4月Phalaenopsis corningiana 4月末から5月にかけて浜松温室ではボルネオ島低地生息のPhal. corningianaの開花期となります。下画像は29日現在開花中の4点を撮影したものです。上段左はリップがブルーで花被片全体に赤成分が抜けておりフォームは固定しています。3年前に入手し、その後の現地での入荷は途絶えています。今年の東京ドームラン展に1株出品しました。右はFernbrookフォームで10年以上も前にアメリカのOrchidviewから入手した株です。下段左は野生株によく見られるフォームです。右の株はほぼソリッドレッドフォームとなっています。これら4点の内、Fernbrookを除き他は野生栽培株で、とくに野生株の中での下段右のフォームは極めて稀です。下段右の画像をよく見ると開花した株の葉に3,500円の値札が付いています。昨年のサンシャインラン展(おそらく1月)に花の無い状態で、この値段で出品していたことになります。今回さっそく自家交配をすることにしました。本サイトでは、例えばサイズや色違いなどのフォーム別の管理は行わず同一種の中での区別は、変種およびalba, coerulea, aurea, punctataのみです。これら以外の株は同一価格での販売となります。よってサイズや個体差別の指定受注は行っていません。この結果、本サイトのページにある「胡蝶蘭原種のフォーム各種」のほとんどの写真の株は、カタログにある一般価格で買われていきました。常に新しい株と入れ替わっています。 Bulbophyllum whitfordii それとも Bulbophyllum megalanthum? 現在、PalawanからのCheiriのような形状ではあるが黄色の花とされたBulb. spが複数で開花しています。同じロットの花は昨年12月の歳月記にBulbophyllum sp (cheiri-like yellow) Palawanとして取り上げました。Bulb. cheiri complex(近縁種)としてBulb. megaloanthumとBulb. whitfordiiが知られていますが、この2種はBulb. cheiriとは花色、香りまたリップおよび蕊柱形状が異なります。一方、Bulb. megalanthumとBulb. whitfordiiの違いは、後者がBulb. cheiriと同様に倒立開花していることとされます。このことから歳月記12月に開花した花は倒立ではなく一般的な直立姿勢であったためBulb. megalanthumとしました。しかし今回複数の株で開花している株の花は全て倒立しており、また2010年頃にはPalawan生息種としてBulb. whitfordiiは知られていたものの、Bulb. megalanthumは未確認で、結果としてこれらの情報からは今回開花している株はBulb. whitfordiiの可能性が高いことになります。これらBulb. cheiri complexはネット上の画像検索でも名称が曖昧で、画像が混在しています。orchidspecies.comにはこれらがシノニムの関係との記載もありますが、J. Cootes氏はこれら3種は別種としています。下画像は今回開花したPalawanから入荷のBulb. spです。左右の写真は別株ですが、右は反転して撮影したものです。
ランの用語 ラン栽培をこれから始める方にとって、本サイトで何気なく表現している用語が分からないことも多いと思います。花、茎、葉等について解説したページが下のアドレスにあります。このページは2013年まで本サイトが管理していたもので、胡蝶蘭原種に関する情報を取り扱っていますが名称や形態解説の多くは他のランにも共通するところが多く、参考になると思います。
Bulbophyllum kubahense 今月に入り3株程が花芽を付けていましたが最近は温室を訪れる人がしばしばで、花芽を見て買われる方が多く、浜松温室で花を見る機会が少なくなりました。たまたま今週に入り大きな株で開花が始まり、これまでの開花株としては花数が26輪と最も多いことから撮影しました。
