栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2018年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月 12月 

12月

Dendrobium sp

 今回のマレーシア訪問でふと見つけたデンドロビウムです。本歳月記の2015年12月に取り上げたDen. metachilinumに混ざって入荷したDendrobium spに花が似ており、既にその株は在庫が無くなっていたため、それではと5株あった全てを持ち帰りました。花を撮影し比較したところ3年前の種は疑似バルブが太くFormosae節に見られる黒い毛があることと、葉形状が楕円形であり、今回の種は線形で異なります。では線形あるいは針状の葉をもつ一見よく似たDen. pinifoliumと比較したのですが、疑似バルブの形状や花のリップ形状が異なります。種名については年明けに調べることにしました。下画像は上段が今回の名称不明種、中段がDen. pinifolium、下段が2015年の名称不明種で新しいデンドロビウムサイトにsp2として掲載した種です。

Den. sp SECTION Conostalix complex? 2018年12月入荷種
Den. pinifolium
Den. sp 2015年12月入荷種

デンドロビウムのページ更新

 主に2017年から今年8月までに入荷し歳月記にて紹介した凡そ40種のデンドロビウムを、デンドロビウム・サムネールに追加更新しました。現在はバルボフィラムのページ更新に取り組んでいるところです。

AJOSサンシャインラン展2019プレオーダー

 来年1月10日からのサンシャインラン展出品のプレオーダーリストは胡蝶蘭原種のみとしました。プレオーダーリストは下記サイトをご覧ください。1月4日まで受け付けを行います。その他の属種は会場での販売となります。2017年から2018年のデンドロビウム、バルボフィラムなど新入荷種(歳月記掲載)はほぼ全種を出品予定です。今年秋以降の入荷種は順化中のものが多く、この季節下においては搬送・展示による作落ちリスクが高いため、ラン展開催直前まで順化状態をチェックし良好な選別種のみを展示販売とします。デンドロビウム等の他種のプレオーダーをご希望される場合はお問い合わせください。株の状態を見て出荷可能なものは個別にメールにてご連絡致します。なを出品予定種のリストは1月5日までに本サイトに掲載いたします。

  胡蝶蘭原種プレオーダーリスト

今回出品するDimorphorchis lowiiParaphalaenopsis labukensis

 こちらもDmrphr. tenomensis同様に素直に伸びた写真左のDmrphr. lowii BSと、4年ぶりとなりますがParaphal. labukensisの1mサイズを出品します。これでParaphalaenopsisはParapahl. deneveiParapahl. serpentilingueの3品種が揃うことになります。Paraphal. labukensisは根が高湿度を好むため、炭化コルクに保水力の高いソフトFernを重ねた2層構造に取り付けています。Dmrphr. lowii は従来価格、Paraphal. labukensis1mサイズとしては従来(本サイト)の1/3程の6,000円を予定しています。

Dmrphr. lowii Paraphal. labukensis

現在開花中のDendrobium rindjaniense

 Den. rindjanienseの多くの株が開花中です。ラン展には開花株を展示できると思います。

Den. rindjaniense

Phalaenopsis amabilis SabahとDendrobium deleonii

 下写真左は久々に入荷したPhal. amabilis Sabahで35㎝炭化コルク付けです。これでサンシャインラン展にはJavaおよびSulawesiの3地域からのPhal. amabilisをそれぞれ出品することになります。一方、フィリピン・ミンダナオ島からのDen. deleoniiは炭化コルク(写真右)とポット植えの2つの植え込みで合わせて現在40株程が現在浜松にて順化中ですが、価格を若干下げ(4,000円)その一部を出品する予定です。

