栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2017年度

2018年 1月  2月  3月  4月  5月  6月 7月  8月  9月  10月  11月  12月

7月

マレーシア不滞在顛末記

 27日にマレーシアクアラルンプールに出かけました。ところがクアラルンプール入国審査ゲートにて、パスポートの残存有効期間が不足とのことで、入国ができず成田に翌日の28日に戻りました。パスポートの有効期限には2種類あり、一つはパスポートに書かれた期限と、もう一つパスポートには書かれていない国別の、帰国予定日からのパスポートの残存有効期限があります。すなわち旅行終了日から起算して所定の日数分以上パスポートの有効期間が残っていなければならないというルールです。東南アジアの多くの国でこの期間は極めて長く6か月とされます。10年間延べ50回以上フィリピン、マレーシアを訪問しているものの全くこの残存有効期間という規定に気が付きませんでした。アメリカやイギリスのようにパスポートに記載の有効期間内の渡航ならば良いと考えていたためです。さらにパスポート有効期間をチェックした上で発行される航空券や成田での審査を得ての出国ですから、そのままクアラルンプールに向かい、クアラルンプールの入国審査で初めて問題に気付いた訳です。日本大使館やマレーシア入管と話をした結果として帰国以外なく、では帰国のため新たに航空券を入手するには一度出国して航空会社のチェックインカウンターに行かなければならないがどうすればよいのかと入国管理事務官に尋ねたところ、帰国の航空予約券があるのならば帰国予定日まで、このターミナルビル内にはレストランや長椅子は沢山あるので、ビル内で過ごしたらどうかと言われました。一瞬トム・ハンクスの「ターミナル」が頭を過りましたが、そうもいかず、いろいろな部署で調べてもらったところ成田行きマレーシア航空便が幸いに4時間後にあることが分かり、やっとのことでこれに搭乗し、翌日早朝の成田着で帰ることが出来ました。航空会社のチェックインカウンターがないコントロールエリアから出られない状況下で、どのようにして航空券を得ることができたか(すなわちこの治外法権のエリア内にいる人はすでに航空券をもち出国審査が終わって搭乗を待つ人と、到着してマレーシアへの入国審査を待つ人たちだけ)の経緯は旅行者に参考にとその顛末話もありますが、長くなるので別の機会とします。これまで10年間、日本での震災や、上記のような個人的なトラブルがあるたびに感じてきたのは現地の人たちの親切さと、彼らの日本人に対する敬意から得る誇りですが、今回もまたこうした事態の中にも強く感じることができました。

 帰国して、ネットで調べたところ、フィリピンや台湾は有効期間内で問題がないものの、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどほとんどのラン主要生息国である東南アジアの国々では現在パスポートの残存有効期間が6か月となっていますので2018年度末までの有効期限のパスポートを持っている人は、海外滞在期間がパスポート有効期間内であっても、更新しない限りこうした国には最早行けませんので注意してください。持ち帰り予定のランは、できるだけ早くラン園の2代目に成田まで持ってきてもらうように現地ラン園主と日取りの打ち合わせをしているところです。

Dendrobium moschatumによる大株造り

 Den. moshcatumはインド、ネパール、タイ、ミャンマー、中国、ベトナムと広範囲に生息し最大2m程の背丈をもつ大型のデンドロビウムです。じゃ香の香りがする9㎝程の比較的大きな黄色の花が一つの花茎に9-12輪同時開花します。国内市場では1m以下のサイズの株が1,000 - 2,000円と安価に販売されているようです。今回本サイトではこのDen. moschatumを20株入手しました。1株当たり平均5本の茎から成り、その長さはそれぞれ1.5mから2mほどの長さです。これを例えば1株1,500円で販売しようとすれば、茎の長さが収納できる箱のサイズから株代と宅配便費とはほぼ同等で、その手間を考えれば販売メリットはほとんどありません。

 ではどうして今回本種を入手したかと言えば、一抱えある程の大株仕立てが目的です。1株2m近い平均5茎の株を大型バスケットに9-10株ほどを寄せ植えし、50茎からなる株に仕立て、しっかりと肥料を与えて、これを開花させた場合の景色がどうなるかに興味を持ったからです。50茎の大きなクランプであっても価格は精々15,000円ほどの一方で、栽培を上手く行えば数百輪の華麗な開花が見られるかもしれません。展示用仕立てです。これだけのサイズの株を収納し栽培できる温室をもった趣味家は全国でも少ないと思いますが、こうした商品も一興ではと思います。今回20株を得たことでクランプ仕立てを2組作る予定です。写真左は植付け待ちの仮植えで、吊り下げられていますが本種は半立ち性であり植え付けの際には立った姿勢となります。右は本種の花です。

Dendrobium moschatum

5月入荷のDendrobium christyanum

 Den. christyanumの8割が現在開花中です。Den. tobaenseDen. toppiorumと同じ中温栽培のFormosae節です。花芽も無い状態の入荷株の植え付けから僅か2ヶ月で一斉に開花をしたところを見ると、栽培環境が余程気に入ったのか至って丈夫な種のようです

Dendrobium christyanum

現在開花中の7月入荷株

 入荷時に蕾があり植え付け後に浜松温室にて開花中の花を3点それぞれ撮影しました。順化栽培中の開花のため花色や花数は順化後と異なるかも知れませんが大方予想した通りです。左のCoel. longirachisは赤銅色からダークオレンジ色までの色変化があります。これが個体差なのか環境(栽培温度)変化によるものかは不明で、今回の入手株で調べる予定です。写真はオレンジレッド色です。中央のAppendicula malindangensisは花数は順化中のため少ないものの期待通りの濃青色です。右はミャンマー、タイ生息のDen. venustumでリップの形状が特徴です。


