栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2017年度

2018年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月 11月  12月

11月

Bulbophyllum socordine complex

 8月の歳月記にフィリピン固有種であるBulb. socordineを取り上げました。Bulb. frostiiに似た花形状ですが、Bulb. socordineはBrachyantha節に対してBulb. frostiiはCirrhopetalum節で節がそれぞれ異なります。今月に入り2016年末にマレーシアCameron HighlandsでBulbophyllum spとして主にパプアニューギニアからのバルボフィラムが栽培されている株の中から持ち帰った株が開花しました。下写真上段がその花です。下段はBulb. socordineです。花サイズはBulb. socordineと同じように1輪が1㎝弱の小型です。花数は初花と言うこともあり、種別の要件にはなりませんが、花形状は色を除いて極めて類似しています。一方、今回開花の株の葉は長楕円系でバルブはやや球体に対し、Bulb. socordineの葉は細く、バルブはやや長く、花形状と葉の厚みを除けばそれぞれは異なる種に見えます。しかし種名が不詳のため、Bulb. socordine complex (complexとは近縁種あるいは同類種の意味)としました。

 もう一つの疑問は、Brachyantha節は主にインド、ヒマラヤ、雲南、ミャンマー、ベトナムなどの大陸の生息種で、大陸以外ではフィリピンのBulb. socordineが唯一です。こうした情報からは今回の開花種がニューギニアとは考えにくく、キャメロンハイランドのこのラン園は同時に雲南省のバルボフィラムも僅かですが栽培していることから、混ざってしまった可能性もあり、これは次回訪問時に確認予定です。いずれにしても未開花のキャメロンハイランドからのBulb. spは10株以上と多数あり、こうした種名同定問題は今後も益々増えそうです。

Bulb. socordine complex
Bulb. socordine

Dendrobium cinnabarinum

 ボルネオ島標高600m - 2,200m生息する人気の高いデンドロビウムです。着生および岩性で主に苔林の生息とされ中温タイプとなります。変種としてvar. angustitepalumが知られていますが、こちらは低地生息で高温タイプとして扱っても成長と開花が認められます。昨年からNBS株が30㎝以上に成長したため、今月に入りミズゴケ・ポット植から下写真の炭化コルクへの植え替えを行いました。本種はポットやバスケットでもよく育ちますが、2年以上経過すると突然枯れることがある一方、ヘゴ板やコルクではそうした症状はこれまで見られないことからの移植です。新芽付きの株でサイズにより2,500円からサンシャインラン展に出品します。下写真の左端の株は前回取り上げたBulb. bataanense spの別株でこちらもラン展に数点出品予定です。

Den. cinnabarinum

Coelogyne longirachis

 フィリピン・ミンダナオ島標高1,200mの生息種であるCoel. longirachisを7月に入手し中温室にて栽培を続けています。半数ほどの株で30㎝長の同一花茎に1-2輪つづ7月から咲き続けています。面白いことに僅かづつでですが順化が進むに従って花色の赤味が濃くなっており、現在の花色は下写真となっています。この変化は当初、栽培温度によるものかと思っていましたが、7月から11月にかけての中温室での昼間および夜の平均温度の変化はそれぞれ3℃程と小さく、この赤色の濃度変化は本種がクリムゾン(赤とマゼンダの中間)色を基本色として持っており、移植後の栽培環境に慣れていくにしたがって本来の色に近づいているようにも見えてきました。今月本ページに最初に取り上げたように新芽も現れてきたことで、サンシャインラン展には2株程出品する予定です。

Coel. longirachis

Bulbophyllum callichroma

 本種はニューギニア標高600m - 2,200mに生息する低温から中温タイプのバルボフィラムで、本サイトでは2015年と2016年に入荷して以来、中温室にて栽培を続けています。葉サイズの異なる2タイプがあり、大きな葉のロットはより低地の生息株ではないかと思います。最初の植え付けから2年以上が経過し、それぞれが30バルブ以上の大株となったため株分けを兼ね植え替えを行いました。これまでの支持材は杉皮板とヘゴ板でしたが栽培結果としては、ややヘゴ板の方が成長が良く、その原因は保水性による違いと思われます。下写真は今回の植え替えです。左写真の3つの支持材は左から、高い保水力をもつニュージーランド産ソフトTree Fern、中央がブロックバーク、右が炭化コルクでそれぞれ50㎝長です。今後同一環境にてこれら支持材での成長の違いを調べる予定です。

