栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2019年度

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3月

Dendrobium balzerianumの花色

 本種は短命花のため、余り気に留めないその花のベース色について、30株ほどの中で同時開花している花をそれぞれ見てみると微妙な違いがあることが分かります。この色違いが株毎に固有のものか、時間の経過で変化する色合いかを、株を分別し数回の開花で調べてみましたが、株毎に固有の特性のようです。年に3回程開花期があり、現在はそのうちの一時期となります。写真左が最も多い一般色で、中央および右の色はそれぞれ30株中で1-2株です。

Den. baizerianum

Bulbophyllum sp (Bulb. nasica shape-like yellow)

 2017年10月にBulb.. nasicaに花形状が似たBulb. sp aff. nasica yellowを取り上げ、また2019年5月には同じような花形状と色をもつバルボフィラムをBulb. sp aff. longicaudatum yellowとして紹介しました。いずれもNew Guinea Irian Jaya生息種で、今週、後者が初めて開花しました。花を見る限り、ラテラルセパルの先端の線状部分はBulb. longicaudatumほど長くはなく、全体形状はaff. nasica yellowとサイズと共に、ほぼ同じで、では同種かと云えば近縁種であることは間違いないと思いますが、下写真に示すようにペタル形状は異なっており別種と思われます。果たしてすでにこれらは種名が登録されているのかどうかは分かりません。下写真はこの両種を比較したもので、上段が今回初花となるBulb. spです。いずれも高温タイプです。

Bulb. sp new
aff nasica yellow

Dendrobium aurantiflammeum II (dark red)

 現在、Den. aurantiflammeumの開花期で、その中から赤色が強く、多輪花な株を一つ選んで撮影(30日)しました。写真左はやや下方から、中央はその背面方向からの画像です。花数は33輪、花サイズは5-6㎝です。50株程のこれまでの栽培からは、下写真のような濃赤色の花フォームは2株で、一方、花サイズが8㎝を超える株は1株でした。この色濃度やサイズは株それぞれに固有で継承されています。

Den. aurantiflammeum

Phalaenopsis philippinensisに見る花サイズ

 下写真は前回本ページで取り上げた同じ開花中の、その後のPhal. philippinensisです。本種の花サイズはPhal. amabilis、aphrodite、sanderianaなどと同じように左右ペタルのスパンで8-9㎝程です。写真左の中で最も大きな花と小さな花を比較してみました。それが右写真です。小さい花は7.3㎝、一方、大きい方は9.5㎝です。通常花サイズは株の大きさ(成長度)や同時開花数で変化するものですが、Phalaenopsis節は花数が多いと個々の花は小さく、少ないと大きな花になる性格はほとんど見られず、花数にはあまり関係が無いようです。では何かですが、同じ地域内でも長い世代に渡って生息した環境(温度、輝度など)の違いような気がします。時間があれば小さい花と大きい花を個々に自家交配させ、実生に花サイズが継承するかどうか調べてみたいものです。ちなみにorchidspecies.comでは本種の花サイズが7㎝と記載されています。これは右写真の小さい花サイズです。この情報が正しければ、これまでも同様に当サイトのロットは全て7㎝が最小サイズであることから、ルソン島シェラマドレ山脈に花サイズの大きな未知の生息地があり、そこから得られた株の系統となりますが??

Phal. philippinensis

Dendrobium papilioの植え替え

 本種はフィリピンルソン島標高1,200m生息のデンドロビウムで、その細長い茎(疑似バルブ)に似和わず、大きな花を付けることで知られています。これまで25-30㎝長の炭化コルクでの植付でしたが、このサイズでは栽培結果から根張り面積が小さ過ぎることが分かり、今回45㎝長の炭化コルクへの植え替えになりました。下写真左はその一部の35株程です。これらは2017年2月の歳月記に取り上げたロット株で、今後1年を掛け10㎝サイズの開花を目指します。