Coel. longirachis

Appendicula malindangensis

Den. venustum

酷暑のラン栽培

 国内では豪雨の次は酷暑と例年にない異常気象が続いています。本サイトの温室がある浜名湖寄りの浜松西区は名古屋や岐阜と比べて3 - 4℃程気温は低いものの寒冷紗、換気扇および天窓のみの高温対策では、午前10時で38℃、午後2時ともなれば40℃を越えます。このため10時頃には全ての温室に、また一部には午後にも散水が必要で極力35℃を超えないように努めています。 しかしこの異常気象下では夜間であっても温室内は30℃を下回ることがありません。一方、クール温室は通常夜間温度を16℃、日中で25℃としているもののこの猛暑でそれぞれ2度程上昇しています。

 温室内の高温対策として自動散水やエアコンでの対応があります。しかし扱う原種がサイズも形状も多様で、特に吊り下げ型の多いレイアウトの中での散水は被水量にムラができ、また送風のための扇風機等の電気機器が株の配置に応じて随所に設置されていることから、こうした機器類には水がかからないようにしなければならないなど環境が複雑です。一方でエアコンは温室空間が小さければ問題がないのですが、15m x 6mほどの温室ともなると70%寒冷紗を用いてもかなりのハイパワーのエアコンでなければ太陽光による熱射には敵いません。最近は水を超微粒子にし送風する濡れないミスト冷却があるそうで温室に適用可能か調べているところです。いずれにしても現状では午前10時から午後4時ごろまではクール温室以外、高温と高湿度のため30分と居られない状況です。

 環境変化の異なる多様な品種を栽培しようとすれば高・中・低温対応の環境を用意しなくてはなりません。一つの温室の中でも春秋のような外気温であれば暖房とエアコンまた間仕切りの工夫でそれなりの環境が造れます。しかし今回の猛暑のような中にあっては、それぞれのランにとっての適温を維持するのは至難の業です。この結果として高・中・低温タイプのランを栽培している場合、わずかでも対応ができないと低温タイプは溶け始め、中温タイプは葉が黄化し、高温タイプですら生気を失くします。驚くのは、こうした猛暑を喜んでいる種が居ない訳でもありません。Spatulata節デンドロビウム、胡蝶蘭ではPhal. giganteasumatrana、バルボフィラムでは高輝度は嫌いますがBulb. kubahenseviolaceolabellumなどは40℃近い気温の中、新芽を発生、伸長しています。

  さて本題ですが猛暑にランを購入することはそれなりの準備や覚悟が必要です。どのような栽培環境であっても高湿度の維持は通年必要で、冷房によって温度を下げれば湿度も低下します。であれば自動散水となりますが前記した問題があります。一方、同じ温室内で1年以上栽培を経た株は温度や湿度に対して短期間であればそれなりの許容力を持つものの、新たに入荷した株は、その環境の変化に慣れるまでの期間はその種にとっての順化のための環境が必要です。猛暑を越えて記録的酷暑と言われるこの時期に、こうした環境を温室内に造り上げるのは容易ではありません。

 今年はいつ温室内の日中温度が35℃を下回り、熱帯夜が無くなるのか予測できませんが、この時期に購入するには原則、植え替え直後の株ではなく、同じ鉢や支持材で1年以上栽培された株、すなわち根がしっかりと活着し安定した株を買うことが安全な買い物となります。ラン園やオークションを問わず購入される方はこの点を確認することを勧めます。

 猛暑時に株分けや傷んだ根を整理し、植え替えを行うことは避けるべきことは殆んどの趣味家は周知と思います。まして長期の酷暑の中で行うのは「狂気の沙汰」と言われかねません。そうした中で本サイトでは現在新入荷株の植え込みと順化栽培に追われています。海外から入荷する株は繰り返し説明していますが、見た目が良さそうでも株は相当傷んでいます。ひどいものでは生きた根がほとんどありません。しかし業者にとっては、それが希少性の高い種であったり新種とされる場合は国内への入荷時期を選ぶことができません。歩留まりの問題があってもこうしたリスクを採らざるを得ないのです。これを可能にするのは10年以上に及ぶダメージのある株を含め順化経験の蓄積と、高・中・低温環境があっての技です。

 難しいのは、spや新種と言われる株の管理です。その多くは生息環境(雲霧林とかオープンフォレストなど)や標高は分っていても、ハッキリしない種も多数あります。これは植え込んだ後の株の状態を朝夕にきめ細かく、その葉の変化を中心に観察することが求められます。張りが出ているとか、色合いが良くなっているとか、現状が維持されているとかを見ます。特に入荷時に小さな新芽のある株があれば一つの有効なバロメーターとなり、この新芽の変化を特に注視します。これがヘタってくれば環境が合わない、現状維持ならばそのまま栽培を続ける等です。より勢いが出てくれば環境が合うことだけでなく順化期間も短いことが読み取れます。悪いとなれば高・中・低温室のいずれかに移動することが必要で、この判断は即決即断が必須です。今回のように1,000株近い数があるとこうした株の変化を観察するだけでも結構な作業です。新入荷株だけでなく全ての株に対して観察し、毎朝ダコニールとアグレプト・ストレプトマイシン液剤を混ぜた農薬とそれを傷んだ部位に塗る筆を片手に見回ります。

 販売する側はこうした作業を日々繰り返している訳です。果たして植え付け間もない株を購入すべきかどうかは、購入者側の栽培経験に委ねられます。言い換えれば上記の環境や作業を購入者にも同じように求められます。順化栽培はどの時期であっても必要ですが、猛暑下にあっては経験を積んださらなる技術が必要となります。

