10月
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Vanda barnesii |
Ceratocentron fesselii |
アルバフォーム2種
フィリピンにて栽培中のアルバフォーム2種を紹介します。マーケットでは下写真の色合いをアルバと名付けていますが、むしろflavaフォームとすべきかと思います。一つはVanda roeblingianaで、もう一つはPhal. hieroglyphicaです。前者のアルバフォームはこれまで知られていないようです。また後者のアルバフォームは台湾やタイでの実生がすでにマーケットに見られますが、写真右の株は野生株です。これまでに見られない非常に上品な色合いで、これらは11月に入荷予定です。いずれもマザープラントとして自家交配を行い、実生を得た後はフィリピンに実生の一部と共に本種を戻すことにしています。Vanda roeblingiana f. alba |
Phal. hieroglyphica f. alba wild |
植え替え中のBulbophyllum2種
下写真は現在植え替え中の上段がBulb. saurocephalum subsp oncoglossum、下段がBulb. whitfordiiです。Bulb. saurocepahyalumとその亜種とされる2011年登録のsubsp oncoglossumとの違いは、リップ中央弁が平坦か、先端部が凸状で側弁の形状に相違があるとされます。写真の株は先端にやや膨らみがあり亜種であろうとの判断です。一方、写真下段は入荷名が希少種とされるBulb. cheiri yellowでしたが、PalawanにおけるBulb. cheiriの確認がない(2010年)のに対して、形状が類似するBulb. whitfordiiはPalawan生息の確認があり、また同種の特徴であるグリーン色も強いことからBulb. whitfordiiとしました。Bulb. saurocephalum subsp oncoglossum | |
Bulb. whitfordii |
少し変わったBulbophyllum
フィリピンからは新たに15種程のバルボフィラムが11月末ごろまでに入荷予定で現地で確保次第、順次画像が届くそうです。その中で2点程、既存種に似て非なる花画像が送られてきました。左は種名が現時点では不明です。右はBulb. nymphopolitanum complexのようですが、それにしてはペタル・セパルの色が赤すぎ、ラテラルセパルの先端部が細長い点が特異です。指皮膚との色合いから映像の加工は考えにくく、本サイトではこれまで取扱のない種です。一方、ミンダナオ島の2016年登録の新種でBulb. virescensの近縁種とされる花の大きいBulb. hampeliaeはすでに確保済みで、これらはサンシャインラン展に出品予定です。Cleisocentron abasii事情
先日Clesiocentron abasiiの下写真が送られてきました。30-40㎝ほどの野生株で長い花茎から本種であることは間違いありません。USD120だがどうかとのことです。すなわち13,000円程となります。断りました。その理由は画像からは品質が良くないことと、ランとしてはマイナーなCleisocentron種がこれほど高価なのは日本向け価格であり、それには数年前の国内マーケットでの登場事情が背景にあるようで日本以外での本種の人気は取り立ててありません。高額でも良いとする需要があればそれはそれで良いのですが、今回やっととは言え、こうして出てきたからには、いずれそれなりの数が現れると思います。本サイトでは現在2,000 - 3,000円程で販売しているCleisocentron gokusingiiやmerrillianum並になれば購入も考えるとサプライヤーに答えたところです。Cleisocentron abasii |
順化中の胡蝶蘭原種3種
8月末にマレーシアを訪問し持ち帰った胡蝶蘭原種Phal. amabilis JavaとPhal. viridisおよび9月末訪問のフィリピンから持ち帰ったPhal. schilleiranaが現在順化中でそれぞれで新根が現れてきたところです。これらは1月のサンシャインラン展に出品する予定です。Phal. amabilis Java | |
Phal. viridis | |
Phal. schilleriana |
Dendrobium tannii f. alba?