 一方、右上段は30㎝および40㎝長の炭化コルクに取り付けた4-6バルブからなるBulb. callichromaの今回の分け株です。下段は今年3月に開花した花です。本種の栽培についてorchidspecies.comでは低輝度(shade)とされていますが、これまでの経験からは低輝度では開花が難しく、開花には高輝度下に一定期間置く必要があると思われます。本種は低温タイプのために通常、栽培環境には冷房効率を上げるため遮光率の高い寒冷紗を用いていることが多く結果、低輝度となるため本サイトでは現在はLED下での栽培となっています。下段の花は冬季の2ヶ月間程、比較的高輝度の中温室に置いた後、低 - 中温環境に戻した結果の開花です。適切な気温下での栽培では丈夫な種で盛んに繁殖します。1月のサンシャインラン展には3,000円(3 - 4Bulb)から出品します。

Bulb. callichroma

Dendrobium sanguinolentum

 Den. sanguinolentumは特異な性質を持つデンドロビウムで、春と秋の2回開花しますが不思議なことに春と秋の花のフォームが大きく変わる株と全く変わらない株が混在します。本種はマレー半島、スマトラ、フィリピン、さらにタイやJavaにも生息するとされますがDen. cerinumDen. kentrochilumと混同されるそうで詳細は不明です。下写真はDen. sanguinolentumの3つの花フォームで本種名で画像検索するといずれもこれらに類似するフォームが見られます。種名のsanguinolentumとは滲んだ血色との意味ですが、リップ中央弁の斑点はオレンジ色でありセパル・ペタルの先端にある赤紫の斑点を想定しての種名と思われます。しかし血色?には見えないことと、写真中央フォームにはsanguinoらしき部分がなく、花色由来の種名にするとしばしば矛盾が生じる例の如くです。

 問題は下写真のそれぞれ異なるフォームが株毎に一様であれば、これだけの視覚的な違いがある以上、固有のフォームとして分類しても良いと思うのですが、困ったことに下写真で、春の開花では中央あるいは右のセパル・ペタルの先端部に青紫のに斑点がない株であったにも拘わらず、同一株でありながら秋には左のフォームが出現することです。これまで他種で、季節に応じてこれほど異なるパターンの変化を持つ種を見たことがありません。この変化は株毎には固有で変化する株としない株があり、これが同じ株では毎年繰り返されます。何かDen. dianaeと似た特性ですが、Den. dianaeの花フォームの違いについては季節あるいは栽培環境の気温に依存しているかどうかは確認していません。

 さらに詳細な違いを言えば、中央から左のフォームに変化する株は、春秋共に先端部が青紫色となる株の色の濃さに比べて淡くクリーム色のベース色と青紫のコントラストが弱いことです。また中央が左のフォームになる時期は常に秋であって、その逆はこれまで4-5年間で観測されていません。言い換えれば、秋に中央のフォームであった株は春も同じフォームですが、秋に左のフォームの株が春も同じである保証はできません。orchidspecies.comを見ますと、コモンタイプは左で、ボルネオ島タイプが中央とする画像となっています。常にボルネオ島生息種が中央で、スマトラ島が左であればそれらは地域的に分離していることから”変種”となるのですが、上記のような変貌が同一種の中のかなりの株で起こることを考えるそうとも言えません。

 本種は高温タイプの半立ち性であり、本サイトではバスケットでは立ち植えで、また炭化コルクには下垂タイプとして植え付けており、いずれも成長は順調で栽培は容易なデンドロビウムの一つです。疑似バルブは1.5mほどの長さまでに伸長します。Den. cerinumDen. kentrochilumと異なるのは、これらにはDen. sanguinolentumに見られるリップ中央弁の先端から基部に向かって走る6-7本のラインがないことで判断できます。取り敢えずサンシャインラン展にはこの春秋にフォームが変化する不可思議な株を2株ほど出品する予定です。

Den. sanguinolentum

Phalaenopsis lueddemannianaの変わったフォーム

 フィリピンから来月持ち帰る株の中の一つに、変わった色のPhal. lueddemannianaの写真が現地から送られてきました。Indigo色とのことです。稀にこうした青味を帯びた種はPhal. corningianaなどにも見られます。これを自家交配や戻し交配などして選別を繰り返すことで、将来Phal. violacea Indigo blueのようなソリッドブルーが出現するかもしれませんが、さてそれまで待てるかどうか、10年以上はかかるような改良には若い栽培家に期待するしかありません。