 本サイトでは例年、順化中の株の購入は避けるべきとアドバイスをしています。しかし趣味家の中には本サイト以上に豊富な経験と栽培技術を持っている方もいます。また多くの趣味家にとって、それまで何もしないで待つことも無理があります。特に新種や希少種であればなおさらです。すなわち前記したように買うか待つかは趣味家の判断に委ねられます。そこで本サイトでは温室に来た方には株の予約を可能とし、選んだ株には出荷可能な時期まで予約タグを入れてもらい、適期が来た段階で引き渡しを行うことを続けています。このための予約費用も前払いもありません。こうしたシステムが他のラン園でも一般的に行われているのかどうかは分かりません。いすれにしても例年にない今回のような猛暑が続く中での海外からの新入荷種を求める際には、このような予約システムの利用が購入者側にとって有効と思われます。

 例年通常は、夏は暇な時期になるのですが、今年は年初の予定から1-2か月遅れの入荷が続いています。とりわけ量産栽培で出荷計画も容易な実生種とは異なる野生栽培株という原種であることと、相手あっての取引であり、なかなかこちらが希望するスケジュール通りには進んでくれません。さらに今年は入荷時期と記録的な猛暑時期が重なり例年になく多忙を極めています。

 この猛暑の中、間もなくマレーシアへの訪問です。 今月初めのフィリピン訪問では現地で汗をかいた記憶がなく、成田に降りたときは日本とフィリピンが反転したかのような気温で驚きました。この時期のマレーシアのSerembanでは日中32℃で夜間は24℃とのことです。ラン園やホテルのある場所を考えると3-4℃はこれより低く一方、訪問時期の成田での気温は37-39℃の予報ですからマレーシアには避暑に行くような気分です。ランに関わっていない人たちから見れば、この時期のランフリークの人たちはまさに「狂気の沙汰」を演じているのかも知れません。

Dendrochilum sp Surigao

 フィリピンミンダナオ島Surigao生息のDclm. spの取り付けが終わりました。この株も前記同様に垂直面に活着していたと思われる様態のため20株中、3株程はクリプトモスのポット植えで、他は炭化コルクへの取り付けとなりました。

Dclm. sp Surigao

Dendrobium chrysotoxum v. suavissimum

 ミャンマー、ラオス、タイ、ベトナム等に生息するDen. chrysotoxumは花茎当た4-5㎝サイズのオレンジ色の花を15輪程同時開花します。一般種はリップの基部がややダークオレンジとなっているのに対して、var. suavissimumは下写真に見られるように、くっきりとした円形の栗色の模様があります。今回20株をタイから入手し、植え付けが完了しました。下写真左は取り付け後の本種で、右の花写真はサプライヤーからのものです。本サイトでは平均して葉付バルブ4本で2,000円の販売となります。

 Den. palpebraeも同様ですが、当初本種についてはポット植えを準備していたのですが、入荷した株を見たところほとんどがこれまで垂直な平面に着生していたことが分かりました。すなわち全ての茎の基部が植え込み材の上に出るように配置すると茎は基部の成長方向に伸長しているため、水平置きのポット植えでは茎は横向きとなり、これを立てるようにすれば株元の大半を植え込み材の中に埋めることことになります。その結果、本種も炭化コルクへの植え付けとなりました。

 国内ではマーケットでの販売形態のほとんどがポット植えである反面、現地では野生栽培株は当然ですが、ポットに植えつけた株は実生からの栽培品を除きほとんど見かけません。特に胡蝶蘭の野生栽培株やバルボフィラムをポット植えで栽培している現地の趣味家はこれまで訪問した中で皆無です。日本ではランは限られたスペース内での温室栽培となる事情があり管理上ベンチ置きが多く、ヘゴ板やコルクは扱いにくくなります。一方、これまでの経験からポット植えから垂直面への取り付けに替えた結果、その多くでそれまでにない成長と同時に病害が激減しています。こうした背景と株や開花時の花の姿勢を極力自然の生息形態に合わせる目的で、ポット植え込みの4-5倍の作業時間を要するものの原種については垂直面での取り付けが主になっています。

 ヘゴやコルクへの植付けの問題点は乾燥が進みやすいことです。数日間出張等でかん水ができない場合、展示会で購入される方に説明している対処法は、その間やや大きな素焼き鉢となるものの、鉢にコルクを立てて入れ鉢の底部(コルクの下部)に適度にバークやクリプトモスなどを詰めてコルクを安定させ、ポット受けには少量の水を張ることを勧めています。これで浸透圧によりコルク下部は長期間濡れた状態か湿った状態となり高湿度を保つことが出来ます。本サイトでは通常時でも胡蝶蘭のPhal. appendiculataのような種には一部こうした手法を用いています。

Den. chrysotoxum v. suavissimum

Bulbophyllum spathulatum

 ミャンマー、ラオス、ベトナム生息のBulb. spatulatumBulb. frostiiに似て履物のような花をつけます。Bulb. frostii(3㎝)に比べて一回り小さい花(2㎝)ですが5- 10輪程と多輪花です。今月タイから入荷した20株の植え付けが終了したところです。栽培は中温タイプとなります。右写真はサプライヤーからです。