Den. tannii名で今年1月に入荷した株には赤紫やピンク色など多様なカラーフォームが混在し、その中に下写真の白い花も3割程含まれていました。Den. tanniiで検索しても公式な登録は無いようで、この名前のページはorchidspecies.comにも無く、Den. bracteosumあるいはその一変種とされているようです。幾つかのDen. tanniiに関する記述からは、Den. bracteosumとの相違点として、リップの色やセパル・ペタルの形状が取り上げられていますが、その程度のみで別種とする根拠には無理があり、一方、変種とするのであればDen. bracteosumの一般フォーム株に対しての排他的地域性が必要で、さらに一つの入荷ロットから紫、ピンクおよび白色が同じような割合で出現することは野生株とは考えにくく、Den. tanniiとされる株はタイか台湾でのフラスコ苗の可能性が大きいと思われます。現在開花のDendrobium ramosiiとDendrobium violaceum
これまで生息確認が無かったフィリピンPalawanからのDen. ramosii(写真左)と、ニューギニア生息のDen. violaceum(写真右)が低温および中温室にてそれぞれ開花中です。Den. ramosiiはDen. erosum、Den. rutriferum、Den. kuhliiなどと花は一見似ていますが、それぞれリップや疑似バルブ形状がよく見ると異なります。これらは下写真のように一つの花は2㎝程と小型ですが多輪花で、写真は15輪以上の同時開花です。Den. ramosii |
Den. violaceum |
Dendrobium reypimenteliiの異なるフォーム?
先月末、2016年登録の新種でミンダナオBukdnon生息のDen. reypimenteliiを取り上げました。100株程ある中で現在次々と開花を始めています。しかし一部にカラーフォームの異なる株が現れています。ドイツのジャーナルOrchideenJournal Vol.5.1 2017ではBukidnonからの8つの新しい原種が紹介されており、その中のデンドロビウムに、Den. derekcabactulanii、Den. reypimentelii、Den. schettleri が記載されています。これらはいずれも先月紹介のDen. boosiiと同様に下垂し落葉した長い茎に同じような形状の花を付けるデンドロビウムです。それぞれCalcarifera節の近縁種と思われますが、カラーフォームやサイズの僅かな違いでそれぞれ別種として扱われると、果たして下写真の今回Den. reypimentelii名で入荷したカラーフォームがそれぞれ異なる株もまた同一種ではなく、やがて別名が付くのではと考えてしまいます。そこで問題なのはこうしたフォームの違いを、趣味家から購入希望があることを想定し花を確認後、区分けして栽培するかどうかです。Den. reypimentelii | Den. reypimentelii変種? sp1 | Den. reypimentelii変種? sp2 |
Dendrobium hosei
花画像と伴に2016年末にマレーシアよりDen. nabawanense名の株を入荷しました。しかしそれまで栽培していたDen. nabawanenseの花と酷似するものの微妙に様態が異なることから、その入荷株について亜種か変種ではないかと2016年10-12月の歳月記で取り上げました。2年余りを経過した今月に入り、植え替えの時期を迎え、これまで開花毎に撮影した画像を整理し調べたところ、この入荷種はDen. hoseiであることが分かりました。Den. hosei | Den. nabawaense |
Dendrobium niveobarbatum
昨年1月のサンシャインラン展でフィリピンラン園から引き取ったDen. niveobarbatumが大きくなり、株分けと共に植え替えを行いました。本種は、最近新種の頻繁な登場で話題のミンダナオ島Bukidnonの生息種で、標高500m程の高温タイプです。2008年登録の比較的新しい種となります。同じフィリピンの広域種であるDen. polytrichumと花形状は酷似していますが葉形状が異なり、その形状の違いは2017年2月の歳月記に取り上げました。Dendrobium niveobarbatum |
歳月記に取り上げた品種の価格
