12月
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Dracula severa | Dracula diana xanthina |
左から2株毎にDracula gigas xanthina、 diana xanthina、 gigas raya de sol, olmosii、右端はDracula gigas Cholorate |
Bulbphyllum veldkampii
この聞きなれないバルボフィラムは2011年発表のスラウエシ島標高600m程に生息の新種です。現在国内情報では当サイトのみで、昨年末に入荷しましたが国内初のようです。よく似た種に同じスラウエシ島標高1,200m生息のBulb. sulawesii(現在Bulb. klabatense subsp. sulawesii)が知られ、こちらは2017年4月今月の花に紹介しています。Bulb. veldkampiiとのBulb. sulawesiiは両者共にリップ中央から先端部に細毛があり外形からの見分けが困難ですが、リップ基部の左右側弁が突起のように直立しているかどうかの違い程度です。この突起はBulb. veldkampiiに見られます。リップ上の細毛や表面の細かな凹凸の多い少ないは様々で、これらで両者を同定することは困難です。こうした背景からか、ネット画像ではかなり同定に混乱しているようです。これまでポット植えとコルク付けに分けて栽培してきましたが、下写真は今回の植え替えで、7株を炭化コルク付けで統一しました。Bulb. veldkampii |
Dendrobium tentaculatumに見られる株の3様態
Den. tentaculatumはDiplocaulobium属からDendrobium属に編入されたニューギニア生息種です。それ故か、その株形状はデンドロビウム一般種とはかなり異っています。バルブは円錐形で先端から長い茎(葉柄?)が伸びその先端に1枚の葉と、葉の根元から花柄が延び一輪の花を付けます。下写真上段は2015年2月東京ドームでアルゼンチンClori Orquideasラン園から引き取ったDen. tentaculatumです。なぜニューギニア種を南米のラン園が保有していたのかその経緯は分かりません。その2年後に、マレーシア経由からも入荷があり、アルゼンチン入荷株は中温室に、マレーシア入荷株は高温室にそれぞれ置いて毎年開花を確認しつつ栽培を続けてきました。今回の植え替えで株分けを行った際、株形状に大きな違いがあることから今回取り上げてみました。Bulbophyllum maculosumの植え替え
本種名は現在Bulb. sanguineomaculatumのシノニムとされたボルネオ島、スラウエシ島、フィリピンの低地から標高1,300mの生息種です。本種の花フォームは、フィリピン種がやや黄緑色をベースに茶褐色の斑点であるのに対し、下写真左のスラウエシ島からの入荷とされる株の花は今年7月に開花し、黄色をベースに赤からクリムゾン(深紅)色の斑点のある写真右のフォームとなります。入荷時のビニールポットでの8ヶ月程の仮植えから今回30㎝長の炭化コルクに植替えました。前記両種名のネット検索では国内マーケット情報が見当たりません。本種は植え替えのため1-2ヶ月の順化期間後に販売予定です。Bulb. maculosum (sanguineomaculatum) |
Bulbophyllumの植え替え
時間を見てはバルボフィラムの植え替えを行っています。下写真左の上段はBulb. multiflorumです。本種の入手は極めて困難で、というのは本種名で発注してもほとんどが同じルソン島中部Nueva Vizcaya生息のBulb. brevibrachiatumやBulb. loherianumなどがミスラベルで入荷し3回に一度、しかもロット内に1割以下で稀に本種が混ざっているような状態です。これまでの経験からは本種名で注文しても本種が得られる保証は全くありません。2株ほど販売し、その後開花を確認した2株ほどがあり、それらが大株になったため株分けして今回の植え付けとなりました。(注:これまで当サイトではCirrhopetalumがBulbophyllumに属名統一されたことで、Cirr. multiflorumをBulb. multiflorumとしてきましたが、Bulbophyllum属内にすでにmultiflorum名があったことから、Cirr. multiflorumは新たにBulb. polyflorumとして登録されており、現在の本種名はBulb. polyflorumとなります。当サイトでは来年3月末予定の本サイト改版時に種名を変更します)。.下段は左2列がBulb. veldkampii、3つ目がBulb. kermesinum、また右3列は半透明な花を付けるBulb. hymenobracteumです。Bulb. multiflorum | |
Bulb. hymenobracteum |
現在開花中の花6点
