7月
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Den. nudum Sumatra | Den. victoriae-reginae N. Vizcaya Philippines | Den. reypimentelii Bukidnon Mindanao |
Den. deleonii Bukdonon Mindanao | Den. sp aff. endertii Sulawesi | Den. papilio Nlueva Vizcaya Philippines |
Den. punbatuense Borneo | Den. daimandauii Borneo | Den. dianae Borneo |
Den. ovipostoriferum Borneo | Den. tobaense Sumatra. | Den. toppiorum subsp. taitayorum Sumatra |
近況
今年はコロナウイルス問題によりラン展の中止や海外渡航が出来なくなり、当サイトでは、ひたすら株の植え替えやWebページの更新作業を続けています。しかし例年通り展示会や入荷があれば、それに忙殺され出来なかったであろうこうした作業も、いずれは行わなければならないことであり、また成長が止まったままであった株が新しい植え込み材に替わることで新芽を出し、生き々としている様子を眺めていると、致し方なしとポジティブに考えるしかありません。 植え替えは今年に入り、すでに90㎝x60㎝x3cm板の炭化コルクを60枚、株数にして1,000株相当分を消費しました。バスケットやポットへの植付けを加えると1,500株相当になります。一方、Webページに関しては今月がバルボフィラム、来月はデンドロビウム、次はVandaなど、順次改版を行う予定ですが、この更新作業量も膨大で、これまでの3-4年間で新たに登場した種の追加分だけでなく、これまで扱った全ての種についても画像と解説を見直しています。現在開花中の胡蝶蘭原種
現在開花中の胡蝶蘭原種6点を選んでみました。このなかではPhal. violacea punctata (点状斑点)が数百あるいは数千株に1株出現するかどうかの希少性の高いフォームとなります。7-8月はPhal. bellinaの最花期で温室内には良い香りが漂っています。Phal. bellina | Phal. maculata | Phal. fasciata |
Phal. sandeiana | Phal. violacea punctata form | Phal. venosa |
Bulbophyllum annandareiに見られる形状偏差
タイおよびマレー半島に生息するBulb. annandareiは、ほとんどのバルボフィラムコレクターならば持っているであろう原種です。生息地によってカラーフォームやラテラルセパル形状の違いがあることは知っていましたが、当サイトの改版版を進めている中で、ミクロな世界ではさらなる相違があることに気付きました。果たしてこれらは個体差、地域差、あるいは変種なのかは現在不明ですが、ラテラルセパルの形状の変化に加えて下写真からドーサルセパルとペタルに細毛があったり無かったりとその違いが分かります。左および中央はマレーシア生息で、右はアルバフォームでタイからです。Bulb. annandarei Penninsular Malaysia | Bulb. annandarei Cameron Highlands Malaysia | Bulb. annandarei f. alba Thailand |
Coelogyne pachystachya
2013年に浜松に移ってからこれまで、3日以上雨の続いた日は経験したことがありませんでしたが、このところの連日の長雨で温室外での作業が伴う植え替えや出荷が思うように進みません。これは株をそれまでの植込みから取り外す際に付く根の傷、株分け、剪定による切断等があり、洗浄後に必ず1株づつ、バリダシンとタチガレエース混合液のスプレーによる病害防除処理をし、自然乾燥あるいは1晩置いた後に新たに植え付けを行うことで、ある程度株数が纏れば2日掛かりの作業となるためです。来週から梅雨明けとの予報ですので、次は猛暑と蚊の来襲には悩まされるものの、やっと作業は捗りそうです。Coelogyne pachystachaya |
Phalaenopsis mariae
Phal. mariaeが開花期を迎えます。本種の花フォームはクリーム色をベースに茶色の太い斑点が特徴ですが、色合いや斑点の割合は様々です。今回開花した写真上段の花はフィリピンミンダナオ島生息株で白をベースに赤い斑点の、コントラストの艶やかな色合いです。写真中及び下段はこれまでに当サイトが栽培したPhal. mariaeの花フォームを参考にと表示したものです。希少性からは下段右の黄色ベースのフォームとなります。Phal. mariae |
Dendrobium doloissumbinii ?