Phal. amabilis Sabah Den. deleonii

Dimorphorchis tenomensis

 本種はボルネオ島Sabah標高800m - 1,000mに生息し、30cm - 40cmの長く下垂する花茎に上部の3 -4輪の花は黄色のベース色にまだらに赤い斑点のあるフォームと、下部には8 - 10輪の白色をペースに赤紫の斑点でほぼ埋め尽くされた2つのフォームを持つDimorphorchisです。Dmrphr. lowiirosiiは良く知られていますが本種は2008年登録の新しい種となります。2017年7月のマレーシア訪問にて最初に入手して以来2回目となります。Dimorphorchisを現地で入手する際の問題点は、野生栽培株は殆んどの株が曲がりくねっており、茎が真っ直ぐ伸びた株はほとんど無いため植え付けを考えると非常に厄介なことです。10株程を入手予定でしたが今回は姿勢の良い株のみを3株選び持ち帰りました。下写真がそれらで、このようにストレートに伸びた株は5本に1本程度しかありません。2株はスリット入りポットに大粒のバークとゼオライトでの植え込み(写真左)、1株は木製バスケット(写真右)としました。いずれもBSサイズであり来年の開花を期待しています。サンシャインラン展にはポット植えの2株を出品します。国内マーケットのネット情報は見当たりません。

Dmrphr. tenomensis

Dendrobium nindii

 珍しくオーストラリアを主な生息地(一部にはニューギニア)とする白いセパルにブルーのリップをもつSpatulata節デンドロビウムDen. nindiiが5年ぶりに入荷しました。3年前から毎年、マレーシアラン園に問い合わせをしていたのですが、今回クアラルンプール近郊のラン園にてやっと本種の野生栽培株を入手しました。現在は実生がマーケットの主流であり、シノニムであるDen. ionoglossum名が使われているようです。下写真右は今回入手した株で、左はDen. nindiiの花です。

Den. nindii

Dendrobium serena-alexianum

 ボルネオ島低地生息のCalarifera節デンドロビウムです。Den. datinconnieaeaに似ていますがリップ形状が異なります。2008年登録の比較的新しいデンドロビウムのためか国内でのマーケット情報はネットからは見当たりません。20株程を持ち帰りました。3,000円を予定しています。

Den. serena-alexianum

Dendrobium sp (Solomon Islands)

 ソロモン諸島からの名称不詳のデンドロビウムで、ラン園では初入荷とのことでした。写真左および中央が株で、炭化コルクと木製バスケットの植え込みです。根の形態からは垂直面での活着が窺えます。葉は卵形から楕円形で表面は濃緑色、裏が紫色(左写真)と、表面と同じ緑の株がそれぞれ混在します。ステムは固く立ち性で、長さは左写真は40㎝程ですが大きな株では中央写真に見られるように1.5m程となります。花は右写真で葉元から2本の花柄が伸び2輪1組で開花するようです。開花時点では緑味(上段)が強く、日が経つにつれ黄色に変化します。株様態からは高温タイプと思われます。


Vanda lombokensis

 Vanda lombokensisはこれまでも在庫しているものの今回サプライヤーからのトラフ模様の花画像(下右写真)の色合いが良いことから5株程入手してきました。左写真は夜間撮影のため見ずらいのですが炭化コルク取り付け後のその株です。

 Vandaの植え込みは小さなバスケットを根元に付け、根の大半を空中に吊るす方法(代表的な種はVanda sanderianajavieraeなど)と、空気層を大きくするために大粒のバークやクリプトモスを植込み材として根全体をポットに埋め込む方法(Vanda foetidalamellataなど)があります。いずれもこれらの選択は設定された栽培環境の空中湿度に依存するものの、日本の環境では低湿度であることが多く、根の大半が露出する栽培は、湿度不足で徐々に葉が痩せてしまう傾向が見受けられます。かん水頻度を高めることで対応はできるものの、フィリピン・バタンガスのラン園の根も葉も太ったVanda sanderianaの根を触ったところじっとりとしていたような状態を、四六時中保持することは困難です。一方、低湿度であれば全てポット植えが良いかと言えば、一時的であれ空気の流れのほとんど無いポット内では過かん水となり、種によっては根が腐敗してしまいます。