交配 今月はPhal. gigantea SabahとDen. aurantiflammeum2種の自家交配を行いました。Phal. gigantea Sabahは希少種となったことと、Den. auratiflammeumは花サイズが一般の1.5倍ある株でこのサイズとしては希少であることからの実生化です。下写真は交配親(左)と23日現在のそれぞれの交配花(右)の状態で、Phal. giganteaは交配から僅か3週間でさく果がかなり大きく発達しています。一方、Den. aurantiflammeumは過去3年間、毎年交配を試みてきたものの受粉に失敗してきましたが今回は受粉までは行ったようで花托の部分がやや膨らんでいることが分かります。交配からタネを得るまでの4-8ヶ月は、少しでも環境条件が合わないとさく果が黄変し落ちてしまったり、胚の無いタネができてしまいます。特に交配からの4ヶ月間程は神経を使います。
ちなみに、下写真は現在浜松クール温室で育成中のパプアニューギニア生息の野生栽培株Den. vexillarius dark blueのさく果です。この後2ヶ月程で胚のあるタネが取れれば、およそ3年後にはDen. veillarius dark blueの実生がマーケットに2 - 3,000円前後で出回ることになります。
Dendrobium hymenophyllum Den. hymenophyllumはインドネシアJavaおよびスマトラ島生息種で、セパル・ペタルが緑と赤色の2つのフォームが知られています。緑フォームにはさらに茶褐色の小斑点が入るタイプと斑点が全く入らないflavaタイプがある一方、赤フォームはダークマゼンタからレッドブラウン(あずき色)まで様々です。赤色フォームがより入手難です。昨年秋にDen. hymenophyllum redの注文を行いましたが、Den. jiewhoeiが誤ってロット単位で入荷してしまいました。なぜそれぞれがスマトラ島とボルネオ島の生息種、さらに前者は高温タイプ、後者は低-中温タイプであるのにミスラベルが起こるのか、希少性や現地取引価格から言えば2008年登録の新種でボルネオ島生息のDen. jiewhoeiの方がかなり高価であることから故意ではなく、おそらく株がよく似ているため2次業者のストックヤードでの取り扱いミスであろうと思われます。Den. hymenophyllumの色フォームを株から判断する一つの手段として葉裏の色があります。この色と花色がよく一致するためですが前記したように、それは株がDen. hymenophyllumであることが前提で、蕾の無い葉と茎だけの株では、特にCalifera節と前記したようなミスが発生します。また蕾があればその色合でセパル・ペタルの色だけでなく斑点の濃度まで予測できます。下写真は現在開花中の株を撮影したもので上段は花、下段はその蕾です。左は一般的なグリーンに茶褐色の斑点が入るタイプ、中央は斑点の無いFlavaタイプです。蕾のドーサルセパル相当位置やSpur(後方に伸びた突起部)の色合いに違いがでます。 さて問題は右写真下段の蕾です。Den. hymenophyllum greenのロットの中から出ました。蕾のセパル・ペタルに当たる位置の色は赤色というよりはむしろ黒色に近く、しかしSpurは緑色です。蕾が赤褐色は一般的には赤フォームとなるのですが殆んどの場合、Spurも赤味が全体あるいは一部に現れます。もし開花まで写真の色合いが変わらないとすると、これまでの経験からはセパル・ペタルがほぼ黒に近い緑色の花が開花することになります。このようなフォームはネット上には見られません。果たして稀なフォームなのか、数日後の開花までに色褪せて、レッドブラウン色のいわゆる一般フォームに落ち着くか、しかし赤色フォームにしてはSpurの緑が鮮明過ぎます。
Dendrobium nudum 昨年夏フィリピン経由でインドネシアからDen. nudumとDen. montanumをそれぞれ10株づつ、前者は1株が15茎以上の大きな株、後者は4-5茎の一般サイズで入手しました。Den nudumは植え付け1か月後に開花し花の確認ができました。一方、Den. montanumは今年になって開花したところDen. nudumと同じ花でミスラベルでした。その後も半数以上の株で開花しましたがDen. montanumとされた株は全てDen. nudumで、どうやらロット単位のミスラベルのようです。両者は同じJavaやSumatra島1,200m - 2,000m標高の 生息種で、背丈も茎(疑似バルブ)も似ていることからの取扱いミスと思われます。しかし数本はDen. montanumが現れるかも知れないとそのままにしています。どの株も1年を超えると環境に慣れるようで順化直後は2-3輪でしたが、最近は下写真のように1茎に10輪程の開花が見られます。下写真は17日の撮影です。木製バスケットにミズゴケ・クリプトモスミックスで中温室です。小株はプラスチックにバークミックスでよく開花しています。本サイトでは1株5茎で2,500円としています。