Bulb. spathulatum

Bulbophyllum marknaivei

 フィリピン・ミンダナオ島Lanao生息のバルボフィラムの新種Bulb. marknaiveiの植え付けが終わりました。下写真が炭化コルクに付けた3例です。


Bulb. marknaivei

Dendrobium palpebrae

 ミャンマー・タイ、ベトナムなどに分布する中温タイプのデンドロビウムです。Den. farmeri var. albaとよく混同されているそうですが、orchidspecies.comによると本種はリップが卵形で基部(縁のギザギザではなく基部全体に)に細毛がある点で異なるとされます。今回入手したサプライヤーのサイトではDen. farmeriと本種とは別種として扱っていることからDen. palpebraeと見なして問題は無いと思われます。本種名で国内マーケットをネット検索したところ数点ヒットし、その多くが種の表記としてDen. palpebrae (Den. farmeri var. album)とされており両者を区別していません。よって現在の国内マーケットで販売されている種がDen. farmeriDen. palpebraeのどちらかは不明です。1株3茎(疑似バルブ)で3,000円が見られます。本サイトでは凡そ5倍サイズの葉付15茎で3,000円としました。本種のような長く下垂する総状花序をもつタイプは、大株仕立てでより多くの花茎を発生させ豪華さを増すことが好ましいと思います。下写真左および中央は植え付けが終了した2株を撮影したもので、写真左が14茎、中央が15茎です。写真右はサプライヤーからの写真です。

Den. palpebrae

Dendrochilum sp North Luzon

 ルソン島北部から黄とクリムゾン色のツートーンカラーのデンドロキラムを入手しました。送られてきたサプライヤーの写真は花の画像が不明で種名がなかったことから小さなバルブからなるバルボフィラムではないか思っていました。しかし現地に入荷した開花株を見てデンドロキラムと分かりました。色合いが良いのでこれはこれでと10株程を持ち帰りました。下写真がそれで右は植え付けが終わった2株です。(後記: 詳しく写真の株を調べたところ、花茎が葉元からではなくバルブの下部、すなわちバルブのリゾームとの付け根辺りから出ていることが分かりました。これはデンドロキラムではなくバルボフィラムの形態であり、現在精査中です。)

Dclm. sp North Luzon

Appendicula malindangensis

 Mindanao島から入手のAppendicula malindangensisの植え付けが終わりました。4年前は素焼き鉢にミスゴケでの植え付けでしたが今回はスリット入りプラスチックポットにミズゴケ(下写真左)です。また本種は着生ランであることから数株を右写真のようにバーク木片にも取り付けてみました。こちらは展示用です。右写真の左端の株は70㎝を超える非常に長い茎が2本あり、またその隣の株は新芽が2本出ており順化期間を含め成長が観察できるためバーク付けとなりました。ポット植えの本種の価格は、従来通り2,000円です。

Appendicula malindangensis

Dendrobium (Euphlebium) spとCymbidiumの植え付け

 写真左はフィリピンから持ち帰ったEuphlebium spの6株です。昨年フィリピンよりEuphlebium balzerianumbicolenseを入手しました。これらは1日花のため人気が今一つです。展示会に出し審査時点では花が咲いていても翌日の初日には枯れていると言う何とも都合の悪い性質もその原因の一つかも知れません。一方で短命であるが故に花への愛着が湧くもので謂わばマニア向けと言ったところでしょうか。Den. amboinenseも代表的な1日花ですが、こちらは浜松温室では年に2回、全株が一斉に開花します。一方Den. crumenatamは年3回、またDen. insingneはほぼ4回です。それに対してEuphlebium balzerianumbicolenseの2種を一緒に栽培している温室内では、株単体の開花は年3回程と思いますが、前種の一斉開花とは異なりそれぞれがばらばらに開花する性質があり、2種合わせて20株以上を栽培していると、冬季の4か月を除き毎月どれかの株で花が見られます。Euphlebium属はフィリピンに8種程知られています。しかし今回の6株は種名不詳での入荷のため開花まで分かりません。

 写真右はCymbidium Bukidnonのsp2種とCym. aliciaeの植え付け後の風景です。順化には1-2か月程を要すると思います。5月中旬タイから10株を入荷した大株のCym. aloifolium f. flavaは今月に入り新芽が見られるようになり順化が完了したところです。


Dendrobium sp Palawan

 Palawan生息のDen. spがあるとのことで20株を持ち帰りました。株の葉や茎の形状を見る限り、類似する種としてはDen. fairchildiaeが考えられるのですが、Den. fairchildiaeがPalawanに生息する情報は聞きません。ラン園のスタッフによると入荷時にピンク色の花が咲いておりDen. miyasakiiよりはやや小さい花であったとのことでした。Den. miyasakiiを知っているのであればDen. fairchidiaeも知っているであろうと思われるのですが。いずれにせよ開花するまで種名は分かりません。Den. fairchidiaeであれば、現在10株ほど栽培をしており年2回開花するので確認ができると思います。下写真が今回入手したDen. spです。

Den. sp Palawan

Bulbophyllum glebulosum、spおよびBulbophyllum levanae

 Bulb. glebulosumの一部取り付けを始めました。下写真左の右3株がそれらです。価格は2,000円から5,000円の範囲となります。この株の取り付けの際にも種名不詳の株が混在していました。それが左端の1株です。このBulb.spもこれまでに扱った種に合致するものがなく開花を待つ以外ありません。一方、写真右はBulb. levanaeで初入荷です。バルブは短径で丸みがありますが花形状はBulb. trigonosepalumと似ておりBulb. trigonosepalum 近縁種の一つです。

Bulb. glebulosum(右3株)とsp(左1株) Bulb. levanae

Aerides krabiensis

 マレー半島およびタイ生息の本種を5月に5株初入荷し、今月新たに10株を得ました。入荷時の株の形状を見ると、そのまま茎が直立(下写真右3株)しているものと、Vanda merrilliiによく見られる主茎は下垂するものの先端部は上に向かって湾曲しているものがあり、そうしたこれまでの生態状況に合わせて取り付けました。一般サイズで2,500円を予定しています。