 こうした環境での一つの解決策は根の大半を空気に晒すのでもなく、またポットに収めるのでもなく、ミズゴケを薄く敷いた木片やコルクに根を置くことです。この置くとはミズゴケで覆うのではなくミズゴケの上に乗せることです。すなわち根の円柱表皮の3-4割程がミズゴケに接触し、6割以上が空中に晒されている状態となります。こうした栽培テストを最近しており、ほとんどのVandaやAeridesで好結果が得られています。新根の発生数が減少したり、株が痩せてきたりしたVandaには特に有効な手法と思われます。サンシャインラン展には炭化コルク50㎝ x 8cmに取り付けたVanda javieraeの僅か2-3ヶ月間での新根発生状況を参考に展示します。Vanda lombokensisもこうした背景から当初から炭化コルク付けとしています。

Vanda lombokensis

新入荷Bulbophyllum

 今回入手のバルボフィラムの一部です。左が株で、右がその花です。上段はBulb. pustulatum、3段目がBulb. chrysotes、2段と4段はボルネオ島生息とされる種名不詳種です。こうした種はいずれもバルブ数に依りますが2,500円から3,500円ほどとなります。


続大株

 マレーシアに21日から出かけ昨日24日帰国しました。順次本サイトで入荷したランを紹介していきます。若干遅れますがサンシャインラン展のプレオーダーは28日頃となる予定です。現在仮植えを行っており一部の本植えも始めました。下写真は本日25日の植え付け株の一部です。いずれも一般サイズと比較してこれまでにない大きさの株です。

 上段左写真は左側の株が今回入手したPhal. modestaで、右隣の小さい株が一般サイズのPhal. modestaです。それぞれ最大葉長は34㎝と14㎝です。34㎝はこれまで20年近い胡蝶蘭の収集のなかで最大のサイズで、別種の如き印象です。E. A. Chiristenson "Phalaenopsis A Monograph"に記載の最大長23㎝を遥かに超え、幻の変種Phal. modesta var. bella (1992年H. Roellke)の葉長30-40㎝かも知れませんが、この変種の株や花写真がネット上には見当たらないため下写真の株が開花するまではその変種なのかどうかは不明です。今回ほぼ同一サイズを2株入手し、1株は販売し1株は交配用親株とする予定です。上段中央写真は左写真の小さい方の株の花後の花茎を映したもので、この株がNBSではなく一般サイズであることを示すものです。

 上段右写真はPhal. venosaです。こちらも異常な大きさです。左が今回入手の株、一方右側が開花中の一般BSサイズです。葉長はそれぞれ33㎝と22㎝です。Phalaenopsis A Monograph"記載の最大長22㎝を10㎝程オーバーしています。大株の方は多数の花茎や高芽が出ています。

 下段左はBulb. binnendijkii Sulawesiiです。最長葉サイズは36㎝ x 15.5cmで、こちらもこれまで入手した本種の中では最大サイズとなります。Bulb. binnendijkiiはボルネオ島とJavaが知られていますが、Sulawesi島のBulb. binnendijkiiは比較的新しく2008年に発見・記載されました。本種は写真の炭化コルク付け以外に木製バスケットの植え付けも行いました。また右はCleisocentron merrillianaumです。4年ぶりの入荷です。大きな根塊のため木製バスケットの斜め吊りとなっていますが、バスケット当たりこのサイズで1株です。すなわちバスケットそれぞれは7茎からなる1株のクラスター株となります。茎の長さはいずれも80㎝です。

Phal. modesta Phal. venosa
Bulb. binnendijkii Cleisocentron merrillianum

Paraphalaenopsis serpentilingue

 8月にマレーシアで入手したParaphalaenopsisが開花しています。10株の中で7株に現在、下写真右に見られるように花芽が発生しました。シンガポールAsiaticgreenの価格リストには本種が45USドル(約5,000円)で、同属であるParaphalaenopsis deneveiがその7倍の350USドル(約39,000円)となっています。いずれもボルネオ島生息種で、Parapahl. deneveiは特に希少種とされ、マーケットにおいて最も高価なランの一つです。一方のParapahl. serpentilingueも、Paraphal. labukensis(同ラン園30USドル)やlaycockii(同ラン園25USドル)と比べれば生息数が少なくParapahl. denevei程ではないものの高価な品種です。しかしAsiaticgreenの販売価格を見る限りParapahl. serpentilingueの45USドルはかなり安価であったためか価格リストにはSold outとなっています。

