栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2024年度

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12月

現在(7日)開花中のBulbophyllum inunctum Malaysian form

 Bulb. inunctumはマレーシアとフィリピンフォームがあり、マレーシアフォームの花サイズは13-14cm(縦幅)、一方フィリピンフォームはややマレーシアフォームと比較して小型になりますが、いずれも見栄えのあるバルボフィラムです。J. Cootes氏は著書Philippine Native Orchid Species 2001でなぜこれほどSpectacularな種がフィリピンで長い間発見されていなかったのか驚きであると述べています。先月末1株に10輪同時開花のフィリピンフォームを取り上げましたが、今回は現在開花中のマレーシアフォームで、こちらも1株に10輪が同時開花したことから撮影(6日)しました。

Bulbophyllum inunctum Malasian form

 ところで本種についても公示されている種名について不可解な点があります。それはBulbophyllum inunctum名でOrchidRootsを検索すると、そのページに花画像は無く、本種はBulbophyllum membranifoliumの亜種としてBulbophyllum membranifolium subsp. inunctumのリンクアドレスが表示されています。そのリンク先にはBulbophyllum membranifolium subsp. inunctum, (J.J.Sm.) J.J.Verm., P.O'Byrne A.L.Lamb 2015との記載と共に、マレーシア及びフィリピンフォームのBulb. inunctum花画像が多数掲載されています。 不可解な点とは、視覚的な形状が明らかに異なるBulb. membranifoliuminunctumがなぜ亜種の関係とされたのかということです。仮に同種であればBulb. membranifoliumの記録はHook. f. 1890とされる一方で、Bulb. inunctumはJ.J. Sm. 1909であることで種名は先行記録優先の慣行からBulb. inunctummembranifoliumの亜種であるとの位置づけは正しいと言えますが、両種の実態からは2015年の近年になって同種と見做され亜種とされた同定根拠が分かりません。下画像に示すように上段がBulb. inunctumで下段がBulb. membranifoliumです。セパルペタルやリップ形状に個体差あるいは地域差を超えた明らかな相違が見られるにも拘わらず亜種とは云え、これらが同種とは思えません。


Bulbophyllum penduliscapum及びBulbophyllum longissimum

 昨年12月、本サイトにて紹介したミンダナオ島生息のBulb. penduliscapumを今年初め2株に株分けし、それぞれを60cm長の杉板に植え替えたところ、10月に入り花芽が発生し先月末から両株で開花が始まりました。画像左がその開花風景です。その右側の株ではこれから開花する花序1本を含め5本が、また左側の株では2本の開花となっています。これほどの花が一斉開花した実態を見るのは初めてで壮観です。本種の栽培で今回気付いたことがあります。IOSPEによると本種の生息域は300m-1,100mとされます。こうした情報から当初、低地生息種として高温環境での栽培としました。しかし今年の7月から始まった猛暑により、温室内の夜間平均温度が30℃前後となり、この環境が1ヶ月近く続いた8月になって本種の葉に変調が見られたため、夜間平均温度が25℃以下となる中温室に移動しました。その結果、葉に生気が戻りました。当サイトが栽培する株はそうした様態から標高500m以上の生息種ではないかと推測します。
 右画像のBulb. longissimumは先月も取り上げましたが、これまで当サイトでの自然体での本種の最長サイズは37cmでした。今回計測したところ38cmを超えていたため再度の撮影となりました。栽培環境も分かったことから来期は肥料を十分与え、40cm長を目指したいと思います。

Bulbophyllum penduliscapum Mindanao Bulbophyllum longissimum Malaysia

現在(2日)開花中の6種

 下画像上段右のBulb. sp16は深紅でよく目立つ花色が特徴ですが花サイズが1.5cm(縦幅)でリップ形状がBulb. weberiumbellatumなどとは異なっていることから現在も種名は不明のままです。Den. lamellatumは1株にこれまでに無いほどの多数の花が同時開花しています。本種の現在の支持材はバージンコルクです。花後には杉板に植え替える予定です。

Bulb. aurantum / coroliferum white PHP Bulbophyllum membranifolium Surigao Bulbophyllum sp16 Luzon
Dendrobium lamellatum Java Vanda jennae Sulawesi Vanda merrillii Luzon

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