Phalaenopsis fuscata 浜松温室ではPhal. fuscataの開花期を迎えています。暗いところが好きな胡蝶蘭で、野生株は根張り空間を大きくすればするほど大株になります。写真はボルネオ島生息株で4年前に入手したものです。
Dendrobium sutepense II ミャンマー・タイ生息のDen. sutepenseの開花最盛期となっています。中温での栽培で写真は炭化コルク付けです。希少種なのかどうか、なぜか市場情報がネットからは見つかりません。本種はorchidspecies.comによると甘い香りがすると書かれていますが、何か漢方薬のような匂いを特に早朝に感じます。
Dendrobium yeageri フィリピン固有種のDen. yeageriが珍しい花色で開花しました。15日撮影です。通常本種は淡い紫色に濃い紫のラインがセパル・ペタルに入るのですが、下写真左のようにセパル・ペタルの基部にDen. yeageriの赤味が多少見られるものの、Den. victoriae-reginae(右写真)と同じような青色です。現在両者共にそれぞれ野生栽培株を100株程在庫していますが、Den. yeageriのこの花色は初めて見るものです。果たしてこの色合いは環境によるものなのか、個体差なのか同一株を株分けして調べる予定です。
Bulbophyllum sp 昨年2月の歳月記にGreen sepalと共に紹介したボルネオ島からのBulb. spが開花しました。その時の花はCirrhopetalumタイプで下写真左の花は2輪でした。光沢のある鮮やかな黄金色で該当する種がないか調べたのですがネット上では見当たらず、Bulb. spとして10株程を販売しました。今回再び取り上げたのは写真右のように6輪で今月開花したためです。環境に順化すれば本来の姿を現すものですが、本種も入荷から1年半ほどでようやくCirrhopetalumらしくなりました。花色の鮮やかさは変わりません。現在開花中のPhalaenopsis bastianiiとPhalaenospsis sumatrana 2点 左のPhal. bastianiiは一般種に比べてセパルペタルの棒状斑点が太く、同種のソリッドレッドの開花を待って自家およびシブリング交配を予定しています。一方、右のPhal. sumatranaは昨年と同時期の開花です。マレーシアコレクターから入手してから4年目の株で入手時は写真の前面にある新しい2葉程の大きさでしたが、やがて高芽ではなく1株で葉長30㎝を超える大株になりました。
Dendrobium igneo-niveum Sumatra島生息の本種は人気が高く、現在インドネシアに大株(15茎以上のクラスター株)を注文しているところです。茎4-5本の株で本サイトでは3,500円です。Formosae節としては栽培が比較的容易な種ですが、この節固有の、日本の季節の変化に対する管理(主に水やり)は技術が必要で栽培としては中級から上級レベルとなります。6年前の会津時代は素焼鉢にミズゴケ100%の何の変哲もない組み合わせと3年ごとの植え替えで良く成長していました。ところが浜松に来てからは他のFormosae節と同様に機嫌が悪く、開花した年の冬は越えられるものの新芽が現れず高芽が出た後は、じり貧状態の株が増えました。限られた温室空間に数千株ある環境では種毎の最適な管理をすることはできないことが最も大きな原因で水やりの加減が必要でした。 そこで2年ほど前から、皆同じような管理の下、良好な結果を出すにはどのような取付材や植え込み材が良いかを見つけ出そうと本種に限らずFormosae節のほとんどを素焼き鉢、ヤシガラマットにミズゴケを巻いた円筒、木製バスケット、炭化コルクなどにそれぞれ3-5株づつ植え付け栽培結果を観察することにしました。 Formosae節のほとんどは炭化コルク(あるいはヘゴ板)が良いとの結論を得ましたが、Den. igneo-niveumに関しては、今年春の結論としてミズゴケとクリプトモスをそれぞれ50%配合の植え込み材で木製バスケットが良く、意外であったのはヤシガラマット円筒は悪い結果となりました。自然界では他のほとんどのFormosae種と同様に、本種も大小さまざまな木に活着しており、バルブは上方に伸長し、茎も多くは立ち性であり、鉢やバスケットには植えにくいものの乾湿のメリハリの少ない適度に湿気のあるバスケットの方が良いようです。