新規に取り扱う品種や新種が次々と増える状況のなか、現在本サイトにはそれらの価格をまとめたページがなく、こうした品種については歳月記で述べた販売予定価格が唯一の情報となっていました。このため、トップページの中段右のリンク・メニューに”2018年度参考価格”を設け、今週末までに本日(18日)ポスティングしたリストに追加更新する予定です。開花中の2種
下写真左は現在中温室で開花中のDen. hamiferumです。大半が高温タイプのSpatulata節としてはニューギニア標高1,000m - 1,800mに生息する珍しい中温タイプのデンドロビウムです。一方写真中央と右はフィリピンミンダナオ島Bukidnon生息の2016年登録のDen. butchcamposiiです。こちらは標高データが見つかりませんが、2年間の本サイトでの栽培による推定では 1,500m前後と思われます。左写真でDen. hamiferumの上部に白い花が映っていますがこれはDen. lydiaeでこちらもミンダナオ島生息で2016年登録の新種です。標高は1,200mとされますが栽培からはDen, butchcamposiiと比べて5℃程度高めが良いと思われます。Den. hamiferum | Den, butchcamposii |
Vanda javierae
フィリピンルソン島Pangasinan州の標高1,200mに生息する本種は生息域が狭いためか数が少なく野生栽培株の入手はフィリピンラン展においても困難です。現在マーケットで見られる本種はほとんどが実生とのことです。野生栽培株は10年前から5-6年間入荷していましたが、最後に纏まって200株程を入手した後は、中温室にてそれらの栽培を続けています。サンシャインや東京ドームラン展には毎回5株程出品しており人気のある完売種の一つです。マーケットでの実生種は3-4,000円程度であるのに対し、野生株と思われる本種はAsiatic greenが現在150米ドル、約16,000円で販売しており、Vanda属としては最も高額な種で、それだけ野生株の入手は困難になりつつあるようです。Vanda javierae |
Aerides magnifica(旧名Aerides quinquevulnera v. calayanensis / Aerides odorata Calayan form)
現地でこれまで幾つかの旧名があったCalayan諸島生息の本種がAerides magnificaと命名されたのは2014年の最近になってからです。すでにCalayan諸島では生息域でのプランテーション化が進みAeridesの多くが絶滅状態にあり、現在のマーケットでの本種は園芸品種と聞いています。下写真は実生化のためにフィリピンラン園から預かっている株です。花は淡く柔らかなパステル・ピンク色ですが緑の葉に囲まれた景色の中ではよく目立ち存在感があります。これら以外にアルバタイプもあります。毎年元気よく開花するのですが自家交配では中々胚のあるタネをつけてくれません。今年も実生化への挑戦です。Aerides magnifica |
Phalaenopsis lindenii
胡蝶蘭原種の中で人気の高いPhal. lindeniiが浜松温室では開花期を迎えています。その中にセパル・ペタルのベース色がこれまでに見た中では最も濃いピンクの株が開花しました。通常のカラーフォームは白か、所何処に淡いピンクが見られる程度です。下写真左の右側が今回のピンクフォームで左が一般的なフォームです。一方、右写真は下がピンク、上が現在開花中のアルバフォームでそれぞれ並べて撮影しました。Phal. lindenii |
Bulbophyllum singaporeanum
本種はシンガポールと共に、隣接するマレーシアJohoreの低地に生息するバルボフィラムです。最も高い標高でわずか164mのシンガポールに野生のランが生息しているの?とつい疑ってしまいますが、本種はシンガポールでの数少ない野生ランの一つです。8月末にマレーシアから持ち帰ったバルボフィラムで、今月に入り浜松温室にて開花しました。下写真がその花です。なぜかネット検索では国内マーケットに見当たりません。シンガポールAsiatic greenが3バルブ20ドルとのことなので当サイトでも3バルで2,000円で販売予定です。炭化コルク取付コストを考えれば実質1,500円と言ったところでしょうか。Bulb. singaporeanum |
Coelogyne cristataのネット情報について