現在、種名不詳のデンドロビウムが開花しています。花形状の類似する種はDen. stuposumやDen. doloissumbiniiですが、前者との違いはリップに細毛がなく、後者とはサイズおよびspur(距)の形状が異なっています。これまで気が付かなかったのは、長い間温室の片隅に置かれていたことと、左右ラテラルセパルのスパンで1.5㎝と小型で、離れて見るとDen. stuposumと似ており、特に注視していなかったためです。おそらく2016年8月にDen. doloissumbiniiとして入荷した株ではないかと思います。当初はバスケット植えでしたが、今年1月に炭化コルクに替えて開花しました。Den. doloissumbinii? |
Dendrobium toppiorum subsp. taitayorum
現在、スマトラ島生息種Den. toppiorumの開花最盛期です。本種は標高および節(Formosae)がDen. tobaenseと同じであることから両種を隣り合わせで栽培し、昼間は30℃近くになるものの、通年で夜間平均温度を15℃以上20℃以下にしています。栽培で最も注意していることは根周りを24時間乾燥させないことです。いずれも20株ほどある中でDen. tobaenseの開花は年に2回程に対し、本種は通年でいずれかの株に開花が見られ途絶えることがありません。最盛期は初夏となります。下写真の株は入荷して3年目を迎えます。入荷当初の輪花数は2-4輪でしたが、今年は1株に蕾を含めると10輪程の株が多数見られます。これまでの1株の最多同時開花数は14輪でした。写真左の株も1週間後には14-5輪になると思います。Den. toppiorum subsp. taitayorum |
取付材の製作
株の出荷や植え替えには水洗いが伴うため、主に温室の外での作業となります。しかしこのところの連日の雨で、これら作業はなかなか進みません。そこで空いた時間に、株の新しい取付材の製作を始めることにしました。かねがねBulb. binnendijkiiなどリゾームの長い大型の株の取付けには手こずってきました。一直線にリゾームが伸長するのであれば炭化コルクなどへ容易に植付けできますがその方向は様々で、縦長の板状取付材ではやがて新芽は空中に伸び出し、その根は活着する場を失って先枯れし、半年もすると葉が落ちてしまいます。結果、トレーや大きなバスケットでの植付けが余儀なくされるのが実状です。株を大きくし花を咲かせる手段としてそれはそれで良いのですが、空中に伸びた花茎の先に花が浮かんでいるかのような自然体に近い開花風景を求めようとすると、トレーへの植付けには違和感が避けられません。そこで考えられるのは新しいリゾームが取付材に沿って伸長し、バルブ(根)が常に活着できるそれなりの太さを持つ円筒形の取付材です。しかし現在マーケットには、こうした形状の部材は見当たりません。理由は多様なサイズを揃えなければならないことと、国内では製作に掛かる人的コストから高額にならざるを得ないからと思われます。現状では趣味家自身が栽培の一環として製作せざるを得ません。現在開花中の2種
写真上段はVanda ustiiで、下段がBulb. fenixiiです。いずれも左画像の花が現在開花中です。Vanda ustiiの一般フォームは、写真右に見られるようにセパルペタルが、クリーム色一色ですが、左の花は先端部が淡いピンク色の始めて見るフォームです。この株はハイブリッドではなく野生栽培株であり、自然界にはこうしたフォームもあり得るのか、次回現地訪問時に確認しようと思います。一方、下段のBulb. fenixiiは1㎝程の小さな花で、ルソン島Laguna州からMindoro島など標高800mに生息します。右はその近縁種とされるBulb. sp. aff. fenixiiで、こちらはルソン島Nueva Ecija州標高1,200mの生息です。生息域が800-1,200mとされますが、当サイトではいずれも高温室にての栽培です。Vanda ustii | |
Bulb. fenixii | Bulb. sp. aff. fenixii |
現在開花中の花
浜松温室にて現在開花中の花の一部です。Bulb. aestivale Luzon | Bulb. catenulatum Neuva Vizcaya Philippines | Bulb. ocellatum Aurora-Luzon |