 100株以上の栽培を通して分かったことは、下写真中央や前記の歳月記写真に見られるように本種はその茎に比べて、多くのデンドロビウムと異なり、胡蝶蘭原種並みの太い根を持つことです。写真中央は植付けから2年半経過した株を植え替えるため表面を覆っていたミズゴケを洗い流して根を露出させた活着の様態です。根は伸長する過程で活着場所を失うと、それ以上の伸長は止まる様態が見られ、30㎝x10㎝程の支持材では面積が不足です。細い茎や葉にも拘らず、この根を見ていると胡蝶蘭Phalaenopsis節(Phal. amabilisなど)並みの大きな花を複数輪開花することができるエネルギーの源がここにあるようで、根を充実させることが大輪花の要のように思われます。これまでの株からは根は湿度に対する正屈性が見られます。本種はその標高からコールドからクールとされます。当サイトではクールと中温室に分けて栽培をしてきましたが、成長は中温室が良く、今回から冬季(10月末から4月)は高温室に、それ以外の期間は中温室の比較的温度の高い場所、すなわち夜間平均温度が20℃を通年でやや下回る環境で栽培することにしました。

 右写真は8.5㎝の花で、8-10㎝の大きな花を得るには、前記2017年の歳月記にも記載したように、茎をしっかりと伸ばすために根張り空間を大きくとること、根周りを乾燥させないこと、また高輝度が必要です。この意味でコストを考えなくても良い場合は、炭化コルクよりはヘゴ板あるいは木製バスケットが好ましいことになります。

Den. papilio

現在開花中の花

 下写真は25-26日現在開花中の花です。

Bulb. basisetum Philippines Bulb. trigonosepalum yellow Philippines Bulb. whitfordii Palawan Philippines
Bulb. denophyllum New Guinea Bulb. longicaudatum New Guinea Bulb. brienianum Borneo
Bulb. sp Papua New Guinea Bulb. unitubum Papua New Guinea Bulb. vaginatum Borneo
Den. peculiare Sumatra Den. rigidum New Guniea Den. rutriferum Papua New Guinea
Den. ellipsophyllum orange. Palawan Philippines Den. ellipsophyllum green. Palawan Philippines Den. leporinum New Guinea
Den. cinnabarinum angustitepalum Borneo Den. boosii Mindanao Philippines Den. floresianum Flores Indonesia
Den. rindjaniense Lombok Indonesia Den. balzerianum Leyte Philippines Den. furcatum Sulawesi Indonesia
Den. canaliculatum New Guinea Coel. sparsa Philippines Vanda foetida Sumatra

Dendrobium hymenophyllumの花色

 本種はJava及びスマトラ島、標高600m-1,200mの生息とされるデンドロビウムで、下写真に示す多様なフォームが特徴です。上段左のセパル・ペタルが黄緑色をベースに細かな暗赤色の斑点のあるタイプ、中央の斑点の無いflavaや、右のリップ側弁にオレンジ色を含むタイプ、さらに下段左のaureaおよび中央の赤紫色、またそれぞれをミックスしたかのような右のタイプが見られます。最も一般的なフォームは上段左となります。自然界でのランの花色は標準色、flava、aureaおよびalbaが知られていますが、本種は野生株でありながら、それ以上の変化が見られます。


Dendrobium amboinenseの開花

 インドネシア・スラウエシ島とニューギニアの中間位置にあるにアンボン島生息のデンドロビウムDen. amboinenseの開花が始まりました。下写真に見られるようにセパルペタルは白一色の9㎝と大きな花で良く目立ちます。撮影は全て21日です。左右のペタルが水平方向に開くのは1時間程しかありませんが、この時には花サイズはNS18-19㎝程となり、orchidspecies.com記載の最大長となります。当サイトで栽培するロットは全てほぼ同じ花サイズです。

 本種は2-3日の短命花のため、数日間開催される展示会等への出品には不向きで、栽培者だけがその迫力と存在感を楽しむことができます。現在18株を栽培中で、ココナッツファイバーマットを円筒形に巻き、円筒の中はクリプトモスを詰め、表面にはミズゴケを敷いた筒状の自作支持材に植付けており良く成長しています。すでに植付けから4年を経過していることから同じ方法で新たに植え替え予定です。