 同一種でありながら価格の大きな違いの背景にはParaphalaenopsis属の特徴としてその成長の遅さがあり、数㎝の葉の長さの違いが栽培コストに大きく影響しているためです。結果、サイズが異なると、販売価格も大きく変化します。また価格差に関わる他の要因は野生栽培株か実生かの違いです。よって本属を購入する場合は、それぞれの種の出自、相場価格とサイズを基に適正な価格かどうかを見極める必要があります。例えばParaphal. deneveiでは葉長が25㎝、Paraphal. serpentilingueは35㎝、Parapahl. labukensisは80㎝以上か以下かで数倍の価格差が同一種に生じても不思議ではありません。別の見方をすれば、その境目となる葉長の長さがイコールBSかNBSかの違いでもあると解釈しても良いと思います。結論から言えば、成長の遅い本属の購入は、いつまでも待てる若者は別として、開花しているあるいはしたことのある株を買う方が多少高価であっても花を得ることをゴールとする人にとっては現実的と言うべきかも知れません。サンシャインラン展にはParaphal. serpentilingueおよびdeneveiともに出品します。

Paraphal. serpentilingue

Bulbophyllum sp

 今月フィリピンから持ち帰った種名不詳のミンダナオ島生息のバルボフィラム3点です。上段が全体画像でそれぞれの株のバルブが中段および花が下段です。中央はBulb. bataanenseに似ているもののさらに調査が必要です。一方、右の株はBulb. basissetumBulb. trigonosepalumなどの近縁種と思われます。ラテラルセパルの先端がカールしている点で形状はBulb.papulosumに最も似ていますが、中央弁の微小な凹凸が基部のみで全体になく、また基部に裂目がありません。サプライヤーによるとBulb. papulosumとは花の匂いも異なるとのことです。こちらもJournalなどでの調査が必要です。指先と比較し花サイズは凡そ分るかと思います。サンシャインラン展に数点出品します。バルブ数によりますが3,000円前後を予定しています。


続胡蝶蘭大株

 これまで胡蝶蘭原種の大株をしばしば取り上げてきましたが、7月から今月までの3回のフィリピン訪問で得た株の葉長の大きさは格別で、ロット当たり大株が1-2株が含まれることはこれまで何度かありましたがロットのほぼすべてが大株で入荷したのは過去15年間で初めてです。下写真上段は炭化コルクに取付けた一部ですが、上一列はPhal. mariaeで下一列はPhal. hieroglyphicaです。葉長はいずれも30㎝を越えています。

 写真下段は、これまでのBS/FS株とされてきた株と今回の株を比較したもので、左写真のPhal. mariaeは最大葉長が右株で43㎝、大株に挟まれた杉皮板取り付けの中央が21㎝、右が35㎝です。また右写真のPhal. hieroglyphicaでは左の斜め吊りの3.5号ポット植えの株は22㎝、右の炭化コルク付けは32㎝です。下段写真で、それぞれ大株に挟まれた小苗に見えてしまうは株は市場に一般的に流通しているBSサイズであり、比較のため小さな株を選んだのではありません。

 上段写真の株はこれから2-3ヶ月の順化栽培に入ります。これら大株は取り付け直後は根の切断等で葉がしな垂れて入荷しますが、下段写真左のブロックバーク取り付けの9月初旬入荷株のように2-3ヶ月間の順化が終了すると葉全体に張りが戻り、2芽目の新芽も見られます。これらは現在記載されている情報の中でも最長レベルかそれ以上で、注目すべきはこれらがたまたま含まれていたのではなくロットほぼ全てがこのサイズであることです。大株であることは、Phal. mariaeでは輪花数が、一方Phal. hieroglyphicaでは花サイズがそれぞれ比例することを期待(Phal. mariaeは確認済)しています。