開花中の花6点です。上段中央のThrixspermum pensileは1m近く下垂する1本の茎に、左右交互に等間隔で並ぶ葉の複数の付け根からそれぞれ2-3輪の花が咲きます。写真はほぼ真下から撮影したものです。本種は短命花で浜松温室では年3回程の開花期があります。一方右のDen. discolorは2ヶ月近い長命花です。現在3年ぶりに100株程のSpatulata節の植え替えを行っており、その半数が1m近い株です。今回は全てスリット鉢ロングタイプに100%クリプトモスの植え付けにしました。多くのバークは2年もすると崩れ始め、一部が粘土状になり気相が減少する結果、根の腐敗が進行しポットの外に飛び出した根のみが生きているような様態がしばしば見られます。いずれも3年程で植え替えとなるとLサイズのクリプトモスが栽培管理も容易で根張りも良く、安心との結論です。下段は全て胡蝶蘭ですが、後1-2ヶ月でPhal. amabilisやPhal. schillelrianaなどフィリピン生息のPhalaenopsis節の開花最盛期を迎えます。Den. treubii Moluccas | Thrixspermum pensile Philippines, etc. | Den. disclor Papua Newginea |
Phal. pantherina f. flava Borneo | Phal. appendiculata Borneo | Phal. venosa Celebes Isd. |
Bulbopyllum scotinochiton
Bulb. scotinochitonは北スマトラ島生息で2005年登録の新種です。通常本種は”single flowered inflorescence”一輪の花序とされていますが、珍しく現在浜松温室にて花軸の先端で花柄 (花軸?) が2分岐し、2輪が同時開花している株があったので撮影しました。左が一般の、右が今回開花の様態です。Bulb. scotinochiton |
現在開花中の花6点
この時期から来年2月頃までは多くの株に開花が見られます。6点を選んでみました。Den. dianae Borneo Kalimanntan | Den. compressimentum Borneo | Bulb. nasseri Philippines |
Bulb. orientale Thailand, etc. | Bulb, mastersianum yellow Borneo | Bulb. jacobsonii Indonesia |
現在開花中のVanda
下写真は現在開花中のVandaです。Vandaは春から夏期にかけての輝度が発色に大きく影響します。しかし他の属種と同居しての温室内栽培ではVanda sanderianaに適した輝度まで上げると他種には高過ぎて問題となり、中々濃色のピンク色を得ることは困難です。左はVanda sanderiana pink、中央は一見アルバタイプに見えますが、黄色フォームでアルバフォームはこちらです。やはり輝度不足でドーサルセパルとペタルの黄色の発色が抑えられて白くなっており、輝度を上げるとセパルペタル共に一様の薄黄色になります。右はVanda merrilliiです。Vanda sanderiana pink | Vanda sanderiana yellow | Vanda merrillii |
Bulbophyllum virescensにみる炭化コルク付けでの成長
当歳月記10月にバルブ間のRhizomeの長い種の炭化コルク付けを取り上げ、Bulb. virescensの新芽の画像を掲載しました。その時点から凡そ2ヶ月が経過し、昨日(12日)現在の状態を撮影しました。左写真が10月の、右が今回撮影の株です。こうした長いRhizome種は花はダイナミックで見栄えの良い種が多いものの、植え付けが厄介で、新たなRhizomeの伸びしろ分を考えると株の倍程の長さの取り付け材が必要となり、コルクやヘゴ棒ではコストがかかり大変です。そこで炭化コルクにした訳ですが、垂直タイプの支持材への植え付けは、国内の温室栽培であっても生息地と比べれば湿度は低く、新芽が出たもののやがて縮れ枯れることが多い欠点があります。Bulb. virescensに見る新芽の成長 (左10月28日、右12月12日撮影) |
現在開花中の12点
写真上段左のフィリピン生息種であるDen. modestaは小型の花ですが、Lサイズの木製バスケットで一抱えもある大株になっており、現在50輪程が開花しています。中央のDen. rosellumはボルネオ島の、こちらも小型の花で現在当温室では昼と夜の室内気温差が10℃程になると開花が始まり、年に数回の開花期があります。Phal. bellina wildはパラパラと絶えることなく10月から、あちこちの株で常に花が見られ良い香りがします。Den. modestum Philippines | Den. rosellum Borneo | Phal. bellina wild Borneo |