Den. amboinense

Phalaenopsis philippinensis

 本種はリップ側弁の黄色がセパル・ペタルの白色にあって良く目立つ胡蝶蘭原種です。Phalaenopsis属phalaenopsis節の中では、標高1,200mの生息のため唯一中温タイプとなります。当サイトではDen. tobaenseVanda javieraeと同じ、通年で夜間平均温度を20℃以下の環境で栽培をしています。下写真左は19日撮影のPhal. philippinensisで写真右はリップを中心とした拡大画像です。

Phal. philippinensis

Bulbophyllum debrincatiaeの植替え

 Bulb. debrincatiaeは2002年登録の、フィリンピンルソン島標高800m-1,200m生息のバルボフィラムです。当サイトでは2015年2月、Bulb. lasioglossumを注文したものの、数株が同年6月に開花してミスラベルであることが分かり、本種を歳月記に紹介したことがあります。本種は当サイトを除いて国内マーケット情報がなく、また現地フィリピンの農園やラン展においてもこれまで本種を見かけることがありません。最近は新種とされながらも市場実績の少ない種を、優先的に植替えており、本種もその一種となります。これまで3年間の栽培はプラスチックポットにヘゴファイバーでしたが、新しく発生するバルブの配列様態から、今回は35㎝長の炭化コルクへの植え付けとしました。写真左はその一部です。

 最も栽培に適した取付け材は、前項のBulb. magnumも同様に保水性の高いヘゴ板となりますが、コストの点でコルクとしています。そのためミズゴケを厚めに敷き、根周りの乾燥を避けています。また当初は生息域標高を考え中温室にて栽培しましたが、現在は高温室に置いています。本種の不思議な特性は、通常花は花序の基部の蕾から順次先端に向かって開花していきますが、写真中央に見られるように、本種はその逆で凡そ50㎝長の花序先端の蕾から順次基部に向かって開花することです。なぜそのような特性を持つことになったのか不思議です。

Bulb. debrincatiae Vizcaya Luzon Philippines

Bulbophyllum magnum

 Bulb. magnumは2013年、W. Suarez氏らによりフィリピン固有種として登録されたバルボフィラムです。当サイトは2014年10月にフィリピンにて入手し、2015年6月の歳月記に取り上げ、東京ドームやサンシャインラン展に2016年以降出品してきました。現在は30株程を栽培しています。炭化コルク、バスケットおよびプラスチック鉢に植え付けての栽培でしたが、今回は全てを炭化コルクに植え替えました。リゾームが長く、バスケットやポット植えはすぐはみ出してしまうため、伸びしろ分を任意に設けることのできる炭化コルクがコスト・パフォーマンスが良いためです。下写真左が今回の35-50㎝長の炭化コルク付けの内、20株程です。栽培は容易で株は良く成長します。しかし花を得るのは結構難しく、今年は30株をそれぞれ栽培温度範囲および輝度の異なる場所に置き、開花条件を見つけ出すことが課題です。果たして本種が希少種なのか否かは不明ですが、マーケット情報は国内外を含め当サイトを除きほとんどなく、2015年以降フィリピン現地のマーケットでも見ていません。開花条件が分かるまで20株程は非売品とする予定です。

 本種もorchidspecies.comの情報とはかなり異なる実態があります。まず花サイズですが、本種は下写真右に示すように7㎝のセパルですが、orchidspecies.comでは僅か2㎝ wideとされています。このwideの意味が不明です。次に生息地標高が1,200mでクールタイプとされています。Luzon島での1,200mは一般には雲霧林となります。当サイトでは600m以上とはしていますが過去5年間の栽培では、胡蝶蘭Phal. amabilisschillerianaなどと同じ高温室での成長が最も盛んです。

