4月
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株洗浄が終了したVanda ベアールート株 | タイマー付き噴霧ノズルセット |
Coelogyne salvaneranianaとCoelogyne vanoverbergthiiについて
Coel. salvaneranianaとvanoverbergthiiはいずれもフィリピン生息の固有種で、前者はミンダナオ島スリガオ州標高700m生息の高温タイプ、後者はルソン島マウンテン州標高1,700m生息の低温タイプとされます。当サイトがCoel. salvaneranianaを得たのは2019年初頭、種名由来のsalvanera家が運営するPulilan Bulacanのラン園内でオーナからの直接の入手でした。この時、現地にて当サイトが撮影した開花中の花画像はリップ中央弁全体が赤みの強いオレンジ色で、先端が尖った3角形でした。多数の株の中から本種を5株程持ち帰り、2022年に開花した花の中央弁は丸みのあるオレンジ色で、かなり形状が異なっていました。しかし種名由来のラン園からのセロジネでもあり、その違いは個体差であって、種名に間違いはないであろうと、その開花画像を当サイトのセロジネのページに加えることにしました。一方で8年程前にフィリピンのPurificacionより入手したCoel. vanoverberghii名のラベルを付けた株も当サイトでは栽培していました。この株はその生息域情報から低―中温室にて栽培していたものの開花がなく、これまで多くの種での経験から生息域情報に疑問を持ち、2年前に高温室に移動して今回初めて開花を得ることが出来ました。下花画像は、左がSalvaneraラン園にて撮影のCoel. salvaneraniana、中央がそのラン園からCoel. salvaneraniana名で入荷し当サイトで開花した花、右が今月当サイト高温室にて開花したCoel. vanoverberghiiラベル名のそれぞれの花です。Coelogyne vanoverberghii Complex |
Coel. salvaneraniana | Coel. vanoverberghii | Coel. vanoverberghii aff | |
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Labellum Mid-lobe |
no-info 0.5cm(L) x 1.2cm(W) |
2.6cm(L) x 1.7cm(W) 1.3cm(L) x 1.0cm(W) |
2.6cm(L) x 1.7cm(W) 1.2cm(L) x 1.7cm(W) |
Dorsal sepal Petal Lateral sepal |
2.5cm(L) x 1.0cm(W) 2.4cm(L) x 0.3cm(W) 2.3cm(L) x 0.8cm(W) |
3.0cm(L) x 1.2cm(W) 2.9cm(L) x 0.3cm(W) 3.0cm(L) x 1.0cm(W) |
3.2cm(L) x 1.4cm(W) 3.3cm(L) x 0.4cm(W) 3.2cm(L) x 1.0cm(W) |
Leaf size Flowers number Flower size |
38.2cm(L) x 4.3cm(W) 8max 4.0cm |
28.0cm(L) x 5.5cm(W) 6max 6.0cm |
45.1cm(L) x 7.2cm(W) 8max 6.9cm |
今週開花の5種
下画像種は22日の撮影です。Den. aureilobumは倒立開花の1日花ですが、年に4回ほど開花が見られます。今回サイズや類似種との比較画像を青色種名のリンク先ページ内に追加しました。Dendrobium auriculatum Luzon | Dendrobium aureilobum Cameron Highlands | Dendrobium stratiotes NG |
Dendrobium junceum Luzon | Bulbophyllum sulawesii semi-alba Sulawesi |
現在開花中の17種
現在開花中の17種を選んで撮影しました。下画像でBulb. sp aff. macranthumは10年ほど前にBulb. cheiriに紛れてフィリピンルソン島から入荷したバルボフィラムで、これまでのネット検索からは該当種が見当たらず未登録種ではないかと思います。下画像のCoel. sp aff. vanoverberghii はCoel. vanoverberghiiのラベル名で入手したセロジネですが、Coel. salvaneranianaとの違いはリップ中央弁の形状が前者は3角形(arrowhead)、後者は4角形(square)とされます。しかしリップ形状にはそれらの中間体があり、今一つ同定が困難です。今回は下画像種が低温室では成長や開花が無く、高温室にての開花であることからCoel. sp aff. vanoverberghiiとしました。標高1,700mの低温域生息種とされるCoel. vanoverberghiiがこの数年間の国内の高温室環境での生存は無理なためです。(後述:本種の詳細情報は追ってセロジネページにCoel. vanoverberghii affとして追加します)。Paph. rothschildianumはこのところ開花する殆どの株で、花の左右ペタルスパンサイズが30㎝以上あり、どうも当サイトではこれが標準的なサイズのようです。Aerides odorata alba Mindro | Bulbophyllum claptonense Borneo | Bulbophyllum lobbii giant Malaysia |
Bulbophyllum sp aff. macranthum Luzon | Bulbophyllum papulosum Negros | Bulbophyllum fascinator Mindanao |