Aerides krabiensis

Dendrobium cumulatum

 ヒマラヤからミャンマー、タイ、ベトナム、ボルネオ島まで広範囲に分布する本種は3-4㎝のそれなりの大きさの花を多数同時開花しバニラの香りがするそうです。比較的知られたデンドロビウムと思います。半立ち性ですが、疑似バルブ(茎)が長くなると下垂します。よって大株では、支持棒を用いたポット植えか、吊り下げ栽培となります。国内マーケットにおいては数ラン園が本種を2,000円から3,000円程で販売しています。これらの多くは疑似バルブ数が5本前後で、15㎝に満たない小さな株もあるようです。今回、タイのラン園から直輸入で入手したDen. cumulatumは、全ての株で1株のバルブ数は20本前後で、その背丈は50㎝以上あり、国内でこれまで販売されている株の様態とはまるで異なることから20株入手した中から4株を参考に写真に撮りました。20株ほとんどがこのサイズです。写真上段のメジャーは50㎝長のものです。

 本サイトではこの大株?で現在の市場価格相当の2,500円での販売を予定しています。炭化コルク付けを考えると実質株自体はこのクラスター状の株で2,000円程となります。タイのデンドロビウムなど今後順次紹介していきますが、2,000年以降の新種や希少種を除き、本サイトでは1,500円から2,500円の価格を検討しています。趣味家の方は購入される際、株サイズも同時に評価下さい。

Den. cumulatum

Phalaenopsis fasciata

 フィリピンルソン島からMindanao島まで分布する本種は入手難という訳でもないものの5年ぶりの入荷です。今回はMindanao島からの入手であり、これまでの実績からおそらくPhal. fasciataではなくPhal. reichenbachianaの可能性があります。下写真左は現在の仮植え状態の植え付け待ちです。いずれも丈夫な種であることから2-3ヶ月の間には開花があり確認できると思います。

 入荷から植え付けまでの間、バルボフィラムでよく行うようにトレーにミズゴケを敷きその上に株を並べ、根部分をミズゴケで覆う仮置きは胡蝶蘭原種にはできません。数日で細菌性あるいはカビ系の病気に襲われます。下写真のように根をミズゴケで巻きこれを吊るすことが必須で、この状態で微風を24時間当てます。こうすれば1株当たり3分で仮植えができ、1か月は保管できます。マレーシアラン園ではミズゴケを巻いた筒状の取付材に根を針金で留めて吊るす仮植えを行っています。いずれにしても葉の上や頂芽にかん水時に水が溜まるような姿勢で長期間置くことは避けなければなりません。


Phal. fasciata ?

Phal. fasciata

Phal. reichenbachiana

Phalaenopsis aphrodite f. alba

 今回のフィリピン訪問で知人からPhal. aphrodite f. albaを1株頂いてきました。こうした希少種はマザープランとして本サイトで自家交配して実生化を図り、フィリピンに戻す考えです。そうした活動には受け入れ先としてフィリピンを含めマレーシアやインドネシアなど自国の希少生物に対してのex situ (生息域外保全)のための組織や施設の存在が必要であり、それぞれの生息国に期待しています。

Phal. aphrodite f. alba

Bulbophyllum sp Mindanao

 名称不明のバルボフィルムが相当数、今回のフィリピン入荷に含まれています。下写真上段はMindanao島Bukidnonからの1種(左)とLanaoからの2種(中央および右)です。花写真もなく開花するまでどのようなバルボフィラムか分かりません。現地では左のBukidnonからの株は紫色の花とだけの情報です。下段左は現地での栽培風景と思われます。上段左の炭化コルクに植え付けた株と同一種です。バルブ間のリゾームが長く、バルブは赤茶色で葉に厚みがあります。また赤味のある長く細い花茎が写真に写っています。こうした種はこれまで扱ったことが無くおそらく新種かマーケットにほとんど見られない種と思われます。一方上段中央は葉は薄く披針形でLanaoからです。同様に写真右は葉が楕円形です。いずれも本サイトとしてはバルブ、葉、リゾームそれぞれの形状を総合してこれまでにない形状であり、種名を同定するには開花を待つ以外ありません。下段右は上段の3種を一堂に並べて撮影したものです。最も長い炭化コルクは60 x 9.5 - 10cm、他は45 x 9 cmと30 x 8.5㎝でコルクの横幅から葉サイズが推測できるかと思います。取り敢えず左はBulb. sp Bukidnon A, 中央はBulb. sp Lanao A、右はBulb. sp Lanao Bと仮称して扱うことにしました。


大型Bulbophyllumの取り付け終了

 フィリピンMindanao島Bukidnon生息の大型バルボフィラム10株の取り付けが終わりました。5㎝厚の炭化コルクに1.5mm盆栽用アルミ線での取り付けです。これから順化栽培に入ります。右写真は本種の開花風景です。会員の方からBulb. penduliscapumの可能性ありとの情報を頂きました。現在、BukidnonやLanaoなどからの種名不詳のBulb. spが取り付け待機中で一両日中には終わりたいと休む時間も無い状態です。


その後の花

 Den. tobaenseDen. ayubiiの開花を撮影しました。Den. tobaenseは12㎝スパンの花を2輪、Den. ayubiiは4輪同時開花で、それそれ開花期間は1か月程と長寿命です。いずれも炭化コルク付けの中温栽培です。


Den. tobaense

Den. ayubii

Dendrobium christyanum

 5月に入荷したベトナムおよびタイ北部と中国雲南省に生息する中温タイプのDen. christyanumが開花しています。現在バーク木片と炭化コルクに取り付けた15株全株に揃って蕾がついています。5㎝とそれなりのサイズのやさしい雰囲気の花で現在の蕾の数からは1株に2-6輪程が開花するようです。それぞれの株が同じタイミングで開花し開花寿命も長いようなので次回の発注で10株単位の寄せ植えも良いかと考えているところです。本サイトでは株サイズにより炭化コルク付けで1,500円(5バルブ)から3,000円(10バルブ以上)としています。

