|
4月
Coelogyne vanoverberghiiとBulbophyllum bandischiiの開花
現在(26日)Coel. vanoverberghiiが開花しています。今回本種を取り上げたのは、J. Cootes著Philippine Native Orchid Species 2011において本種の花茎当たりの開花数が6輪まで(up to)とされているのに対し、当サイトにて現在開花中の株では下画像左に示すように10輪となっているためです。本種は種名Coel. vanoverberghiiとして2015年フィリピンPurificacion Orchidから入手したもので、花や葉それぞれのサイズを除き、J. Cootes氏の著書に掲載の花画像
との類似性からもCoel. vanoverberghiiと認識しています。一方、この書ではCoel. vanoverberghiiの生息地ははルソン島Mountain州の標高1,700mとされていることから、その栽培温度は低温となります。しかし当サイトでの栽培において本種は高温環境に適応し、低温では成長や開花が得られませんでした。この実態から本種には800m以下の生息種も存在しうるとし、著書記載の数値は同定に用いられた検証サンプルが偶々、1,700mからのロットであったのではと推測しています。また本種の類似種としてCoel. salvaneranianaが知られています。この種の生息域は標高700mで輪花数は8輪までとされており、IOSPEのページにもCoel. salvaneranianaとCoel. vanoverberghii共にJ. Cootes氏著書と同様の標高値や輪花数が記載されています。これら2種と当サイトの栽培株との比較情報は2025年4月の歳月記に取り上げました。見方を変え、もしCoel. vanoverberghiiの生息域が1,700m付近に限られるとすれば、
当サイトのCoel. vanoverberghiiとされる種は標高700mほどに生息するCoel. salvaneranianaではないかとも考えられます。しかし花や葉サイズおよび花数の違いからはCoel. salavaneranianaの情報とも相容れません。こうした背景から暫定的な対応として当サイトでは本種をCoelogyne sp aff. vanovaerberghiiとし、今日に至っています。いずれにしてもCoel. salvaneranianaとCoel. vanoverberghii共に10輪の同時開花例はネット検索において現在見当たりません。
下画像右のBulb. bandischiiは2016年に入手してから現在は10株ほどを栽培しています。下画像はその中から4株の現在開花の様子を撮影したもので、1株当たりの葉付きバルブ数はそれぞれ15個前後となっています。画像に見られるように株の先端部は支持材を超えており、開花後には植え替えを予定しています。本種は花の縦幅が13cmほどの大きな花であることから、20輪ほどの同時開花となると可なりの迫力があります。今回の植え替えでは下画像4株を幅30cmx長さ90cmの杉板に一纏めに寄せ植えし、20輪以上の一斉開花が期待される展示用の大株造りも面白いのではと考えています。元はと言えば現地サプライヤーが1株であったものを販売用にと小分けされた子株同士であり、寄せ植えではあるものの元の株への復帰とも考えられます。
現在(18日)開花中の13種
下画像2つのBulb. kubahenseの花数は、それぞれが25輪と15輪で花フォームが若干異なります。Bulb. freitagiiは開花後の今年2月末に植え替えをする予定で、それまでの中温室から高温室に一時的に待機させていましたが、他種の植え替えが忙しく未だに待機が続いています。驚いたのは高温室にも拘わらず。新芽の発生や開花が盛んに見られることです。この状況から当サイトの入手株は500mほどの低地生息株と思われます。画像下の青色種名のクリック先にて、左右ラテラルセパルのスパイラル形体6cm長のこれまでの画像から、現在開花している10.5cm長の画像へ差し替えをしました。Bulb. gjellerupii及びBulb. macranthum aff.はいずれも倒立花で、現在は90cm長x15cm幅の杉板に2025年8月と9月にそれぞれの植え替えをしています。今回の開花は両種共に植え替え後の初花となります。Bulb. macranthum aff.は12輪の開花(同時開花の最大数は8輪)となっています。
Den. punbatuense は多様な花フォームをもつデンドロビウムで、その多くは開花当初の薄緑や黄緑のペース色が、やがて数日で黄みが増す特性を持っています。しかし下画像種は開花から落花間近まで緑色が持続すると共に、この色合いが毎年継承されていることと、開花期も他のフォームの株とは異なることから生息地も異なると思われ、未登録の変種と見做し現在は種名にgreenとの付帯名を加え差別化をしています。下画像青色種名のリンク先のDen. punbatuenseのページには4つの花フォームを掲載していますが、本株については現在未掲載となっています。