Phal. mariae Phal. hieroglyphica

Bulbophyllum hampeliae

 2016年OrchideenJournal Vol.4-4で発表された新種のバルボフィラムでフィリピンミンダナオ島北部、東ミサミス州標高1,200mコケ林の生息種となります。Beccariana節でBulb. virescensの近縁種と思われます。種名由来のHampel氏より直接出荷された15株程を今回のフィリピン訪問で持ち帰りました。下写真がそれで、炭化コルク、ソフトFern角材(左写真の右端)およびバスケットにそれぞれ植え付けています。

 Bulb. kubahense、Bulb. binnendijkii、Bulb.aeoliumなどリゾームの長い種は、その株の形状や成長様態から垂直板(ヘゴやコルク)への取付が適しているものの共通して栽培者から伺うのは、新芽は良く発生するのだが、芽が開く前に病気等に罹り易く、よく落ちてしまうということです。垂直板では新たに発生する芽の周辺は板の上部や側面あるいは支持材から浮いた、保水材(ミズゴケなど)の少ない場所が多く乾燥が進み、新芽が弱体化するのではと思いますが、そのため支持材としては保水性の最も高いソフトFern、手近なところでは木製バスケットに植え付けることで新芽が落ちることはかなり少なくなります。しかしバスケットの場合、伸長するリゾームがすぐにバスケットからはみ出してしまいます。これを納めるのはリゾームの根がバスケットに活着する前に強制的にバスケット内部に収まるようにリゾームを曲げることが必要になります。今回本種を3つの植え付け材としたのは、こうした背景から本種の性格をあらためて観察するためです。来月のサンシャインラン展に出品し40㎝ x 8㎝炭化コルク3バルブ構成で3,000円を予定しています。

Bulb. hampeliae

胡蝶蘭原種大株II

 下写真はPhal. lindeniiです。左の3株は今回フィリピンからの持ち帰りで最長25㎝、右2株は一般的BSサイズです。


Phal. lindenii

胡蝶蘭原種大株I

 下写真の左上段に吊り下げられた株はPhal. lueddemanniana Mindanao、下段がPhal. mariae、一方、右写真の上段はPhal. hieroglyphica、下段がPhal. schillerianaです。いずれも野生栽培株で35㎝長の炭化コルク付けとなっており、すべて葉長30㎝を超える大株です。ネットに見られる素焼き鉢にミズゴケで植え付けられた同種の実生と比較するとまるで別種の如きです。今回のフィリピン訪問でこれら原種をそれぞれ20-40株持ち帰りました。写真はその中の2株づづを撮影したものです。他の株もほとんどがこのサイズです。Phal. mariaeは蕾を付けている株があり、大株は花数が圧倒的に多いことが特徴で、ざっと数えたところ60個ありました。来年1月のサンシャインラン展にこうした胡蝶蘭大株を10種程出品する予定です。一般サイズに比べこれまで通り1,000円前後高額になる程度ですので、現在のマーケットで見られるこれら原種の小さな実生株よりも安価と思います。

Phal. lueddemaniiana(上)、Phal. mariae(下) Phal. hieroglyphica(上)、phal. shilleriana(下)

Phalaenopsis hieroglyphica f. flava

 フィリピンから今回持ち帰ったPhal. heiroglyphica f. flavaの植え付けが終わりました。Phal. hieroglyphicaのalbaフォームは5年以上前から実生がマーケットに登場し、本サイトでもalbaフォームをフィリピン固有種にも拘わらずマレーシアにて5年ほど前に入手したことがあります。本種の花フォームは多様で本サイトを含め、Phal.netなどのサイトで多数見ることができます。flavaやalbaとされる花フォームには白あるいは薄黄色のベース色にPhal. hieroglyphicaの名の由来であるヒエログリフ文様の黄色の斑点が特徴です。しかし多くはこの斑点が色褪せていたり、単なる棒状斑点であったりと何代にも及ぶ交配の結果と思われる変化が感じられ、美しいフォームは中々見ることができません。