Den. christyanum

タイから入荷のミャンマーおよびタイ生息種を中心とした主なデンドロビウムその他

 5月以降2回に分けてタイからの直輸入で入荷した主なデンドロビウムその他は下記です。まずは一般種からとなります。2-3種を除き、バルボフィラムは一般サイズで1,500円、デンドロビウムは2,000円からとなります。現在多数のマーケット入手難の種や2000年以降登録の新種を注文中です。

Aerides houlettiana
Aerodes krabiensis
Aerides multiflora
Bulb. ambrosia
Bulb. blepharistes
Bulb. cruentum giant
Bulb. fascinator semi-alba
Bulb. moniliforme
Bulb. orientale
Bulb. spathulatum
Bulb. violaceolbellum
Cym. aloifolium var flava
Den. albosanguineum
Den. anosmum
Den. brymerianum
Den. christyanum
Den. chrysotoxym v. suavissimum
Den. chysocrepis
Den. cumulatum
Den. delacourii
Den. devonianum
Den. lituiflorum semi alba
Den. moschatum
Den. palpebrae
Den. scabrilingue
Den. venustum
Den. virgineum
Phal. lowii
Phal. minus
Rhynchostylis coelestis blue
Thunia bensoniae
Vanda coeulescens


Phalaenopsis lueddemanniana Mindanao

 Phal. lueddemannianaはフィリピン固有種でルソン島北部からMindano島までほぼ全土に分布しておりフィリピンを代表するランの一つです。今回入手した株はMindanao島Surigao生息で、Mindanao島から纏まって本種が入荷するのはこれまでの10年間で初めてです。他地域の花では赤い棒状斑点が白や薄黄色のベース色にストライプ状に並んでいますが、Mindanao島の株はこの棒状斑点が太く、重なり合うことが多く下写真右下のようなソリッドレッドに近いフォーム(写真は今回のロットの花です)が多いことで知られています。またルソン島北部の同種と比較し1.5倍程の葉長を持ちます。

 ソリッドレッドフォームかストライプフォームが良いかは好みの問題ですが、Mindanao島からの野生栽培株は本サイトにとって2009年以降2回目となります。前回は数株でしたが今回は20株程です。ルソン島やPulilio島からの入手は容易ですがMindanao島生息株はかなり入手難です。下写真は順化に入る前の仮植え風景です。株は出荷に対してそれまでの支持母体から取り外されますがこの際多くの根が切られ、出荷までの数週間ベアールートに近い状態に置かれます。この結果、水分不足や現地ストックヤードでの高温環境によって葉は下写真左のようにしな垂れてしまいます。入荷後に再び張りのある厚みを持った葉へ戻すにはかなりの時間が必要で、その間、根の切断状態にも寄りますが、古い葉は枯れ落葉します。写真右は仮植えから4日間で落葉した葉です。2週間程経つと落葉は収まり、細菌性あるいはカビ系の病気の発生がなく順調に栽培が進めば新しい根が現れたり、頂芽が動き始めます。それまでには植え付けから早くて3週間、通常は1か月を要します。

 その後、葉に張りが戻り始め新根や頂芽も伸長が続きます。それぞれが1㎝以上伸びたところで順化は完了です。出荷はさらに一ヶ月程落着かせてから、すなわち入荷から2 - 3ヶ月後が好ましいのですが。このように胡蝶蘭原種の順化期間は、デンドロビウムやバルボフィラム、Aerides等とは異なり長い時間を要します。また順化期間は入荷時の株の状態に大きく依存します。根のほとんどが無傷であるポットなどでそれまで栽培されていた、いわゆるEstablished plantと現地で言われる株であれば順化期間は不要あるいは精々1 - 2週間で良いのに対し、根が大きく切断された株では上記のような期間が必要となる訳です。

 順化は不要なのですぐに購入したいと言われる趣味家も少なくはありません。順化栽培の経験が十分ある方には問題はありませんが、前記したように株の状態によっては歩留まりがかなり低下する場合があり、そこは慎重に検討されることが好ましいと思います。しかしあまり悠長なことを言っていてはいつか誰かが買ってしまい無くなっているかもしれないという心配もあります。本サイトではそのため予約済みのラベルを順化中の株に付けますのでそうした問題はありません。注文はメールでの予約を含めて早い人優先です。

仮植え中のPhal. lueddemanniana Mindanao

Bulbophyllum recurvilabre

 5月のサンシャインラン展で初日で売り切れとなったBulb. recurvilabreを今回10株入手しました。ラン展では開花中であったため、花を見ての人気であったと思います。今回は4-5バルブの普通サイズではなく可能な限り大株を、と注文していました。全て12バルブ以上でしたが、いずれも左右方向に2分岐した株で、これを長方形の板状支持材に取り付けると板が横向きの姿になり吊り下げタイプとしては不釣り合いとなるため分岐点で切断し、またその際に古いバルブを整理し葉の向きを揃え縦方向に一列になるように取り付けました。取付支持材は炭化コルクとバーク板です。写真左が取り付け後の画像3例で、右はサンシャインらん展で販売した株の本種の花です。