下画像のDen. dianaeの花は、一般種が持つリップ基部の 濃い黄土色の斑点がflavaフォームのように薄い一方で、花の後方に伸びた「距」は一般種と同じ赤茶色が混じる色合いとなっています。特に開花直後のセパル・ペタルの透明感のある薄黄緑(サルファーイエロー)色は本株固有のフォームで良く目立ちます。Den. punbatuense greenやDen. dianaeのこうしたカラー変異株は、現在のネット検索からは希少と思われます。
モルッカ諸島生息のDen. laxiflorumは入手してから10年以上経ち、現在の株サイズは2m近くなっています。下画像の本種は1株での開花風景です。この写真からは分かりにくいのですが、画像下の青色種名のリンク先の画像に見られるように、カールしたペタルが6cm長で、左右のペタルがV字方向に伸びたときのペタル先端間での広がり(花サイズ)は10cm程の大きな花となっており、これが下画像に見られるような多数の同時開花となると、可なりの迫力があります。またSpatulata節の本種の花寿命は長く、1ヶ月以上となります。
Den. taurinumは今月1日に報告した本種とは異なる株で花フォームも異なります。Den. taurinumは現在野生栽培株を10株程栽培していますが、最も栽培の難しいデンドロビウムの一つと言われます。この問題は植え替え及び順化時における処理方法に起因するものと考えられます。当サイトでは通常時において他のSpatulata節と同じような栽培をしていますが特に問題は見られません。
現在(10日)開花中の18種
今年の原種の開花は昨年と比べると1ヶ月程早い種が多いように感じます。下画像で2段目左のBulb. mastersianumは黄色にやや赤みを含む色合いで、その色が毎年継承されることからaureaとの付帯名を付けました。Bulb. sp 24およびBulb. sp aff. macranthumは現在も種名不詳です。
Bulbophyllum magnumの開花
Bulb. magnumは2014年に入手して以来、すでに12年となり現在30株程を栽培しています。当初は栽培方法が不明で温度や植付けに試行錯誤をしましたが、近年では花茎当たりの開花数の多くは3輪(ネット検索ではその殆どが2輪まで)で花サイズもラテラルセパル長は11cmを超えています。ここ数年で本種の栽培方法はほぼ確立したと考えています。下画像は昨年4月に90cm長の杉板に植え付けた株です。葉長は葉柄を含め22cm程ですが葉幅は広く、ラテラルセパルと同じ11cmです。
現在(4日)開花中の6種
今年は3月末から高温温室内の昼間の気温は32℃を超える環境になっており、多数の種に新芽の発生や盛んな成長が見られます。下画像のDen. aurantiflammeumは1cm近い幅広のセパルをもつ変種で、一般種の5mm幅とは大きく異なります。この詳細画像はDen. aurantiflammeum varietiesのページに掲載しています。
現在(1日)開花中の11種
画像上段右のBulb. sulcatumは当サイトでは初めて登場する種名ですが、本種はこれまでバルボフィラム・サムネイルのsp29としてきました。この種名がこれまで確定できなかったのは、本種がBulb. inaequaleとして入荷したもののその開花で、OrchidRootsサイトに見られるBulb. inaequaleの花色や、IOSPEサイトに記載の花サイズ4cmとは異なり、下画像が示すように花色は透明感のある白色で、花サイズは横幅7mmの超小型種のミスラベルであることが分かり、種名が確定するまでBulb. sp(類似種)としてきたためです。今回のsp29の開花を機に、その形状の類似性からDesmosanthes節を調べたところ、sp29はBulb. sulcatumに最も酷似しており、この種名を取り入れました。しかし本種は画像下の青色種名のリンク先に見られるように、完全に開いた状態ではセパル間スパンが7mmであるものの、下画像に見られるようにやや前屈みな通常状態では5mm前後となり、花サイズに関してはIOSPE情報の1cmとは若干違いがあります。さらなるネット検索では本種に似た種にBulb. sikapingenseが見られます。こちらの花サイズは8mmです。しかしスマトラ島固有種とされることから、Java固有種であるBulb. inaequaleがミスラベル種であったとしても株自体の生息地は間違いはないとすれば、sp29はBulb. sikapingenseとは生息地が異なることになり異種と考えられます。ここで問題は、当サイトではインドネシア生息種の入手はスマトラ島西部に拠点を置くサプライヤーからが多く、sp29のインドネシアからの出荷地がスマトラ島であれば、種名と共にその生息地にも誤りがあるかも知れません。
このように開花して判明したミスラベルの訂正ではあるものの、開花種の新たな種名の決定にもまた上記のような複雑な背景が絡むこともあり、一筋縄ではいかないことがしばしばです。
Den. pandanetiは昨年歳月記10月に90cm長の杉板に植え替えを報告した株で、現在も順調に成長しています。来年は20輪程の開花を期待しています。
|
、 |