Den. punbatuense Borneo | Den. mooreanum Vanuatu | Den. compressum Philippines |
Den. lowii Borneo | Dracula janetiae Peru | Den. ionopus Philippines |
Den. igneoniveum Sumatra | Aerides magnifica Calayan Isd. Philippnes |
Bulbophyllum nasicaの一般およびYellowフォーム
カメラを修理に出したところ、年末期であることから修理が完了し戻ってくるのが1月の2週目頃になるとのこと。それでは1ヶ月間も撮影できないことになり、止む無く小型のキャノンG9Xを買う羽目になってしまいました。海外旅行には重いEOS7dに比べ、軽量で良いと割り切っての出費です。Bulb. nasica yellow form | Bulb. nasica Common form |
現在開花中の花6点
12月に入り、ここ浜松でも夜間の気温は5℃近くまで下がり、暖房器の稼働率が高まっています。温室内は高温タイプは15℃、低温タイプは13℃を最低温度としています。Phal. schillerianaやPhal. amabilisでは現在50株程で10-20㎝の花茎を伸ばしています。下写真は現在開花中のデンドロビウムとバルボフィラムをそれぞれ3点選んでみました。その中で、Bulb. fraudulentumはネット画像ではしばしばBulb. arfakianumや.Bulb. antenniferumと混同されています。下写真は本物です。またBulb. scotinochitonはBulb. mirumと花形状が似ていますが、Bulb. mirumの花サイズは3㎝と小型であるのに対して本種は7-8㎝と大きく、2005年Sumatra島北部で発見された新種で本種の栽培情報は余り知られていません.。3年間の栽培経験からはBulb. mirum程ではないものの、やや暑さを嫌うようで夏期において夜間温度が20℃を下回る環境が好ましいようです。上段右のDen. tobaenseはラテラルセパルのスパンNSサイズが11㎝の4輪同時開花中の花です。Den. bicolense Philippines | Den. consanguineum Moluccas | Den. tobaense Sumatra |
Bulb. scotinochiton Sumatra | Bulb. fraudulentum Papua New Guinea | Bulb. makoyanum Phiiippines他 |
Bulbophyllum medusae
Bulb. medusaeは白く長い髪の毛のようなセパルが特徴で、タイからマレーシア、ボルネオ島、スマトラ島などに広く分布する低地生息域のバルボフィラムです。バルボフィラム趣味家であれば1株は持っているであろう最もポピュラーな種の1つであり、価格も5-6葉付バルブで2,000円前後と廉価です。当サイトではこの種の本領を発揮させるためには、クラスター仕立てが良いと考え、2つのクラスター株をつくりました。一つは1mヘゴ板(写真中央)、他は60㎝炭化コルク(写真右)を支持材としたものです。現在、前者は130葉、後者は65葉になっています。はたしてそろそろ一斉開花の滝のような壮大な景色となるのではと想像しているところです。右写真は現在2,000円の単体株に開花しているBulb. medusaeです。長く垂れたセパルの長さは18㎝で、開花直後のため20㎝近くに2-3日内には伸長すると思われます。本種はセパル基部に茶色のドットのあるフォームとアルバタイプがあり、写真のクラスター株は全てアルバタイプです。クラスター株も開花確認後には販売品となります。Bulb. medusae 18cm long | 1mヘゴ板付けクラスター株 | 60㎝炭化コルク付けクラスター株 |
歳月記のそれぞれのIndexへのリンク
これまで歳月記では、旅行体験、輸出入問題、原種、栽培、病虫害防除等など様々な話題を取り上げてきました。しかし10年を経て膨大な情報となり、振り返って興味のあるItemをこの中から見つけ出すのは相当な労力が必要になっています。そこで今月から、2009年以降、取り上げてきた上記の事柄等をそれぞれ分野別にリストにし、これまでの歳月記にpoint to pointでアクセスできるページの作成を始めました。 全体が出来上がるには2-3ヶ月かかると思いますが、まず2009年からの旅行体験記からリンク可能なIndexを作成しました。時代を反映して変化している内容もありますが、今後ラン生息国に出かけランを入手しようと考えている方や、EMS等での購入を計画している方に参考になるのでは思います。原種それぞれへのアクセスは今月末を予定しています。本サイトのトップページの中段右にあるメニュー ”歳月記Indexリンク” よりご覧ください。