Bulb. recurvilabre

Cymbidium sp BukidononとCymbidium aliciae

 Mindanao島からの出荷可能リストにデンドロビウムやバルボフィラムに混じって、Bukidnon生息のシンビジウムが2点含まれていました。それらの花形状はCym, aliciaeに似ているものの葉は細く、またセパル・ペタルがサーモン色と黄色の2種類のカラーフォームがあるとのことで園主としても始めて見る種とのことでした。それではとそれぞれ20株を入手しました。黄色のシンビジウムと言えば近隣のSurigaoにCym. chloranthum subsp. palawanenseが生息しており、またCym. finlaysonianumなども考えられるものの葉形状が異なることから、おそらく今回入手の株は新種か、これまでマーケットには見られなかった種であろうと思われます。写真左の手前左右の株がそれらで、それぞれ20株あります。奥の明るい緑色の幅広の葉の株はルソン島からのCym. aliciaeで別種です。一方、右写真はトレー内すべてがNueva Viscaya Kayapa標高1,500mのCym. aliciaeで、小株から大株まで左写真の株と同様に植え付け待ちの状態です。左のトレーの奥と同じ種ですが葉色が異なっており、サプライヤーも異なることから、おそらく地域差と思われます。


Bulbophyllum lasioglossumBulb. sp

 今回のフィリピン訪問で入手したバルボフィラムは11種類あり半数が種名不詳です。その内、4種がミンダナオ島生息種で他はルソン島北部とPulilio島となります。このルソン島北部生息種にBulb. lasioglossumが含まれ20株を持ち帰りました。。しかし今回この株の植え付けをしていたところその形態に違和感を覚え、改めて形状比較してみたところ写真が示すように葉およびバルブ形状の異なる2種類の株が混在しているようです。一つは葉が披針形あるいは長楕円の一方で、他方は丸みのある楕円形です。またバルブ形状も写真中央と右のようにそれぞれ異なっています。

 植え付けをしていると形状の異なる株が混ざっていることが時折見つかりますが精々1株程で 凡そ半数に分かれることは初めてです。また写真右のような株形状のバルボフィラムをこれまで取り扱ったことが無く、どのような花が咲くのか開花が楽しみになってきました。


Phalaenopsis sanderianaAppendicula malindangensis

 Phal. sanderianaは3年ほど前にサプライヤーの世代交代でしばらく入手が難しい状態が続き、前POS会長の所有する株を分けて頂いていたのですが、どうやらMindanao島からの入荷ができるようになったようです。大きな株で下写真左が本種で、写真の右から4番目の小さくみえる株が本来のマーケットで通常見るサイズであることから、今回入荷株が如何に大きな葉であるかが分かります。ほとんどが最大サイズとされる30㎝前後です。

 一方、中央は4年ぶりの入荷となりましたApppendicula malindangensisで、この株はMindanao島Bukidnon生息株です。4年ほど前は右写真に見られるように鮮明なブルーの花色からブームとなりましたが、2年程で収まりました。最近になって引き合いが再び増え、本サイトではすでに在庫が無くなっていたため、今回のフィリピン訪問で50株程を持ち帰りました。本種はブルー、紫色およびピンクがありますが、ブルーフォームは葉裏が緑色に対して、紫やピンクフォームはやや赤みを帯び、葉裏の色から花色が予測できます。今回はブルータイプとなります。画像は植え付け前のバスケットでの寄せ植えです。

Phalaenopsis sanderiana Appendicula malindangensis

Bulbophyllum glebulosumBulbophyllum membranifolium

 Bulb. glebulosumはフィリピンルソン島Aurora州生息の2008年登録の新種です。中温タイプとなります。これまでなかなか入手が困難でしたが、やっと入荷できました。ネットでのマーケット情報はほとんど見当たりません。 写真左が植え付け前のBulb. glebulosum、中央は同種のW. Suwarez氏の花画像です。一方、右はMindanao島Surigao生息のスポットフォームのBulb. membranifoliumで、こちらも入手しました。

Bulb. glebulosum Bulb. membranifolium

Bulbophyllum marknaivei LanaoとAerides magnifica

  Bulb. marknaiveiはMindanao島Misamis Oriental州、標高1,200mの雲霧林にて採取された2016年登録の新種です。今回入手した株は西隣のLanao州生息株で下写真左は植え付け前の20株程です。本種に関しての情報はOrchideenJournal Vol.4.4 2016の記載以外詳細情報がなく、右写真は花画像掲載のJournalの表紙です。本サイトでは中温タイプとして炭化コルク植え付けとなります。株サイズにより2,500 - 3,000円の予定です。

Bulb. marknaivei

 一方、下写真左は同時にフィリピンにて入手した取り付け前の10株を一纏めに吊るしたAerides magnificaで、右は本サイト撮影の同種の花です。これまでAerides odorata Calayanaとしてマーケットで取り扱われていましたが2014年Aerides magnificaとして登録されました。本種名で検索をしていたところヤフオクでAerides magnificaが18,000円で落札されていたようです。本サイトではAsiatic Greenが同種あるいはComplexと思われるAerides quinquevulnera v. calayanensisを45米ドルとのことで写真のBS株で4,000円を予定しています。今回はAerides inlfexaも10株ほど入荷しました。

Aerides magnifica

Dendrochilum sp Surigao

 デンドロキラムはアメリカやヨーロッパと違い国内ではあまり人気がないようで、本サイトとしてもこれまでラン展に共同で出店したラン園の売れ残り株を引き取っていた程度でした。しかし今回サプライヤーから送られたMindanao島Surigao生息の、おそらくデンドロキラムと思いますが、種名不詳の花画像には魅力を感じ、また園主も始めて見るとのことで20株ほどを入手してきました。左は植え付け待ちの本種です。スリット入りプラスチック鉢に100%クリプトモスでの植え付け予定です。