Bulb. magnum

現在開花中の花

 下写真は現在、開花中の花です。

Bulb. orthoglossum Philippines Bulb. coroliferum white Borneo Bulb. auratum aurea Borneo
Bulb. mearnsii Philippines Bulb. patens Borneo Bulb. palawanense Palawan
Bulb. geniculiferm New Guinea Paph. gigantifolium Sulawesi Den. sp Sulawesi
Den. setigerum Philippines Den. atjehense Ache Sumatra Den. anosmum Philippines
Den. canaliculatum New Guinea Den. lamellatum Java Den. phillipsii Mindanao Philippines
Den. spectabile New Guinea Den. petiolatum New Guinea Den. maraiparense Borneo
Den. deleonii Mindanao Philippines Den. cymboglossum Borneo Den. robinsonii Philippines
Phal. modesta Kalimantan Borneo Phal. zebrina Palawan Phal. viridis Sumatra
Phal. philippinensis Philippines Coel. cuprea Borneo Coel. usitana Mindanao Philippines
Vanda denisoniana green Thailand Vanda barnesii Philippines Den. sp New Guinea

Phalaenopsis aphroditeの初花

 今季初のPhal. ahroditeが開花しました。写真上段左右が現在開花が始まったPhal. aphoriditeの初花です。本種はPhal. amabilisと共に、慶弔用白花胡蝶蘭作出の元親とされます。Phal. amabilisPhal. aphroditeは、その花や株形状が酷似しており、一見すると区別が困難で趣味家からは、しばしばその見分け方について質問を受けます。こうした酷似する種間での種の同定には、リップ基部にあるカルス形状の比較が有効とされます。そこで今回、下写真に示す画像でその違いを解説します。下段左はPhal. aphrodite、右はPhal. amabilisのそれぞれのリップを中心に拡大した画像で10日の撮影です。

 リップ写真において、その基部にあるV字の形をしたPhal. aphroditeのカルスには矢印1と2が指す突起があります。一方、Phal. amabilisのカルスには矢印1が指す同じような突起はあるものの、矢印2の場所には突起がありません。花を見て、この矢印2の突起が明確に存在すれば、それはPhal. aphroditeとなります。ほとんどの確率で、この違いで同定できますが、フィリピン全土に分布するPhal. aphroditeのカルスには僅かながら地域差と思われる変異があり、矢印2の突起の高さが低い形状も見られ、この場合はカルスの裏側(リップの基部方向)から見た形状を調べる必要があります。この場合はリップ全体を切り取らなければなりません。この裏面からの同定手法の詳細については本サイトのPhal. aphroditeのページをご覧ください。


Aerides leeanae

 40株程あるAerides leeanaeの開花が始まりました。昨年2月にフィリピンにて入手したSamar生息株です。写真中央の花序は45輪です。凡そ1つの花茎に平均して30輪程で、株のサイズにより輪花数が10輪程変わります。本種はVanda sanderianaと同じように根が空気に触れていることが必要で、ポット植えは適しません。Aerides属の中では現在Calayan諸島のAerides magnificaと並んで野生栽培株は極めて入手難とされます。

Aerides leeanae

Paraphalaenopsis labukensisの花色

 昨年5月に入荷したParaphal. labukensisの一部が開花を始めました。本種はボルネオ島生息種で、下垂する2m程に伸長する葉で知られています。昨年6月の歳月記で取り上げ 「5月のサンシャインラン展では葉長1.5mサイズを12,000円としました。この種は葉長の長さで価格は大きく変わり、海外マーケットにおいて60㎝で3,000円ほどですが1mとなると10,000円以上になり、1m以上はほとんど見かけません。1.5m以上のサイズがマーケットに纏まって出るのは初めてではないか…」と解説しました。本種の花色は下写真上段に見られるように辛子色から栗色やチョコレート色まで株によって変化があります。葉長の長さと共に、趣味家の多くは濃い栗色を好むようです。しかし写真上段右の濃い花色は稀で、これまで扱った40株程のうちで1株だけで、右画像の株は2年ほど前に販売しました。多くは中央の色合いとなります。