Phal. lueddemanniana blue form

その後のBulbophyllum spの一つ

 昨年の2月の歳月記でフィリピンからのBulb. cornutumに似たBulbophyllum spを紹介しましたが、Bulb. claptonenseに見られるリップの腺状突起(写真中央の黄色の部分)やラテラルセパルの形状など異なる点が多く、その後、同じフィリピンの生息種であるBulb. bataanenseにも似ていることが分かりました。orchidspecies.comの花の拡大写真(Flower Closeupページ)には全体としてカラーフォームはかなり異なるものの、リップ中央弁には下写真のような腺状突起のような黄色部分や微細な細毛も見られます。また下の中央写真では、こちらも拡大すると表皮の凹凸とともに微細な細毛があります。では結論としてこのspはBulb. bataanenseとなるのですが一方で、Cootes氏の著書にはBulb. bataanenseBulb. deareiの近縁種であるがペタルがreflex(後方に反る?)していない点と、リップには細毛は無い点でBulb. deareiとは異なると述べています。また同書のBulb. bataanense画像のラテラルセパルはBulb. deareiにしばしば見られるように前方水平方向に湾曲(持ち上がった状態)していますが下写真のラテラルセパルはorchidspecies.comの画像同様に上方には湾曲はしていません。

 この解説の相違や色フォームの違いが本種の同定を困難にしています。取り敢えず本種はBulb. bataanense complex あるいは bataanense spとしておきます。植え替え時期を迎えたためこれまでの杉皮板から右写真の炭化コルクに移しました。入手時から2-3バルブ伸長しました。


国内市場でほとんど見られない現在開花中のバルボフィラム2点

 写真左はBulb. claptonense Kalimantanです。一見セパル・ペタルのカラーフォームがBulb. smatranaにも似ていますが、リップ中央弁の中央部に腺状突起がある点でBulb. sumatranaともBulb. lobbiiとも異なるBulb. claptonenseであり、写真のフォームはボルネオ島Kalimantanからです。一般のBulb. claptonenseのラテラルセパルの斑点は線状ですが、下写真のフォームは点状であることと、このフォームの株が現時点でのネット上には見られないことからKalimantanの特定地域にのみ分布している希少種とすれば、前記リンク先画像と比較してBulb. claptonenseの変種と見做すだけの相違があるように思います。

 一方、右は2003年登録のBulb. coweniorumです。本サイトの常連さんから頂いた比較的新しいバルボフィラムです。こちらは多数の花画像がネットに見られますが国内のマーケット情報がありません。タイとラオス国境およびベトナムに生息し、聞くところによると丈夫で良く繁殖するそうです。これまでこれら2種類のバルボフィラムはいずれも高温室にて炭化コルクで栽培中でしたが、在庫数が少ないため支持材として活着・成長に優れたバーク木片(ブロックバーク)に移植し、取り付け後にBulb. claptonenseは本来の適温である中温室に移動する予定です。

Bulb. claptonense Kalimantan Bulb. coweniorum

黄色が鮮やかなBulbophylum dearei

 昨年ミンダナオ島からのBulb. spとして入荷したバルボフィラムが開花しBulb. deareiであることが分かりました。Bulb. deareiはボルネオ島、マレーシア、フィリピンに生息し、黄色をベースとしドーサルセパルが幅広の、よく知られた種で入手も容易です。本サイトではバルボフィラムの中では最も安価でこれまで1,500円で販売してきました。本種のセパル・ペタルの色はネットの画像に見られるように黄、オレンジまた橙色と様々です。今回取り上げたのは、そうした中でも、Bulb. claptonense aureaに匹敵する黄色が一際鮮やかな花が開花したためです。Bulb. deareiは黄色が当たり前と思われるかも知れませんが、ほとんどにオレンジや黄色の濃度変化が含まれます。

 今回の株はspとして入荷しているため同じロット内の株はこれまで販売しておらず、相当数の花を確認した後の販売となります。下写真左は今回開花のBulb. dearei、中央はBulb. claptonense aurea、右は以前に取り上げた、ドーサルセパルが大きなキャメロンハイランドの1.5倍サイズのタイプ、です。ロット内の別株も今回のような色彩であればミンダナオタイプとして差別化を考えています。

Bulb. dearei Mindanao Bulb. claptonense aurea (alba) Bulb. dearei CameronHighlands 4N?