 下写真左が今回入手の野生栽培株で葉長は30㎝を超えます。写真右上段はその花です。白色ベースに黄色のコントラストのあるフォームはこれまでのネット画像には見られない印象的な色彩と思います。左写真の株にはさく果があります。これは開花と同時に自家交配を依頼し3ヶ月程経過したものです。2-3か月後には採り撒きを予定しています。一方、下段は現在マーケットに見られるPhal. hieroglyphica albaとされる実生の参考画像です。これに対しflava種のマーケット情報はほとんどありません(ヤフオクにPhal. hieroglyphica flavaの検索で1件ヒットしますが画像はなぜかPhal. amoboinensis flavaです)。


Phal. hieroglyphica f. flava

f. flava

f. alba

フィリピン訪問

 8日に浜松を立ち11日までフィリピンを訪問し250株程を持ち帰りました。その中には発見者本人からの新種Bulb. hampeliaeや、前回紹介したDen. deloeonii、またおそらく世界で初めての登場と思われ今後マザープラントとなるVanda roeblingiana albaPhal. hieroglphyca flavaPhal. lueddemannina blueなどが含まれます。バルボフィラムはミンダナオ島からが多く、そのほとんどが種名不詳種です。またDen. papilioのクラスターも入手しました。今回の訪問は原種の本来の姿をサンシャインや東京ドームラン展で展示し、販売するため胡蝶蘭が中心でこれらは13日から順次本サイトにて紹介していきます。

Dendrobium deleonii

 本種は今年のOrchideen Journal Vol16_2 (2018年4月号)にフィリピンミンダナオ島Bukidnon標高1,300mの生息種として発表されたデンドロビウムです。新種名のデンドロビウムとしては珍しく大型の花で本サイトではその発表から3月後に入手し、今月にはその一部が開花しました。下写真が浜松にて6日に撮影した花です。また今後実生化を図るべく現地でシブリングクロスしてもらいタネを付けた株も入荷しました。

 Den. deleoniiはネット画像で見られるDen. sanderae var majorと瓜二つで、果たしてどこが違うのかと一般の趣味家は感じるかも知れません。論文によると相違点が何点か取り上げられており、一つはリップの側弁(下写真のリップ奥の複数の赤いラインのある左右2枚の弁)が小さいこと、2つ目はリップ中央弁がやや短く幅広であること、3つ目は中央弁がDen. sanderae v. majorは側弁と中央弁の境目辺りから折れ曲がるように下垂しているのに対して、本種は下写真上段右に見られるように真っ直ぐ伸びているか、僅かにカーブしていること、4つ目は同一花サイズで比較するとリップの基部がやや狭いこと、最後に葉が本種はDen. sanderae v. majorと比べ小さく、余りカーブしていないことのそれぞれです。さらに論文ではBukidnonのローカルマーケット(おそらく露店販売)で長い間売られていたものが、上記のようにvar. majorとの相違点が分かり(Establish)、最初の撮影者の名前からこの種名に至ったとあります。

 この花形状からはおそらく、ほとんどの人がDen. sanderae v. majorとの違いを理解することは出来ないのではと思われます。ルソン島からカラヤン諸島を中心に広く分布するDen. sanderaeは地域差や視覚上の個体差を持つ種に対しては、v. luzonicum、v. major、v. parviflorumv. surigaenseなどこれまでDen. sanderaeの変種として位置づけてきました。本種もDen. sanderae v. majorv. surigaenseが存在する中で、果してDen. sanderaeとは別種とすべきかは疑問です。地域固有の形状が認められるとしても、上記程度の相違であれば、例えばDen. sanderae v. deleoniiとする名称がより適切な気がします。