Bulb. carunculatum Sulawesi | Bulb. sp (aff. zebrinum.) New Guinea | Bulb. pustulatum Borneo |
Bulb. microglossum Borneo | Coel. usitana Bukidnon Mindanao | Coel. celebensis Sulawesi |
Coel. candoonensis Bukidnon Mindanao | Coel. cuprea Borneo | Coel. longifolia Sumatra |
Den. sanguinolentum Sumatra | Den. igneoniveum Sumatra | Den. annae Sumatra |
Den. stratiotes New Guinea | Den. sp (aff. chewiorum) Borneo | Den. reypimentelii Bukidnon Mindanao |
Den. anthrene Borneo | Phal. bellina Borneo | Phal. mariae Mindanao |
Phal. inscriptiosinensis Sumatra | Phal. deliciosa subsp. hookeriana Myanmar | Phal. pulchra Leyte |
珍妙なVandaの取り付け材
入荷時や植え替え時のVandaでいつも問題になるのは、植え付け方法です。Vandaのような長く太い根をもつ気根植物にとって高湿度は必須である一方、その根は常に空気に触れていなければなりません。マニラやクアラルンプール空港ビルから一歩外に出た途端、日本には無い、まるで蒸し風呂のような熱気と湿度には唖然としますが、特に大型のVandaになればなるほどその栽培には、生息地に似た環境が求められます。しかし国内の低湿度な環境において、高い気相率と伴に高湿度環境を作り出すことは難しく、高度な栽培技術が必要です。Vandaも荒いバークを用いたポット植えで元気に育つ種も見られますが、大型種となれば、ポット植えではやがて根が込み入って気相率が下がり、葉数が伸びません。このためバスケットを用い空中に吊すのが一般的です。しかしこれも2年もすると根は四方八方に伸長し、多くがポットから空中に飛び出し、低湿度な環境での株は次第に痩せていきます。当サイトでは昨年8月の歳月記に記載した通気性の高い農業用不織布でバスケットと根を覆い、根周りの湿度をより長く維持する方法を導入しました。それから1年近く経ちます。やはり不織布の有無でVanda(sanderiana)においては葉の張りや根数に違いが見られるようになりました。新しい根が飛び出せば再び不織布を新たに覆うことになります。1枚の写真Dendrobium jyrdii ?
5月の歳月記でDen. uniflorumの近縁種と思われるセパルペタルおよびリップが白色フォームの3種を取り上げました。その中でOrchideenJournal Vol.6・05, 2018に掲載されたDen. jyrdiiに関し、Palawanのみの生息種(2018年時点)であることと、Den. uniflorumはルソン島北西域が北限であることから、当サイトが所有するPalawanからの白色フォームは、Journalでの花や葉形状とは若干異なるもののDen. uniflorumからの変種ではなく、Den. jyrdiiの近似種aff.あるいは同種と見做し解説しました。しかし依然、リップ側弁や葉形状の違いには違和感が残りました。Trichoglottis atropurpurea f. flava (alba)
2014年9月フィリピンにて入手したTrichoglottis atropupureaのflavaタイプが入荷から6年を経て開花しました。Trichoglottis atropupurea一般種は濃い紫色の花フォームですが、flavaフォームは希少性が極めて高いと思われたことと、開花中の花を現地で直接見ることができたため、当時ラン園にあった6株全てを購入しました。しかしその後、BS株であったにも拘わらず開花が得られない一方で、株は枯れたり作落ちする様子もなく、ゆっくりではあるものの成長し続け、脇芽(成長芽)が出て株自体は開花がない点を除けば、これといった問題もなく6年が過ぎました。Trichoglottis atropurpurea f. flava (alba) |