 下段左画像は昨年5月入荷のロットを炭化コルクに取り付けた15株です。下段中央および右はこのロットで開花した花です。すでに販売した株は分かりませんが、現在在庫している株からはこのような色合いが続いており、このロットの多くはどうやら上段右のチョコレート色に近いか、それ以上に濃色ではないかと考えられます。セパル・ペタルの縁取りが白色のためチョコレート色とのコントラストがマッチしています。本種は乾燥を嫌う性質ため、これまでの栽培で最も成長が良いのは木製バスケットの斜め吊りであったことから、花色を確認し濃色フォームを順次バスケットに植え替え予定です。

Paraphal. labukensis

Bulb. echinochilumに見る特異性

 本種は先月の歳月記にも記載しましたが、フィリピンとスラウエシ島生息(J. Cootes, Philippine Native Orchids Speciesではフィリピン固有種)とされているバルボフィラムで、その花序はバルブ基部から花軸先端まで20㎝で先端部8㎝の紡錘形花軸部分に花が20輪程開花するとされます。ところが、知人からBulb. echinochilumの写真をメールして頂き、その画像に驚きました。それが下写真です。花序の長さは写真上段左に見られるように、一般サイズの5倍以上の1.04mで、バルブ基から紡錘形となる位置までの長さ(バルブに最も近い開花位置まで)が27㎝となっています。写真下段左はその株の花です。右は一般の形状を示す画像で花序は35㎝で立ち性ですが、上段左の株の花序は下垂しており、これまでの本種に関する情報や実体とは大きく異なります。

 ランにおいて花軸が一般的サイズより異常に長くなる形態の当サイトでの実体験としてはPhal. equestris MindanaoやPhal. aphroditeの1m近い伸長や、Coel. usitanaが半年ほど1輪毎に開花を続け、花軸が80㎝ほどになったケースがありますが、バルボフィラムでは初めて見る様態で、しかもこの株の長い花軸は1本ではなく、それぞれのバルブから合わせて12本発生し下写真は8本になった時点での撮影で、その内2本が1m超え、他は80㎝とのことです。こうした様態は栽培環境と共に、その株に何らかの生理的な異常が起こったものと考えられます。その理由は、先の胡蝶蘭やセロジネで、同一ロット(生息場所が同じ)の多数の株を同じ環境で栽培しているにも拘らず、その1株だけに見られたことと、毎年その株の花序が同じような長さには伸長してはいないことからです。もしこの株が次回の開花期に同じ様態を示すとすれば、突然変異体か変種(フォーム)の可能性もあり、希少性が極めて高くなります。

Bulb. echinochilum Unbelievable length of inflorescences: 1.04m ( left photo on the upper row). Normal length 35cm (right photo on the lower row)

Dendrobium aurantiflammeumの植え替え

 下写真右は現在植え替え中のDen. aurantiflammeiumです。入荷してから2年を過ぎたロットで、現在30株程栽培する一部です。当サイトでは今回の植え替えから全株、木製バスケットに100%ミズゴケで植え付けています。これまでブロックバークやポット植えなど、いろいろ試してきましたが、本種は、根は常に湿った状態を保つことが好ましく、気相と伴に保水性を得ることができる木製バスケットとミズゴケの組み合わせが最も良く成長しています。今年は定期的に肥料を与え、特に購入希望者の多い濃赤色の花フォームの株を大きくし、秋には株分けをしたいと考えています。本種の輪花数は疑似バルブ基部の太さに比例し、写真左に見られるような40輪程の開花数を得るには、バルブ数以上にその太さがより重要です。開花開始から散るまでに1.5ヶ月程の花寿命をもつことと、花サイズが4-6㎝と大きいため展示会等への出品に適した種の一つです。orchidspecies.comでは花サイズが僅か0.6インチの1.5㎝と記載されており、何かの間違いと思います。これまで4ロット50株ほど栽培した中でそれほど小さな花は見たことがありません。写真左の花サイズは5.0-5.5㎝です。これまでの花の最大長は8㎝で2018年3月の歳月記に画像を掲載しました。 栽培環境は通年で夜間平均温度が15℃以上でPaph. sanderianum, rothschildianumと同じ高温室です。形状が酷似するDen. cinnabarinumの中温環境とは異なります。また本種は比較的明るい場所を好むようです。

