Den. tobaense

Bulbophyllum membranifolium, Dendrobium amboinense, Bulbophyllum uniflorum

 9月末から11月初旬は多くのランにとって最も成長が活発となる時期です。新芽や新根の発生や伸長がよく見られます。その理由は昼間の最高温度が30℃を切り、夜間温度が18-20℃の、中温から高温タイプにとって最適な栽培温度になることと、温度が下がることで窓を閉める時間が長くなったり、換気扇の稼働率が下がり、温室内の湿度が高くなることが大きな要因です。この時期に株を大きく育てることが来年の花付に影響するため、施肥もまた重要となります。

 10月初旬の現在、開花している比較的目立ったバルボフィラムとデンドロビウムを写真に撮りました。Bulb membranifoiumは中温、Bulb. uniflorumは高温、Den, amboinnseは一日花で知られていますが高温タイプです。


Bulb. membranifolium

Den. amboinense

Bulb. uniflorum Sumatra


前月へ