 今後のマーケットにおいて危惧することは、その類似性からしばらくの間、新発表種であるが故の高額販売が見込めることからDen. sanderae var majorDen. deleoniiと偽って販売されないかです。これほど類似する種の購入にはまず花を確認すること、花付でなければその株、あるいは同一ロットの花写真、特に下写真の上段右のような側面画像を、さらに重要なことは株の出所(生息地域)を確認することです。言い換えれば、販売する側も出所が不明な本種名の株を取り扱うべきではないと思います。また現実問題として現地2次・3次業者が両種を同定する知見があるとも思えません。Den. deleoniiはミンダナオ島Bukidnon、一方、Den. sanderae v, majorはルソン島コルディリェラ・セントラル地域、さらにDen. sanderae v, surigaenseDen. deleoniiと同じミンダナオ島で、スリガオ州です。これらはDen. sanderae v. majorでのネット画像検索からも分かるように、葉や正面からの花形状からはDen. deleoniiに類似するフォームが多数あり、相当な栽培経験者であっても判別は容易ではありません。その同定には出所に加え、前記論文の特徴点の5つ全てのand条件(全てが合致すること)が必要です。

 Den. deleoniiの花は大きく純白のセパル・ペタルにblood redのラインの入るリップをもつ美しく整った種です。開花株があれば来月10日からの全蘭サンシャインシティラン展の本サイトのブースにて展示します。価格は株サイズにより5,000円 - 7,000円を予定しています。

Den. deleonii

Dendrobium rindjaniense

 8月に入荷したインドネシアLombok島生息のDen, rindjanienseの炭化コルクやブロックバークでの順化が終了し、開花が始まりました。下写真がその一部です。期待した通り大株は花茎当たりの輪花数が多く、さらに1バルブに3-4の花茎を発生している株も見られます。1月のサンシャインシティラン展には大株での開花を展示することが出来ると思います。

Den. rindjaniense

Bulbophyllum sp North Luzon

 昨年、フィリピンにBulb. woelfliaeを注文した株は開花でBulb. catenulatumと分かりミスラベルでした。その後数回開花したようですが、互いに似た者同士のBulb. ocellatumBulb. pardalotumと同じ場所で混在して栽培しており、これまで取り立てて花の確認をしていませんでした。先日偶然に開花を見て、これまでと異なる花フォームと気が付き、上記の経緯をラン園に説明にしたところ、Bulb. woelfilaeを注文したときin situ(本来の生息場所)の画像がサプライヤーから送られてきたことがあると、その画像をもらいました。比較して同じ種であることが分かりました。それが下写真の上段左です。その他の花画像は浜松にて撮影したものです。昨年3月の歳月記にBulb. williamsiiの変種ではないかと取り上げた種に花形状が類似しており、おそらく同種と思われますが、今回の開花株は一回り小さなサイズでin situ画像に似てラテラルセパルの赤味が強く出ています。

 花形状からLeptopus節をネットで画像検索したのですが該当する花フォームが見つかりません。最近のジャーナルに発表されているかも知れませんが取り敢えず新種の可能性もあり、待遇変更で植え替えを行いました。リップの形状はBulb. ocellatumに似ているのですがペタルやラテラルセパルは異なります。更に調査が必要です。


Phalaenopsis pulchrafloresensis

 9月にそれぞれ20株程を入荷したPhal. pulchraPhal. florensensisの順化が終了し、それぞれが頂芽や根を盛んに伸ばしています。下左写真の上段がPhal. pulchra、下段はPhal. florensensisの20株の一部で、全て野生栽培株です。写真の炭化コルクは30㎝長であることから株の大きさが凡そ分かるかと思います。長い葉で30㎝近くあります。左のヘゴ板は1m長です。画像左の1m長の大きなヘゴ板に付いた株は高芽から高芽へと繁殖したPhal. pulchraのクラスターです。Phal. pulchraはフィリピンLuzon島とLeyte島に生息し、これまでの入手状況からはルソン島生息種の花色はやや明るい青紫に白のまだら模様が多い一方で、レイテ島はやや濃色の青紫のソリッドに近いフォームがしばしば見られ写真のクラスター株はレイテ島からです。