Coelogyne tomentosa

 2016年1月にマレーシアの趣味家からマレー半島Genting Highland生息のセロジネを、その趣味家の環境では高温過ぎて花が咲かないのでとの理由で頂きました。同年10-12月の歳月記でも本種を取り上げました。入手からほぼ3年が経ちます。当時の歳月記の写真では3バルブ程の株でしたが、毎年暮になると一つの花茎に20輪程が開花しています。、現在では葉付バルブが12本、葉は無いものの生きたバルブを含めると19本となり、かなり成長の盛んな種のようです。orchidspecies.comによると標高凡そ1,100m - 2,000mの生息種でコールドからクールタイプとされています。本サイトでは中温室での栽培で、夏季の昼間の平均温度は28℃程、夜間平均温度は18℃としています。開花は日中気温20-25℃、夜間15℃程で始まっています。VandaではVanda javieraeVanda coerulescens、デンドロビウムではDen. boosiiDen. papilioなどと同じ環境です。

 花色を見ていると年毎にリップの黄色が鮮やかになってきているような気がします。その黄色が良く目立ちます。株も大きくなってきたため年内に3株に分け、販売する予定です。下写真上段が本種で、参考にCoel. odoardiを下段に表示しました。

Coel. tomentosa
Coel. odoardi

Dendrobium insigne

 現在Den. insigneが多数の株で開花中です。8月に入手して以来、初回は散発的ではありましたが2回目の開花です。下写真にDen. consanguineumと比較してみました。セパル・ペタルの裏側の、特に中央から先端部の色がイエローオレンジかホワイトかの違いで容易に区別できます。胡蝶蘭原種温室に同居中の非常に丈夫な種で、僅か2ヶ月の間に新芽が多数(3-5本)現れています。植え付け後の1-2割ならばよくある様態ですが、ほぼ全ての株で雑草の如く、あたかも競い合うかのように株基から成長芽が現れるのを見るのは初めてです。本種はポット植えが2,500円、炭化コルク付けが3,000円での販売となっています。

Den. insigne
Den. consanguineum

Dendrobium dianaeのフォームについて

 Den. dianaeはボルネオ島Kalimantanの低地生息種で2010年登録の新種です。昨年10月、マレーシアにて8㎝x2㎝程の木板に取り付けられたDen. dianaeを20株入手しました。入荷時の株の大きさは不揃いであるものの5㎝前後で小さく、しかし実生とも思えない様態で、これらをミズゴケでスリット入りプラスチック鉢に移植しました。半年ほどで20-30㎝程に急成長し、今年5月になり下写真左の、セパル・ペタルが透明感のあるグリーン一色の初花が咲き、6月にはツートンカラーの写真中央の花が開花しました。また同じ6月には何故か同一ロット内で2011年登録で同一生息域のDen. flos wanuaが開花しました。これらについては5及び6月の歳月記に取り上げました。再び今月には別株からDen. flos wanuaが咲き、続いて今回は下写真右のイエロー単色の花の開花です。

 Den. flos wanuaDen. dianaeの葉と茎は視覚的に区別が困難な程類似しているものの、リップ形状が大きく異なるため別種であることは確かです。なぜ混在したかは不明です。一方、単色フォームのDen. dianaeはCalcarifera節によく見られる、開花時がグリーンでやがて開花寿命に近づくに従って黄化する性質がありネット画像で見られるグリーンとイエロータイプは単に撮影時点の違いであろうと思っていました。しかし開花時点から黄色が強く、一両日で写真右のようなフォームをもつ株も現れました。株毎にこれほど不安定な色フォームは他に知りません。orchidspecies.comではセパル・ペタルはイエロー単色です。サイトで本種の画像を調べていたところインドネシアのサイトに、イエローフォームのDen. dianaeを変種としたDen. dianae var. yellowがありました。もしこの色違いを変種とするのであれば一般フォームの生息域であるボルネオ島Kalimantan州の内外のいずれかの地域に排他的に生息していなければならないことになりますが果たしてそれを周知の命名なのでしょうか?では一般フォームは何色なのかが問題となります。それにしても変種名をyellowとするとは、名前を見てついお茶をこぼしてしましました。しかし変種であるなかれ、未開化株については本種もまた開花しなければ下写真にさらにDen. flos wanuaを加えて、どれが現れるのか分からないがよろしいですかと伺っての販売となる困った種の一つです。現在の販売価格は3,000円です。