この方法であれば3年目の春にバスケットの植え込み材を交換すれば、水やりに特に気を遣うことなく、高芽の発生を抑えると共にバルブ元から年に2本程度の新芽を発生させ、3-4年かけて大株にできるのではと思われます。これを受けて木製バスケットはコストアップになるものの全ての株を植え替え、さらに成長具合を調べることにしました。 下写真上段左は現在(14日)開花中のDen. igneo-niveumで、Formosae節によく見られるようにバルブの太さが花の大きさに関係するようで上段右写真の左が太いバルブの花で、右が一般サイズです。下段は木製バスケットにミズゴケとクリプトモスで植え付けた株の今年発生の2本の新芽2例です。
Dendrobium taurinumのフォーム3様 Den. taurinumはフィリピン固有種です。フィリピンのSpatulata節は本種とDen. bicaudatumおよびDen. conanthumの3種のみでいずれも高温タイプです。本種はPalawanからMindanaoまで広く分布し、その環境は多雨とされます。J. Cootes氏によると本種は栽培の極めて難しい種で本種を栽培するのであれば実生にすべきと著書Philippine Native Orchid Speciesで述べています。これまで6年間で本サイトでは2地域からの野生栽培株と実生1ロットをフィリピンより入手していますが、野生・実生に関わらずデンドロビウムのなかでは最も順化が困難な種であることは昨年の歳月記3月に、その対処方法を含め記載し、このような処方がない場合の移植歩留まり率は精々1割と述べました。本サイトでは順化が完全に終了しない限り販売できない唯一のランです。本種の花は一般的にはセパルは白色、リップおよびペタルがバイオレッド色で、青あるいは赤味が強いか弱いかの個体差があります。ところが昨年Negros島からとされる野生栽培株を入手し、今月に入りその株が開花しました。花色のフォームは他のロットとは大きく異なり、個体差と言うよりは変種あるいは地域差と言うべきフォームです。下写真は上段左が5年前に入手した野生株、右は今年1月入荷の実生、下段左が昨年11月入荷のNegros島からの野生株です。右はその株です。上段左は青味が強くセパルにも青色が混じります。右はピンク、下段左はリップ中央弁の縁とペタルが濃い赤紫のそれぞれで、特にNegros産は他とはかなり異なるフォームです。同一種でこれほどの違いは他のSpatulata節には無いように思います。
Dendrobium thyrsiflorum sp 1昨年、マレーシアのPutrajaya Floria Festivalで現地ラン園のブース内にDen. thysiflorum spのラベルが付いた、現地価格としてはかなり高価な株を見つけ、spとあるが一般種と何が違うのかと質問したところ、通常この種はセパル・ペタルが白色か、稀に全体が淡いピンク色であるが、この株は、セパル・ペタルの先端部が青味のあるピンク色をした希少なフォームであるとのことでした。Den. thyrsiflorumは中国、インド、ミャンマー、タイ、ベトナムの標高1,200m - 2,000mに生息する中温タイプのデンドロビウムです。多輪花で豪華な印象から市場性が高く、現在セパル・ペタルが白色の一般フォームであれば3-4本の疑似バルブサイズが1,500円程と安価です。一方、似た花でセパルペタル全体がピンクのフォームはネット上での多くがハイブリッドで、原種と思われる種は1-2画像しかなく市場情報もほとんどありません。 そうした背景からspに興味が湧き、20茎からなる大株のspを持ち帰りました。当初、本種は高温環境でも開花するとの情報もあり胡蝶蘭温室で同居させていたのですが1年経っても開花する様子が無く、昨年10月に中温室に移動しました。今月に入りこの株が開花しました。下写真です。海外からの移植後初の開花のためか、色が薄いのですが確かにセパルペタルの先端部に青味のあるピンク色(写真右)が乗っています。先端部がベース色と異なるフォームをもつデンドロビウムは、本サイトでしばしば紹介しているDen. sp sumatraやDen. sanguinolentumに見られるように環境条件によって濃度がしばしば変化します。環境に順化すればこのバイオレット色が濃くなるのではと次の開花に期待しています。