Den. aurantiflammeium

Dendrobium boosii

 Den. boosiiがぽつり々と開花しています。年に2回程開花が見られます。orchidspecies.comの本種花画像は2011年のLeyte島生息株と思われますが、 リップが赤、黄、白の3色でペタルとドーサルセパルに淡い赤紫のラインが入りカラフルです。しかし現在、Leyte島からの入荷はなくミンダナオ島からです。この地域差のためか、その多くはセパル・ペタルは白色で、リップ色は僅かにオレンジや黄味のあるフォームが見られるものの、サーモン色で単調です。今回開花した花はやや赤みの強いことと、ペタルに薄紫のラインがあることで撮影しました。本種は環境により色合いが変化する特性があるかも知れません。

Den. boosii

Vanda javierae

 例年より2ヶ月程早くVanda javieraeの開花が始まりました。本種はフィリピンPangasinan標高1,200mの生息種で、中温タイプです。現在フィリピン生息のVandaでは最も希少とされ、市場の多くは実生と云われています。当サイトでは現在100株ほどVanda javieraeの野生栽培株を育てていますが、その半数近くは当サイトでの分け株です。似た種にVanda barnesiiが知られています。違いはVanda javieraeはリップ側弁の内側が淡い緑色に対してVanda barnesiiは赤茶色の網目模様が見られます。現地の話では、生息域がそれぞれに異なりコロニーがあるようです。当サイトでもVanda barnesiiを20株ほど栽培していますが、希少性はVanda javieraeが遥かに高く現在は入手難です。下写真は今年早咲きのVanda javieraeの初花で2日の撮影です。

 本種は2月頃から新根が発生し、活発に伸長します。夜間平均温度は通年で20℃以下が好ましく、1日の昼夜の温度差が10℃ほどになると花芽が現れ、1ヶ月程で開花します。国内栽培では通常5-6月が最花期となり、夏期に入り温度が上がると根の動きが止まります。ラン園の多いフィリピン・標高600mの避暑地Tagaytay地区では、夜間平均気温が20℃以下となるのは1-2月の2ヶ月間程で、気温が高すぎて開花は滅多に見られないそうです。

Vanda javierae

Phalaenopsis hieroglyphica Cluster

 昨年8月の歳月記に、現地で葉が薄くなり皺が入るほど弱って、枯れを待つばかりの、これまで見たことがない葉長40㎝を超えるPhal. hieroglyphicaを持ち帰ったことを取り上げました。環境の良い場所で適切なかん水や病害虫防除をすることで生気を取り戻し、先月末から開花が始まりました。蕾を入れると40輪程の開花になると思います。白色ベースのNS6㎝程の大きな花で、開花は現在3割程ですが、期待通りの大輪花となりそうです。

Phal. hieroglyphica

 Phal. hieroglyphicaの花サイズについてJ. Cootes著Philippine Native Orchid Speciesによれば4㎝とされます。一方2007年、本種の生息地であるフィピンではなくマレーシアラン園にて、台湾から輸入されたPhal. hieroglyphicaがベンチに並べられており、その花サイズの大きさに驚き入手したことがあります。この株の花サイズは8㎝前後で、2017年7月の歳月記に取り上げました。orchidspecies.comでは本種の花サイズは最大8.75㎝と記載されています。おそらくこのサイズは台湾で生産された4倍体のメリクロン株と思われます。交配を数回試みましたが受粉は成功しませんでした。そのため当時は野生栽培株は花サイズに関わらず3,500円でしたが、この特大サイズ株は量産品として2,500円で販売しました。現在当サイトではフィリピン生息のPhalaenopsis属amboinenses節の実生やメリクロン株は販売しておらず野生栽培株のみです。

開花の始まったPhalaenopsis shilleriana

 予想より2-3週間早くPhal. schillerianaの開花が始まりました。現在100株ほど栽培しており、下写真はそのうち5株での開花で、本日(1日)の撮影です。野生栽培株のため花フォームが微妙にそれぞれ異なっています。

Phal. schilleriana Luzon Philippines

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