Dclm. sp Surigao

Phalaenopsis mariae

 久々のフィリピンからの胡蝶蘭原種です。これまで長く胡蝶蘭原種を取り扱ってきましたが、現地園主も驚くこれまで見た中では最大のPhal. mariae野生栽培株です。葉長40㎝を超える株もあります。写真左は仮植え中のもので、数日後に炭化コルクに取り付けとなります。今月一杯は順化栽培を行って葉の張りを戻し、8月から販売を行います。これまでの本種の野生栽培株に500円程度プラスした価格を予定しています。

Phal. mariae

Rhynchostylis coelestis Blue

 280株のタイからの入荷が6日にあり、こちらも併せて紹介を始めます。この中にベトナム、カンボジア、タイに生息するRhynchostylis coelestisが含まれます。本種は青、紫、ピンクの花色があり、特に青色の濃いフォームを希望しての注文を行いました。期待される花色は下写真となります。左は入荷した株で大きなBSサイズです。2,500円での販売を予定しています。

Rhynchostylis coelestis Blue

Bulbophyllum inacootesii BukidnonとCoelogyne longirachis Lanao

 フィリピン訪問で入手したバルボフィラムとセロジネです。前者は2016年登録の新種で、後者は古くから知られているものの、生息地がMindanao島BukidnonやLanaoの独立闘争地域のため入手が難しく、今回の入手は初めてです。花画像はいずれもサプライヤーからコピーです。Bulb. inacootesiiは2016年のOrchideen Jouanalに詳細が記載されています。いずれも標高1,300mの中温とされていますが、Bulb. inacootesiiは高温タイプとの説もあります。Bulb. inacootesiiは2,500円から、またCoel. longirachisは3,000円を予定しています。

Bulb. inacootesii
Coel. longirachis

Dendrobium boosii Lanao

 これまで知られていたDen. boosiiは2011年登録のMindanao島Bukidnon生息株ですが、本種はMindanao島北西部Lanaoの生息株です。花画像はサプライヤーからのものです。本種は多くの個体差があるようで、画像検索では今の所該当フォームがないためそのまま掲載しました。

Den. boosii

Bulbophyllum spDendrobium derekcabactulanii

 フィリピン訪問にて入手したBulb. spと2017年登録のDen. derekcabactuloniiです。いずれもミンダナオ島Bukidnon生息種で前者は写真上段右の画像に見られるように60㎝にも及ぶ倒披針形の大きな葉と1m程の下垂花序が特徴です。2015年の歳月記にBulb. spとしてスラウエシ島生息種を取り上げましたが葉の形状や花色は異なるもののバルボフィラムとしては最大種の一つと思われます。左および中央は今回入手した株の内、2株を5㎝厚の炭化コルクに取りつけたものです。価格は株サイズにより4,000円からとなります。

 一方、下段はMindanao島Bukidnonで2016年発見、2017年登録の新種Den. derekcabactulaniiで、株形状はDen. boosiiと視覚的には極めて類似しています。 Den. boosiiの疑似バルブは1m長にもなりますが本種は40㎝ほどとされ、花フォームは3種類ほどあるようです。コケ林(雲霧林)の標高900 - 1,600mの生息種です。価格としては株サイズにより2,500円から5,000円を予定しています。

Bulb. sp Bukidnon
Den. derekcabactulanii

フィリピン訪問

 1年2ヶ月ぶりにフィリピンを訪問し3日に戻りました。繰り返しになりますが、日本の業者が輸出入禁止の絶滅危惧種であるヘビとメガネザル等をアクアプラントとされる箱の中に隠して違法輸入をしていたことが分かり、その業者の調査をさらに進めた結果、数年に渡り常習的にこの違法を繰り返していたことも判明、フィリピン植物検疫所にとっては、それこそ”あなた方は真面にこれまで仕事をしてきたのか”と大いに面子を潰された恰好になってしまいました。そうした背景から輸出検疫が厳しくなり昨年4月以降、主なランの輸出業者に対しても立会検査も辞さずと、植物検査の日取りは検疫所の都合で決まることになり、CITES認可を予め得ておくことは出来ても、訪問してランを選びそれを帰国前日に検疫所に持参し、その日のうちに許可を得られるかどうかが分からなくなりました。結局高い渡航費を使って出かけても現地からランを持ち帰ることができるどうかの保証がない以上、訪問する意味がなくなり、これまでの10年間年数回行っていたフィリピンへの訪問を中止していました。昨年11月には検査が終了次第園主直々に成田まで持ってきてもらうこともありました。検疫が終わってから取りに行けばよいのではと思われるかも知れませんが、フィリピンの高温下で密封から持ち帰りまでの時間がEMSと変わらないのでは品質の保証ができません。それが今年4月から、箱は完全密封で検査官の手書き署名の封印で再び申請当日の認可が得られることになり今回の訪問となった訳です。

  一方、フィリピンミンダナオ島の特に西部では、衆知のように長い間イスラム武装勢力との闘争が続いています。この地域への”よそ者”の立入りは現在もなお困難と言われますが中部のBukidnon、北西部のLanaoなどの一部では近年解放エリアが拡がり、ここ3年程でインドネシア・スマトラ島北部と同じように多くの新種の発見が続いています。本サイトではこれまでの人脈を通して、これらランの入手が可能かを打診をしていたのですが、その一部は入手可能とのことで、今年の4月と6月にCITE認可を得、また前記検疫を通して持ち帰ることができました。明日から順次、新種を含め入荷したランを紹介する予定です。

 今回はこうした種を含め800株程を持ち帰りました。また今週末にはタイからEMSで300株程が入荷予定です。ここ数年胡蝶蘭原種の入荷が一般種を含め滞っており、これらも今後2-3ヶ月以内で集めようとマレーシアには今月半ばに訪問を予定しています。 当初計画から1か月遅れとなりましたが何とか軌道に乗り始めたところです。


前月へ