またしても不思議な情報をネット販売サイトで見てしまいました。Coel. cristataはヒマラヤからタイ北部に至る標高1,500mから2,600mに生息するクールからコールドタイプのセロジネです。その販売サイトによると標題として”栽培は容易なセロジネ属初心者向き”とあり、さらに夏の暑さにちょっと弱いので、 夏はなるべく風通しの良い涼しい所で栽培、 花期は秋~冬初心者向き、栽培は極めて容易。”とあります。はてコールドからクールタイプのCoel. cristataがどうして極めて栽培が容易で初心者向きなのか不思議です。栽培の秘訣のようなものを教えてもらえるのでしょうか。フィリピン生息のBulbophyllum inunctum
Bulb. inunctumはボルネオ島およびマレー半島での生息が知られています。フィリピンLuzon島Aurora州での生息は最近の登録とのことです。このBulb. inunctumが7月に入荷のBulb. glebulosum名の株の中に混じっていることが開花で分かりました。Bulb. glebulosum名の株の全てがミスラベルかどうかは現時点では不明ですが葉形状が若干異なる株もあるように感じられ、同定には時間が必要です。Bulb. inunctum |
種名がまだ決まらない?Bulbophyllum sp 2種
前項で取り上げた新種名Bulb. irianaeと同時に2016年12月に入荷したBulb. sp (restrepia-like yellow)と、2017年5月入荷のBulb. sp (lip yellow)は未だ名称が決まらないのか、情報はspのままとなっています。いずれもニューギニアからの低地生息種で中-高温タイプと思われます。Bulb. sp (restrepia-like yellow) | |
Bulb. sp (lip yellow) |
種名が決まった新種のBulbophyllum sp
2016年10月に本サイトが入手したBulbo. sp (Sarawak yellow)と、同年12月のBulb. sp (obovatifolium red) が今年のドイツ・ジャーナルOrchideen 2018 Vol. 4_9とOrchideen 2018 Vol.6_5にそれぞれ新種として発表されました。種名はBulb. isabellinumとBulb. irianaeです。同誌によるとBulb. isabellinumはボルネオ島Kalimantan標高100mに生息、2015年1月に発見とされ、さらに栽培での開花は2017年10月と記載されています。本サイトで扱った同種はKalimantanではなくSarawakで歳月記には2017年2月に最初の開花を掲載しておりジャーナルに書かれた時期より8か月ほど先行していたことになります。一方、Bullb. irianaeはパプアニューギニア標高300mに生息、2018年の命名となります。本サイトでは2017年7月にBulbophyllum obovatifolium redとして開花画像を掲載しました。Bulb. isabellinum | |
Bulb. irianae |
バルボフィラム3種
マレーシア経由でインドネシアから入手したバルボフィラム3点です。左の花画像はサプライヤーからのコピーです。右は植え付け後の株です。最上段はパプアニューギニアからでBulb. zebrinumの形状に似ていますがベース色が赤みが強いことと、セパルに細毛がある点で異なります。現在それぞれ2,500円で販売しています。Bulb. sp (Zebrinum-like) | |
Bulb. sp (aberrans-like) | |
Bulb. zebrinum |
台風で始まった10月その2
7月から先月初旬までにフィリピン2回、マレーシア1回の訪問と、タイからのEMSで合わせて1,500株程のランを入荷しました。その9割が炭化コルク付けのため1株の植え込みに掛かる時間は材料の裁断等の準備を含めると1株当たり平均15分程となり、これだけの株数となると先が見えない状態でしたがようやく終盤を迎えています。温室訪問の方も増え、発送も一部始まりました。台風で始まった10月
本サイトの温室がある浜松西区では10月1日0:00、台風24号の最接近時となり観測史上2番目となる風速42mを記録しました。この値はトラックを横転させるほどの強風とのことです。この結果、浜松市では凡そ8割となる27万戸が停電となり完全復旧は明日2日までかかることになりました。温暖な気候の浜松では農作物や果物栽培のビニールハウスが多く、本サイトの温室のメンテナンスを委託している業者からの午後の電話によると、今回程の強風に対しては為すすべもなく、殆んどのビニールハウスがこれまで経験のないほど多数で倒壊し悲惨な状況になっているそうです。