Bulbophyllum jolandae リップに細毛がある代表的なバルボフィラムとしてボルネオ島生息種のBulb. jolandaeが知られています。1,500mの生息域のため中温栽培です。ネットで栽培風景を見るとその多くはポット植えです。本種をポットに植えると花茎は上方に延びやがて弓なりに下垂しはじめ、ここに10-15輪の花を付けます。しかし株によってはこの花茎の伸長方向がまちまちで、鉢の周りに他の株があるとそれらと交差したりぶつかったりして良い景色にはなりません。自然の姿勢に倣いヘゴ板やコルクなど垂直板や棒に取り付ければ花茎はやや上向きで板面の前方に伸長しやがて弓なりに下垂しはじめ、この下垂した位置から花茎の軸に対し左右および前方の3方向に美しく整列して(下写真左下)花を付けます。こうした性質から景色としては板取り付けが最も良く、これまで杉皮板とポットのそれぞれに植え付けていましたが今回の植え替えで全て(約20株)を炭化コルク(写真右)に植え替えました。ちなみにマーケット情報を調べたところ、本種はなぜかバルボフィラムとしてはかなり高額で、3葉(バルブ)NBSサイズが10,000円以上で販売されているのには驚きました。当サイトではBSサイズで3,000円ですので4株買えます。1月のサンシャイン、2月の東京ドームにもこの価格でよく売れましたが5月のサンシャインに5株程持って行くことにしました。
Pleurothallis lacera 植え込みが終わったエクアドルの引き取り株に散水をしていたところ、5mmにも満たない小さな花が葉の上に咲いているのが目に入り、正面から見てその色合いに驚きました。まさに文字通りの深紅の花びらです。ラベルにはPleuro. laceraとあり、orchidspecies.comで検索したところ南コロンビアおよび北エクアドル生息種で2,600m - 3,200mのsteek bank、いわゆる断崖の地生ランとのことです。クールよりもさらに低温のコールドタイプであると共に、何故に日本の標高で例えれば槍ヶ岳や穂高岳相当の高山の崖に登って、これほどちっぽけな株を採取するほどの価値があるのかと、こちらも驚きです。orchidspecies.comの花画像の色合いは今一つですが浜松で開花した実物を見ていると、その深紅の色は魅力的で虫(ポリネーター)だけでなく、確かに人をも惹きつけます。Pleurothallisフリークにとって栽培をしたい種の一つかも知れません。下写真は浜松クール系温室での10日の撮影です。この株は6月から販売品となりますが、さて3,000m級の高山植物を、どのようにして育てるのかこちらも興味があります。地生ランとありますが、浜松では小さな半透明プラスチック鉢にミズゴケとクリプトモスミックスです。
現在の炭化コルク植え込みDendrobium tobaenseの栽培状況 昨年7月からの胡蝶蘭、バルボフィラム、デンドロビウムなど炭化コルクへの植え込みが始まり現在ほぼ8割近くのデンドロビウムFormosae節の植え替えが終わりました。ほとんどのFormosae節は、素焼きやスリット入りプラスチック鉢に比べて炭化コルクの方が安定しており、新芽や新根の発生が盛んで、Den. tobaenseは今月に入り7割の株で花芽を付けています。現在在庫のDen. tobaenseは昨年10月に40株程入荷した野生栽培株で半数以上を販売した残りです。それまでの鉢栽培では、売れ残った株はほとんどが小ぶりでじり貧状態が続きやがて落ちるのが常でしたが、海外からの入荷時から炭化コルクへの植え付けに替えてからは、ほぼ全ての株が同じような成長をし、品質の優劣の差がほとんどなくなり鉢植えとは大きく異なっています。下写真の上段は炭化コルク付けのDen. tobaenseです。すべての株で入荷以降発生の新芽が見られ、これまでよく耳にした冬を無事越したものの春になっても芽が出ないと言った多くのFormosae節栽培の問題はありません。2段目は新芽や新根を示す画像です。3段目以下はそれぞれの株の蕾(一部)で全て今月9日-10日の撮影です。1か月程後には花の最盛期を迎えることになります。 現在開花中のPhalaenopsis bastianii と Phalaenopsis gigantea Sabah Phal. bastianiiは高芽が出やすく下画像左では入荷から2年半で3つの高芽を付けています。一方画像右はセパルペタルが薄黄色ベースのPhal. gigantea Sabahです。花茎の基部に近い花柄が太くなっていますが今月、自家交配をした結果です。受粉が終わってこれから4か月程かけて大きな鞘が形成され、6か月程でフラスコへの取り撒きができると思います。ボルネオ島では多くの森林地帯でプランテーション化が進み、野生のSabahタイプは絶滅状態であり、ex-situ (生息域外保全: 本来の生息域では最早存続できない種で、生息地以外の場所で人工繁殖を図る保全)を考え、純正種を保証した株の逆輸出が必要な時期に来た感があります。