Coel. sp aff. vanoverberghii Philippines | Coelogyne pachystachya Thailand | Dendrobium macrophyllum Luzon |
Dendrobium taurinum Negros | Den. cinnabarinum angustitepalum Borneo | Dendrobium crocatum Malaysia |
Phalaenopsis philippinensis Luzon | Phalaenopsis corningiana Borneo | Phalaenopsis corningiana Blue-lip Borneo |
Vanda helvola Sumatra | Paphiopedilum rothschildianum Petal: >30cm long Borneo |
当サイトの販売について
当サイトでは、販売は2年前から再開しており、現在は予約制で、温室に来られ持ち帰りのできる方のみの、いわゆる店頭販売となっています。販売株リストなどは公開しておらず、当サイトのネットページから希望される種名やサイズなどの情報をメールで頂き、販売可能か、またそれらの価格等のやり取りをした後に、浜松までお越し頂いております。購入希望種を決めずに温室に来られ、現場で希望する種を選び持ち帰る方もおられ、こちらの方が多いのが現状で、毎月来られる方もおります。Dendrobium ellipsophyllum について
Den. ellipsophyllumはタイ、ラオス、ミャンマー、ベトナム、中国雲南の標高1,000m以下に生息のデンドロビウムとされます。当サイトが栽培する本種は、2017年フィリピンPurificacionからPalawan生息のsp(種名不詳種)として入手したもので、初入荷種とのことでした。花形状からはDen. ellipsophyllumに似しているものの、当時は本種がPalawanに生息している記録が無く、またCootes氏著Philippine Native Orchid Species 2011にも本種の記載はありませんでした。しかしセパル・ペタルやリップにはPalawanと大陸系種との相違点が見られないことから2019年以降、Palawan種もDen. ellipsophyllumと見做し、今にちに至ります。一方で、当サイトの本種ページの特記事項には「種名については要検討」としています。その理由は花形状とは違って本種の葉や疑似バルブが大陸系とは異なるためです。大陸系の葉はその種名由来であるellipso.. = ellipse、すなわち”楕円”形であり、また疑似バルブも多くのDistichophyllum節に共通したDen. uniflorumのような太さと立ち性に対し、Palawan種の葉は細長く線形で、バルブも細く、新芽からの成長期は直立して伸長するもののやがて40㎝を越えると水平方向に向かう半下垂性が見られます。そこで大陸系Den. ellipsophyllumの葉やバルブ形状にPalawan種に類似するような形状がないか、今回の開花を機にネットで可なり調べました。しかし線形葉を持つDen. ellipsophyllumは見られませんでした。Den. ellipsophyllum orange | Den. ellipsophyllum green | Den. ellipsophyllum on cedar board (60㎝ long) |
Den. ellipsophyllum Green Palawan |
現在(13日)開花中のデンドロビウム3種
Den. igneoniveimは久々の登場です。現在7株ある本種もDen. aurantiflammeum同様に一昨年の猛暑の影響で作落ちがあり、疑似バルブがそれぞれ2-3本になりましたが、昨年から栽培場所を変えることで現在は新芽も増え成長を続けています。Den. ovipostoriferumは現在15株程を栽培しており通年で開花が見られます。本種のリップはオレンジ色ですが、今回は赤みの強い花を選んで撮影しました。Den. junceumはDen. carinatumとはセパル・ペタルの線状模様の有無で通常識別できますが、こうした模様は薄く消えているものもあり、確実な識別はリップ中央弁基部の突起形状でその違いが分かります。Dendrobium igneoniveum Sumatra | Dendrobium ovipostoriferum Borneo | Dendrobium junceum Luzon |
Bulbophyllum magnumの植替え例
2013年発表のBulb. magnumの植替えを行いました。本種はバルブ間を繋ぐリゾームが長く、ポットやバスケットへの植付けでは、2年もすればバルブは容器を飛び出し、やがて空中に晒された根の先端部が枯れ、株は作落ちへと向かいます。当サイトでの本種の栽培は、これまでは炭化コルクでその植替えの様子や方法についての詳細は、本ページ2023年2月に報告しました。現在の新たな取付材は全て杉板に替わっています。Bulbophyllum magnum | 植替え前の株様態 | 植替え後の株 左:正面、右:側面からの撮影 |
現在(8日)開花中の15種
Den. atjehenseとDen. deleoniiは開花間もない花画像を今月と先月にそれぞれ掲載しましたが、現在全開状態となっていることから再度撮影しました。Den. aurantiflammeumは1昨年の猛暑による作落ちから2年近く経ち、開花も見られるようになりました。この1年間で新たに発生した多くの疑似バルブの成長は盛んで来年には大量の開花が期待できそうです。Den. leoprinum semi-albaは昨年から開花を続けています。Dendrobium atjehense Sumatra | Dendrobium deleonii Mindanao | |