 40年ほど前まで本種はPhal. lueddemanniana var. pulchraと命名されPhal. lueddemannianaの変種とされていた時期があったそうです。同様にPhal. hieroglyphicaPhal. lueddemanniana var. hieroglyphicaと呼ばれた時期がありました。現地では今日でもPhal. lueddemanninahieroglyphicaは同種と主張する人がいます。確かにPhal. hieroglyphicaにはPhal. lueddemannianaとの区別が難しい花フォームがあったり、栽培を通しての性格はほとんどが同じです。しかしPhal. pulchraPhal. lueddemannianaとは花形状に明確な違いがあり判別は容易です。

 ランの多くは複茎性で茎が成長し終わるとその基部から新しい芽や、リゾームを伸ばしその先に新芽を付け増殖していきますが、これが根や茎基に障害がでると既存の茎の途中から高芽が発生するようになります。Den. miyasakiのように根が正常であっても頻繁に高芽を出す例外種もありますが、デンドロビウムなどでの高芽の発生は根腐れを暗示していると考えた方が無難です。それに対して胡蝶蘭は単茎性で、頂芽優先のため増殖は花茎からの高芽によって行われます。しかし頂芽に障害が出たり、伸長が止まった場合には茎基から脇芽が現れます。単茎性種では脇芽が株の異常を知らせていることになります。また胡蝶蘭も根が傷んだ場合、花茎に花の代わりに高芽が発生するようになります。このような性格からいずれも高芽の頻繁な発生には注意が必要です。ところが胡蝶蘭の中にも頂芽が伸長し健康であっても、次々と花茎を伸ばし、これに花を付けるよりも高芽を頻繁に発生させる例外種がいます。この代表的な種がPhal. pulchraです。写真の左のPhal. pulchraクラスター株は3年前は5個ほどの高芽を付けた1株であったものが僅か3年程で写真に見られる繁殖です。まさに高芽が高芽を生む光景です。こうした頻繁な高芽による成長はとりわけPhal. lueddemanniana complexの特徴ですがその中でもPhal. pulchraは特に活発です。

 一方、Phal. floresensisはインドネシアフローレス島生息種です。この種で興味があることは、DNA分析によると本種はボルネオ島生息のPhal. bellinaの近縁種とされ遺伝距離が近いとされます。よく見れば花色の違いを除けばPhal. floresensisの丸みのある花のセパル・ペタル形状からはPhal. bellinaに似ているように感じます。いずれの原種も、頂芽を病気で失わないようにすることと、Phal. pulchraのように長く下垂する花茎を考えるとミズゴケの鉢植えでベンチに置いての栽培は困難であり、大株にするには下写真のような支持材への植え付けが必要となります。


Phal. pulchra

Phal. floresensis

全蘭サンシャインシティ・ラン展2019

 来年1月10日から14日にサンシャインシティにおいて全蘭のラン展が、また2月15日から22日は東京ドームラン展が開催されます。どのラン園も同様と思いますが今月から多忙な出店準備が始まります。本サイトではこれまでに収集したランに加え、今月は2か国を訪問予定しており、かねてからの注文種500株程を持ち帰ります。2016年から今年にかけて発見・発表された新種や種名不詳種など20種近くを含め、主に胡蝶蘭、デンドロビウム及びバルボフィラム、バンダ等をそれぞれのラン会場にて展示・販売する計画です。

 また同一種でありながら実生とは全く異なる野生本来の姿を彷彿とさせる原種を数点展示します。プレオーダーの受付については、多数の株が今月中旬から末に集中して入荷することから1月のラン展対応としては今月25日から31日の7日間の短い期間ですが、新入荷種を中心にプレオーダー受付けを行う予定です。今月15日頃から本サイトにて順次それらを紹介していきます。


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