Phalaenopsis modesta 1月に入荷し、仮植えをしていたPhal. modestaの植え付けが終わりました。右が植え付け直後の画像で、左は3年前に入荷した同種の現在の開花風景です。Phal. modestaやPhal. mariae等が多輪花となるには移植しておよそ2-3年は必要なようです。
Dendrobium Distichophyllae節 Complex Den. uniflorumやDen. connatum等のデンドロビウムDistichophyllae節は似て非なる形状で、現在浜松で在庫する種で8種を越えます。下画像は現在開花中のDischophyllae節の仲間です。上段はフィリピンパラワン諸島生息でリップ中央弁が左がSandybrownの橙色、右がPalegoldenrodの緑色で開花後の時間の経過で若干色褪せがあるものの明確な色違いがあります。敢えて似た種名に当てはめればDen. ellipsophyllumかDen. moquetteanumでしょうか。一方中段左は昨年12月歳月記に取り上げたボルネオ島生息のspです。中段右はCameron Highlandsの農園で多くのDen. bifariumの株の中からこの1株のみ見つかったもので、リップ中央弁に緑色の3本のラインが走るDen. bifariumと異なり純白の色合いからはDen. connatumと思われるのですが3㎝程となるDen. connatumとは異なり1㎝以下の花で葉サイズも1/2のspです。花サイズからはDen. bifarium(1.3㎝)かDen. bihanulatum (0.7㎝)のアルバのようなフォームです。下段左はDen. maraiparense、右はDen. uniflorumです。Den. uniflorumを除き、いずれのspも今後の市場での入手は極めて困難と思われます。 Dracula属の植え付け Dracula属の植え付けがほぼ終了しました。3種類の植え付けで、それぞれメタルリング、炭化コルクおよびスリット入りプラスチック鉢です。いずれも植え込み材はミズゴケとクリプトモスミックスを使用しています。プラスチック鉢の植え付けは100株程残っていますが栽培状況を見てから前者のいずれかに移し替える予定です。下画像はそれぞれの植え付け風景です。今後は種名リストと価格を整理し、6月より販売を開始します。その際には南米の他属、株総数にして1000株以上も順次販売する予定です。
Phalaenipsis stuartianaとPhalaenopsis philippinensis 現在、Phal. stuartianaとPhal. philippinensisが同時に開花しています。Phal. schillerianaとは凡そ1か月遅れの開花となります。Phal. stuartianaは高温タイプですが、Phal. philippinensisはルソン島北部IsabelaやNueuva Vizcaya州の標高1,200mに生息のため中温での栽培となります。写真右は両種を並べて撮影したもので、夏季はそれぞれ別場所に置かれます。
Dendrobium cinnabarinum var. angustitepalum 2月の歳月記で取り上げた同一株で2回目の開花が始まりました。前回の開花は2㎝程の小型の花でしたが、今回は期待通りの3.3㎝のサイズに変化しています。株が環境に馴染み安定すればサイズが大きくなるのではと期待していましたが、ほぼその通りになりつつあります。一般タイプのDen. cinnabarinumの花径は5-8㎝とされますが、これは左右ペタル間のスパン長で、本種のようにセパル・パタルが下方に垂れているものは一つのラテラルセパル長が花サイズとなります。言わば花の上下の長さです。この結果2.5㎝-4cmがこの変種のサイズと言ったところでしょうか。下画像上段は今回の花、下段左は初花と同サイズの花、右は今回の花と初花との比較を示すものです。
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