 ちなみに本種に関してネットではDendrobium dianaedianiaeのi文字が入る、入らない2つの名前がありますが同一種のようで、Malesian Orchid Journal Vol 6:57 2010 as D. dianae photo/drawingではiのない名前です。一方でCITESはiの入る名前です。つまり登録(学)名はDen. dianiaeでありCITESはdianiae名でなければ記載ミスとなり認可されないものの、通常使用される名はdianaeがほとんどです。どこでどうしてiが抜けたのか?推測するに論文の中にある花写真とスケッチ図につけた名前に論文名とは異なるiのないスペルミスをしてしまった?。しかし審査のある投稿論文でそれ程の基本的な部分でのミスは考えられず、こちらも本種の花色に似てよく分かりません。


南米ドラキュラ属3点

 60種以上のドラキュラを栽培しており今年7月頃までにはそれらをサイトに掲載する予定でしたが、4ヶ月ほど遅れて何とか今月末ごろに公開できる段階になりました。販売もほぼ同時にスタートする予定です。今年3月から半数以上で花茎が植え込み材の任意の場所から伸び出すことが出来るようにポット植えからメタルリングや炭化コルク付けに植え替えを行いました。厳密には種によって中・低・コールドの適温があると思いますが、本サイトでは24-15℃の範囲内で全種を通年で栽培しており、置き場所によって2-3℃の差がある程度です。これで枯れた種はありません。結果として株の状態はコルク付けが成長が良く、やや温度が高くなったり、状態が今一つの場合に発生する葉先枯れも少なくなりました。下写真は現在開花中の3点です。本属はナメクジに好まれる種のようで右写真の傷はそれです。忘れた頃にやってきます。温室栽培での秋はナメクジ被害が多いのですが、絶大な効果のあるマイキラーを用い撃退しています。


Dracula vespertilio

Dracula tubeana

Dracula navarronum

Phalaenopsis lowii

 今年7月タイから直輸入した入荷株の開花です。ミャンマー、タイに生息する本種の花を見るのは3年ぶりです。会津では多数栽培していましたが、浜松に移住してからはproboscidioides節やparishianae節の栽培の機会が余りなく、今年夏ごろから再び胡蝶蘭原種の収集を始めることにし、本種も新しく入荷したその一つです。落葉性のある本種やparishianae種は会津の様な盆地で昼夜の大きな温度差があり、夏季の熱帯夜がほとんどない地域では栽培が容易ですが、浜松はその逆で栽培が厄介です。山間部、東北地域などが、むしろこうした節に対しては管理しやすいように思います。サンシャインラン展には数株出品予定です。

Phal. lowii

7 - 9月入荷種の新芽

 7月と9月はフィリピン、8月はマレーシアにて入手した主なセロジネとシンビジウムの順化栽培が終了し、新芽の発生状況を数点画像にしました。胡蝶蘭、デンドロビウムおよびバルボフィラムの順化はすでに終わっています。10月から11月初旬は春先から6月までの期間と共にほとんどの種で新芽が発生し、よく伸びます。株の健康状態を知る時期でもあります。これらの時期に変化が見られない場合は、温度、湿度、輝度、かん水、通風、植え込み材、植え込み方法などのいずれかに問題があると判断し、対策が必要です。

 最近分かってきたことの一つはミズゴケの使用寿命です。成長が遅いあるいは昨年は問題がなかったのが同じ環境であるにも拘らず今年は成長が今一つであるとか、じり貧状態であると言った場合の最も可能性の高い原因は植え込み材、特にミズゴケで起こり易いのですが、その老化によるもので、根を洗浄した後、新しい材料に変えることで元の元気を取り戻す場合が良く見られます。本サイトでは2年以内にはミズゴケを交換することが必要と考えています。肥料によって若干交換時期を伸ばすことができると思われますが、一方で保水力の低下と共に塩類あるいはカルシュウム成分の蓄積による根へのダメージも、特にデンドロビウムFormasae節にはあるように感じます。目に見える様な状態になってからではもはや手遅れであることから、交換期間を予め定め実施することが必要と思います。


Coel. sp Palawan

Coel. longirachis

Coel. radioferens

Cym. ensifolium

Cym. sp Bukidnon yellow

Cym. sp Bukidnon brown

Dclm. sp surigao red

Den, butchcamposii.

Den. insigne


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