Dendrobium taurinum Mindanao | Dendrobium aurantiflammeum Borneo | Dendrobium bicolense Luzon |
Dendrobium leporinum semi-alba NG | Dendrobium lawesii white NG | |
Dendrobium roslii Pen. Malaysia | Dendrochilum coccineum Mindanao |
Bulbophyllum virescens sulawesi Sulawesi | Bulbophyllum lasianthum Borneo | Bulbophyllum gjellerupii PNG |
Bulbophyllum bandischii NG | Bulbophyllum infundibuliforme Ambon Is. | Coelogyne pandurata Borneo |
Vanda limbata Lombok Is. | Paphiopedilum rothschildianum Borneo | Schoenorchis buddleiflora Borneo |
Bulbophyllum virescensと当サイトのBulbophyllum sp03について
現在、当サイトに掲載のBulb. sp03が開花中です。本種は2015年12月にマレーシア経由でスラウェシ島から入荷したバルボフィラムで、2020年に初花を得て、同年5月の歳月記に本種の同定についての経緯を報告しました。この中で本種は、Bulb. virescens、uniflorum、aeoliumと同じBeccariana節であることは確かなものの、それらとはいずれも似て非なる形状で、総体的に同一性が感じられず、今日までBulb. sp(種名不詳種)として本種を位置づけてきました。そこで今回の開花を機に再度調べてみました。前記3種と比較すると、本種はややBulb. virescens寄りであり、またスラウェシ島にはBulb. virescensが生息するとされるものの、Bulb. uniflorumやBulb. aeoliumの記録はありません。さらに今回新たなOrchidRootsサイトのBulb. virescensの検索では、Bulb. virescens(J.J.Sm.1900)はBulb. ericssonii(Kraenzl. 1893, Kew)のシノニムとの記載があるもののそのページには画像は一切なく、Bulb. ericssoniiへのリンクが掲示されています。そしてそのリンク先には、多数の現在ネットに見られるvirescens画像が表示され、驚くことにそれらの中のトップ画像に当サイトのsp03に酷似した花画像がvirescens名で表示されていることが分かりました。すなわちsp03の種名はBulb. ericssoniiであるものの、その慣用種名はそのシノニムであるBulb. virescensに相当することになります。またIOSPEにおいてBulb. virescensで検索すると、その画像が見られるものの、ページ内に記載の種名はBulb. virescensではなくBulb. ericssoniiとなっています。こうした背景は、両者は同種ではあるもののBulb. ericssoniiの記録がBulb. virescensよりも7年程早く、原則として種名は先行記録名が用いられるためです。OrchidRootsは前項でも述べましたが、種名と画像の整合性は現在世界で最も信頼のあるサイトであり、その背景に多くの研究者や栽培経験者が寄稿・制作しているのではと思います。こうした状況からは、現時点においてsp03はその種名をBulb. ericssoniiあるいはBulb. virescensとすることもありえます。Bulbophyllum sp03 (aff. virescens) Sulawesii | Bulbophyllum uniflorum Borneo | Bulbophyllum aeolium Malaysia |
Bulbophyllum virescens Malaysia | Bulbophyllum binnendijkii Borneo |
現在(1日)開花中の15種
このところ気温の変化が激しく昼夜の温度差も大きくなっています。こうした状況下であっても、特に夜間平均温度が適温内に維持されていれば多数の属種で開花が見られます。一方、栽培平均温度が上昇を始めるこの時期は病虫害防除処理も欠かせません。下画像は現在開花中の花の一部ですが、植替えの合間に15種を選んで撮影しました。Aerides odorata alba Mindoro | Bulbophyllum quadricaudatum NG | Bulbophyllum nitidum giganteum PMG |
Bulbophyllum sp03 Sulawesi | Bulbophyllum gjellerupii PNG | Bulbophyllum nasica yellow NG |
Bulbophyllum whitfordii Palawan | Bulbophyllum rugosum Borneo | Bulbophyllum gracillimum Borneo |
Bulbophyllum magnum Luzon | Bulbophyllum odoratum Pen. Malaysia | Bulb. inunctum (Malaysian form) Borneo |
Dendrobium paathii Borneo | Dendrobium atjehense Sumatra | Dendrobium boosii Mindanao |